« 小林沙羅さん&福間洸太朗さん「ドイツ・リートへの誘い」第1回(全3回) | トップページ | マタイ受難曲~メンデルスゾーン版演奏会を聴いて »

2024年3月19日 (火)

中 恵菜さん~ヴィオラリサイタル

新日本フィルハーモニー交響楽団の首席奏者という、ありきたりな紹介よりも、「今、最も格好良いヴィオラ奏者」と言いたい中 恵菜(めぐな)さんのリサイタルを3月19日夜、フィリアホールで拝聴した。

ピアノは桐朋学園の1年後輩、原嶋 唯さん。初めて聴いたが、とても良いピアニスト。

中さんのソロリサイタルは、昨年11月、東京オペラシティ主催の「B→C バッハからコンテンポラリー」で聴いているし、同年7月には、構成メンバーである「カルテット・アマービレ」を聴いている。この日のプログラムは以下のとおり。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.ラフマニノフ:ヴォカリーズOp.34-14

2.武満 徹:鳥が道に降りてきた

3.プロコフィエフ(ボリゾフスキー編):ロミオとジュリエットより6曲

(休憩)

4.加藤昌則:未在の庭(ヴィオラとピアノのための)

5.ヒンデミット:ヴィオラとピアノのためのソナタOp.11-4

6.ピアソラ:ル・グラン・タンゴ

アンコール~モリコーネ:ガブリエルのオーボエ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

感想

1.ラフマニノフ:ヴォカリーズOp.34-14

ノーブルな音。後半に移行する中、しだいにテンポを揺らし、エスプレッシーヴォな演奏に移行して行くのが良かった。

・・・・・・・・・・・・・

2.武満 徹:鳥が道に降りてきた

武満さんが亡くなる前年の1995年、今井信子さんに献呈された5分ほどの曲。

ピアノは、間合いをもって断片的な和音を奏するが、美しい音と言ってよく、基本的には調性をベースにしていることを示している。

ヴィオラは、最初の4分ほどは完全無調。激しい「スル・ポンティチェロ」奏法、重音、ハーモニクスなどを交えながら、広い音域の中で、強弱の対比とクレッシェンドとディミヌエンドの交差による細やかなダイナミクスが頻出するのが、いかにも武満さんらしい。

最後の約1分間においては、メロディーが出現する。移動ドで言うと「ソ~ラ~ド~ラ」という音階が顕著だったし、エンディングのハーモニクスも美しい調性が保たれていた。

中さんの現代曲における技術の凄さとアプローチの深さは、先述の「B→C」で知っているが、この曲でも、例えば、アップボーイングによる弓先でのスフォルッツァンド→Pのニュアンスなどは素晴らしく、その1音だけでも、彼女が如何に優れた奏者であるかが確認できた。

・・・・・・・・・・・・・

3.プロコフィエフ(ボリゾフスキー編):ロミオとジュリエットより

プロコフィエフが1936年に完成させた4幕52曲から構成される作品だが、旧ソ連のヴィオラ奏者だったヴァディム・ボリゾフスキー(1900~1972)が、プロコフィエフの許可を得て、13曲をヴィオラとピアノのデュオ用に編曲した中から、次の6曲を演奏。全体的に、とても良いアレンジだった。

(1)前奏曲、(2)街の目覚め、(3)少女ジュリエット、(4)騎士たちの踊り、(5)マキューシオ、(6)バルコニー・シーン

演奏は(2)でのピッツィカートの音が美しかったほか、(4)での有名なテーマは、ゆったりと重々しく演奏。中間部および次の(5)での「スル・ポンティチェロ」が印象的。

・・・・・・・・・・・・・

休憩後の後半。この日、中さんは初めてマイクを手にし、原嶋さんも含めて短い挨拶をされた。そして、

4.加藤昌則(1972~):未在の庭(ヴィオラとピアノのための)

7分くらいの曲。ゆったりとした抒情性を基盤としながらも、時折、ハーモニクスや「スル・ポンティチェロ」を交えながら進行。ハーモニクスでのエンディングも印象的だった。

・・・・・・・・・・・・・

5.ヒンデミット:ヴィオラとピアノのためのソナタOp.11-4

ヴィオラ奏者にとっては「定番」と言える1919年作の名曲。パウル・ヒンデミット(1895~1963)24歳のときの作品。16分位の曲。名曲の名演奏。

・・・・・・・・・・・・・

6.ピアソラ:ル・グラン・タンゴ

アストル・ピアソラ(1921~1992)が、1982年にロストロポーヴィチのために作曲したチェロとピアノのための作品が原曲。11分くらいの曲。

ピアソラ独特のトーンが終始色濃く漂う作品。前半は、タンゴと言うより、抒情的でパッションあるエレジー的な曲想。後半は、ノクターン的なテイストを感じさせながら、次第に「タンゴ」に移っていく曲想が見事。

・・・・・・・・・・・・・

アンコール

映画『ミッション』で使用されたエンニオ・モリコーネ作曲の楽曲『ガブリエルのオーボエ』(Gabriel's Oboe)は、サラ・ブライトマンが1998年、イタリア語の詞をつけて歌った「ネッラ・ファンタジア」(Nella Fantasia「私の空想の中では」)としても知られる。

中さんが、誰による編曲で演奏したのかは判らないが、短いヴァリエーション的なスタイルによるアレンジだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

美人であるとかスタイルが良いとかは、中さんの一要素に過ぎない。

もし、ヴィオラに、ヴァイオリンと同じ数くらいの協奏曲やソロ曲があったら、いや、せめて、チェロの曲ほどのソロ曲があったとしたら、中さんはソリストとしても十分活動していけるほどの優秀な奏者だと思う。今後、益々の活躍が楽しみだ。

« 小林沙羅さん&福間洸太朗さん「ドイツ・リートへの誘い」第1回(全3回) | トップページ | マタイ受難曲~メンデルスゾーン版演奏会を聴いて »

ブログ HomePage

Amazon DVD

Amazon 本

最近のコメント

最近のトラックバック