マリコとオペラ!~林真理子のトーク・コンサート
作家で、昨年7月に、日本大学の理事長に就任して話題になった林真理子さんが主催するコンサート、「マリコとオペラ!」~林真理子のトーク・コンサートを1月29日午後、つくば駅近くのノバホールで拝聴した。以前から聴いてみたいと思っていたコンサート。同ホールも初めてで、思いのほか遠くには感じなかったし、駅らかも徒歩数分でホールに着く。内装も独特の雰囲気があり、音響もなかなか良い。
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林さんは、昨年7月1日、日大の理事長就任の記者会見で、カザルスホールの復活を新理事長の3つの案の中の一つとして挙げ、「卒業生の力も借りて、寄付を募っていく」として、音楽ファンを喜ばせた。
この(他の)サイトでも、期待したい旨の投稿があり、私は、「林さんは、自らオペラ歌手とのコンサートを企画して、全国各地で開催するほど、クラシックファンなので、期待できます」、と応じさせていただいた。
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私が知る限りでは、林さんの企画コンサートは2018年ころから開始され、2019年に「マリコとオペラ!」と題されてから、年に2回ほど、国内各地で開催されている。
出演者は、ソフラノの小林沙羅さんが毎回出演されており、テノールは、西村悟さんか望月哲也さん~今回は望月さん、ピアノは、ほぼ毎回、河野紘子さん、ナビゲーターが浦久俊彦さん、というメンバー。
沙羅さんファンの私としては、彼女が林真理子さんに気に入られていることは、とても嬉しい。
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この日のコンサートのことを書く前に、もう少し、カザルスホール関係について記載しておきたい。
カザルスホールは、1987年完成。2003年に日大が取得したが、音楽ホールとしての使用は2010年を最後におこなわれていない(実質、閉鎖)。林さんが先述の記者会見で語った具体的発言(の一部)はこうだ。
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「新理事長として三つの案を発表します。(中略)三つめはオール日大のサポート要請。100万人を超える校友会の心をひとつにして、新しい日大に力を貸してもらうことを考えている。そのひとつとして、カザルスホールの復活を考えています」、と語り、更に、
「先日、見に行ったところ、椅子はまだ使える状態だったが、音響設備が全くダメで、パイプオルガンも運び出した後だった。私も、就任早々、大金を使うのはどうかと思うので、できましたら、オール日大によるサポートを要請したい。校友の方とか卒業生の方とか回って寄付のお願いをしたいと思っている」、と語っている。
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また、昨年7月17日付の朝日新聞(声)の欄に、京都の69歳の男性が「カザルスホールの復活を期待」と投稿すると、林さんは3日後の同月20日、同投稿欄に「作家 林真理子」として「名ホール復活、みなさんの支援で」と応じている。
このように、林さんは「本気」なので、あとは、OB諸氏の協力如何により、遠からず、カザルスホールは再開されると思われる。
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さて、いつもながら、前置きが長くなってしまったが、この日のコンサートの出演者は、
林真理子さん、ナビゲーターとして浦久俊彦さん。
ソプラノの小林沙羅さん、テノールの望月哲也さん。
ピアノは河野紘子さん。
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プログラム全体は、最下段に記載のとおりだが、概要と、特に印象的だった歌唱等を記したい。
第1部は、トーク・ステージ
「林真理子さんが語る~本とオペラのある人生」として、浦久さんが、林さんの近著や、オペラを好きになったきっかけ等のトークが行われた。
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第2部~コンサート・ステージ
「林真理子さんがセレクトする~オペラの名曲たち」
1曲目は、小林沙羅さんによるプッチーニの「ジャンニ・スキッキ」より「わたしのお父さん」。
沙羅さんは、デビュー間もないころから応援し、親しくさせていただいている。
この曲の歌唱も、10年ほど前から聴かせていただいているが、あの頃の初々しいピュアな歌唱と少し違うように感じた。
というのは、ラウレッタが情感豊かに、父親を説得する感情移入の素晴らしさは変わらないが、それと同時に、なぜか、母性を感じさせる「大人の女性」の歌唱と感じたのだ。
沙羅さんが、実際に母親として、歌手活動を両立させていることが関係しているのかも、などという短絡的な推測は、いかがなものかと思うが、しかし、娘が父親を説得する歌というよりは、母親が娘の側に立って、夫(父親)を説得するが如く、母性的にして、大きな揺さぶりを伴う、スケール感のある「私のお父さん」として聴かせていただいた感があり、とても印象的だった。
3曲目グノーの「私は夢に生きたい」では、フレージングの流麗さが良かった。
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望月哲也さんは、特にグノーの歌劇「ロメオとジュリエット」より「目覚めよ、きみ」が良かった。
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河野紘子さんのソロで、マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲が美しく弾かれた。河野さんは、昨年10月の望月哲也さんのリサイタルでの伴奏がとても素晴らしく、とても魅了されたのだが、この日も、全曲において、沙羅さんと望月さんを、ニュアンス豊かにサポートし、素晴らしい支えをされていた。
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そして、プログラム前半の最後は、
プッチーニの歌劇「ラ・ボエーム」より「冷たき手を」~望月哲也さん、「私の名はミミ」~小林沙羅さん、「愛らしい乙女よ」~二重唱と続いた。
この演目が、この日の白眉と言えるし、林さんも「ラ・ボエーム」が大好きと語り、「沙羅さんの歌声は、ミミ役にピッタリだと思う」と絶賛。私も全く同意見。
沙羅さんがミミ役を歌い演じる「ラ・ボエーム」全曲を聴ける公演が企画されることを、強く希望する。
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休憩の後半。第3部~クロストーク・ステージ
「オペラに生きる人たちとの対話」
まず、林さん、浦久さん、小林沙羅さん、望月哲也さんが登場。
第1部での浦久さんによるQ&Aの対象が、小林沙羅さんと望月哲也さんに移り、ホールとリハーサルを含めた歌唱とのコンディション調整の話題や、冬の乾燥時期とノドの保全等の話題など、興味深い会話が展開された。
次に、沙羅さんと望月さんが歌の準備でソデに下がって、河野さんが登場。
歌手の、リハと本番での即興的変化等の違いに対応する阿吽の呼吸的な話題や、林さんが亡き佐藤しのぶさんとの思い出を語り、河野さんは佐藤しのぶさんからも絶大な信頼を得ていたことが紹介された。
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第4部~プレゼント・ステージ
最初に、小林沙羅さんが林さんに贈るプレゼント曲として、カタラーニの「ラ・ワリー」より「さよなら故郷の家よ」。私は初めて聴いたと思うが、とても素晴らしい曲。これからも何度も聴きたい。
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続いて、望月哲也さんが林さんに贈るプレゼント曲として、プッチーニの歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」。
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そして、林真理子さんの「秘蔵の一曲」として、「今年は、明るい年に、という思いから」として、ヴェルディの歌劇「椿姫」より「乾杯の歌」の二重唱。
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アンコールが、レハールの喜歌劇「メリー・ウィドウ」よりワルツ「唇は語らずとも」の二重唱。
いつ聴いても、ジーンと来る素晴らしい曲だ。
なお、この4曲は、ステージに林さんと浦久さんが残ったかたちで歌われた。
今後も、この企画コンサートを聴かせていただきたいと思う。
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プログラム
第1部~トーク・ステージ
「林真理子さんが語る~本とオペラのある人生」
第2部~コンサート・ステージ
「林真理子さんがセレクトする~オペラの名曲たち」
1.プッチーニ:歌劇「ジャンニ・スキッキ」より
「わたしのお父さん」~小林沙羅さん
2.グノー:歌劇「ロメオとジュリエット」より
「目覚めよ、きみ」~望月哲也さん
3.グノー:歌劇「ロメオとジュリエット」より
「私は夢に生きたい」~小林沙羅さん
4.プッチーニ:歌劇「トスカ」より
「星は光りぬ」~望月哲也さん
5.マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より
間奏曲~河野紘子さんのピアノ独奏
6.プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」より
(1)「冷たき手を」~望月哲也さん
(2)「私の名はミミ」~小林沙羅さん
(3)「愛らしい乙女よ」~二重唱
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(休憩)
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第3部~クロストーク・ステージ
「オペラに生きる人たちとの対話」
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第4部~プレゼント・ステージ
1.小林沙羅さんさが林さんに贈るプレゼント曲
カタラーニ:「ラ・ワリー」より「さよなら故郷の家よ」
2.望月哲也さんさが林さんに贈るプレゼント曲
プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より
「誰も寝てはならぬ」
3.林真理子さんの「秘蔵の一曲」として。
ヴェルディの歌劇「椿姫」より「乾杯の歌」~二重唱
アンコール
レハールの喜歌劇「メリー・ウィドウ」より
ワルツ~「唇は語らずとも」~二重唱
https://www.tcf.or.jp/exhibition/020899/
https://www.tcf.or.jp/exhibition/res/2022/11/4/20221104161839.pdf
カザルスホール復活への素早い反応に期待
朝日新聞投書欄での応答
https://blog.goo.ne.jp/ryu19518/e/cf5cef3b9fefae678b0a18d943f44bf8
「連載いくつかやめます」林真理子氏、日大をどう変えるか 一問一答
https://mainichi.jp/articles/20220701/k00/00m/040/448000c
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