2020年5月12日 (火)

F

後日記載します。

2020年4月 1日 (水)

公演中止情報が続く寂しさ

オペラ歌手やピアニスト、オーケストラ等のプロ音楽家からの公演中止情報がたくさん続いているのが寂しい、というか悲しい。4月の新国立劇場での公演に出演予定だったKさんが中止情報アップの中で、残念でしながらも、「命あってのこの人生、この劇場の決断に納得しております」、と書かれているが、これを「そうですね」などと額面どおり受け取るほど、私はノーテンキな人間ではない。

アーティスト個人としても、あるいはオペラやオケ等のアンサンブル公演の場合は、出演者全体としても、何度もリハを積みあげてきたはずだ。どれほどの悔しさがあるか、察して余りある。単に完成披露や精神面のことだけでなく、当然収入の問題にも直結している。プロ音楽家にとって、アマチュア活動者が受けるショックの比ではない。

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プロに関しては4月だけでなく、5月の公演の中止や延期情報も出ているし、アマチュアのオーケストラや合唱では、5月どころか6月の演奏会の中止情報も出始めている。いったい係る状況がいつまで続くのだろうか?

「しかたないだろ。家でCDや、昨今流行りのライブ中継配信で楽しめばよいだろ」という人は、音楽ファンであっても、音楽家ファンではないのだろう。

プロアマ問わず、劇場で、直接、音楽に接することができる日が早く来ることを望む。

 

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参考情報

日本クラシック音楽事業協会が要望書を提出

「2月26日のイベントの自粛要請以降、3月13日までの2週間に、中止したクラシックコンサートは全国で523公演。損害は推定で24億円を超える。219の公演延期も決まっている」

「クラシック音楽の事業者は規模の小さな企業が多く、経営面での被害が甚大で、演奏家も収入の道を絶たれるなどかつてない困難に直面しており、同協会は16日、文部科学大臣と経済産業大臣あて、コンサート中止で発生した損害の補償や、無利子での融資など救済策を講じるよう要望書を提出した」、とのことです。

クラシックファンも「無観客でもライブ配信という試みは素晴らしい」と、ライブ配信を単純に喜んでいるだけではダメだと思います。そろそろ「普通の公演実施」に向けての機運を盛り上げ、応援していきたいですね。

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20200316/1000045587.html?fbclid=IwAR12LcFdvMie-Mt5U2v01p4ilg5wmkNj0GwcMklb049ZOWTiYYEZoI7SVfE

 

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もう1つ、以下、参考として、少し古い情報ですが、中止や延期公表が急増し始めた2月25日時点における情報を記します。

2月25日におけるご参考情報~2月27日~3月中旬(or以降)の 実施、延期、中止の公演

お読みいただいている皆様、いつもお世話になっております。

新型肺炎で社会不安が生じていますが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。ご承知のとおり、イベントの中止が激増していて、クラシックコンサートも例外ではありません。文化的なダメージだけでなく、プロの音楽家には収入(生活)にからんでくるわけですから深刻です。やむを得ない状況とはいえ、自粛のまん延もいかがなものかと思います。

そこで、東京、神奈川、埼玉等のクラシックの公演で、実施、延期、中止の公演について、私が気が付いた範囲でまとめてみました。もちろん実際はこの数十倍、数百倍あることでしょう。皆様の友人知人が出演予定だった公演で落ちているものも多々あるかと思いますが、お許し願います。なお、「実施」はそれを表明している団体を記載し、不明な公演は除いています。

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【当初の予定どおり実施】

東京混声合唱団、横浜合唱協会ロ短調ミサ、山形交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本オペレッタ協会「マリツァ」、四谷区民ホール オペラわが町、大震災復興支援コンサート「メサイア」(紀尾井)、第9回耕友会コンサート「戦争レクイエム」、アマデウス・ソサエティー管弦楽団、東京ユニバーサルフィルハーモニー管弦楽団、オーケストラ・エレティール、紫苑交響楽団、KAJIMOTO主催の公演全般、ジャパン・アーツ主催公演、アンサンブル・フェリーチェ【出演者に応じて開催】宗次ホール

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【延期】

宮田大&田村響ベートーヴェン チェロ・ソナタ全曲演奏会(第2回)、渡海千津子ソプラノ リサイタル、関西歌劇団創立70周年ガラコンサート、Beethoven生誕250年記念『若きベートーヴェン』(取手市民会館)、ヴェルディ・プロジェクト・ジャパン、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ、金沢区民フィルハーモニーオーケストラ、宮城教育大学交響楽団、音楽がヒラク未来、熊本シティオペラ協会スプリング オペラコンサート、幸田浩子ミニコンサート&サイン会、佐野成宏デビュー25周年記念コンサート、西本真子ソプラノ リサイタル、高橋悠治 ピアノ・リサイタル

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【延期の含みを残した中止】

水戸芸術館での公演、「シッラ」を含む神奈川県立音楽堂公演、長崎マダム・バタフライ・フェスティバル

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【中止】

ワシントン・ナショナル交響楽団来日公演、IL DEVU静岡AOI初場所、びわ湖ホール「神々の黄昏」他、東京・春・音楽祭「マクベス」他、エーテボリ交響楽団来日公演、神奈川フィルハーモニー管弦楽団第357回定演、同オケ フレンズ ベストミュージックコンサート、日本フィルハーモニー交響楽団第718回定演他、群馬交響楽団、洗足学園「魔笛」を含む公演、ソニー音楽財団 災害復興支援プロジェクト小・中・高校生とともに贈る「第九」チャリティ・コンサート、東京オペラ・プロデュース、新国立劇場オペラ研修所修了公演「フィガロの結婚」、二期会オペラ研修所第63期マスタークラス終了演奏会、京都市交響楽団、テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ、めぐろパーシモンホール東日本大震災復興支援コンサート、加耒徹&瀬川玄デュオコンサート、彩の国さいたま芸術劇場、愛知県立芸術大学管弦楽団&名古屋フィルハーモニー交響楽団合同演奏会、足立シティオーケストラ、クァルテット・エクセルシオ、若手ソリストガラ・コンサート(藤沢市)、中部フィルハーモニー交響楽団、東京アマデウス管弦楽団、パイオニア交響楽団、第6回子ども音楽祭in相馬、第5回北海道少年少女オーケストラフェスティバルin札幌、練馬交響楽団スプリングコンサート、コロンえりかソプラノ・リサイタル、合唱団向日葵の会、東京六人組、劇団四季、「ひとこいちどり」、Harmony for Japan、山田姉妹

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2月23日…世田谷フィルハーモニー管弦楽団、SAMPOフィルハーモニー管弦楽団、リコーフィルハーモニーオーケストラ

世田谷フィルハーモニー管弦楽団  2月23日 第九他~昭和女子大人見記念

SAMPOフィルハーモニー管弦楽団 2月23日 悲愴他~すみだトリフォニー

リコーフィルハーモニーオーケストラ2月23日 展覧会の絵他~ミューザ川崎

足立シティオーケストラ 3月1日 ブラームス1番他~西新井文化ホール

追記

実施

ユーゲント・フィルハーモニカー 第14回定期演奏会、ヘンデル『メサイア』~小平コーラス・アカデミーフレンドリーコンサート~、上野の森交響楽団、フィガロの結婚(日暮里サニーホールホール)

ここから転じて結局中止

延期

ニューシティオーケストラ第76回定期演奏会、

中止

早稲田大学交響楽団 第206回定期演奏会

 

新型コロナ対策でライブの延期・中止相次ぐ

福山雅治、星野源、EXILE、米津玄師、Perfume等々

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200226-00000332-oric-ent

2020年2月29日 (土)

横浜合唱協会 バッハ ロ短調ミサ

新型コロナウイルスで中止や延期が相次ぐ中の29日午後、横浜合唱協会の第70回定期演奏会を聴きに横浜みなとみらいホールに出かけた。1970年にバッハを中心とした古典曲を歌うことを目的に創立された合唱団。その創立50周年記念演奏会のプログラムはJ・S・バッハのミサ曲ロ短調。「ロ短調ミサ」だ。指揮はドイツで学び、2018年6月からこの合唱団の指揮者を務めている柳嶋耕太さん。

実は午後一番で急用が生じたため、休憩後の第2部「Symbolum Nicenumニケア信条」からの拝聴となってしまったが、それでも行った甲斐のある、素晴らしい演奏会だった。

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その第2部第1曲=通番第10曲「Credo in unum Deum」、テナーパートによる開始直後に、優秀な合唱団であることが分かった。全く力みの無い柔らかなトーン。それが各パートに移っていっても同様に続いていく。なお、配置は男女が2つに分かれてはおらず、男性が女性の後に立つ。それも(多分)ソプラノの後ろにテノール、アルトの後ろにバス。しかも後半は第4部で二郡=8重唱の合唱となるので、指揮者を挟んで左右に2セット「まばらな配置」として歌った。

一歩間違えると、声量が分散して弱くなり、アンサンブルも統一感に問題が生じかねないが、この合唱団はそんなことはなく、各パートがクリヤーに、声量も十分に聴こえてきた。一人ひとりの力量が高いのだろう。優秀な合唱団だ。人数はソプラノ=29名、アルト=25名、テノール=16名、バス=12名。

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私が所属する合唱団も来年5月に演奏するので、「難所」は承知している。前半にも後半にも16分音符や8分音符で細かく動く、いわゆるアジリタが、パートのソロとして出てくるから大変だ。

それでも第15曲「Et resurrexit」での各パート、特にバスのソロパートは安定感あって立派だったし、18b.「Pleni sunt coeli」と2群8重唱の第19曲「Osanna in excelsis」も良かった。

むしろ、ゆったりした曲である第13曲「Et incarnatus est」では部分的に音程が若干甘くなり、この第13曲がいかに難しいかを私自身実感した。

ソリストも一緒に加わっての終曲「Dona nobis pacem」が終わってからの、聴衆の長い沈黙もとても良かった。ここ数年になって、よくやく~オケの演奏会も含めて~余韻を持って終わる曲の場合、直ぐに拍手が起きず、聴衆も余韻に浸る演奏会が増えてきたのは嬉しいことだ。

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ソリストは以下のとおりで、皆さん安定して良かったが、特にアルトの小川明子さんによる、有名な第22曲「Agnus Dei」の歌唱が祈りのような情感と「しっとり感」が素晴らしかった。

管弦楽のオルケストル・アヴァン=ギャルドの演奏も素敵で申し分なかった。

指揮の柳嶋さんはドイツで合唱曲を中心に研鑽してきただけに、入念にして誠実な指揮で、とても良かった。

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何回かのカーテンコールの後、柳嶋さんが挨拶。「こういう状況なので、演奏会をやるのも地獄、止めるのも地獄。中止の演奏会が多い中、開催か中止か、正解と言うのは(どちらにも)ないと感じる。来場を迷われた人もいたでしょうけれど、今日は来ていただき、感謝します」という主旨で、当然ながらマスク姿一色の会場からは大きな拍手が起きた。

事前にチケットは満席に近く売れていたそうだが、会場は半分以下の入りだった。しかし、私もオーケストラと合唱のいずれも演奏者として経験して来ているから解るが、「たとえ少ないお客さんでも、こういう状況下にもかかわらず、来場してくれたお客さんに心から感謝したい」と出演者全員が思ったに違いない。

そういえば、19日の東京文化会館での二期会「椿姫」初日終演後、主役の大村博美さんは、「客席はマスク一色だったけれど、それでも皆さん来てくださったんだ」と感慨深く語ったそうだ。

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聴衆だってある意味「リスクを承知で」出かけるわけで、演奏者も「開催か中止か、正解と言うのはない」し、聴衆も「行かない選択もありだし、聴きに行く選択もあり」という点では同じだ。その点においても、「特別な感慨を抱いた演奏会」という点で、ステージも客席も忘れられがたい共生感を抱いたコンサートだったと言える。

プロの指揮者や演奏家でも「満員の客席」を求める人もいるようだが、音楽はそんなものではないだろう。演奏者と聴衆は「一期一会」であり、体験の共有という共生感、そこから聴衆は何を感じたかが重要であり、演奏者は聴衆の人数にかかわらず、伝えたいことを伝えるという演奏行為自体が重要なのだ。

柳嶋さんの挨拶の後、もう一度終曲「「Dona nobis pacem」がソリストを含めた全員で演奏された。このときは2回目だし、お祝いの雰囲気にもなっていたので、比較的直ぐに大きな拍手が沸き、とても良かった。

忘れがたい素敵なコンサートに感謝したい。

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ソリスト

ソプラノⅠ=中山美紀、ソプラノⅡ=鈴木美登里、アルト=小川明子

テノール=谷口洋介、バス=青山 貴

http://ycs.gr.jp/concert/

2020年2月19日 (水)

椿姫~大村博美さん

後日記載します。

2020年2月17日 (月)

ラ・ボエーム~鷲尾麻衣さん~甲府市

「ラ・ボエーム」in 甲府市~鷲尾麻衣さんのミミ、田尾下哲演出他について

「ラ・ボエーム」を観、聴くたびに「なんというオペラだろう」と思う。わずか2時間ほどの中に、多くの要素が織り込まれて展開する。第1幕の恋の芽生えから一転して全然別の賑やかな展開の第2幕。このオペラの核心にして白眉の第3幕。割と雑多な展開が、急激に悲劇に転じるエンディグの第4幕。最後はどう終わるかなど百も承知で、解りきっているのに、それでも毎回感涙を禁じ得ないエンディング。このファンタジーとシリアスが同居するデリケートなオペラには、仮に気に入らない演出がなされようとも、そんなものには全く動じない「強靭さ」も内在するのだ。

16日午後、甲府市のYCC県民文化ホール(山梨県立県民文化ホール)でプッチーニの「ラ・ボエーム」を観、聴いた。第1713回トヨタコミュニティコンサートin山梨という公演で、山梨交響楽団特別演奏会という公演でもある。

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聴きに行きたいと思った理由は鷲尾麻衣さんがミミ役を歌うから。2年前、水戸で行われたトヨタコミュニティコンサートの「ラ・ボエーム」は、三ツ橋敬子さん指揮の茨城交響楽団での演奏で、そのときもミミ役は鷲尾さんだったが、私は大学オケの同期会と重なり、その会での演奏の際の指揮と編曲も担っていたので、残念ながら水戸公演を聴けなかったから、今回を楽しみにしていた。なお、今回の公演で水戸公演と同じキャストは鷲尾さんの他、ムゼッタ役の高橋 維さん、マルチェッロ役の加耒 徹さん、ショナール役の近藤 圭さん。

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開始前、音楽監督の三枝成彰さん、山梨出身の作家 林 真理子さん、演出の田尾下 哲さんによるプレトークがあり、今回、田尾下さんが行うオペラにおける、いわゆる「読み替え」を中心に会話がなされた。

オペラ演出の「読み替え」は絶えず批判とリスクを伴いがちだ。オペラの演出は難しい。「オペラ演出家は歌手のレベルアップに追い付いていない」が私の見解。

とりわけ、シンプルさこそ作品が最も生かされると思える「ラ・ボエーム」の演出は、読み替え自体を拒否するかの自立性がドラマ自体に在る。

「ばらの騎士」で見事な成功を収めたホモキでさえ「ラ・ボエーム」では失敗していた。

では、今回の田尾下演出をどう感じたか、は下記順次述べたいが、読み替えの主な点をまず述べておくと、第3幕が終わり、第4幕に入る前、この間は(原作の3か月ではなく)5年間の空白があると設定し、マルチェッロは映画監督として、ロドルフォは脚本家として成功を収めており、映画「ミミ」を完成、上映させた、という挿入劇を入れたこと。

そして、それに関連して、第1幕冒頭に主要なメロディをオケが奏でる中、映画「ミミ」は完成したが、「これまで色々あったな」という感慨にふける中、第1幕が開始される、というもの。

これらの感想は後述する。

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歌手の皆さんについて

鷲尾麻衣さんにミミで今回はっきり気が付いたが、ストレートな歌声だけでなく、歌声自体に「はかなげ感」、哀愁感、寂しさ漂う要素がある、ということだ。ゆえに、ミミのイメージにとても合っていたる、と感じた。言うまでもなく美貌だし、その姿と演技もとても良かった。

とりわけ、第3幕での感情移入、第4幕での(ベッドではなく)ステージに長く横たわりながらの歌唱は、そんな姿勢からとはとても思えないほど、声がよく出ていて見事だった。

写真は終演後の楽屋前。終演直後ではバタバタして大変だろうと思い、だいぶ経ってから楽屋に行ったので、当然ながら既に軽装に着替えられてのツーショット写真。ここ10年ほどの鷲尾さんの「進化」は実に素晴らしい。

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ロドルフォ役の山本耕平さんが絶好調で、これまでガラコンサートでのアリア等、5回以上は聴いていて、必ずしも絶賛したくなるほどの印象は受けなかったのだが、私が拝聴した山本さんの中で、この日の内容が最高に良かった。美声にして、音響の良いとは言えない大ホールのステージにあっても、よく響く豊かな声量を披露されていて素敵だった。

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ムゼッタ役の高橋 維さんも絶好調。山本さん同様、数回聴かせていただいているが、今までの私の印象では、声がやや細く、表現しきれていない感じがした記憶があったが、この役はたぶん彼女を最も魅力的にアピールできる役だな、と思った。鮮やかな歌い回しの技術が冴え、演技も「成りきり感」が見事。第2幕素晴らしかったのは当然だが、第4幕でのミミへの友愛もよく感じさせるセリフと歌唱だった。終演後、楽屋近くで見かけたので、「ブラーヴァでした」と伝えた。

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ありがちなマルチェッロの役柄のイメージと違うような印象を受けた加耒 徹さん。加耒さんはたぶん10回前後拝聴していて、鷲尾さんに次いでたくさん聴かせていただいているが、加耒さんの個性と、マルチェッロの役のイメージが私の中では違っていたが、その違うという面白さが有り、かえってその普通な感じが芸術家を目指す青年というキャラクターをよく伝えていたと言える。

ショナール役の近藤 圭さんもこれまで数回拝聴してきたが、今回が一番感心した。とても良い声。

コルリーネ役の加藤宏隆さんは、第4幕の有名な「外套の歌」で威厳的風格だけでなく、高音が柔らかく素敵だった。

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オーケストラ等について

山梨交響楽団は初めて聴いたが、とても上手いオケ。全く申し分なかった。児童合唱も可愛らしかったし、よく歌っていて、とても良かった。

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演出について

第1幕の冒頭は先述のとおり、オリジナルにない「付け加え」により開始された。しかしこれだと、初めてこのオペラを観た人は、こういう美しくも回想的な音楽と設定で開始されるのか、と誤解するし、本来の冒頭の、起動的、躍動的な開始の斬新さが薄れるので、私は感心しなかった。

良かったのは第3幕。第3幕はこのオペラの核心にして白眉だが、この日の演奏も全体的に素晴らしく、演出もシンプルで美しかった。

第4幕での演出は最後がガッカリ。せっかくの悲劇的設定が、映画に関係した写真撮影(カメラフラッシュ)の多用により「邪魔」されてしまい、劇的要素が希薄になる感がした。

数年前に日生劇場で観た「フィデリオ」を思い出す。あれも(違う演出家だが)、それまではなかなか良い演出で進行して来たのに、最後の最後で子供っぽい設定がなされ、ガッカリしたし、実際、ブーイングも起きた。

この日のカーテンコールでは、なぜか三枝さんがステージに上がったが、肝心の田尾下さんは結局出て来なかった。拍手喝采で迎えられたか、それともブーイングが出たかは、結局判らないまま終わったのは残念だし、「ズルイ」と思う。オペラのカーテンコールで演出家が登場しなかったシーンは私はほとんど記憶が無い。

そうした「中途半端な演出」であっても、プッチーニによる音楽の魅力と原作の見事さに、いつもながら感涙を禁じ得ないラスト10数分ではあった。

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指揮:高井優希

演出:田尾下 哲 音楽監督:三枝成彰

ミミ:鷲尾麻衣

ムゼッタ:高橋 維

ロドルフォ:山本耕平

マルチェッロ:加耒 徹

ショナール:近藤 圭

コルリーネ: 加藤宏隆

ベノア&アルチンドロ:晴 雅彦

パルピニョール:根岸香苗

管弦楽:山梨交響楽団~ゲスト・コンサートミストレス:山下有紗

合唱:梨響コーラス

児童合唱:梨響ジュニアコーラス

合唱指導:依田 浩、雨宮由佳、根岸香苗

バンダ:山梨県立甲府第一高校応援団吹奏楽部

2020年2月14日 (金)

大槻孝志さん&小林由佳さん in HAKUJU

大槻孝志さん&小林由佳さん「コスモポリタンな音楽晩餐会」

14日(金)夜、テノールの大槻孝志さんとメゾソプラノの小林由佳さんによる「五感で愉しむ音Bistro♪~『コスモポリタンな音楽晩餐会』」と題されたコンサートをHAKUJUホールで聴いた。これは同ホール主催Hakujuサロン・コンサート-Vol.5-でもある。

素晴らしいコンサートだった。企画の素晴らしさと演奏の素晴らしさの完全合体。面白さ楽しさとハイレベルの合体。前半は2人がシェフ衣装で、「前菜~日本」、「副菜~ドイツ」、「主菜~イタリア」として、それぞれの国の合計12の歌曲が歌われ、2曲のピアノ曲が演奏された。ピアノは松本和将さん。

休憩に入る前は、「お口直しタイム」と題して、「後半は着替えるので、(この姿の)客席からの写真撮影OKです」とし、後半登場するヴァイオリンの上里はな子さんを加えた4人が用意したプレゼントを、4人がクジ引きして(席番号)当たった来場者にプレゼントするというコーナーが設けられた。これもユニークな設定の1つ。

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休憩後の後半は、ヴァイオリンの上里はな子さんが加わり、「各国ア・ラ・カルト」として<フランス>.<ロシア>、<スペイン&アルゼンチン>、<アメリカ>として、歌曲、ヴァイオリン曲等、合計11曲が演奏された。

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大槻さんの声は正統派テナーの美声だが、太さというか「芯」のある声が、詩の中身と融和して響き、客席に真っ直ぐに伝わってきて素晴らしい。ヴォルフでのドイツ語の発音の明瞭さ、リストでのイタリア語での温かさ、ドビュッシーとプーランクでのフランス語のニュアンス感の素晴らしさ。

迫力ある声量という点では、ラフマニノフの「歌うな、美しい人よ」が圧巻だった。この日の白眉と言える。

そして、どうしても歌いたかったという「ポル・ウナ・カベサ」では迫力だけでなく、「この歌が大好きでたまらないのです」という気持ちがストレートに伝わってきて感動的だった。歌われる前の、作曲者ガルデルに関しての解説も勉強になった。

曲での「発見」はラフマニノフの他、ドビュッシーの「星の夜」がとても気に入った。素敵な曲だ。

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何度も聴かせていただいている小林由佳さんは、メゾといっても明るいトーンで、ソプラノに近い印象をいつも受ける。なので、マスカーニの「アヴェ・マリア」では余裕の歌い回しだったし、「忘れな草」での最後のロングトーンは素晴らしく、大きな拍手が起きた。

私がこの日、由佳さんの歌で「最高」と感じたのは「グラナダ」。歌う前、由佳さんは「テノールとの(一緒の)コンサートで、私が歌うのもどうかと思いますが」と聴衆を笑わせたが、どうしてどうして、テナーソロにも負けない魅力的な歌唱だった。以前も拝聴したことがあり感心したが、今回はとりわけ見事だった。

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正規プログラム最後の「スマイル」の前、大槻さんから「チャップリン好きだ」として~私も大好き~チャップリンが社会問題を題材に映画を創ったこと、楽譜は読めなかったが、美しい音楽を作曲したこと等の紹介があったのが良かったし、演奏も、森田花央里さんのアレンジも含めて、とても良かった。

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ここで、「前菜」の日本語歌曲についても少し触れたい。前述では全く触れていないのには理由がある。今回も、大槻さん、小林さんという名歌手をもってしても、いや、優秀な歌手であるからこそ余計に感じたのは、「西洋の曲での発声により日本語歌曲歌うときの難しさ」というような事だ。違和感とまでは言わないが、聴いていてどうしても「難しそうだな」と感じてしまう。明瞭で朗々と歌う発声と、日本語の持つ内省的な質感との融合、というような点に難しい問題があるのかもしれない。この点に関しては、私自身、もっと勉強し、考えていきたい点でもある。

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ピアノの松本和将さんは久々に聴いたが、リズム感の素晴らしさと音量の充実度が素晴らしく、躍動感があって見事だった。ソロでは特に「リゴレット・パラフレーズ」での技巧冴えわたる圧巻だったし、「ポル・ウナ・カベサ」では、良い意味での「伴奏を超えた演奏」で大槻さんを引き立てたのだった。

ヴァイオリンの上里はな子さんは初めて聴いたが、端正にしてツボを押さえた立派な演奏だったし、とりわけ、「ポル・ウナ・カベサ」とアンコール「蘇州夜曲」での抒情性が良かった。

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そのアンコールは「コスモポリタン」を継続し、「蘇州夜曲」が4人全員で演奏された。演奏前には、大槻さんから李香蘭(山口淑子)さんとこの曲のことが紹介された。演奏は「しっとり感」と素晴らしく、森田花央里さんのアレンジも素敵だった。

こうして、ゴージャスにして盛りだくさんの、休憩含めて2時間30分近い、充実したコンサートが終わった。素晴らしかった。

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演奏曲

~前菜~ <日本>

1.おんがく~木下牧子作曲 詩=まど・みちお by 小林さん

2.竹とんぼに~木下牧子作曲 詩=岸田衿子 by 小林さん

3.川~信長貴富作曲 詩=谷川俊太郎 by 大槻さん

4.月の光に与えて~木下牧子作曲 詩=立原道造 by 大槻さん

~副菜~ <ドイツ>

5.シューマン歌曲集「ミルテの花 op.25より第9曲“ズライカの歌”

by 小林さん

6.シューマン「リートと歌」第2集op.51より第5曲“愛の歌”

by 小林さん

7.ピアノソロで シューマン「子供の情景」op.15より

第1曲“見知らぬ国と人びとから” by 松本さん

8.ヴォルフ「メーリケ詩集」より第9曲“つきることのない愛”

by 大槻さん

9.ヴォルフ「メーリケ詩集」より第36曲 “さようなら”

by 大槻さん

~主菜~ <イタリア>

  1. ピアノソロで リスト「リゴレット・パラフレーズ」

S.434 / R.267 by 松本さん

  1. マスカーニ「アヴェ・マリア」 by 小林さん
  2. ドナウディ「限りなく優雅な絵姿」 by 大槻さん
  3. デ・クルティス「忘れな草」 by 小林さん
  4. リスト「私はこの地上で天使の姿を見た」 by 大槻さん

~お口直しタイム~として、写真撮影自由の、

出演者4人が用意したプレゼント抽選コーナー

(休憩)

~各国ア・ラ・カルト~

<フランス>

  1. ヴァイオリンソロで マスネ「タイスの瞑想曲」 by 上里さん
  2. ドビュッシー「星の夜」 by 大槻さん
  3. サティ「あなたが欲しい(ジュ・トゥ・ヴ) by 小林さん
  4. プーランク「モンパルナス」 by 大槻さん
  5. プーランク(編曲=森田花央里)「愛の小径」

by 小林さん&上里さん

~<ロシア>

  1. ヴァイオリンソロでクライスラー「愛の悲しみ」by上里さん
  2. チャイコフスキー「6つの歌」op.6より

第6曲 “ただ憧れを知る者だけが” by 小林さん

  1. ラフマニノフ「6つの歌」op.4より

第4曲 “歌うな、美しい人よ” by 大槻さん

~<スペイン&アルゼンチン>

  1. ララ「グラナダ」by 小林さん
  2. ガルデル(編曲=森田花央里)

「ポル・ウナ・カベサ」 by 大槻さん&上里さん

~<アメリカ>

  1. チャップリン (編曲=森田花央里)

「スマイル」by 大槻さん&小林さん&上里さん

アンコール;蘇州夜曲~4人全員

2020年2月12日 (水)

ミレッラ・フレーニさんを悼む

フレーニさん追悼

Verdi: Otello / Vickers · Freni · Karajan · Berliner Philharmoniker

https://www.youtube.com/watch?v=1_fJq5kItxg

 

フレーニさん追悼

Vissi d'arte - Mirella Freni, Tosca

https://www.youtube.com/watch?v=9QlnFR6PwrI

 

フレーニさんのミミ~カラヤンとのコンサート形式での歌唱

フレーニさんはある種絶対的なレベルでのミミ像を創り上げてしまった。それでも、たぶん彼女は「どう、こんな風に歌える?」などとは問わず、「若い皆さん、どんどん私を飛び越えて来て」と天国からエールを送っているかもしれない。

それにしても、そのハードルはあまりにも高い。合掌。

Mirella Freni: Mi chiamano Mimì (La Boheme, G.Puccini)

https://www.youtube.com/watch?v=GI5TovjByB0

 

フレーニ来日公演

Mirella Freni: Opera arias (Tokyo)

https://www.youtube.com/watch?v=rAbN5NW5eR0

 

La Boheme 2 - Mirella Freni sings "Si mi chiamano Mimi", Scala, 1965

https://www.youtube.com/watch?v=yTagFD_pkNo

 

2020年2月 8日 (土)

清水 梢さん&小倉貴久子さん~シューベルティアーデ

清水 梢さん&小倉貴久子さん~シューベルティアーデ in 横浜

~バロック的な声の響による瑞々しいシューベルト&温かなでアットホームなひととき~

バッハ・コレギウム・ジャパンの声楽メンバーで、ソリストとしても活躍中のソプラノ 清水 梢さんと、フォルテピアノの奏者として有名な小倉貴久子さんによる「SCHUBERTIADE in YOKOHAMA」と題したリサイタルを8日夜、横浜みなとみらい小ホールで聴いた。主催はシューベルティアーデ企画委員会。

演目は以下のとおりだが、全シューベルトといっても歌曲だけではなく、間に、小倉さんのソロのよる「即興曲」の4曲を織り交ぜ、また、朝岡聡さんのMC解説を交えてのものなので、休憩を含めて2時間30分近くに及ぶ充実した内容だった。

プログラムによると、きっかけは、小倉さんが2018年に銀座で、今回も使用するヨハン・ゲオルグ・グレーバーによる1820年製作のフォルテピアノを演奏するのを清水さんが聴いて感動し、温めていた企画だったとのこと。

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「シューベルティアーデ」とは言うまでもなく、シューベルトが友人たちを自宅に招いて開催していたサロン・コンサートのこと。最近は知らないが、以前は中学校の音楽の教科書などにも、シュヴァントという人が描いたシューベルティアーデの様子を伝える絵が掲載されていたから、「ああ、ああいう感じをコンセプトとして企画したコンサートなのだな」と想像していただけるかもしれない。

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まず、小倉さんの見事な演奏から書くと、即興曲第2番の流麗で瑞々しく弱音主体で流れる技術、第3番の「ああ、なんて良い曲だろう」と思わせてくれる端正にして入念な演奏、第4番の集中力等、ソロはもちろん、歌曲でも、歌手を引き立てながらの、丁寧で控え目ながらも淀みの無いアプローチによるサポートだったし、「さすらい人の夜の歌」での最後のフォルテピアノによる短い後奏は、弱音極まりない静謐さで見事だった。

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清水さんのバッハを含めたバロック曲、特に高音域での透明感ある伸びやかに広がる格調高いピュアな歌声は比類ないほど美しいが、彼女自身がプログラムの寄稿しているように、ドイツ歌曲自体、これまでほとんど歌ったことがなく、自身「不器用」として、バロック以外の曲に対応して発声を変えることに一定の期間を要するとされているし、歌曲という「詩」の内容を考え、フォルテピアノの響やニュアンスに対応するなど、今回の課題は多かったようだ。

なるほど、いわゆるオペラ歌手によるリートでの感情移入とはまた違った内容ではあったが、彼女のボーイソプラノにも似た清らかなトーンゆえ、大人のシューベルトというより、少年シューベルトが抱いたであろう恋心や信仰心を聴衆に想起させるようでユニークだったし、十分素敵な歌唱だった。

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仮に音程が完璧ではなく、ややハマり損ねた部分があるとして、オペラ歌手なら、ヴィブラートで(誤魔化すというのは不適切な表現にせよ)「調整」できることも多いと想像するが、彼女のトーンは元来ヴィブラートが皆無に近いほど少ないので、その「調整」が難しい。言い換えれば、温かさと清楚な歌声の裏側には、「逃げ」の効かない「一発勝負的なスリリングさ」も常に内在している、と言えるかもしれない。

聴く側のそうした想像力も、彼女を応援する気持ちに変換される、そういう要素と魅力を持つ歌手だと思う。

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清水さんのバロック的色彩のトーンは、ホールにいながら教会の空間を想像させもし、また同時に、彼女や小倉さんを応援する聴衆を交えた客席とステージが、さながら「シューベルティアーデ」のような温かでアットホームな雰囲気を終始保っていたことも、とても印象的だった。

厳寒の中の、とても心温まる素敵なコンサートだった。

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演奏曲

1.「秘めごと」 D.719

2.4つの即興曲より第1番 ハ短調 D.899

3.「月に寄せて」D.193

4.「野ばら」  D.257

5.「漁師の歌」 D.881

6.「臨終を告げる鐘」D.871

7.4つの即興曲より第2番 変ホ長調 D.899

8.「初めての喪失」 D.226

9.「糸を紡ぐグレートヒェン」 D.118

 (休憩)

  1. 4つの即興曲より第3番 変ト長調 D.899

11.「春に」 D.882

12.「あなたは憩い」 D.776

13.「ガニュメート」 D.544

  1. 4つの即興曲より第4番 変イ長調 D.899

15.「春の信仰」 D.686

16.「さすらい人の夜の歌」D.768

17.「音楽に寄せて」 D.547

アンコール「アヴェ・マリア」

https://www.mdf-ks.com/concerts/2020-2-8/

2020年2月 2日 (日)

NHK「SONGS」~鬼束ちひろさん~気取りを排した全身全霊という魅力

2月1日放送のNHK「SONGS」は鬼束ちひろさん。
2000年8月にリリースされた鬼束ちひろさんの「月光」は衝撃的な歌だった。
歌詞に「腐敗した世界」という言葉があること自体、前代未聞だったと思う。
かろうじてこれに近いインパクトの歌詞を幾つか挙げるなら、1968年にザ・タイガースが歌った「廃墟の鳩」にある「人はだれも悪いことを覚えすぎたこの世界」とか、中島みゆきさんによる1994年の「空と君のあいだに」にある「君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる」とかだが、それでも「腐敗」という単語のインパクトには及ばない。
クラシックだと、不協和音を連続させることで「音楽は美しい」に挑戦した「春の祭典」の登場を連想する。
あるいは、戦後間もない1946年、東京音楽学校(現・東京芸大)に赴任した伊福部昭さんが、学生だった黛敏郎や芥川也寸志らを前にして、「定評のある美しか認めない人を私は軽蔑する」というアンドレ・ジイドの言葉引用して、独自の美学、音楽論を展開されたという逸話を連想させる。「既存概念の否定」という挑発、挑戦。

「月光」は単語だけでなく、歌全体としてもとても難しい。私はとても歌えない。
カラオケが好きな女優の吉田羊さんは「月光」を歌うとき「全身全霊で歌う」という。吉田さんの「月光」も一度ぜひ聴いてみたい。
そして、いみじくも吉田羊さんが言うこの「全身全霊」こそ、鬼束ちひろさんにおける重要なキーワードだろう。実際、今回の番組のインタビューの中でも「全開全力」という言葉とともに「全身全霊」という言葉も出てきた。
鬼束さんの歌は小手先、口先では歌えない歌だ。小賢しい表面的な繕いや、皮相な技巧では表現できない歌。魂から歌いあげることでしか表現できない歌。気取りを排し、飾らずに全てを晒(さら)すことでしか表現できない歌。そういう「全身全霊」が求められる歌。
それが鬼束ちひろさんの歌であり、それが彼女の魅力なのだと思う。

https://www.youtube.com/watch?v=iyw6-KVmgow

参考~「廃墟の鳩」
https://www.youtube.com/watch?v=XAurvAW_zHs

2020年1月21日 (火)

高価な楽器という神話~TBS番組イタリア人職人VS日本人職人~アーヨさんも評価

昨年の番組で、長野県松本市のヴァイオリン製作者 井筒信一さんの楽器が、クレモナ産のヴァイオリンに評価勝ちして話題になったが、同じ趣向のTBSの番組として1月20日夜、「メイドインジャパン!イタリアVS日本代表!!本場と炎の三番勝負」と題されて、ワイン、ヴァイオリン、ピザの3つにおいて、それぞれイタリア人職人による商品(製品)と日本人職人製作によるものの「対決」番組が放送された。
どちらがイタリアもの日本もの、ということを伏せて、6人のイタリア人が品定めし、より良いと思ったほうに1票投じる、という内容。
最初はワインで、イタリアワインに4票、山梨県産赤ワインは2票で負けたものの、日本産に投じた2人はイタリア人ソムリエだった。6人に共通していたのは山梨産はまろやかで飲みやすい、イタリア産は苦みのあるコク(たぶんツウ好みという感じ)だったかと思う。
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そして、次はヴァイオリン。
日本代表は前回と同じく松本市に工房を構える職人=井筒信一さんの楽器で200万円のもの。「対戦相手」はなんと、サンタ・チェチーリア音楽院に厳重に保管され、保管だけでなく、演奏でも使われている現役というストラディバリウス。10億円とのこと。10億円のストラディバリウス対200万円の井筒さん製作の楽器による「対決」だ。それ自体、井筒さんは感激していた。
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さて、視聴者にも伏せられて演奏された楽器だが、私は最初に演奏されたものは輝かしい音でソリスト好み的、と感じ、後のモノは音の芯にブレが無く、品とバランスが良いので、合奏向きかな、と感じた。
6人に共通していた感想も、最初のは強く輝かしく躍動感があり、後のは、芯がありバランスが良く、中音域と低音域でも優れている、という言及だったと思う。
答えは最初のが井筒さん製作。後のがストラディバリウス。結果的には4票:2票でストラドに軍配が味がったが、ゲストの芸能人たちは2票入ったことを絶賛し、何より、井筒さん自身が「ストラディバリウスと競えること自体に感激」した上に2票も入ったことに大満足されていた。
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しかも、この井筒さんが獲得した2票だが、一人は80代のプロ奏者でアーヨさんと名乗っていたから、あの元イ・ムジチのフェリックス・アーヨさんだと思う。サンタ・チェチーリアで教えていたこともあるから、間違いないと思う。アーヨさんは井筒製とは知らず「素晴らしい楽器だ」と絶賛して選んだ。ストラドではなく。ちなみにもう一人は40代の妊婦さんで、「(最初の楽器が奏されると)お腹の子が喜んだの」と言ったのも印象的な言及(評価)だった。
ちなみに私事だし、値段のランクが違って申し訳ないが、1年位前に池袋の楽器店で、300万円のヴァイオリンと80万円のヴァイオリンを試し弾きさせていただいたことがあったが、私が気に入ったのは値段とか関係なく、80万円のほうだった。
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高価だから良い楽器、かどうかは別問題、ということ。というか、結局「相性」だ。好みの問題。聴く側としては音色や質感等が重要だし、弾き手としては、それに加えて、フィット感や反応等の気に入り度=相性が肝心で重要な判断基準となる。私が自分で持ってみて、弓で弾いて、音色も含めて気に入ったのは300万円のヴァイオリンではなく、80万円のものだった。
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もちろん、一般論で言っても、やはり、ストラディバリウスやガルネリウスは素晴らしいと思う。けれど、それを誰が(どういうレベルで)弾くか、とか、どういう響のホールで弾くか、どういう曲を弾くか等々で、一概には単純には言えない微妙な問題(受け止める側の評価の違い)が生じるだろうことは言うまでもないし、それこそが楽器と奏者と音楽における相関関係の「妙」だし、それこそが音楽の不思議であり素晴らしさだ、と思う。
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ちなみに、3品目のピザでは、5:1でナポリの職人に軍配。でも、金沢のはナント冷凍ピザで、これには等のナポリ職人も驚いていた。これはワインもヴァイオリンも同じで、「勝った」とはいえ、イタリア人製作(保管)者たちも、「日本産」をとても褒めていた。
https://www.youtube.com/watch?v=FiyYmk1985g

https://izutsu-violin.com/

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