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2023年1月23日 (月)

フライハイト交響楽団 第50回記念演奏会   マーラー交響曲第9番

フライハイト交響楽団の第50回記念演奏会を1月22日午後、すみだトリフォニーホールで拝聴した。
ただし、プログラム前半の、バッハ(シェーンベルク編曲)の「前奏曲とフーガ 変ホ長調BWV552『聖アン』」は、所用の関係で間に合わず、後半のマーラー交響曲第9番のみの拝聴。指揮は、これまでこのオケを何度も指揮している森口真司さん。
初めて聴かせていただいたフライハイト交響楽団は、1996年4月に結成。1つの大学OBとか地域的な要素を基盤とするオケではなく、かつて存在した「ジュネス」でお馴染みのJMJ(青少年日本音楽連合)で知り合った人たちにより結成されたとのこと。
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「ジュネス」は、各一般大学のオケに所属する人の中から、オーディションで選抜された学生により毎年、臨時に結成され、年1回、「青少年音楽祭」として「春の祭典」を含めて色々な曲を演奏し、NHKでも放送されていた。よって、スタートの時点で、ハイレベルな奏者たちが集まった団体と言える。なお、「ジュネス」は、2001年7月8日の「第74回 青少年音楽祭」を最後に、活動を終えた。
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このオケの第1回の演奏会は、結成年の1996年7月で、この日と同じ、マーラーの交響曲第9番。その後、これまでに、マーラーは、1番、2番、3番、5番、6番、7番を演奏しており、1、6、7番のときの指揮も森口さん。
他、演奏履歴を見ると、R・シュトラウスの「英雄の生涯」や、バルトークの管弦楽のための協奏曲、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲などがあるから、自ずとハイレベルなアマオケだと分かる。
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この日の演奏も、確かに優れた立派なアンサンブルによる演奏だった。ただ、「上手かったのだが」と、私はどうしても「だが」を付けたくなる演奏でもあった。
象徴的な部分を言うと、第4楽章の、というより、全曲の最後、終わりから2小節目のヴィオラによる2分音符での3連符の表情付けが、素っ気なく弾かれて終わったこと。確かに「PPP」だが、各2分音符にはアクセントがある。ここは、たっぷりと、テヌート+アクセントのように余韻をもって演奏する例が多いし、私はそうすべきだと思う。
この、良く言えば「自然体」だが、悪く言うと「表情付けの薄さ」が、各楽章全体に共通して感じたことだ。
敢えて「演出」をしない演奏としたのかもしれないが、マーラーの様々な思いが内包された、最晩年の偉大な傑作なのだから、マーラーの「強い思い入れ」に深く感じ入り、もっと「演出」して然るべき曲だと私は思う。
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もう少し具体的なイメージで言うと、強弱の振り幅(ダイナミクスレンジ)が、「FFF~PPP」ではなく、「F~mP」という印象を受けたし、細かな緩急の変化も、もっとあったほうが良かった。
少し厳しい表現をすると、全体的に、「堅実だが、リスクを避けた安全運転過ぎる演奏」、「冒険のない、優等生的演奏」。もっとスリリングな、リスクのギリギリを攻めたマーラーを私は聴きたい。
係る点から、「とても巧い演奏だったのだが」と、「だが」を付けたくなる演奏だった。
以上の点は、当然、指揮者の個性に関わる点なので、オケ自体に関しては、とても優秀な、立派なオケであり、演奏であったことは明記しておきたい。
臨時編成のオケでなく、常設の単体のアマオケで、このレベルで、この曲を演奏できる団は、決して多くはないだろう。立派なオケだと思う。

 

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