豊島区管弦楽団~武満徹「系図」
豊島区管弦楽団によるニューイヤーコンサートを1月8日午後、豊島区立芸術文化劇場<東京建物 Brillia HALL>で拝聴した。指揮は常任指揮者の和田一樹さん。
このオケを聴くのは、いつ以来か思い出せないくらい久しぶり。目的はただ一つ。プログラムに、武満徹の「系図-若い人たちのための音楽詩-」~「Family Tree」があったから。
アマオケがこの曲を演奏するのは珍しい。私が所属するオケでも、岩城宏之さんと演奏する計画があったが、諸事情で延期になる中、岩城さんが逝去されてしまったのは、本当に残念だった。
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オケについて、簡単に触れておくと、1975年に、豊島区教育委員会の主幹により、東京都23区では初の区設置の管弦楽団として創立されたアマオケ。その関係で、定演の他、区が主催するイベント~成人式等~で、賛助演奏されたりしている。
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プログラムは以下のとおりだが、いわゆる「メイン(曲)」と呼ばれがちの性質の曲~この日は、ベートーヴェンの交響曲第7番~が、1曲目に演奏されたのは珍しいこと。
1.ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
(休憩)
2.武満徹:「系図-若い人たちのための音楽詩-」
3.ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
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オケの配置は、流行りの対抗配置だが、少し違うのは、7人のコントラバスが、金管楽器群の後ろ、すなわち、最後列に横並びに置かれたこと。ウィーン・フィルがムジークフェラインで演奏するときに、しばしばとる配置だが、奥行きが狭いムジークフェラインならともかく、特別には狭くないステージ~私はこの日、初めて行ったホールで、建物自体、2019年11月にオープンしたばかり~での、コントラバスのこの配置には賛成しない。
以前も、こうした配置で、どこかのオケが演奏した際に書いたことがあったが、金管群の後ろに置くと、コントラバスの役割としての、正に土台たる効果が薄れてしまうからだ。この日もそれは強く感じた。
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1.ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調
第1楽章の序奏から速めのテンポで軽やかな足取り。アレグロに入っても同じテイスト。ベートーヴェンというより、モーツァルトの曲に聞こえた。
間を置かずアタッカで第2楽章に入ったが、同じく速めのテンポなだけでなく、ここぞという「溜め」が無い、「ドラマ性」の無い演奏。これでは、この楽章の良さが伝わってこない。
第3楽署は、安定感があり、なかなか良く、トリオでの木管の強弱にもユニークな工夫があった。
第4楽章も、第1楽章と同じことが言え、悪くはないが、特別、感動もしなかった。
(休憩)
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2.武満徹「系図」~「Family Tree」。
この曲を聴くたびに、いつも1曲目から最後の6曲目に至る間、私は、なぜか感涙が続く。理由は私にも説明できないのだが、とのかく、これは噓偽りの無い事実なのだ。
アコーディオンは、大田智美さんで、とても良かった。
語りは、谷川俊太郎さんの6つの詩に合わせて、東京都立千早高等学校の演劇部から6人の女生徒が、それぞれ1つずつ担当する、という面白いカタチを採った。プログラムには、6名の個人名も記載されているが、女子高生ゆえ、ここに書くのは控えたい。
「アマオケがこの曲を演奏するのは珍しい」と先述したが、その大きな理由の一つに、弦楽器にハーモニクス(フラジオレット)がとても多いことが挙げられる。武満の曲の多くに、ハーモニクスは多用されているが、この曲では、冒頭から最後まで、その特色が顕著だ。
調性音楽への回帰の典型たる美しく親しみ易いメロディと、美しく透明でソフトな質感のオーケストレーションゆえ、一見ならぬ、一聴だと、演奏し易い曲に想像してしまうが、実際は逆で、極めて繊細にして高い技量が求められる曲だ。プロはともかく、アマオケでは大変な曲で、実際、オケのデキは100点とは、とても言えない内容だったが、でも、鑑賞には十分耐え得る、健闘したと言える演奏だった。
6人のナレーターも、それぞれ、とても良かった。もちろん、6名とも、テキストを見ることなく、暗記しての語り。
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3.ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
オケのデキとしては、この曲が一番良かった。特に「子守唄」でのファゴット奏者(女性)のソロが魅力的だった。
アンコールとして、もう一度「終曲」(フィナーレ)が演奏されて、コンサートが終わった。
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