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2023年2月 3日 (金)

高野百合絵さん~初ソロリサイタル

ソプラノの高野百合絵さんのリサイタルを2月3日夜、静岡県富士市にある富士市文化会館「ロゼシアター」小ホールで拝聴した。

ピアノは石野真穂さん。

プログラムは最下段に記載のとおりだが、前半は、高野さんが思い入れのあるスペインの歌曲とミュージカル。後半が歌曲やアリア等。いつものように、時系列的に感想等を書いてみたい。

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1曲目の情熱的なチャピの「囚われ人の歌」が終わり、マイクを手にした高野さんが、「今日は、私の人生初めてのソロリサイタルです」(大きな祝福の拍手)と挨拶されたので、私は、「あ、そうだっけ」と少し驚いた。

2018年の「コジ・ファン・トゥッテ」のドラベッラ役に魅了され、「発見」して以来、2021年の佐渡裕プロデュース「メリー・ウィドウ」での堂々たるハンナ役を含めて、これまで、オペラとデュオコンサートなどを何度も聴かせていただいているが、「そういえば、ソロリサイタルは初めてだったな」と合点した。

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以下、終わりまで、歌唱は実に堂々たる素晴らしい内容だったのに対し、トークは初の単独リサイタルということもあり、終始、緊張ぎみだったが、その慣れないトークでのシャイでピュアな感じと、堂々たる歌唱のギャップの大きさそれ自体もまた魅力的であり、高野さんの人柄と歌唱力のいずれをも、結果的に披露していた。このことは、ピアノの石野さんも語っていた。

また、この後の、ミュージカルのところで記載するが、これまで、高野さんが歩まれてきた中で直面した状況、心理的葛藤と、それを乗り越えることができたキッカケ等々、初めて知った事柄も多々あり、東京から近いとは言えない会場でのリサイタルに来た甲斐があった、と思った次第。

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トークにおいて、学生のときに、スペイン歌曲に魅せられた逸話を披露して歌われたオブラドルスの「エル・ビト」と、モンサルバーチェ「黒い歌」は、短いながら、情熱が内包された曲で、ファーストアルバムに収録されている曲。

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モンポウの「魂の歌」が聴き物。

ゆったりと落ち着いた、ア・カペラを主体とした独白的な曲。昨年11月にリリースされたセカンドアルバムに収録されている。素敵な曲の魅力的な歌唱だった。

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前半最後の2曲のミュージカルナンバーを歌われる前に披露された逸話が、とても印象的だった。

経歴には、「東京音楽大学在学中、米国ボストンに1年間留学」とあるが、きっかけは決して果敢なものではなく、ある種、心理的葛藤と、そこからの気分一新を兼ねてのものだった、という。

英語の習得も兼ねたボストンで、紛争など厳しい状況が続く中東等から来ている学生たちと知り合い、自分の歌を聴いて喜んでくれた友人と出会ったことや、師事した先生がミュージカルをメインとした指導者であり、その生徒たちが、巧く歌うことよりも、楽しみながら、如何にして自分の個性を魅力的なものとして鍛えていくか、ということに注力していることが解かり、歌う喜びを改めて感じ取ることができたので、帰国し、母校で心機一転、改めてレッスンに集中できるようになったという。

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この話を聞き、指揮者の沖澤のどかさんが東京芸大入学後にぶつかった心理的葛藤の体験を連想した。今、活躍目覚ましい沖澤さんも高野さんも、決して順風満帆に歩んできたわけではないことを知り、あらためて音楽家が自身で道を開拓して行くことの大変さを思い知らされたし、そういう心境を乗り越えて来ての今がある、ということを初めて知った次第。

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そしてまず、先月Hakujuでも演奏されたバーンスタインの『ウエスト・サイド・ストーリー』より、石野さんのピアノソロで「プロローグ」と、高野さんによる正に愛らしい「I Feel Pretty」。

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そして、ロジャースのミュージカル『回転木馬』より「You'll never walk alone」(人生は一人ではない)。とても魅力的な曲で、「静かなエール」と愛を感じさせる歌。これもセカンドアルバムに収められている。

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休憩後の後半は、Hakujuでのアンコールでも歌われた、レハールの「熱き口づけ」で情熱的に開始。

続いて、R・シュトラウスの「献呈」、「何もない!」、「明日!」と続いた。

特に「明日!(Morgen!)」は本当に素晴らしい曲で、高野さんも、しっとりと魅力的に歌われた。なお、「明日!」も、セカンドアルバムに収められている。

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石野さんのピアノにより、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲が美しく奏された。

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ドヴォルザークの歌劇「ルサルカ」より「月に寄せる歌」

声が細過ぎず、太過ぎず、曲と声とのマッチ度が素敵で、この曲は、多分、録音とライヴ合わせて私は30人くらいの歌手で聴いているが、その中でも屈指の歌唱と言えるほど、この日の白眉と言ってもよいほど、とても素晴らしい歌唱だった。

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プログラム最後は、プッチーニの歌劇「トスカ」より「歌に生き、愛に生き」。

このアリアも、感情移入とバランス感、スケール感のある魅力的な歌唱だった。

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アンコール

1曲目は、セカンドアルバムに収録されている「Over the Rainbow」。

オペラ歌手がこの歌を歌うのは珍しいし、歌唱の見事さも含めて、とても新鮮な感動を聴衆に届けた。

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2曲目もセカンドアルバムに収録されている「翼をください」。

高野さんは逸話を披露。中学生のとき、反抗期を迎え、クラスでの合唱も、ちゃんと歌わないでいたので、先生からその情報を聞いたお母様が、歌を習わせることに。「翼をください」を歌うと、「とても良い」と師事した先生に褒められ、「自分には歌が向いているのかも」と感じた、いわば、歌に向き合う「原点」とも言うべき歌で、初のソロリサイタルゆえ、「原点」としての曲をアンコールで選んだとのこと。

この誰もが知るこの歌の新しい魅力を、高野さんは美しい日本語とフレージングで示した。

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最後は、おはこ(十八番)の「カルメン」より「ハバネラ」で締めくくった。

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聴衆は、真っ赤なドレスに替えての後半の見事な歌唱の連続に特に魅了されたようで、サイン会には多くの聴衆が列を作った。

高野さんを直に初めて聴いた聴衆も少なからずいたと思うが、聴衆にとっても、初のソロリサイタルにより聴衆を魅了した高野さん自身にとっても、互いに幸福感を共有したに違いない素晴らしい初ソロリサイタルだった。

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プログラム

1.チャピ:サルスエラ『セベデオの娘たち』より

  「囚われ人の歌」

2.オブラドルス『スペイン古典歌曲集』より

  「エル・ビト」

3.モンサルバーチェ:『5つの黒い歌』より「黒い歌」

4.モンポウ:「魂の歌」

5.バーンスタイン:ミュージカル

『ウエスト・サイド・ストーリー』より

(1)ピアノソロで「プロローグ」

(2)「I Feel Pretty」

6.ロジャース:ミュージカル『回転木馬』より

  「You'll never walk alone」(人生は一人ではない)

編曲:辻田絢菜

 (休憩)

7.レハール:喜歌劇「ジュリエッタ」より「熱き口づけ」

8.R・シュトラウス:「最後の葉」による8つの歌Op.10より

 (1)「献呈」Op.10-1、(2)「何もない!」Op.10-2

9.R・シュトラウス:「4つの歌曲」Op.27より

第4曲「明日!」

10.ピアノソロで、マスカーニ:

  歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲

11.ドヴォルザーク:歌劇「ルサルカ」より「月に寄せる歌」

12.プッチーニ:歌劇「トスカ」より「歌に生き、愛に生き」

アンコール

1.ハロルド・アーレン:ミュージカル『オズの魔法使い』より「Over the Rainbow」

2.村井邦彦:「翼をください」(作詞:山上路夫)

3.ビゼー:歌劇「カルメン」より「ハバネラ」

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