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2024年3月15日 (金)

ケフェレックさんのベートーヴェン~ピアノ協奏曲第1番

アンコール曲~ヘンデルの「メヌエット」の哀愁と美しさ

大の日本贔屓だからというわけではないにしても、アンヌ・ケフェレックさんの根強い人気の凄さに改めて驚いた。平日の午後にもかかわらず、すみだトリフォニーホールは1階だけでなく、各階、満席に近い入りだった。

上岡敏之指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会を3月15日午後、同ホールで拝聴した。プログラムは、

1.ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調Op.15

2.シューベルト:交響曲第8番ハ長調「グレイト」D.944

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1.ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調Op.15

オケは小編成。例えばヴィオラは6人。コントラバスは3人。

第2楽章はもちろん、第1楽章を聴いている段階で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中で~第4番以上に~最もロマンティックな曲がこの第1番なのだ、と初めてそう思った。そう思わせてくれる演奏だった。武満徹さんが言った「ハ長調こそ美しい」も関係しているかもしれない。冒頭のオケの開始。とてもソフトなsotto voceが素敵。

ケフェレックさんの演奏は、愉悦感あるベートーヴェンのこの曲であっても、常にエレガント。終始、徹底したエレガントな演奏だった。

自然体にしてソフトでまろやかな音とフレージング。明るく、温かく、チャーミング。エレガントの極み。流動感はもちろんあるが、常に余裕と気品がある。

第3楽章はもちろん躍動感とダイナミズムが加わるが、基本的スタンスは変わらない。

上岡さんの指揮も、ソフト感を大事にした、強弱やトーン変化を徹底させた良い指揮だったが、オケからケフェレックさんにパッセージが移るとき、毎回、大きなキューをケフェレックさんに出していたのは「いただけない」。新人ピアニスト相手じゃあるまいし。

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盛大な拍手と歓声に応えてのアンコール曲は、ヘンデル~ケンプ編曲~「メヌエット」ト短調。

誰よりもゆったりとしたテンポで、開始数小節間で、まるで哀愁あるフランス映画の世界が広かったようだった。思わず目頭が熱くなった。

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ケフェレックさんは、コロナ禍以前は、「ラ・フォル・ジュルネ」の常連で、ほぼ毎年来日されていた。サインをいただいただけでなく、会場の東京国際フォーラムで散歩されているケフェレックさんにバッタリ遭遇したりもした。

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今日の終演後のサイン会では、私はベートーヴェンのソナタ30~32番のCDを買い、順番が来たとき、ケフェレックさんに、「この3曲は、昨年のラ・フォル・ジュルネでの演奏を聴きました」と英語で伝えると、ニッコリされた。76歳とご高齢ではあるが、出来得る限り、これからも来日を重ねて欲しい。

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2.シューベルト:交響曲第8番ハ長調「グレイト」D.944

休憩後の「グレイト」は、「上岡さんだから「普通」は無い」が事前に想像できたにしても、テンポもニュアンスも私の好みではない。感想を書かなくてもよいが、一応、感じた点等を記載する。

第1楽章冒頭のホルンは、自由に吹かせた感があり、それはそれで了解。ただ、速めのテンポでの序奏部において既に、古典的なアプローチを基盤としたいのか、ロマン的な志向かが不明。アレグロ主部に入っても、付点四分音符をリズミックに弾ませるのではなく、レガートに近かったのは、それはれで構わないが~ジュリーニもやっている~いささか刺激的な強弱変化に特徴がある程度で、せかせかとしザハリッヒな心象しか感じなかった。要するに「全てが中途半端」と感じた。

第2楽章は、更に私が嫌いな速いテンポ。ロマンもへったくれもない。

第3楽章、第4楽章は特にコメントする気もないが、エンディングでは、ディミヌエンドさせてのロングトーンで終わらせた。一時期、話題になった「シューベルトにおけるアクセントとディミヌエンド(の書き間違い、あるいは不鮮明)論」をここでもって来たわけだ。

これをベーム等、過去の巨匠たちが聴いたらどう思うかは、興味深いところだ。

終演後の客席は最大な拍手と大歓声。私との感想の違いが、逆に面白い。

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