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2022年11月13日 (日)

ランメルモールのルチア~充実の公演

NISSAY OPERA 2022『ランメルモールのルチア』のダブルキャストによる最終日の公演を11月13日午後、日生劇場で鑑賞した。事情により前置きが長くなるが、お許し願いたい。

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同劇場におけるこのドニゼッティの傑作の上演は、当初2020年に予定されながら、コロナ禍拡大の関係で、同年11月14日と15日に、ダブルキャストにより、「ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~」として全1幕上演時間約90分(休憩なし)に凝縮した特別版として上演された。

私は両組とも鑑賞したが、指揮が柴田真郁(しばた まいく)さん、演出・翻案が田尾下 哲(たおした てつ)さん、管弦楽が読売日本交響楽団で、今回の公演と全く同じ。

今回と2年前とで大きく違う点は、歌手の組み合わせだ(出演者も少し異なる)。

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2020年の11月14は、ルチアが、高橋 維さん、エドガルドが宮里直樹さん、エンリーコが大沼 徹さん、ライモンドが金子慧一さん、アルトゥーロが髙畠伸吾さん、アリーサが与田朝子さん、ノルマンノが布施雅也さん、泉の亡霊が田代真奈美さん(両日)。

11月15日は、ルチアが森谷真理さん、エドガルドが吉田 連さん、エンリーコが加耒 徹さん、ライモンドが妻屋秀和さん、アルトゥーロが伊藤達人さん、アリーサが藤井麻美さん、ノルマンノが布施雅也さん、泉の亡霊が田代真奈美さん(両日)。

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今回の公演における特に大きな変更は、エドガルドとエンリーコの入れ替わり(あるいは変更)で、とりわけ、2人のルチアの相手役であるエドガルドが変更したことだ。すなわち、

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2022年11月12日は、ルチアが高橋 維さん、エドガルドが城 宏憲さん、エンリーコが加耒 徹さん、ライモンドがジョン ハオさん、アルトゥーロが髙畠伸吾さん、アリーサが与 朝子さん、ノルマンノが吉田 連さん、泉の亡霊が田代真奈美さん(助演、両日)で、

私が鑑賞した11月13日(日)は、ルチアが森谷真理さん、エドガルドが宮里直樹さん、エンリーコが大沼 徹さん、ライモンドが妻屋秀和さん、アルトゥーロが伊藤達人さん、アリーサが藤井麻美さん、ノルマンノが布施雅也さん、泉の亡霊が田代真奈美さん(両日)。

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今回、私は高橋組の日は、都合がつかずに鑑賞していないから、当然コメントできないが、少なくとも、鑑賞できた森谷組に関しては、森谷-宮里コンビは最高の出来で、大成功の公演だったと思う。

タイトルロールのルチア役の森谷真理さんは、後述のとおり、もちろん素晴らしかったが、まずはなんと言っても、エドガルド役の宮里直樹さんから書きたい。

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エドガルド役の宮里直樹さん

豊かな声量と美声~それだけでも、多くいるわけでないほど素晴らしいレベルなのだが~それだけでなく、声に一途な誠実さを感じさせ、ピュアな明るさと健康な色気の共存、哀感と剛毅さの共存、感情に訴える表現力と、何より凛とした気品がある。今、最も充実したテナーであることは疑いようもない。

この日の成功も、彼あってのものだ。もちろん、森谷さんの勝利でもあるが、宮里さんの存在と歌唱がなかったら、それさえも、多少とも色褪せてしまったかもしれない。そのくらい、いくら絶賛しても、し足りないほどの圧巻の歌唱だった。

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ルチア役の森谷真理さん

2年前のルチアも見事だったが、この日は更に演技も含めた「ふり幅」の広さ、スケール感を感じた。

高音を含めた技巧の確かさ、見事さは言うまでもないが、メゾに近い憂いのあるトーンも有する森谷さんは、「巧みさ」とか「凄さ」にも増して、ルチアという「女性の哀しみ、寂しさ、憤り、当惑感、孤独感、絶望感」と言った「感情の弱さと移ろい、儚さ」を聴衆に伝える力の見事さに魅了される。

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「ルチア」に限らず、森谷さんには、レパートリーの広さにも驚かされる。

昨年の「ルル」。今年3月には、メゾの鳥木弥生さんとのデュオというアンサンブルを披露し、4月には「ばらの騎士」でのマリアンネ~もちろん、元帥夫人も歌える人だ~、5月には、大西宇宙さんとの圧巻のヴェルディ特集デュオコンサート、6月の紀尾井ホールでのリサイタルでは、シューマン(夫妻)とマーラー(夫妻)の歌曲の抒情的な世界を披露したかと思えば、7月には「イゾルデの愛の死」に続いて、ツェムリンスキーの「抒情交響曲」を歌われた。そして8月には、R・シュトラウスの「4つの最後の歌」と「ヴォツェック」の3つの断章。

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私が聴いていない演目では、今年5月にドイツでの「蝶々夫人」、7月には大阪でバーンスタインを歌い、8月には水戸で、モーツァルト、シューベルトの歌曲とプッチーニのアリアを歌われている。10月には、ヘンデルの「ジュリオ・チェザーレ」でクレオパトラを歌われたばかり。

正に「バロックから現代モノまで」の多くを歌える、歌っている、驚異的なレパートリーの持ち主。「ノドと体調は大丈夫なのだろうか?」、と心配になるほど、過密なスケジュールをこなす体力と気力。

テノールの宮里さん同様、今、ノリに乗ったソプラノ歌手だ。

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エンリーコ役の大沼 徹さんは、いつもながらではあるが、安定した格調高い声で、とても良かった。

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アルトゥーロ役の伊藤達人さんは、ストレートな声が良かった。

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そして、終盤に進行の上でも重要な役と言えるライモンド役の妻屋秀和さんの重量感、存在感も、この公演の成功に大きく寄与している。いつもながら素晴らしい声と充実の歌唱。

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柴田真郁さんの指揮は、落ち着いた、自信を感じさせる指揮で、とても良かった。

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C.ヴィレッジシンガーズによる合唱も良かった。

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田尾下 哲さんによる演出は、狭い空間を効率的かつ効果的に設定しての、敢えて「暗さ」を基調としたような、格調高い舞台演出で、印象的だった。

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日生劇場について

最後に、毎回、日生劇場に来て思うことで、以前も1回ならず書いたと思うが、今回も記しておきたい。

ほとんどのコンサートホールやオペラハウスは、足元と前の席の背もたれの間が狭い。旅客機同様、客の快適さより、運営会社の「収益至上主義」を感じる。

この日生劇場はとりわけ狭く、人が通り抜けるスペースなど、ほとんど無いと言えるほどだ。膝小僧と前の席の背もたれの間が数センチしかない。

まるで、「休憩の終わりも含めて、通路から奥の席の人は、一番手に横奥に入らないと(座らないと)座れませんよ」、とでも言っているかのような狭さだ。奥に入る人が「すみません」を何度も(必須的に)言わねばならない最たるホールだ。

私は「すみません」と言いながら、人の足元をすり抜けて、奥の席に座ることが嫌いなので、どのホールでも、通路に面した席を確保することを常としているから、今回も私自身は(今更感もあり)特に気にならなかったが、それでも、日生劇場は信じられないくらい狭すぎる。

トイレは数年前にキレイになったとはいえ、個数的に依然として少な過ぎるし、内装も1960年代感のままだし、音響はデッド、ときているのだから、いい加減、そろそろ完全建て替えをするべきだろう。日本生命さんって、お金持ち企業でしょうに。

周辺のビルや街路は年々キレイになっているのに比べ、日生劇場だけが、内装も含めて、1960年代のままであることが、非常に残念だ。

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指揮:柴田 真郁

演出:田尾下 哲

管弦楽:読売日本交響楽団

【キャスト】      11月12日(土) 11月13日(日)

ルチア      高橋 維     森谷 真理

エドガルド    城 宏憲     宮里 直樹

エンリーコ    加耒 徹     大沼 徹

ライモンド    ジョン ハオ   妻屋 秀和

アルトゥーロ   髙畠 伸吾    伊藤 達人

アリーサ     与田 朝子    藤井 麻美

ノルマンノ    吉田 連     布施 雅也

泉の亡霊       田代 真奈美(助演、両日)

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