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2022年11月25日 (金)

砂川涼子さん~日本のこころを歌う

凛とした美しい日本語によるリサイタルだった。

砂川涼子さんによるオール日本歌曲のリサイタルを11月25日午後、Hakuju Hallで拝聴した。ピアノは同じく藤原歌劇団団員の藤原藍子さん。

「Hakujuの歌曲#2」としたホールが標記したリサイタルのタイトルは、「麗しく豊かに溢れる余韻 砂川涼子 ソプラノ ~日本のこころを歌う」で、プログラムは最下段に記載のとおり、前半が木下牧子さん作曲の作品、後半が中田喜直さん作曲の作品。

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前半と後半の印象は、多少なりと異なる印象を覚えた。

木下牧子さん特有の明るい曲想が余すところなく溢れた前半全体で感じたことを列記すると、

「伸びやかな美声」、「曲のタイトルが『曇り日なら』であっても、まるでフライヤーの色調の如く、水色の空に白い線状の雲がなびくような清らかさ」、「力みは無いのに凛とした「強さ」がある声」、「ドラマティック過ぎない中でのドラマ性のある歌唱」。

全体的に、ディティールに感情移入することよりも、1曲ごとの作品の統一感とクリスタルな感じを覚えるようなアプローチで、結果として独特の気品を醸し出していて見事だった。

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休憩後の後半、中田喜直作品においては、1曲ごとが独立した作品ということもあってか、個々の曲想に応じた~前半で控えめだった~感情移入の強さとニュアンス豊かな歌唱が印象的だった。

最初の「ゆく春」では、中間部に短いながら日本旋律の部分があり、ここでの独特のトーンとテンポ変化が印象的だった。

有名な「霧と話した」での気品ある歌唱。気品という点では「たんぽぽ」もそう。

有名な「さくら横ちょう」では、後半にある、半音での下降旋律の部分の巧みさが印象的。

「サルビア」と「髪」では、オペラアリア的な激性を感じさせる曲想と歌唱で、とても素晴らしかった。

「悲しくなったときは」で、しっとりとまとめ、アンコールで、平井康三郎さんのユーモラスな作品「うぬぼれ鏡」において、表情の変化も含めて聴衆を魅了した。

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このように、前半では客観性と明るさ、透明感、統一感ある完成度の高さということを強く感じたのに対して、後半は、ベルカント歌唱を底辺(基盤)に置きながら、日本語の美しさと、曲想のドラマ性を一層強調した歌唱、アプローチだったと感じた。

敢えて妙な例えをするなら、前半は古典的アプローチ、後半はロマン的アプローチという印象。

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なお、正規プログラム最後の「悲しくなったときは」が終わって、カーテンコールのとき、砂川さんはこの日、最初にして最後にマイクを手にし、藤原藍子さんを紹介した後、次のようなことを語られ、挨拶された。

「今日は、初めて日本歌曲だけのプログラムによるリサイタルでした。初めての「挑戦」でしたので緊張しましたが、日本人として、日本の歌曲はとても大事で魅力的だと改めて感じました。普段はヨーロッパの曲を歌うことが多いですが、これからも日本歌曲をもっと紹介し、歌っていきたいと思っています」。

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実際、砂川さんが歌われた日本語による歌曲は、独特の気品と美しさがあった。

陥りがちなヴィブラート過剰による歌唱にならず、かといって、日本語を意識するあまり、ありがちな平明過ぎる歌唱にもならず、いずれのリスクを巧みに回避しながら、それでいて自然体な流れ、バランス感覚の良さと起伏感あるドラマ性と豊かなニュアンス、透明感ある伸びやかな美声により、稀なほど美しく明瞭な日本語による歌曲を聴衆に披露したのだった。

あらためて、我が国屈指の名ソプラノ歌手であることを見事に証明したリサイタルだった。

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プログラム

1.木下牧子(詞:岸田衿子):「花のかず」より

(1)“花のかず”(2)“夢のなかの空”(3)“クルミ”

(4)“足おと”(5)“曇り日なら”(6)“竹とんぼに”

(7)“あさっておいで”

2.木下牧子(詞:能祖将夫):「なにかが、ほら」

3.木下牧子(詞:まど・みちお):「おんがく」

 (休憩)

4.中田喜直(詞:小野芳照):「ゆく春」

5.中田喜直(詞:鎌田忠良):「霧と話した」

6.中田喜直(詞:金子みすゞ):「ほしとたんぽぽ」より第12曲 “わらい”

7.中田喜直(詞:加藤周一):「さくら横ちょう」

8.中田喜直(詞:三好達治):「たんぽぽ」

9.中田喜直(詞:堀内幸枝):「サルビア」

10.中田喜直(詞:原篠あき子):「髪」

11.中田喜直(詞:寺山修司):「悲しくなったときは」

アンコール

平井康三郎(詞:小黒恵子):「うぬぼれ鏡」

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