坂本彩&坂本リサ~ピアノデュオ・リサイタル
2021年のミュンヘン国際コンクールのピアノデュオ部門において、日本人デュオとして初の第3位入賞および聴衆賞を受賞した坂本彩さん(姉、フラーヤーこちらから見て右)と、妹の坂本リサさん(同左)の姉妹デュオ・リサイタルを8月26日午後、Hakuju Hallで拝聴した。
姉妹とも東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程ピアノ科で学び、ドイツ国立ロストック音楽・演劇大学ピアノデュオ科修士課程を最優秀で修了し、現在は同大学の国家演奏家資格課程に在籍中。
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姉妹でのピアノデュオは児玉麻里さんと児玉桃さんの例があるし、姉妹ではないが姉妹のように仲の良い高橋多佳子さんと宮谷理香さんによる「デュオ・グレイス」等、日本人同士でも複数の例があるが、ほとんどが基本はソロをメインとされているのに対し、坂本姉妹は現状「デュオ1本」と決めての活動。
また、お父様の影響で、姉妹共に日本棋院・囲碁三段というのが面白い。ちなみに後述の作曲家、向井響さんも囲碁が好きで、その関係もあり~また、彩さんは、大学院は東京藝大だが、学部は桐朋学園大学で、向井さんとは桐朋学園同期となり~親しくなったとのこと。
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コンクール歴と国内の演奏を追記すると、二人は小学生のころからデュオを組み、地元の福岡県ほか当時から既に多くのコンクール入賞の常連。国際的にはまず2018年のポーランドにおける国際ピアノデュオコンペティションで第1位およびパデレフスキ賞受賞。2019年はチェコにおけるシューベルト国際ピアノデュオコンクールでも第1位。
国内活動では、2022年3月に久石譲「Variation 57 〜2台のピアノのための協奏曲」(管弦楽版)の世界初演。同年10月は、ジョナサン・ノット指揮の東京交響楽団とモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲K.365で共演するなど、活躍が続いている。
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前置きが長くなったが、この日のプログラムは以下のとおり。
1.ラヴェル:マ・メール・ロワ(1台による連弾)
2.シューベルト:幻想曲ヘ短調D940 Op.103(1台による連弾)
3.向井響:交響的ソナタ(委嘱新作・世界初演)~2台ピアノ
4.リスト:悲愴協奏曲 ホ短調~2台ピアノ
5.リスト:ドン・ジョヴァンニの回想~2台ピアノ
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「マ・メール・ロワ」はエレガントで美しかった。
シューベルトの「幻想曲ヘ短調」は名曲中の名曲。本当に素晴らしい作品だ。演奏も迫力があり、見事。
なお、連弾では、リサさんが高音部を受け持ち、低音部分を彩さんが演奏。これは、2台ピアノでの演奏でも~向井さんの互いを「個」とした作品は別として~基本は同じ役割分担だった。
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前半最後はその向井 響さんの「交響的ソナタ」
姉妹による委嘱新作で世界初演。もっとも、この日に先んじて今月13日に名古屋市の宗次ホール、20日には北九州市の黒崎ひびしんホールで演奏しているので、本当の初演は宗次ホールではある。
先述のとおり、坂本彩さんと桐朋学園大学時代に親しくなったが、響さんには航(わたる)さんという双子の弟で、同じく作曲家がおり、2人は12歳のとき出場した連弾コンクールで坂本姉妹を初めて知り、そのときから姉妹の才能に驚いていたという。
委嘱初演作の「交響的ソナタ」は、10分くらいの曲で、無調と有調、抒情性とアグレッシブな超絶技巧等々が複雑に混じり入る、聴き応え十分な力作だった。凄い才能だと思う。
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休憩後の後半は、まず、
リストの「悲愴協奏曲」ホ短調
「悲愴」と言っても、チャイコフスキーやベートーヴェンとは何ら関係ない。1860年代半ばころに作曲された作品で、20分くらいの「大幻想曲」とでも言える様な曲だった。
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プログラム最後は同じくリストの「ドン・ジョヴァンニの回想」
モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」からのテーマを引用しながらの、いかにもリストという技巧的な曲で、15分くらいの曲。
大歓声後のアンコールは、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」により、しっとりと終わった。
これからも益々楽しみなピアノデュオだ。
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