圧巻の音大フェスティバル・オケによる「ダフニスとクロエ」
毎年、ミューザ川崎と東京芸術劇場において、1日に3つないし2つの音楽大学学生によるオーケストラの演奏会が開催されているが、これは、首都圏の音楽大学の協力と交流を目的に始まった「音楽大学オーケストラ・フェスティバル」で、この特別編として、各大学の選抜メンバーで構成されるのが「音楽大学フェスティバル・オーケストラ」。
その第13回音楽大学フェスティバル・オーケストラのコンサートを3月30日午後、東京芸術劇場で拝聴した。
指揮は、シルヴァン・カンブルランさんで、プログラムは、
1.マーラー:交響曲第10番より 「アダージョ」
2.ラヴェル:バレエ音楽『ダフニスとクロエ』(全曲)
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参加音楽大学は、プログラム記載どおりの五十音順で、上野学園大学、国立音楽大学、昭和音楽大学、洗足学園音楽大学、東京音楽大学、東京藝術大学、東邦音楽大学、桐朋学園大学、武蔵野音楽大学。
今回の2曲では、弦は同じメンバーだが、金管と木管は、わずかの例外(2曲とも演奏)はあるが、ほとんどはマーラーとラヴェルでは別のメンバーによる演奏。
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指揮の、シルヴァン・カンブルランさんは、1948年フランス生まれ。2010年から9年間、読売日本交響楽団の常任指揮者を務め、古典から現代まで幅広いレパートリーを持ち、2017年11月にはメシアンの『アッシジの聖フランチェスコ』、2022年12月には、一柳 慧さんの新作や、ヴァレーズ『アルカナ』を指揮して話題になった。ベルギー王立モネ歌劇場、フランクフルト歌劇場、シュトゥットガルト歌劇場の音楽総監督などを歴任されている。
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1.マーラー:交響曲第10番より 第1楽章「アダージョ」
マーラーの交響曲の中で、未完ということもあり、私が唯一、あまり聴いてこなかった曲であることと、この日の午前も含めて、最近、仕事が重なり、疲労ぎみもあって、集中して聴けなかったので、詳細な感想は控えたい。ザックリとしたイメージだけ記載させていただくと、カンブルランさんは、「マーラーだから、こう」とかのモヤッとしたイメージで創る人ではなく、音楽の輪郭を、丁寧にキチンと明確に打ち出していく指揮者、という印象を受けた。メリハリをキチンと付ける指揮者と感じた。休憩後は、
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2.ラヴェルの『ダフニスとクロエ』全曲
カンブルランさんの指揮による演奏としては、第1部、2部での、テンポアップした激しい曲想での躍動感と迫力が見事だし、ガッシリとした構成感もあった。
「第2組曲」としても単独で演奏されることも多い第3部以降がとりわけ素晴らしかった。
「夜明け」は、録音も含めて、私が過去に聴いた演奏の中でも、最も遅い~いや、ゆったりとした、と言おう~最もゆったりとした部類に入る演奏で、抒情性と繊細さとスケール感が一体となった素晴らしい演奏だった。面白いのは、4分の3拍子であっても、3つ振りではなく、8分音符を基軸とした6つ振りにより、細やかに丁寧に指揮されていたことだ。
そういう「振り」を見ると、しばし「なんだかなあ」と思うこともあるのだが、カンブルランさんには好感と親しみを覚えた。
「全員の踊り」での躍動感と、迫力あるダイナミズムも素晴らしかった。
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奏者に関しては、第1フルートの女性奏者が素晴らしく、そのまま、国内のどのプロオケでも務まるであろうレベル。ピッコロを受け持った男性奏者も良かったし、第1オーボエの女性奏者、Es管クラリネットの女性奏者も良かった。
3階までほぼ満員の会場で、盛大な拍手と歓声が長く続いた。
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ただし、合唱には不満を覚えた。
今回、初の首都圏9音楽大学から選抜合唱が結成された音楽大学フェスティバル・コーラスで、ソプラノ19名、アルトも19名、テノールが14名、バスが16名と、臨時選抜だけに人数バランスは良いが、必ずしも声楽専攻の人ばかりでないな、と感じたし、もしや、合唱自体に慣れていない人も多いようにさえ感じた。
トーンの響きに統一感、均一な透明感が感じられないし、地声のような質感も感じられた。もっと美しいトーンで歌える既存の合唱団はザラにたくさん存在している。
先週聴いた「コール・ミレニアム」(が、更にこの人数で歌う)なら、感動は倍増しただろうと、その点は残念だった。
「音大生は、合唱をナメテいる」ということは、さすがにないだろうけれど、心象としては、それに近いものを感じたことは正直に記載しておきたい。
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