2022年9月24日 (土)

田部京子さんが真嶋雄大さんの講座に登場

後日記載します。

2022年9月23日 (金)

高野百合絵さん+東京シティ・フィル

後日記載します。

2022年9月17日 (土)

宮地江奈さんからのおくりもの~コンサート

後日記載します。

M

後日記載します。

2022年9月11日 (日)

ハンサム四兄弟

後日記載します。

2022年9月 9日 (金)

小林愛実さんリサイタル~府中の森芸術劇場

後日記載します。

2022年9月 8日 (木)

東京二期会~蝶々夫人

後日記載します。

2022年8月28日 (日)

愛知祝祭管弦楽団~「トリスタンとイゾルデ」

アマチュア・オーケストラの愛知祝祭管弦楽団による演奏会形式での、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」全三幕を8月28日午後、愛知県芸術劇場コンサートホールで拝聴した。

指揮は、このオケの音楽監督の三澤洋史(ひろふみ)さん。新国立劇場合唱団の首席指揮者として知られている。合唱は、愛知祝祭合唱団。

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三澤さんと、このオケが、ワーグナーシリーズを展開されているのを知っていたので、いつか聴いてみたいと思っていた。

このオーケストラは、2005年の愛知万博の際に、愛知万博祝祭管弦楽団としてスタート。最初の3回は、マーラーの交響曲をメインとしていたが、ワーグナーの初回としては、2013年に「パルジファル」全曲上演を行った後、2016年に「ラインの黄金」、2017年に「ワルキューレ」、2018年に「ジークフリート」、2019年に「神々の黄昏」というように「ニーベルンゲンの指輪」全四部作を演奏してきた。

コロナ禍もあり、ワーグナーのオペラの全曲上演としては、今回はそれ以来の演奏会。

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以前、地域におけるワーグナー上演と言えば、東京都荒川区が、東京国際芸術協会(TIAA)と組み、後援としてドイツ大使館、二期会、ワーグナー協会を巻き込んだ「あらかわバイロイト」が有名だが、専属だったTIAAフィルハーモニー管弦楽団は、フリーなどのプロの音楽家をメインとした臨時結成だったので、単純な比較はできないが、「あらかわバイロイト」が「荒川区にオペラあり」を示したように、今や、「名古屋には、ワーグナー上演に注力するアマオケあり」として、愛知祝祭管弦楽団は存在感を増してきたと言えるのかもしれない。

そういえば、「あらかわバイロイト」も、2009年の第1回が「パルシファル」、2010年が「ワルキューレ」、2011年が「神々の黄昏」、2012年が「ラインの黄金」、2013年が「トリスタンとイゾルデ」だったから、「ジークフリート」はやっていないものの、「パルジファル」、「指輪」、「トリスタンとイゾルデ」という展開が偶然の一致なのかどうか、その辺の事情は知らないが、不思議だし、興味深いことだ。

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今回上演のオケと舞台配置について

前置きが長くなったが、今回のキャスティングは最下段に記載のとおり。

その感想の前に、オーケストラと舞台配置の問題について触れたい。

愛知県芸術劇場コンサートホールは美しいホールだが、ステージの横幅は十分ながら、奥行はあまりないので、演奏会形式とはいえ、オペラの上演上は、色々と問題があることも今回分かった。

ソリストは、オケの手前(ステージと客席との境)ではなく、オケの後ろに、全身が見える高さの「台」を設定して、その上での歌唱をメインとした配置。

加えて、色々な工夫がなされ、マルケ王は、「台」の上ではなく、正面のオルガンの前の客席で歌ったし、ブランゲーネも第1幕は「台」、第3幕はオルガンの(客席から見て)左横の客席で歌い、主に「台」で歌ったクルヴェナルも、第3幕ではオルガンの(客席から見て)右横の客席で歌うなど、場面において、移動が少なからずあった。

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オケは健闘した立派な演奏だったが、弦の音の薄さとか、金管楽器も含めて、音程の微妙さも少なからずあった。それでも、アマオケと言えどもフル編成ゆえ、ワーグナーのオーケストレーションからして、歌手の声を消しがちになる場面も多々あった。

特に第2幕の有名な愛の二重唱。「好き」を40分も言い合うという、いかにもワーグナーらしい、くどくどしいまでに長い場面だが、その後半の弱音の世界は素敵だったが、前半の多くで、オケの音量が、本来は声量のある2人の歌声をかき消していて、とても残念だった。

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このことを考えると、やはり、歌手はオケの後ろではなく、前(ステージと客席の境)で歌ったほうが良かったと思うし、あるいはいっそ、マルケ王のように、「台」よりも更に上の、オルガン付近の客席で歌ったほうが、より客席に声が届いたように想える。

次いで歌手の皆さんについて

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トリスタン役の小原啓楼さん。素晴らしい声。男性的魅力と誠実さに溢れていて、声量も十分な、格調高いトリスタン。カッコ良いトリスタンだった。

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イゾルデ役の飯田みち代さんは、軽めの明るいトーンで、ニルソンのような女王的イゾルデではなく、プリンセスのような質感がステキ。強いて言えば、マーガレット・プライスに近いイメージ。

第3幕で、トリスタンが死んだ後から、クルヴェナルらによる四重唱までの間では、この日一番の感情移入がなされて圧巻だった。そして最後の「愛の死」も十分魅力的に歌い、聴衆の心を温かく魅了して、ヒロインとして立派に物語を締めくくった。

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マルケ王役の伊藤貴之さんは、貫禄があって、とても良かった。

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ブランゲーネ役の三輪陽子さんは、ベテランらしく、情感と安定感が素晴らしく、安心して聴いていられた。素敵なブランゲーネで、見事だった。

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クルヴェナル役の初鹿野剛さんは、明るめの声で、声量もあり、聴き応え十分で素敵だった。

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メーロト役の神田豊壽さんの声は、よく出ていて良かった。

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舵取り役の奥村心太郎さんは、下記のとおり、代役として歌われた羊飼い役の声と歌唱がステキだった。

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若い水夫と羊飼いの役で出演予定だった大久保 亮さんが出られなくなり、代わって、水夫を、メーロト役の神田豊壽さんが、羊飼いを、舵取り役の奥村心太郎さんが代演された。特に羊飼い役での奥村さんは、十分聴き応えがあった。

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暗譜で歌った合唱も、マスク着装にもかかわらず、どの場面でもよく声が出ていて、良かった。

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もう一度、オーケストラについて

コンサートマスターの全身を使っての演奏スタイルが素晴らしかった。この力量とセンスが、ヴァイオリン全員にあったら、と、どのアマオケも~いや、日本のプロオケだって~誰しもが思うところだろう。

それでも、この大曲を~2回の30分(ずつ)の休憩があったとはいえ~高い集中力と、心意気のある演奏を披露されたことに、心から敬意を表したい。

とりわけ、第3幕での、あの長大で、何度も出てくるコールアングレのソロを吹いた女性奏者は見事だった。

来年は「ローエングリン」なので、これまた楽しみだ。

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ソリスト

トリスタン:小原啓楼

イゾルデ:飯田みち代

マルケ王:伊藤貴之

ブランゲーネ:三輪陽子

クルヴェナル:初鹿野剛

メーロト&水夫:神田豊壽

羊飼い&舵取り:奥村心太郎

2022年8月27日 (土)

沖澤のどかさん指揮「フィガロの結婚」

セイジ・オザワ松本フェスティバル30周年

沖澤のどかさん指揮「フィガロの結婚」~充実の公演

スザンナのイン・ファンが素晴らしかった。なかなか聴けないレベルのスザンナ。詳細は後述します。

セイジ・オザワ松本フェスティバル(旧サイトウ・キネン・フェスティバル)における「フィガロの結婚」3公演の最終日、8月27日の公演を鑑賞した。会場は、まつもと市民芸術館。私がこのフェスティバルで、この会場に来たのは今回で3回目。

指揮者は、若くして来年4月から、京都市交響楽団の常任指揮者就任が決まっている沖澤のどかさん。演出はロラン・ペリー氏。演出も、とても良かった。これも後述する。

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私のチケットは1階8列だが、6列はオケピットとなっているので、事実上の2列目。ステージを見て最も右の席だったので、ピット内のほとんどと、沖澤さんの右顔からの表情も含めて、終始、指揮を見ることができる席だったのは、ラッキーだった。

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8年くらい前か、当時、私が所属していた合唱団の下振り(練習指導)で来ていた沖澤さんと面識を得、いっしょに帰った電車内で、指揮者について、「一生をかけるに値する仕事だと思います」、と力強く言った、しかし当時は未だ無名だった彼女が、その後、アマオケを中心に多く指揮する機会を得るようになり、2018年に東京国際コンクール指揮部門で1位、翌2019年は、ブザンソン国際指揮者コンクールで1位。2020年には、ムーティのオペラ・アカデミーを受講し、20~21年シーズンは、ベルリンで、ペトレンコのアシスタントを務め、そして、とうとう、旧サイトウ・キネンであるセイジ・オザワ松本フェスティバルにおけるオペラの指揮者として迎えられたことに、偶然とはいえ、デビュー前から彼女を知る者として深い感慨を覚え、颯爽として堂々とした、自信に満ちた指揮を直ぐ近くから見、聴けたことは、とても嬉しかった。

2020年11月の二期会「メリーウィドー」など、数回オペラの指揮は経験があるとはいえ、今回の抜擢は、彼女にとって、大きな自信と財産になったことだろう。

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指揮とオケの演奏は、躍動感があり、若々しく、颯爽としていて、沖澤さんそのもの様だった。

アリアでは、逆にテンポをゆったりとったものが多く、その対比も素敵だった。

例えば、ケルビーノの「恋とはどんなものかしら」や、スザンナの「早く来て、美しい喜びよ」等々。

これは、沖澤さんと歌手たちとの間で、十分な確認と稽古ができている証拠でもある。

サイトウ・キネン・オーケストラは、オペラだから当然、ピットに入れる最少人数による演奏だが、どのパートも、国内外のオーケストラの首席クラスの奏者が集まっているだけに、アンサンブルは申し分なかった。

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歌手の皆さん。まずは、何と言っても

スザンナ役のイン・ファンさん。

パミーナの様な純な声によるスザンナ。そして声量の抜群のスザンナ。それも、特別フォルテで歌う場面でなくとも、あるいは、小声のレスタティーヴォであっても、オケを飛び越えて明瞭に客席に届く声。

加えて気品があるのが素晴らしい。彼女は、今すぐにでも伯爵夫人が歌える声だと思う。「ばらの騎士」なら、ゾフィーも歌えるし、元帥夫人も歌える、そんな感じがしてしまう、実に魅力的で力量のあるスザンナ。こんなに優秀なスザンナは、録音やライヴを含めて、あまり記憶がないほどだ。実に素晴らしかった。

一番出番が多いというだけでなく、ドラマ全体の要になっているという点でも、「フィガロの結婚」の真の主役、あるいは実質的な主役はスザンナだと思う。その点からも、この公演の最大の特色ある成功したキャスティングは、中国・寧波市出身のスザンナ、イン・ファンさんだった。

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フィガロ役のフィリップ・スライさん

外見は真面目そうだけど、歌自体がとても巧いフィガロ。

「もし、踊りをなさりたけば」での、2回繰り返す「Le suonerò,si」の「si」を、1回目は「P」で、2回目を「F」か「FF」くらいで歌い分ける部分など、素敵で見事だったし、「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」では、数小節単位で、トーンやニュアンスを変えて歌うなど、とても魅力的だった。リサイタルやソロアルバムだと「やり過ぎ」の歌唱かもしれないが、これは本番のオペラの舞台なのだ。このくらいやってくれてこそ、聴き応えのあるライヴと言える。

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ケルビーノ役のアンジェラ・ブラウワーさん

とても魅力的だった。美声に加え、部分的にボーイッシュな声も混ぜて歌える人。

「自分で自分がわからない」の終わり近くの、アダージョになった部分での感情移入も見事で、思わず「グッ」と来て感涙したほどだった。

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伯爵夫人のアイリン・ペレーズさん

多面な要素を聴かせてくれたので、どう伝えればよいか、逆に難しい感じがする。

気品というよりは、人間的というか、一人の普通の女性が持つ寂しさが滲み出ていたかと思うと、ケルビーノとの場面では、幸せそうな満面の笑みで演じる。

有名な「あの楽しかった毎日はどこへ」は、感情移入というより、一つの名アリアとして、キチンと歌った、というイメージを感じた。

終わり近く、伯爵の謝罪に対して、ト長調アンダンテで歌い応える、「私は、あなたよりも素直ですから、ハイ、と申しますわ」の場面では、気品があった。

というように、様々な感情の様を見せ、歌ったという印象。

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アルマヴィーヴァ伯爵役のサミュエル・デール・ジョンソンさん

嫉妬深い役柄を巧みに演じたが、もう少し「アク」の強さと声量が欲しかった。

終わり近く、ト長調アンダンテでの「妻よ、許してくれ」という謝罪の場面では、誠実さを感じさて、とても良かった。

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マルチェリーナ役のスザンヌ・メンツァーさん

ベテランのメンツァーさんは、カーテンコールで、他の出演者たちから喝采を受けるなど、ドラマ全体を根底でしっかり支える役として歌い、演じられていた感があった。

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バジリオ役のマーティン・バカリさんは個性的なテナーだった。

バルトロ役のパトリック・カルフィッツィさんとアントニオ役の町 英和さんは、安定感ある歌唱と。ユーモアある演技がステキ。

ドン・クルツィオ役の糸賀修平さんの声は伸びやかに出ていた。

予定されていたバルバリーナ役のシャイアン・コスさんが体調の関係で、カヴァー・キャストを務めていた経塚果林さんが代演し、しっかりと対応されていた。

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合唱

16人の東京オペラシンガーズ中には、テノールの吉田連さん、アルトには成田伊美さんなど、ソロでも活躍されている歌手も多くいて、充実のメンバー。

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演出

最後になってしまったが、演出も舞台設定もとても良かった。

ステージの上に、円形と思われる回転する薄い台を設置し、その上で、建物や人物のやりとりがなされるのだが、どの場面も豪華ではない分、簡素で品があり、効率よく展開がなされる。

幕開きは、出演者紹介の如く、一人一人が円台の縁に立ったまま回転して開始したが、エンディグも同じような演出がなされ、最初と最後を、統一感をもって閉めたのも印象的だった。

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カーテンコール

幕が下り、合唱や歌手たちのカーテンコールが開始されたとき、指揮台を下りた沖澤さんが、オケの多くの奏者と、にこやかに握手して感謝を示していたのが印象的だった。

その後ステージに上がって、オケを称えて起立を促すと、オケは立たずに、まず沖澤さんに対して一斉に拍手を送ったのは素晴らしいシーンだった。その後はもちろん起立して、ほとんどスタンディングオベーション状態の観客の拍手に応じたのだった。

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キャスト

アルマヴィーヴァ伯爵:サミュエル・デール・ジョンソン

伯爵夫人:アイリン・ペレーズ

スザンナ:イン・ファン

フィガロ:フィリップ・スライ

ケルビーノ:アンジェラ・ブラウワー

マルチェリーナ:スザンヌ・メンツァー

バルトロ:パトリック・カルフィッツィ

バジリオ:マーティン・バカリ

ドン・クルツィオ:糸賀 修平

バルバリーナ:経塚果林

アントニオ:町 英和

2022年8月20日 (土)

森谷真理さんが歌う「ヴォツェック」より    3つの断章

東京交響楽団の第702回定期演奏会を8月20日夜、サントリーホールで聴いた。

指揮は、ペトル・ポペルカ氏。プラハ生まれ。2010~2019年、ドレスデン・シュターツカペレでコントラバスの副首席奏者を務める中、2016年から指揮活動を開始した、というから、指揮者としてはまだ「駆け出し」だが、既にウィーン・シンフォニカーやゲヴァントハウス管等、欧州の多くのオケに客演し、来月9月からは、プラハ放送交響楽団の首席指揮者兼芸術監督に就任予定、とのこと。

この日も、オケを解り易く牽引する大きな身振りと細かな「振り」は、なかなか良かった。

演奏曲は、

1.ウェーベルン:大管弦楽のための牧歌「夏風の中で」

2.ベルク:歌劇「ヴォツェック」から3つの断章

3.ラフマニノフ:交響的舞曲

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まずは、ベルクから書きたい。

先週の水戸での森谷真理さんリサイタルは、急用で行けなかったが、それでも、私が今年、彼女を聴くのは、これで7回目。

そして、この3年間で、彼女が歌うアルバン・ベルクの作品を聴くのは3回目。

1回目は、コロナ禍元年の2020年7月。その11日には本来、二期会「ルル」が上演される予定だったが、延期となり、代わりに、「東京二期会スペシャル・オペラ・ガラ・コンサート」が同日、沖澤のどかさんの指揮で行われ、森谷さんは、ベルクの歌劇『ルル』より「ルルの歌」を歌われた。

2回目が、正に延期公演となった翌2021年8月の二期会の「ルル」。そして、この日が、森谷さんが歌うベルク作品の3回目の拝聴となった。

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ちょうど100年前の1922年に「ヴォツェック」を完成したベルクだったが、なかなか演奏する機会が無い中、ヘルマン・シェルヘンの提案で、抜粋組曲(いわばデモンストレーション的作品)として編曲した作品が「3つの断章」。

第1曲は第1幕第2場と3場から、第2曲は第3幕の第1場から、第3曲は第3幕の第4場と5場からそれぞれ転用して構成。1924年6月11日に、シェルヘンの指揮で初演されている。

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先日の「イゾルデ」や、「4つの最後の歌」のようなゴージャスなオーケストレーションと違い、ベルクは、結果的には、歌手を全く邪魔することのない、ある種、歌とは無関係の様な、乾いた、無機質で、「mf」や「mp」の音量による楽器音が散りばめられている中を、抜群の声量の森谷さんが歌うのだから、「サスガの圧巻」と言える歌声を堪能できた。

これは、トッパンホールでのヴェルディ特集のデュオ・リサイタル以来の、「これぞ森谷さん」と言える歌声だったし、言うまでもなく、無調(あるいは、それに近い)旋律をいとも容易(たやす)く、と言えるほど、余裕しゃくしゃくで歌うその技術にも、あらためて感心した次第だった。

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前後するが、1曲目は、アントン・ウェーベルンの「夏風の中で」という、なんとも素敵なタイトルの曲。

ブルーノ・ヴィレの詩からイメージした短い交響詩。1904年、23歳のときの作なので、後の12音技法に入っていく以前の、後期ロマン派のテイスト感たっぷりの、しかし割と素朴な曲。

私はスコアも持っているが、シンプルな作品なので、これを「ウェーベルンにしてはステキと感じるか、退屈と感じるか」は、意見が分かれるだろう。

私はこれまでは後者だったが、今回は楽しめた。

それは多分、指揮者のポペルカさんが、「静」の部分(場面)を、極めて丁寧に、精緻に表出していたからと思う。「叙情の徹底さ」と言えるような、誠実で静謐な世界が描かれていて、なかなか良かった。

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休憩後の後半は、ラフマニノフの「交響的舞曲」。

7月に、小川典子さんとラシュコフスキー氏による、2台のピアノ演奏で聴いたばかりだが、オーケストレーションなので、当然、色彩が多様となり、曲から受ける印象は全く違った。

第1楽章は、サクソフォンの旋律、演奏が印象的だった。

第2楽章は、冒頭の管楽器による和音が印象的だし、オーボエによる旋律も魅力的だった。

惜しいのは第3楽章。色々盛り込みすぎというか、構成も曲想も散漫な印象を受けた。最後のドラのロングトーンは印象的だったけれど。

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日本のオケも外国のオケも、マンネリのプログラムが圧倒的に多い中、しかも、日本デビューのコンサートにもかかわらず、こうした、比較的マイナーな曲を揃え、立派な指揮による演奏をされたポペルカさんに、心から拍手を送りたい。今後が楽しみだ。

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