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2022年11月26日 (土)

沖澤のどかさん指揮 東京混声合唱団~魅力的な選曲

沖澤のどかさん指揮の東京混声合唱団第259回定期演奏会を11月26日午後、杉並公会堂で拝聴した。

沖澤さんは8月に松本で「フィガロの結婚」全曲を聴いたが、先日の大西宇宙さんとの共演~新日本フィル~は都合が付かず、残念な思いをした。

東京混声合唱団(以下、「東混」とさせていただく)は久しぶりの拝聴。コロナ禍ということもあったが、5年ぶりくらいかもしれない。コロナ元年の2020年、東混が合唱用のマスクを独自に作成したことが話題になったが、この日は「全員ノーマスク」。「やっとここまで来た」という感慨があるし、オケによっては、未だに指揮者とコンマスが握手せずに、腕タッチなんぞしているケースもあるが、沖澤さんは、後述する初演作曲家の土田さんや、ピアノの泊さん、カーテンコール時には東混のコンサートマスターのソプラノ女性らと普通に握手されていた。もうそれでよい。強く支持(賛同)する。

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「沖澤さんが東混を指揮されるのは初めてかも、少なくとも、私は初めての拝聴」、ということで楽しみにしていたが、考えてみると~個人的なことになるが~私と沖澤さんの「出会い」~面識を持つきっかけ~は、私が当時在籍していた合唱団時代のことで、いわいる「下振り」として彼女が来場されたのだが、あの頃は東京芸大の大学院を卒業されて間もないころだったはずで、当然、世間的には未だ無名だった。けれど、あのときの指導シーンや言及された言葉の幾つかは、昨日のことのように覚えている。

なので、彼女は管弦楽曲だけでなく、後述のとおり合唱曲も幅広く研究されているし、邦人作も含めたオペラも一定数指揮されている。

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さて、この日の演奏曲全体の詳細は最下段に記載するとともに、以下、順次、感想を記すが、最初に概要を列記すると、モンテヴェルディのマドリガルに始まり、ストラヴィンスキーの「4つのロシア民謡」ほか、土田英介さんに2022年度委嘱した作品の初演、間宮芳生さんの「合唱のためのコンポジション」第17番、というヴァラエティに富んだもの。

このため、団員のステージ入場に先立って、沖澤さんが一人で登場し、次のような挨拶をされた。

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沖澤さんの挨拶概要

「天候不順な中、ご来場ありがとうございます。本日のプログラムは、多様な感じもあるので、少し解説というか、お話をさせていただきます。最初のモンテヴェルディですが、私は大好きで、芸大時代、モンテヴェルディを歌うためだけのチームを任意で結成して歌っていたほどでした。モンテヴェルディは神の側に立つというより、人間の感情を基盤にしており、その意味では宗教曲とは少し違います。そうした面白さを聴いていただければと思います。その次が何でストラヴィンスキーなのか、と言いますと、ストラヴィンスキーはモンテヴェルディをとても尊敬していて、彼自身も美しい合唱曲を書いているので、それをご紹介したいと思います。この短期間に、世界の、ロシアに対するイメージが大きく変化してしまいましたが、音楽をする側としては、国がどうあれ、ロシア(語)の歌そのものの価値とは関係ないことだと思います。後半の2曲目は、間宮芳生さんの曲で、私の出身である青森などに伝わる詞に基づいている曲です。今日は、荻窪駅周辺でお祭りをやっていますが、日本人(に限らないかもしれません)が、お祭りに抱く特別な感性を感じさせる曲でもあります。後半の1曲目は、土田英介先生に委嘱した作品の初演です。概要は先生がプログラムに書かれてもいますので、私が色々語るより、演奏を聴いていただけたらと思います」

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プログラムの最初はモンテヴェルディ。

マドリガル集第4巻(1603年出版)より、第16番「愛する人に抱かれて死ねるものなら」、同第1番「ああ、つたい別れ」、マドリガル集第6巻(1614年出版)より第2番「西風が戻り」の3曲。チェンバロは曽根麻矢子さん(3曲目だけだったように思う)。基本は「ア・カペラ」集。

1曲目の冒頭、沖澤さんは客席に会釈して合唱団に振り向いた瞬間から、間髪入れず指揮を開始した。

プロ合唱団の演奏で聴くモンテヴェルディの美しさは格別だ。ソプラノ8名、アルト6名、テノールとバスがいずれも6名(ずつ)の計26名の少数精鋭による美しい合唱。66年の歴史の伝統と、若いメンバーも増えた清冽で温かな響き。

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次は、ストラヴィンスキー

「4つのロシア民謡(農民歌)は1914~1917年に書かれた作品。

(1)チガシの救世主教会で、(2)オフセン、(3)カマス、(4)太鼓腹。

ストラヴィンスキー特有の土俗性もある曲集で、終曲では、アルトのソロもあり、とても素敵なソロ歌唱だった。

続く、「主の祈り」(1926年)、「アヴェ・マリア」(1934年)、「クレド」(1932年)の3曲は、なるほど、どこか、モンテヴェルディを連想するような、いずれも清冽でステキな曲だった。

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休憩後の最初は、東混の2022年度委嘱作品として土田英介さん(1963~)が作曲した「混声合唱、ピアノのための3つの小品」の初演。3曲から構成されるが、いずれも基本は無調と言える。ピアノは、泊真美子さん。

第1曲「北の海」(中原中也 詩)は、ピアノの低音に意味を持たせた、暗く、幻想的な曲想。

第2曲「花がふってくると思う」(八木重吉 詩)は、ピアノの音は限定的で、「ア・カペラ」が主体。ゆったりとした、この曲も幻想的な曲想。

第3曲「火の桜」(村野四郎 詩)は、無調ながら、ダイナミズムとスケール感があり、ピアノは散文的、オブリガード的な役割をしていた。

3曲とも、沖澤さんの指揮は極めて冷静で、現代曲の初演だとしても、終始、シンプルなタクトにより、東混の力量を信じてそれに委ねた、余裕ある指揮で、サスガの感を覚えた。

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プログラムの最後は、間宮芳生さん(1929~)の17曲ある「合唱のためのコンポジション」シリーズの最後の作品、第17番で、初演は東混により、2007年8月12日に行われている。

テキストは、江戸後期の文人、菅江真澄が、みちのくの旅の中で記録した約200年前にうたわれていた民謡の詞華集「ひなのひとふし」からと、みちのくの旅の記録の一部が使われている。

(1)七戸、(2)宇曾利(うそり)、(3)牡鹿(おしか)という東北の地名が付けられた3曲による構成で、内容的には、青森の田植唄、宮城の麦搗唄などを題材としている。

(2)宇曾利(うそり)では、多田恵子さんによる打楽器や、女声名、男声2名の独立した「歌い」も入り混じる。

こうした現代曲の演奏こそ、プロ合唱団の面目躍如で、これはオーケストラにも言えることだが、プロとアマの決定的な違いを一つ挙げろと言われれば、「現代作品における完成度の高い演奏」ということに尽きると思う。圧巻の見事な演奏だった。

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アンコールでは、沖澤さんが「(今年の)2月に(私の)娘が生まれまして」(会場から拍手)「間宮芳生先生の「おぼこ祝い唄」を演奏します」として演奏された。

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演奏曲

Ⅰ.モンテヴェルディ

1.マドリガル集第4巻(1603年出版)より

(1)第16番「愛する人に抱かれて死ねるものなら」

(2)第1番「ああ、つたい別れ」

2.マドリガル集第6巻(1614年出版)より

第2番「西風が戻り」

Ⅱ.ストラヴィンスキー

1.4つのロシア民謡(農民歌)(1914~1917年)

(1)チガシの救世主教会で

(2)オフセン

(3)カマス

(4)太鼓腹

2.「主の祈り」(1926年)

3.「アヴェ・マリア」(1934年)

4.「クレド」(1932年)

 (休憩)

Ⅲ.土田英介(1963~):2022年度委嘱作品初演

混声合唱、ピアノのための3つの小品

第1曲「北の海」(中原中也 詩)

  第2曲「花がふってくると思う」(八木重吉 詩)

  第3曲「火の桜」(村野四郎 詩)』

Ⅳ.間宮芳生(1929~):

「合唱のためのコンポジション」第17番

 (1)七戸、(2)宇曾利、(3)牡鹿

アンコール

間宮芳生(原曲:青森民謡)「おぼこ祝い唄」

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