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2022年10月30日 (日)

佐渡裕+さだまさし+新日本フィル

佐渡裕さん+さだまさしさん+新日本フィル

すみだトリフォニーホール開館25周年記念演奏会

「佐渡裕×さだまさし×新日本フィル×すみだの第九」と題された、すみだトリフォニーホールの開館25周年を祝うコンサートを10月30日午後、同ホールで拝聴した。これは、新日本フィルハーモニー交響楽団の創立50周年と併せての公演とも言える。また、タイトルの中の「すみだの第九」は、1985年から墨田区で開催されてきた「五千人の第九」も掛けていることが判る。

なお、佐渡さんは、来年4月、新日本フィルの第5代音楽監督就任が決まっている。

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第1部は「さだまさしmeets新日本フィル スペシャルステージ」と題しての、さださんと佐渡さんによるトークと演奏。

昔から、さだまさしさんの歌は大好きだったし、CDも複数持っているが、ライヴを聴くのは、この日が初めてだったので、嬉しかった。

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さださんの愉快トーク例を2つ紹介すると、

「オーボエが偉そうにチューニングを開始するので、(昔は)オーボエ(の奏者)が一番偉いのかと思っていたら、オーボエは音程的に一番不安定で、合わせ難いから、その楽器に合わせようとするようになったのだと(新日本フィル創設者の一人)山本直純さんから教えてもらいました。皆さん、よ~く、オーボエといてください」(会場、爆笑)。

「東日本大震災のとき、佐渡さんから直ぐ電話が来て、音楽家は無力だ、と、泣くんですよ、この巨体が(笑)。なんで僕の所に直ぐ電話してきたのか、よほど友達がいないんだな、と」(笑)。

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1.「北の国から」

まず、オケだけでの演奏。途中からさださんが登場して歌。

2.「いのちの理由」。名曲ですね。素晴らしい歌。

3.「案山子(かかし)」。これも良い歌。

佐渡さんがフルートソロで少し吹いたと思ったら、なんと、ソロで歌い出した。続いて、さださんが引き取り、その後、ハモッたりしながら、楽しい「合わせ」の演奏が終わった。

4.最後は名曲「風に立つライオン」。素晴らしい名曲。2013年の演奏映像を添付します。

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5.ラヴェル:「ボレロ」

さださんのコーナーが終わり、前半最後は「ボレロ」で終わった。

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休憩後の第2部はベートーヴェンの第九より第4楽章

ソプラノは、私が強く応援している歌手の一人である高野百合絵さん。

メゾも、昔からよく存じ上げている清水華澄さん。

テノールは、美しく声量ある大好きな西村 悟さん。

バリトンは、高野さん同様、新進気鋭、売り出し中の黒田祐貴さん。

合唱は、この公演のために、墨田区在住・在勤・在学者からオーディションで選ばれたソプラノ13名、アルト19名、テノール14名、バス11名(計57名)の「すみだトリフォニーホール開館25周年記念合唱団」と、ご存じ栗友会合唱団、そしてすみだ少年少女合唱団も加わった。

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昨今なぜか流行りのベーレンライター版ではなく、ブライトコプフ版での演奏で良かった。判る人は、2か所、聴いた(確認する)だけで、2つの版の違いは判りますね。

それと、昔から論争のある、テノールソロの直前、330小節の、ティンパニのディミヌエンドは、ディミヌエンドさせず、「ff」のままにした。賛成です。支持します。

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バリトンの黒田祐貴さん。

黒田さんの第九は初めて聴くので、どんな感じだろうと興味津々。

良かった。少しインテリっぽさがあったが、格調高いレスタティーヴォ。声も、だんだん、お父様の博さんに似て来た感じがする。

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テノールの西村 悟さん。

美しい声と声量豊かなテナー。「alla Marcia」のソロは、彼の美声を存分に生かすなら、もうほんの少しだけ、ゆったりしたテンポにしたようが良かったと思う。「テンポに遅れまい」の気持ちが感じられてしまい、それは感じさせない歌唱のほうが良いからだ。

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ソプラノの高野百合絵さん。

高野さんの第九も初めて聴くので、楽しみだった。

前半も良かったが、特に、後半の2分の2拍子、「Allegro ma non tanto」からの歌唱がステキだった。

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メゾの清水華澄さん。

いつもながら、余裕の見事さ。

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合唱も良かった。いつも私がチェックポイントの一つとしている、631~632小節の「Ihr stürzt nieder」の「stürzt」の子音も明瞭だった。

児童コーラスを入れるのの大賛成。特別、際立つわけではないが、ソプラノの合唱のトーンをソフトにする効果が有るように思える。

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アンコール

まず、3回目くらいのカーテンコールの流れのまま、ソリスト4人による「椿姫」より「乾杯の歌」。

続いて、佐渡さんの挨拶の後、さださんが再び登場して、「主人公」という歌。

最後に、全員で瀧 廉太郎「花」。まず、さださんが最初のフレーズを歌った後、4人のソリストがマイクを手に、乾杯の歌」同様、男声2名と女声2名が交互に歌い、さださんも再度入り、合唱も入って、全員による歌唱で終わった。

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プログラムと出演者一覧

第1部:さだまさしmeets新日本フィル スペシャルステージ

佐渡裕[指揮]新日本フィルハーモニー交響楽団

さだまさし[スペシャルゲスト:歌]

1.北の国から

2.いのちの理由

3.案山子(かかし)

4.風に立つライオン

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5.ラヴェル:「ボレロ」

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第2部:ベートーヴェン:交響曲第9番より第4楽章

高野百合絵(ソプラノ)、清水華澄(メゾ・ソプラノ)

西村 悟(テノール)、黒田祐貴(バリトン)

すみだトリフォニーホール開館25周年記念合唱団

栗友会合唱団、すみだ少年少女合唱団

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アンコール

1.ソリスト4人による「椿姫」より「乾杯の歌」

2.さだまさし「主人公」

3.全員で瀧 廉太郎「花」

2022年10月29日 (土)

395人の合唱によるヴェルディ~レクイエム

「DIAMOND CONCERT Vol.Ⅱ」と題された合唱団「Diamond Family」によるコンサートを10月29日夜、ミューザ川崎シンフォニーホールで拝聴した。

曲はヴェルディの聖歌四篇より「テ・デウム」と「レクイエム」。

指揮は松村 努さん。管弦楽はグロリア室内オーケストラ。

松村さんは、私が所属する合唱団「鯨」の指揮者(の一人)でもあるので、松村先生と呼ぶべきだろうが、今回は他団のコンサートを指揮された演奏を聴かせていただいた、という客観的立場から、敢えて以下、松村さんと記載したい。

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プログラムによると、2016年1月に、松村さんが指導する13の合唱団が集い、約400名による「カルミナ・ブラーナ」を演奏。2021年に第2回を計画しながら、昨今の状況で中止(延期)となり、この日ようやく第2回の演奏会を迎えたとのこと。

現在、「Diamond Family」は12の団体から構成されているが、この日は、グロリア少年合唱団を除いた11の合唱団による、壮観な、壮大な演奏となった。

11の団体名と参加人数は最下段に記すが、計算すると合計395人の大合唱であることが判った。

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ソリストは素晴らしいメンバーで、

ソプラノが小林厚子さん、メゾソプラノが中島郁子さん。

テノールが笛田博昭さん、バリトンが上江隼人さん。

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1曲目:ヴェルディの聖歌四篇より「テ・デウム」

1980年、私が大学3年のときに演奏した懐かしい曲で、そのときの指揮者は、デビュー間もなかったころの、現在、合唱団「鯨」の常任指揮者でもある黒岩英臣先生だった。

私は合唱団員として歌っただけでなく、学生指揮者として、練習指揮(いわゆる下振り)を担当したので(第3曲の女声単独曲「聖母への讃歌」はカットしての演奏)、第1曲の無伴奏曲(ア・アペラ)「アヴェ・マリア」がとても難しい曲であることや、特にこの第4曲(終曲)「テ・デウム」が、とても魅力的な曲であることはよく知っている。

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印象的だったのは、冒頭のバスパートによる「Te Deum laudamus」の「~mus」のAの音を終止せず、ロングトーンで伸ばしたまま(和声を創り、下支えに響かせるかたちで)、続くテノールパートによる「te Dominum cofitemur」を歌わせたことだ。これは楽譜とは違うが、素晴らしいアイデア。グレゴリア聖歌の雰囲気が一段と強調されて印象的だった。

合唱では、特にアルトパートが充実して響いていたことが印象的だった。

集結部にソプラノの短いソロ(掛け声のようなフレーズ)があるのだが、歌われたのは、プログラムによると、湘南フィルハーモニー合唱団等のヴォイストレーナーで、今回は「Combinir di Corista」の一員として歌われた斎藤三和子さん。とても美しく、よく響く声で、見事だった。

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休憩後は、

ヴェルディの「レクイエム」。

まず、オーケストラが素晴らしかったことから書こう。

例えば「Offertorio」冒頭のチェロのパートソロ。音程もトーンも見事。

「Dies irae」でのティンパニとバスドラの充実。

全く「割れない」トランペット群。

「Libera me」の、あの感動的なソプラノソロと「ア・カペラ」合唱によるAndanteの直前部分、113~128小節における、トロンボーンの低音の充実。

全体において、木管群もとても美しかった。

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次は、合唱について

多くの場面でも、弱音に細心の注意を払い、強音もソフトにして、芯を保ちながら「まとまり感」のある合唱で、とても良かった。男声の人数が少ない割には、特別には不足感を感じさせず、総和としてのトーンに柔軟性と統一感がしっかり感じられる合唱だった。

「Libera me」の179小節からのフガート進行も、各パートに不要な力みはなく、キチンと安定感を持ってクライマックスまで進行した。

人数が多いから、迫力があるのは当然だが、先述のとおり、多人数でも弱音の丁寧さを含めて、総じて、とても立派な合唱演奏だった。第3回公演が楽しみだ。

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ソリストについて

ソプラノの小林厚子さん

いつもながらの、気品と声量がある歌声が素晴らしい。「Libera me」132小節からのAndanteでは、少し疲れがあったのか、フレーズが短くなりがちで、音程のブレも微妙に生じたものの、170小節の「ハイB(変ロ)」は、完璧に美しく決めた。

続く、合唱のフガートと掛け合う262小節から、とりわけ、329小節からエンディグまでは、充実の、感動的な歌唱だった。サスガでした。

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メゾソプラノの中島郁子さん

憂いと哀感のある魅力的なトーン。シリアスな雰囲気も創り出す歌唱力。中低音域だけでなく、メゾにしては比較的高音域もある「Lux aeterna」においても、極めて魅力的な美声で歌われた。いつもながらではあるが、この日も、充実の感動的歌唱の連続だった。

「レクイエム」の最後は、ソプラノで感動的に締めくくられるとはいえ、全体としては、4人のソリストの中での主役は、間違いなくメゾソプラノだ。この日もそれを実感させてくれる感動的な歌唱だった。

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テノールの笛田博昭さん

いつもながら声量が素晴らしい。「Offertorio」120小節からの「Hostias~」は、いささか、オペラアリアチック過ぎてはいたが、それが笛田さんの魅力でもある。

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バリトンの上江隼人さん

この曲のバリトンソロに、重厚感を求める人には、やや明る過ぎ、ソフト過ぎたかもしれないが、終始、安定感ある歌唱はサスガだった。

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「Diamond Family」を構成する合唱団と、参加人数は以下のとおり。

Ensamble Calmo~女声合計25名

アンサンブル・ピノ~女声合計9名

アンサンブル藤沢~女声合計4名

コール高森~女声合計19名

Combinir di Corista~ソプラノ11名、アルト7名、テノール9名、バス10名の合計37名

女声合唱団「松(SHO)」~女声合計33名

湘南はまゆう~女声合計14名

湘南フィルハーモニー合唱団~ソプラノ46名、アルト48名、テノール15名、バス24名の合計133名

Philia Messiah Singers~ソプラノ27名、アルト24名、テノール11名、バス10名の合計72名

ブルーポロニア~女声合計18名

緑フラウエンコール~女声合計31名

総合計395名

宮谷理香さん「美女と野獣」に登場

宮谷理香さんが「美女と野獣のトーク&コンサート」に登場

真嶋雄大さんが企画運営する「美女と野獣のトーク&コンサート」を10月29日午後、ヤマハ銀座コンサートサロンで拝聴した。

この日のゲストは宮谷理香さんで、テーマは「変奏曲」。

真嶋さんはプログラムに「ピアノ音楽の極致、色彩と香り、変奏曲の愉悦」と題されたが、宮谷さんとしては、11月23日発売の「VARIATION」と題した新譜にちなんでの選曲でもある。

宮谷さんの魅力は、楽天的と言えるほどの瑞々しさ、解放感、スケール感、自在さにあると思う。後述のとおり、この日は、更に即興性を強く感じさせる演奏が多かった。

ピアノは、この日のために、ベーゼンドルファー東京店から特別に臨時搬入された「Model 280VC ヴィエナコンサート」という、ベーゼンドルファー最新のフルコンサートグランを使っての演奏。

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この日の演奏曲は以下のとおりだが、9月の田部京子さんのときと同様、それぞれの曲の特性などの解説や周辺の逸話等、二人のトークの内容がとても勉強になった。

1.モーツァルト:デュポールのメヌエットの主題による9つの変奏曲 ニ長調 K.573

2.モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番(トルコ行進曲付き)イ長調 K.331

3.シューベルト(リスト編曲):「ます」

 (休憩)

4.ショパン:ドイツ民謡「シュヴァイツェルブープ(スイス少年)」による変奏曲 ホ長調(遺作)

5.ショパン:モーツァルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」の「ラ・チ・ダレム・ラ・マーノ(奥様、お手をどうぞ)」による変奏曲 変ロ長調 作品2

6.ショパン:ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op.64-2

7.ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

アンコール

1.ショパン:子犬のワルツ

2.ショパン:ノクターン 嬰ハ短調 遺作

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モーツァルトのピアノ・ソナタ第11番の演奏

第1楽章~カンタービレもさることながら、リズムの明瞭化が印象的。

第2楽章冒頭も同じことが言える。

第3楽章では、長調に転じた場面での左手の(部分的)強調が即興的で新鮮。

真嶋さんとのトークで刺激されたのか、全体的にも、いつにも増して、即興感がある、個性的で魅力的な演奏だった。

真嶋さん「録音すればいいのに。今の演奏は、モーツァルトがこの楽器を知って、今、弾いたかのようだった。

宮谷さん「最大級の誉め言葉と受け止めます」

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ショパンがワルシャワ音楽院在学中の17歳のとき、校長から与えられた主題である「ドン・ジョバンニ」の「ラ・チ・ダレム・ラ・マーノ(奥様、お手をどうぞ)」による変奏曲は、大曲にして技巧的な、正に野心的な作品。後にこの曲を知ったシューマンが、「諸君、脱帽したまえ。天才だ」と言ったのは有名な逸話。

演奏もダイナミックで、生き生きとして素晴らしかった。

2022年10月28日 (金)

二期会「音密」ヴォーカル・ユニット

オペラ歌手四重唱による「群青」と「いのちの歌」他

二期会「音密」ヴォーカル・ユニットによるコンサート

2020年にウンザリするくらい言われた「3密」を逆手にとって、「音楽はたくさんあって良いよね」のコンセプトから「音密」とネーミングされたヴォーカル・ユニットの「音(おん)meetsフレンズ」コンサートを、10月28日夜、関内ホール(横浜市市民文化会館関内ホール)で拝聴した。

主催者側で「世界と日本の名曲で巡る音楽紀行」と題されたこのコンサートは、社会福祉法人「横浜いのちの電話」の支援会ボランティアにより企画運営される秋の催し。

「横浜いのちの電話」は言うまでもなく、自殺防止を防ぐための相談窓口で、この横浜の組織は、1980年9月に創設され、日本語電話相談は24時間体制で対応をされている。

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「音密」ヴォーカル・ユニットのメンバーは、

ソプラノ:三宅理恵さん、メゾソプラノ:小林由佳さん

テノール:大槻孝志さん、バリトン:与那城敬さん

ピアノは指揮者でもある佐藤正弘浩さん

MCは、5人が交代で行った。以下の通り、ヴァラエティに富んだ盛り沢山のプログラム。

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第一部

~音meets歌曲で旅する世界~ソロ

「荒城の月」~与那城さん

「カタリ・カタリ」~大槻さん

「思い出のサンフランシスコ」~三宅さん

「ジュ・トゥ・ヴ」~小林さん

「ジグノペディ」~佐藤さんのピアノソロ

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~音meets“ふるさとの四季”~四重唱

「ふるさとの四季(抜粋」~源田俊一郎編曲

(1)春の小川

(2)われは海の子

(3)紅葉(もみじ)

(4)雪

(5)故郷(ふるさと)

特に、ア・カペラから開始した「故郷」が、アレンジも含めて素敵な四重唱だった。

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(休憩後)

第二部

~音meets名作ミュージカル~四重唱

「サウンド・オブ・ミュージック」

「サウンド・オブ・ミュージック」、「私のお気に入り」、「ド・レ・ミの歌」、「すべての山に登れ」

どれも大好きな素敵な曲で、楽しめた。

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~音meetsジャポニズム&ジャズ~四重唱

若き作曲家で、ジャズピアニストでもある森田花央里さんによる

(1)「Sakura and Blues“さくら”」(日本古謡)

(2)「Akatombo and Ballad“赤とんぼ”」(山田耕筰)

これは、神奈川県立音楽堂の委嘱作品「Song Circle, Japonism and Jazz」からの2曲。

全曲の初演は、2019年8月23日、山田和樹さん指揮、東京混声合唱団により行われている。

特別、奇抜な曲想ではなく、合唱を、ジャジーなピアノが彩った曲で、オシャレな2曲だった。

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~音meets日本の心~四重唱

(1)「川の流れのように」(見岳章作曲、信長貴富編曲)

(2)「愛燦燦」(小椋佳作曲、信長貴富編曲)

(3)「上を向いて歩こう」(中村八大作曲、横山潤子編曲)

いずれも、編曲も含めて、素敵な四重唱だった。

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~音meets復興、受け継ぐ“いのち”~四重唱

(1)「群青」(小田美樹作曲、信長貴富編曲)

(2)「花は咲く」(菅野よう子作曲、郷間幹男編曲)

(1)について、小林由佳さんが、福島の合唱団と一緒に歌った際にこの曲を初めて知り、号泣してしまった逸話を披露。「今日は、泣かずに歌うのが私の使命です」としたこの曲が、この日の白眉であり、聴衆にとっても、心象的な頂点だったと言える。

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今では全国的に有名で、ユーチューブでもたくさんの演奏が聴ける「群青」について。

福島県南相馬市立小高中学校平成24年度卒業生たち。津波で2人の同級生を亡くしたり、遠い疎開先から今もなお戻ってこない同級生などを思ったりする3年生の思いを、同校の音楽教諭、小田美樹さんが地道に書き留めていき、それをつなぎあわせ構成して、作曲。

2013年3月に京都府長岡京市で行われた、東日本大震災復興支援コンサート「Harmony for JAPAN 2013」ハーモニーコンサートで、小高中学校の平成24年度卒業の3年生を始めとする、小高中学校特設合唱団が編曲前のオリジナル・ヴァージョンの「群青」を歌った。「群青」は大反響を呼び、会場で聴いていた大阪音楽大学学長で、びわ湖ホール声楽アンサンブル専任指揮者、大阪センチュリー合唱団指揮者等の本山秀毅さんが、同席していた信長貴富さんに編曲を推し、信長さんが混声3部合唱、混声4部合唱、同声2部合唱の3ヴァージョンに編曲した。

(2)次の「花は咲く」は、郷間幹男さんの編曲が良かった。

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アンコール~四重唱

1.いのちの歌

そしてこの歌こそ、このコンサートの主催者のことを思えば、この日に、最も相応しい曲であったと言える。「群青」とともに感動的な名曲。

2.愛の讃歌

これもまた違った意味で、愛という生きる希望を歌った曲である点で、素敵な選曲だった。

オペラ歌手によるヴォーカル・ユニットが増えてきたのは嬉しいし、オペラアリアだけでなく、こうした日本の歌や、ポップス系の歌も、どんどん歌って欲しい。そう思っているのは、私だけではないと思う。

これからに更に期待したい。

2022年10月23日 (日)

チョン・ミョンフン指揮「ファルスタッフ」演奏会形式全曲

チョン・ミョンフン指揮による東京フィルハーモニー交響楽団の演奏で、ヴェルディの歌劇「ファルスタッフ」の演奏会形式全曲演奏を、10月23日午後、オーチャードホールで鑑賞した。

後述のとおり、大正解の見事な配役による成功した公演だった。

第977回オーチャード定期演奏会としての演奏で、20日はサントリーホールで(第976回サントリー定期)、21日は東京オペラシティで(第150回東京オペラシティ定期)で同じく演奏しているが、そちらは聴いていないものの、ステージの広さ(特に奥行の広さ)的には、この日が一番効率良く演奏できたのでは、と想像する。

オケを通常より奥に配置し、指揮台の左右であるステージの客席寄りスペースを、かなりの広さで有効に使い、演奏会形式ではあっても、ほとんど、オペラの上演に準じると言えるほどで、「オペラを鑑賞した」に近い感覚、感想を抱いた。

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悲劇的オペラを作曲してきたヴェルディの最後の作にして喜劇。この日は、とにかく、配役が素晴らしく、全ての役が最適任という印象を抱いた。

チョン・ミョンフン氏は指揮だけでなく、演出も兼ねており、最初に登場した際も、大きな箒(ほうき)を手にし、ステージや指揮台を掃くシーンから開始したり、指揮している最中も、場面によっては、小道具を使ってファルスタッフ役のカターナ氏とやりとりをするなど、「しばしば演出に入り込んでいた」のが面白かった。

指揮も、この作品を100回くらい振っているのでは、と思えるくらい、知り尽くした感のある、自在で余裕ある指揮が見事だった。パリ・オペラ座バスティーユで音楽監督を1989年から1994年まで務めるなど、オペラ公演自体にも相当キャリア積んできた余裕が感じられる指揮だった。

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オケも、オペラ演奏では、国内最多の演奏経験があるオケだけに、柔軟にして完璧な演奏で素晴らしかった。

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開始早々の、カイウスとファルスタッフの美声に直ぐに魅せられ、この公演の成功を瞬時に確信した。

カイウス役のテノール、清水徹太郎さんの朗々とした明るい声がステキだ。とても良い声。

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主役のファルスタッフ役のバリトン、セバスティアン・カターナ氏は初めて聴いたが、こんなに素晴らしいバリトンは少ない、と言えるくらい素晴らしい。申し分のない豊かな声量。ソフト感のある重くない声。格調高い美声。素晴らしいバリトンだ。「アリーチェは、まるでこう言っているようだった」での裏声による歌唱も、とても美しかった。「こんなに魅力的な歌手がいたんだ」というくらいの大発見、大収穫。よくぞ起用してくれたとミュンフン氏に感謝する。

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出番的に2人に続いて聴かせてくれるのは、バルドルフォとピストーラ。

バルドルフォ役のテノール、大槻孝志さんは、明るく、通りの良い、品の良い美声。凛とした感もあって素敵。

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ピストーラ役のバス・バリトン、加藤宏隆さんの重厚感ある声に驚いた。以前も拝聴したことはあるが、こんなに(良い意味で)重い、凄みのある声だっけ、と、衝撃を覚えたくらい、とても印象的な声。魅力的だった。

第1幕の後半からは女声陣の登場だが、先に男声歌手について以下記載する。

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フェントン役のテノール、小堀勇介さんは、若々しい青年の声で、稀有なくらいの素晴らしい美声。タミーノが似合いそう。このレベルでの伸びやかさ、通りの良さのテノールは少ない。実に魅力的。これからも、もっともっと聴きたいテナー。聴きたい歌手の一人。

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フォード役のバリトン、須藤慎吾さんは、もはやベテランの域の歌手。役柄的に、いつもの野性的な魅力を抑え、誠実で、嘆きの感情表出に巧みな歌唱と演技で、聴衆を魅了した。

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そして女声陣。

女声の主役。アリーチェ役のソプラノ、砂川涼子さんは、いつもながらの素晴らしさ。声の響きの豊かさと強さ。チャーミングさ。実に魅力的な天性の歌手。第3幕の第1部も第2部も、存在感が凄かった。

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ナンネッタ役のソプラノ、三宅理恵さんも大好きな歌手。フェントンとの二度のやりとりにおける、ロングトーンの見事さ、その完璧な美しさ。第3幕第2部での有名な、長大なアリアも実に魅力的だった。

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クイックリー夫人役のメゾ・ソプラノ、中島郁子さんは、もう「クイックリー夫人のイメージ通り」の潤いあるメゾの声と存在感で、私は彼女が歌う場面では、ずっと、クリスタ・ルードヴィヒを連想して聴いていた。いつもながらではあるが、本当に魅力的なメゾ。

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メグ役のメゾ・ソプラノの向野由美子さんは、役柄的に他の3人ほどは目立たない役だが、第2幕第2部で、その魅力を十分伝えていた。

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ミュンフン&東京フィルによる演奏会形式オペラ公演は、来年の7月に、「オテロ」を予定しているとのことで、今から楽しみだ。

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第977回オーチャード定期演奏会

指揮・演出:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)

ファルスタッフ(バリトン):セバスティアン・カターナ

フォード(バリトン):須藤慎吾

フェントン(テノール):小堀勇介

カイウス(テノール):清水徹太郎

バルドルフォ(テノール):大槻孝志

ピストーラ(バス・バリトン):加藤宏隆

アリーチェ(ソプラノ):砂川涼子

ナンネッタ(ソプラノ):三宅理恵

クイックリー(メゾ・ソプラノ):中島郁子

メグ(メゾ・ソプラノ):向野由美子

合唱:新国立劇場合唱団

2022年10月21日 (金)

澤江衣里さん「星の組曲」~サロン・コンサート

ソプラノの澤江衣里さんが、「星の組曲」と題したサロン・コンサートを、10月21日夜、東武東上線の中板橋駅近くの「マリーコンツェルト」で開催された。ピアノは、古野七央佳(なおか)さん。

「星」をテーマにした歌の全曲は、最下段に記すが、特に印象的だった点を記載する。

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最初は、林 光さんの「星めぐりの歌」で開始。曲想からか、澤江さんの歌声には、童声を含めた質感を感じて素敵だった。

続く3つのドイツ歌曲の中では、とりわけ、シューマンの「私の美しい星」が、スケール感があって素晴らしかった。

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前半最後の曲であるモーツァルトの「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」。

第1楽章のアレグロでは、アジリタ歌唱の流麗さがステキだった。

第2楽章のアンダンテは、明るいトーンと喜びの感情がよく出ていて、澤江さんの特色と魅力が十分表出されていた。

第3楽章の有名な「アレルヤ」では、端正さとスケール感が同居するような魅力的な歌唱だった。

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休憩後の最初は、古野さんのピアノソロで、モーツァルトの「きらきら星変奏曲」。キラキラ感ある各返送と、エンディングでのダイナミズムが良かった。

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プログラム最後の寺島陸也さん作曲、歌曲集「星の組曲」に先んじて、その、谷川俊太郎作詩の「星の組曲」を、フリーのナレーターで、このコンサートの企画者でもある、音楽イベント企画会社、(株)フォルモントを主宰されている神尾順子さんが朗読された。落ち着いた、品のある朗読。

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そして、寺島陸也さんの歌曲集「星の組曲」。

下記のとおり、5曲から構成される曲。

澤江さんによる日本歌曲は、独特の透明感があって素晴らしい。そのまま、心行くまま楽しめばよいから、その特色を分析する必要などないと思いつつ、少しだけ記す。

1曲目の「星めぐりの歌」で書いた「童声」というのとは違うが、オペラティックな「大人な声」とはもちろん違う。

強いて言えば、10代の声を連想し、ヴィブラートは当然控えめで、むしろ、ノン・ヴィブラートを基本としつつも、そのヴィブラートも場面(部分)において、サジ加減によって、トーン変化を巧みに、あるいは、自然に付けていたのがステキだった。

更に強く感じる点は、「歌唱」には違いないが、澤江さんの日本歌曲の歌唱の根底には、あるいは「スピリット」には、「語り」が常に存在する、ということ。「朗読」、「語り」の延長線に、爽やかで気品あるトーンが添えられ、歌われる。そういう魅力を特に感じさせるし、この「星の組曲」も正にそうした魅力が溢れていた。

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アンコールは、もはやクラシック歌手の定番とも言える、武満 徹の「小さな空」により、「The Last Day of My 30s Concert」を締めくくられた。

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1.林 光:「星めぐりの歌」

2.F・シューベルト:「夜と夢」D.827

3.R・シューマン:「恋のたわむれ」Op.101より

  第4曲「私の美しい星」

4.R・シュトラウス:「5つの小さな歌」Op.69より

  第1曲「星」

5.山田耕筰:「鐘が鳴ります」

6.P・マスカーニ:「あなたの星」

7.C・ドビュッシー:「星の夜」

8.モーツァルト:「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」K.165

 (休憩)

9.ピアノソロで

  モーツァルト:「きらきら星変奏曲

10.谷川俊太郎「星の組曲」~朗読:神尾順子

11.寺島陸也:歌曲集「星の組曲」

  (1)星の囁き (2)星の勲章 (3)星と砂 (4)私の星座 (5)星の旅

アンコール

武満 徹:「小さな空」

2022年10月18日 (火)

二期会創立70周年記念 ガラ・コンサート

素晴らしい司会進行も含めて堪能

二期会の創立70周年記念ガラ・コンサートを10月18日夜、東京文化会館大ホールで拝聴した。

6月にもサントリーホールのブルーローズで「二期会デイズ」として3日間、記念する公演があったが、この日は、正にお祝いとしてのガラ・コンサート。全演奏曲は最下段に記載するとして、まずは出演者をプログラムに記載の順(敬称略)で記す。

ソプラノ:幸田浩子、佐々木典子、田崎尚美、種谷典子、宮地江奈

メゾソプラノ:池田香織、加納悦子

テノール:樋口達哉、福井 敬、山本耕平

バリトン:今井俊輔、宮本益光、与那城 敬

指揮:角田鋼亮、管弦楽:東京交響楽団

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司会進行は、宮本益光さん。このことを真っ先に書きたい。

宮本さんは先月、「ハンサム四兄弟」のコンサートでも「長男」として司会をされ、ユーモアある、巧みな司会ぶりを私は既に体験済だったが、この日は、「名誉の大舞台」とあって、更に絶好調だった。と言っても、気負いなど全く感じさせず、9月の埼玉県内の中ホールのときと全く変わらない、自然体な口調が見事なのだ。

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記念すべきコンサートに相応しい司会で、各場面でのコメントが面白いだけでなく、内容の全てが印象的で、二期会愛、いや、全ての歌手、器楽奏者も含めた全ての音楽家に配慮し、鑑みた見地からの思いに溢れていて、本当に素晴らしかった。全発言を録音しておきたかったくらいだ。

その中の1つを紹介すると、「二期会には会員が2.700人以上います。(よって)今日は出演されてないけれど、「あの人も出て欲しい、この人も」という素晴らしい歌手が何十人、何百人といます。僕ですらそう思うくらいですから、きっと皆さんの中にも、ご贔屓の歌手がいて、「なんだ、今日、出ていないのか」と思っている人も多いのでは」。

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そう、私もその一人。というか、この日、会場に、もし1,500人いたとしたら、1,500人がそれぞれ、「誰だれさんは出ないのか。なんで?」、という思いもあったに違いない。

二期会としては、「なんで?」と言われても、人数制限、時間制限があるし、オファーしても、その歌手の都合が悪い場合だって当然あるだろう。それでも、きっと、「1,500人には、1,500とおり(以上)の出演者の組み合わせがある」に違いない。それほど、たくさん素晴らしい、素敵な歌手がいらっしゃるし、もちろん、二期会だけでなく、藤原歌劇団にも、民間のマネジメント会社所属の中にもおられる。

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ユーモアも2つ紹介。

「与那城敬さんは、背が高くてカッコ良くて、歌が上手いから嫌い」(~ソデを向いて「ウソですよお~」)と会場を笑わせたり、「山本耕平さんは、アメリカでの「ラ・ボエーム」公演から帰国したばかりですが、「アメリカでは、キスシーンは、本当にキスしたんです」だって。(だから役得の多い)テノールは大嫌い」と笑わせた。

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1.「フィガロの結婚」序曲で開始。

2.歌手のトップバッターは、その宮本さんによる、モーツァルトの『コジ・ファン・トゥッテ』より“彼に向けてください、そのまなざしを”

雰囲気のよく出た歌唱。

3.種谷典子さんによる、モーツァルトの『フィガロの結婚』より“とうとう、うれしい時が来た”

丁寧な歌唱。

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4.幸田浩子さんによる、J.シュトラウスII世の『こうもり』よりチャールダーシュ“ふるさとの調べよ”

幸田さんは久しぶりに聴かせていただいたが、変わらず、高音の可憐な歌声が素晴らしい。抜群の声量も変わらない。いつまでも、本当に魅力的な歌手。

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5.与那城敬さんによる、マスネの『エロディアード』より “はかない幻”

先述の宮本さんの言葉どおり、いつもながら、カッコ良く、格調高い歌唱。

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6.前半最後は、R・シュトラウスの『ばらの騎士』より、有名な三重唱。“私、正しいやり方であの人を愛そうと心に決めたのだから”

宮地江奈さんは、先月の松本記念音楽迎賓館でのリサイタル後の懇親会で、「今後、歌ってみたいオペラでの役はありますか?」との私の問いに、「ゾフィーです」と即答されたのだが、全曲ではないとはいえ、早々に、しかも、佐々木典子さんの元帥夫人、加納悦子さんのオクタヴィアンという、大先輩と一緒に、堂々と歌われた。伸びやかでピュアで美しく、既に十分、素晴らしいゾフィーだ。直後の休憩時のロビーでも、「宮地さん、良かったね」と会話する声が聞こえて来た。

佐々木さんも、私は久しぶりに拝聴。変わらぬ気品と貫禄と美声。素晴らしかった。

加納さんの端正なオクタヴィアンも印象的。

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休憩後の後半は、

7.山本耕平さんによる、ジョルダーノの『アンドレア・シェニエ』より “ある日、青空を眺めて”

堂々とした果敢な歌唱。

8.今井俊輔さんによる、ヴェルディの『マクベス』より“憐みも、誉れも、愛も”

さすが、今井さん、と言うべき、いつもながらの格調高い歌唱。

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9.池田香織さんによる、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』より“穏やかに静かに彼が微笑んで”(愛の死)

池田さんも久しぶりに聴かせていただいたが、声量も含めて、充実の素晴らしいイゾルデ。イゾルデに限らず、池田さんのワーグナーは、いつも本当に見事。

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10.福井敬さんによる、レオンカヴァッロの『道化師』より “衣裳をつけろ”

福井さんは、さすがの圧巻の歌唱後、インタビューでのコメントも素晴らしかった。宮本さん同様、二期会愛、オペラ歌手愛、オペラ文化愛に溢れたコメントだった。

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11.田崎尚美さんによる、プッチーニの『トゥーランドット』より “この宮殿の中で”

トゥーランドット姫を歌えること自体、力量のある歌手である証拠だし、実際、田崎さんは本当に素晴らしかった。「こんなに素晴らしいトゥーランドットを歌える日本人歌手がいる」ということ自体にも感動する。

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12.「トリ」は、樋口達哉さんによる、プッチーニの『トゥーランドット』より“誰も寝てはならぬ”

樋口さんも久しぶりに聴かせていただいたが、変わらぬ伸びやかで品の良い美声。永遠の青年、という感じがする。明るいキャラクターも含めて、お祝いの会を締めくくるに相応しい歌唱により、トリを見事に務められた。

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プログラム

1.「フィガロの結婚」序曲

2.モーツァルト:『コジ・ファン・トゥッテ』より

“彼に向けてください、そのまなざしを”(宮本)

3.モーツァルト:『フィガロの結婚』より

“とうとう、うれしい時が来た”(種谷)

4.J.シュトラウスII世:『こうもり』より

チャールダーシュ“ふるさとの調べよ”(幸田)

5.マスネ:『エロディアード』より“はかない幻”(与那城)

6.R・シュトラウス:『ばらの騎士』より三重唱

“私、正しいやり方であの人を愛そうと心に決めたのだから”

(佐々木、宮地、加納)

7.ジョルダーノ:『アンドレア・シェニエ』より

“ある日、青空を眺めて”(山本)

8.ヴェルディ:『マクベス』より“憐みも、誉れも、愛も”(今井)

9.ワーグナー:『トリスタンとイゾルデ』より

“穏やかに静かに彼が微笑んで”(イゾルデの愛の死)(池田)

10. レオンカヴァッロ:『道化師』より“衣裳をつけろ”(福井)

11. プッチーニ:『トゥーランドット』より“この宮殿の中で”(田崎)

12. プッチーニ:『トゥーランドット』より“誰も寝てはならぬ”(樋口)

全員で「こうもり」より「シャンパンの歌」

2022年10月15日 (土)

田部京子さん+上岡敏之さんだけが成し得た個性的名演

10月15日の午後、すみだトリフォニーホールにて、上岡敏之さん指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団の【すみだクラシックへの扉、第10回】と題した演奏会を聴いた。

本来、この公演は、ラルス・フォークトさんが指揮とピアノで出演を予定していたが、病気のため、51歳(あと3日で52歳)で逝去されたため、上岡さんと田部京子さんが代演というかたちで行われた。

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曲は、モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、ブラームスの交響曲第2番で、モーツァルトだけでも30分かかるから、配置換え等を含めて、前半の2曲だけでも80分を要するという長い演奏会だったが、実に聴き応えのあるコンサートだった。

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まずは、2曲目、田部京子さんによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番 ト長調から書きたい。

上岡さんが~ブルックナーの交響曲7番の録音が示すように~日本人指揮者の中では、珍しいほど個性的な指揮をする人であることを知っている人は多いだろう。たぶん性格的なことだけではなく、ドイツでの活動が長かったから、「無個性では生きていけない環境」の中で鍛えられたということもあるのかもしれない。この協奏曲でも個性が顕著だった。

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第1楽章

冒頭の田部さん。ゆったり開始はいつものとおりだが、ロマン的というより、輪郭の明瞭さを出した5小節間だった。それに続く6小節から13小節でのオケは、極めて静かに、デリケートに応じて印象的だったし、魅力的で大いに支持する。14小節からはテンポを「戻し」、推進力を付けたのは言うまでもない。

第1楽章の中だけでも、リズミックな曲想の場面と、抒情的な場面での色分け、メリハリを、上岡さんは徹底した。

そして、それに見事に応じたのが田部さん。というより、曲想のニュアンス変化の表出は、むしろ、田部さんこそ「お手の物」だ。

上岡さんが、やりたいとする意図(内容)を十分に理解し、把握し、その中であっても、抜群の技術をベースとして、極めて豊かなニュアンスに富んだ演奏をやってのけた田部さん。

カデンツァが終わり、オケがそれを受け取る場面でも、上岡さんは、ゆったり感と静寂感とデリケートさを徹底して受け取り、繋げていく。それにピタリと合わせてオケに引き渡し、「共演」を続けて行く田部さんの力量の凄さと度量の大きさ。

こうした細かいテンポの変化付けを嫌うピアニストも、少なからずいるだろうから、上岡さんにとっても、自分がやりたいようにやれ、そして当然、一緒に音楽を創り、共演できる奏者として、田部さんは最高、最良、最適の人選だったに違いない。

この第1楽章だけでも、稀に見るほど傑出した、個性的な名演。

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第2楽章。

たっぷりと悠然と哲学的に響かせ、弾かせる弦の音。対照的に、静謐で詩的なピアノとのバトンの交差。

静寂の中で、ギリシャ悲劇の物語が語られ、進行して行くかのようだ。静まり返る聴衆。客席。

「最高の第2楽章」という余韻と感動の中で、ホ短調コードによるピアノソロが、オケに静かにバトンを渡す。

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第3楽章

アタッカを、「ppp」のような徹底したsotto voceで開始するオケ。

ところが、面白いことに、ピアノの開始は、ロココ感ではなく、むしろ、第1楽章にも増して、音に「湿り気」を増やして、田部さんは弾き進めて行ったことだ。

あたかも、「これは2拍子であっても、モーツァルト的な流れではなく、あくまでもベートーヴェンによる、もはやロマン的な作品なのです」と、田部さんが語っているかのようだった。

愉悦感あふれるオケとピアノのやりとりが続き、充実のエンディング。

昨今、コロナ禍で、ブラヴォー禁止という奇妙な状況が依然として、どのホール、どのコンサートでも続いているが、そうでなかったら、ブラヴォーの連呼となっていたであろうと思えるほど、盛大な拍手が長く続いた。

個性的にして、第一級の名演と言えるピアノ協奏曲第4番の演奏だった。

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前後するが、プログラム1曲目は、モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲 ハ長調。

フルートは上野星矢さん。ハープは山宮るり子さん。

上野さんのフルートが、明るく、温かく、品が良くて素敵。

山宮さんのハープは、音量があまり無い分、繊細でエレガントさが、逆にひときわ際立った。

第2楽章の、2人による長めのカデンツァが白眉。

上岡さんの指揮も、第1楽章と第2楽章が、エレガントなサポートに徹していて、魅力的だった。

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休憩後は、ブラームスの交響曲第2番 ニ長調

第1楽章の冒頭から、私にとって理想的な、ゆったりとしたテンポで開始。主部に入ってからも基本的には同じスタンスだが、部分(場面)では、テンポを落として間合いを大きく取ったり、逆にアグレッシブに進めたりと、メリハリの良さは上岡さんならでは。

第2楽章がとりわけ顕著で、全体のゆったり感の中に、テンポの変化、弱音と強音の対比(変化)も含めて、個性を色濃く出していたし、とても音楽的で、魅力的だった。

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意外だったのは第3楽章で、それまでとは一転して、「のどかさ」よりも「キビキビ感」ある3拍子で開始。個性的と言えば個性的。ホルンの1音の音程(の悪さ)より、驚いたのは、8分の3に変わって出る126小節のところで、ファースト・ヴァイオリンの一人が、1小節、先んじて弾いてしまったこと。アマオケでさえ、そんなミスはまずしない。

なお、第1、第2、第3楽章のいずれも、エンディングの数小節を、それぞれたっぷりとした間合いで、ゆったりした音楽としたことは素敵だったし、大賛成だ。

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第4楽章も問題を感じた。

たっぷり歌う素晴らしい第2テーマ(78~85小節.281~288小節)で、ファースト・ヴァイオリンの一人ひとりが、完全にはまとまっていない様な(少し濁った)響きがしたし、3連符で駆け上った先(137と340小節の4拍目)が、バシッと決まった感じがしなかった。どこか集中力を欠いたような第4楽章だった。

それでも、第1楽章と第2楽章のふくよかなロマン性とメリハリの良さという点で、聴いた甲斐はあった第2交響曲だった。

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プログラム

1.モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K. 299

2.ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 op. 58

3.ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op. 73

2022年10月 8日 (土)

望月哲也さん~テノール・リサイタル~若々しい挑戦

今やベテランと言うべき、最も活躍しているテノール歌手の一人と言える望月哲也さんのリサイタルを、10月8日午後、東京文化会館小ホールで拝聴した。ピアノは、河野紘子さん。

望月さんは、オペラや「イル・デーヴ」で何度も聴かせていただいているが、ソロ・リサイタルを聴かせていただくのは初めて。プログラム全体は、最下段に記載のとおりだが、いつもどおり、曲順に少し感想を記したい。

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前半の最初は、ベートーヴェンの歌曲集。

有名で結構長大な「アデライーデ」を含めた5曲。

次いで、シューベルトの歌曲を5曲。特に「夜曲」は名曲だと思う。

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軽やかで明るい、伸びのある歌声ゆえ、当初は、シューベルトの歌曲に親近性があるかも、と想像したが、少し違った。

十分に詩と旋律と和音構造を分析されてのベートーヴェンだったようで、内省的にして色の「濃さ」を感じさせるベートーヴェンの歌曲が、とても印象的だった。

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シューベルトは、その軽やかな声ゆえ、すんなりと自然体に、ムリ無く、屈託なく流れていくので、爽やかだが、ベートーヴェンで感じた「濃さ」は少なく、薄く透明なまま、歌が通りすぎていった感があった。もちろんそれは、望月さんの個性でもあり、美点でもある。

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休憩後のシューマンの『詩人の恋』にも、シューベルトに似た感想を抱いた。

5日に、大西宇宙さんで同曲を聴いたばかりなので、バリトンとテノールによる質感とアプローチの違いを楽しませていただいた。

大西さんが、入念に、慎重に、しかし、果敢に挑んだの対し、望月さんの歌唱は若々しく、苦悩は未だ少ない時期のシューマンをイメージさせるような、複雑な機微が少ない分、ピュアなシューマン。そういうイメージを感じた歌唱だった。

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前半も、後半の『詩人の恋』も全て完全暗譜。

大西さんが、念のためにだろうが、譜面を置いて、時折、確認しながら歌われたのに対して、望月さんは完全暗譜。当然と言えば当然なのだろうけれど、ステージのキャリアを感じさせる相違点でもあった。

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シューマンでは、特に河野さんのピアノが素晴らしく、時に、そのダイナミズムは、望月さんの声量を飛び越えもしたが、それだけ情感を揺さぶる見事な表現による共演だった。

「ライン川、聖なる流れ」の迫力、「愛する人がかつて歌った歌」での後奏における意味深いテヌート・アクセント等々、ニュアンス豊かな、素晴らしいピアノ演奏だった。

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なお、望月さんは、配布プログラムの冒頭に挨拶文を寄せている。抜粋を紹介すると、

「久しぶりにリートと向き合ってみました。私はドイツの歌曲が得意、というわけではありません。ただ好きなんですね。(中略)20代のころには見向きもしなかった、ベートーヴェンやシューベルト。(中略)今回の選曲は、私が20代に憧れたドイツ人テノール、フリッツ・ヴンダーリヒを意識したプログラムです。36歳で天に召された偉大なテノールの歳をとっくに越えてしまい・・・でも、彼の声と音楽を目指してドイツ音楽にのめり込んだ30代を経て、今、自分がどんな演奏ができるのか、ひとつの挑戦でもあります(後略)」

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ウィーン国立音楽大学のリート・オラトリオ科に留学されているのだから、「20代のころには見向きもしなかったベートーヴェンやシューベルト」というのは、多少、誇張があるのかもしれないが、この挨拶文を踏まえて、全体の感想をまとめさせていただくなら、「まだまだ若々しい歌声の、伸びやかに広がった先には、これからも沢山の発見を見つけて、聴衆に届けてくれるに違いない」、そう感じさせてくれる「挑戦」だったと感じた次第。

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プログラム

Ⅰ.ベートーヴェン曲集

1.アデライーデ(Op.46)

2.五月の歌(Op.52-4)

3.あきらめ(WoO149)

4.思い出(WoO136)

5.くちづけ(Op.128)

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Ⅱ.シューベルト曲集

1.ます(D.550)

2.月に寄せて(D193)

3.シルヴィアに(D.891)

4.夜曲(D.672)

5.ガニュメート(D.544)

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(休憩)

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Ⅲ.シューマン:『詩人の恋』(Op.48)

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アンコール

1.シューベルト:「Nacht und Träume(夜と夢)」D.827

2.シューマン:「ミルテの花」(作品25)第一曲「献呈」

2022年10月 7日 (金)

鷲尾麻衣さん~ソプラノ・リサイタル      Hakuju Hall リクライニング・コンサート

10月7日(金)、15時と19時30分開始の二部制~各休憩なしの60分コンサート~の夜の部を拝聴した。

当初、ピアノは、麻衣さんの東京藝術大学以来の盟友とも言える穴見めぐみさんが予定されていたが、体調を崩された関係で、吉田幸央さんが代演された。なお、穴見さんは回復されつつあるようで、午後の部に聴衆として来場されたとのことで何より。

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プログラムは以下のとおりで、どれも素敵だったが、とりわけ、「私を泣かせてください」の伸びやかな声が印象的だったし、穴見さんの「星とたんぽぽ」、レオンカヴァッロの「四月」の表情の変化がステキだった。

多様で多彩なニュアンスという点では「あわて床屋」が面白く、演出も含めて新実徳英さん~来場されていた~の「ちいさな法螺(ほら)」も面白かった。

「思い出の曲」(ターニングポイントの曲)とのことで、しかし敢えて高校時代以来、歌っていなかったという「カロ・ミオ・ベン」も、麻衣さんの思いが伝わる素敵な歌唱だった。

今や、オペラ歌手のリサイタルにおける定番になりつつある素敵な曲「クロリスに」と、これまた、合唱だけでなく、多くのオペラ歌手の持ち歌としての、もはや定番とも言える「小さな空」が聴けたのも良かった。

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1.アーン:「クロリスに」

2.ジョルダーニ:「カロ・ミオ・ベン」

3.ヘンデル:歌劇「リナルド」より「私を泣かせてください」

4.ピアノのソロで、ドゥ・センヌヴィル:「渚のアデリーヌ」

5.山田耕筰:「あわて床屋」

6.山田耕筰:「この道」

7.穴見めぐみ:「星とたんぽぽ」~詞:金子みすゞ

8.武満徹:「小さな空」

9.新実徳英:「ちいさな法螺」

10.レオンカヴァッロ:「四月」

アンコールは、3曲用意された中で、「みなさんに選んでいただきたきたく、拍手が一番大きい曲を歌います」と、アンケート形式。3曲とは、「落葉松」、「I Feel Pretty」、「私のお父さん」。

「I Feel Pretty」と「私のお父さん」がほとんど同数くらいの拍手だったが、ウェストサイド物語の「I Feel Pretty」が最も多いようですね、ということで歌われた。

結果的には、ニューヨークでも学ばれていたからかもしれないが、「最も麻衣さんらしい歌」のような感じがして、ステキだった。

2022年10月 5日 (水)

大西宇宙&小林道夫~デュオ・リサイタル

活躍目覚ましい大西宇宙(たかおき)さんのリサイタルだが、今年1月3日で、89歳になられた小林道夫さんに、ひたすら頭(こうべ)をたれたい、そんな思いに浸る、感慨深いコンサートだった。

バリトンの大西宇宙さんのリサイタルを10月5日夜、紀尾井ホールで拝聴した。

タイトルに「大西宇宙&小林道夫デュオ・リサイタル」とあるように、また、後述のとおり、大西さんの、小林さんに対するリスペクトの気持ちがステージマナーとして終始表れ、感じられた素敵なリサイタルだった。

大西さんは、1985年10月16日生まれとのことなので、もうじき37歳になるから、年齢差は実に52歳。親子と言うより、祖父と孫ほどの年齢差だが、若々しい大西さんの声を支える小林さんの衰えのない見事な演奏に、心から感じ入り、畏敬の念を抱いた次第。

1974年には、フィッシャー=ディースカウの来日公演でも伴奏されたレジェンドと言える奏者だが、まだまだ現役を続けられそうな、素晴らしい演奏だった。

なお、10月10日、2人による同じ曲目のCDがリリースされた。本年6月、J:COM浦安音楽ホールでの収録。

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プログラムは最下段に記載のとおりだが、少しずつ感想を記すと、

ベートーヴェンの「遥かなる恋人に」

後のシューベルトとシューマンの連作歌曲に先んじた、ベートーヴェン44歳のときの先品を、大西さんは丁寧に、誠実さと慈しみをもって歌われた。少しデリケートに過ぎるかもしれないと思うほどに。でも、とても素敵だった。

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次いで、シェーンベルクの2つの歌曲「感謝」と「告別」。

シェーンベルクの作品と言っても、作品番号が1ということもあり、名前からのイメージとは程遠い、ロマン派の歌曲そのもののような、素敵な2曲。

「感謝」は、明るいロマン溢れる曲で、格調高い曲だった。

「告別」は、短調で開始するが、後半は長調に転じ、雄大に終わる素敵な曲。

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休憩は、シューマンの「詩人の恋」全曲。

全16曲中、特に、第10曲「あの人がよく歌った」以降の曲が、各曲の曲想に応じたニュアンスの変化をよく伝えていた歌唱だった。

終わると、大西さんは小林さんに歩み寄り、手を差し伸べて一礼し、小林さんをピアノよりも前の位置に導いて、感謝の念を示し、正に一緒に客席から拍手を受けるかたちとしたステージマナーがとても良かった。

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「小林先生の年齢を考えると、アンコールは1曲くらいかな」などと、勝手に想像したが、とんでもない、アンコールは3曲で、全てR・シュトラウスの作品。

1曲目は「たそがれの夢」。2曲目は「万霊節」、3曲目は「献呈」。

雰囲気的には2曲で終わるような感じだったので、3曲目の楽譜を持って小林さんが登場した際は、会場から少しどよめきが起きたくらい。

その3曲目が終わると、先述の本プログラム終演時と同じく、大西さんは再び小林さんに近づいて、改めて本日の感謝の念を捧げるかのように手を差し伸べ、ステージ中央に導き、客席からの拍手を、むしろ小林さんに向けてようにする形でマナー対応した大西さんも立派だった。

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プログラム

1.ベートーヴェン:「遥かなる恋人に」Op.98

 (1)丘に座して僕は密かに (2)山々が青く

 (3)高みに帆かける軽やかなお前たち

 (4)高みにあるこの雲が (5)五月が還ってくる

 (6)受け取っておくれ、この歌どもを

2.シェーンベルク:「2つの歌曲」Op.1

 (1)感謝 (2)告別

 (休憩)

3.シューマン:「詩人の恋」Op.48

  全16曲

アンコール

1.R・シュトラウス:「たそがれの夢」Op.29-1

2.同:「万霊節」Op.10-8

3.同:「献呈」Op.10-1

2022年10月 2日 (日)

水谷川優子さんプロデュースによる「チェリストが夢見る華麗なるピアニストたちの饗宴」

スペシャルオリンピックス日本・東京支援「チャリティ・ガラ・コンサート」を10月2日午後、紀尾井ホールで拝聴した。

「スペシャルオリンピックス」は、「知的障害のある人たちに年間を通じて、オリンピック競技種目に準じた様々なスポーツトレーニングと競技会を提供している国際的な組織」とのこと。

チェリストで、このコンサートの音楽監督である水谷川(みやがわ)優子さんがプロデュースした本コンサートは水谷川さんの他、宮谷理香さん、福間洸太朗さん、松田華音さん、八木大輔さん、秋川風雅さんという5人のピアニストをゲストに迎えてのもの。

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プログラムは最下段に記載のとおりだが、少しずつ感想を付記したい。

宮谷理香さんのソロ~ショパンを2曲

(1)ショパンのノクターン遺作嬰ハ短調

短い序奏の後、主題からは、とてもゆったとりと、デリケートに弾かれて印象的。少し進んでからは、テンポを動かすなど、情感の揺れがステキだった。

(2)2曲目のショパンの英雄ポロネーズ

これも個性的な演奏で、ガッシリ感よりも、場面ごとにおけるニュアンスの変化を表出していた。中間部での左手による音階下降を伴奏として歌う場面でも、粒立ちの明瞭さよりも、あくまでも歌としての曲想であることを提示していた。

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福間洸太朗さんのソロ~スクリャービンを3曲

(1)左手のためのノクターンOp.9-2

初めて聴いたが、面白い、素敵な曲。

(2)練習曲より第11番「アンダンテ・カンタービレ」

魅力的な曲。

(3)練習曲より第12番「悲愴」

パッション全開の素晴らしい曲と演奏。

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水谷川さん&福間さんで、サン=サーンス「白鳥」。とても良かった。

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松田華音さんのソロ~ラフマニノフを2曲

(1)ラフマニノフ:音の絵 Op.33-2

(2)ラフマニノフ:楽興の時 第6番Op.16-6

いずれも魅力的な曲。

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休憩後は、

八木大輔さんのソロで、

クライスラー~ラフマニノフ編曲の「愛の喜び」

現在、音大生ではなく、慶応義塾大学文学部1年で、既に幾つかの海外コンクールで優勝等、上位入賞されている。

クライスラーのシンプルなメロディによる、ラフマニノフらしいヴィルトゥオーゾ的な編曲が面白かった。

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秋川風雅さんのソロで、ストラヴィンスキーの「火の鳥」より

「凶悪な踊り」(グイド・アゴスティ編曲)

慶応高校3年生とのこと。この曲もアゴスティによる編曲が凄く、演奏も見事だった。

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八木さんと秋川さんの連弾で

ラフマニノフのイタリアン・ポルカ変ホ長調

とても良かった。

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福間さんと宮谷さんの連弾で、

ブラームスのハンガリー舞曲第6番

この2人の連弾自体、ファンとしては、とても嬉しかった。

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松田さんと宮谷さんの連弾で、

同じくブラームスのハンガリー舞曲から第5番

途中から、チェロを持った水谷川さんと、なんと、タンバリンを持った福間さんが「乱入」。

水谷川さんのオブリガートと、福間さんはタンバリンでの合いの手だけでなく、なんと、ダンスも披露しながらの、という「サプライズ余興」で、会場を笑わせ、沸かせた。

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アンコール

1曲目は、宮谷さん、福間さん、松田さんの3人が、

1台のピアノで、ラフマニノフの「ワルツ」を演奏。

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2曲目、最後は、全員でJ・シュトラウス「ラデツキー行進曲」を演奏。

すなわち、5人のピアニストが、代わる代わる~3人ずつ弾くかたちで~交代しながら、待っている人はタンバリンを手に合いの手、などで応じる、という賑やかなお祭り的雰囲気でのエンディングで、とても楽しかった。

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プログラム

1.水谷川さん&宮谷さんで、カサド:親愛なる言葉

2.宮谷理香さんのソロで

 (1)ショパン:ノクターン遺作20番 嬰ハ短調

 (2)ショパン:ポロネーズ第6番Op.53変イ長調「英雄」

3.福間洸太朗さんのソロで

 (1)スクリャービン:左手のためのノクターン Op.9-2

(2)スクリャービン:練習曲Op.8より

第11番「アンダンテ・カンタービレ」

 (3)同第12番「悲愴」

4.水谷川さん&福間さんで、サン=サーンス「白鳥」

5.松田華音さんのソロで

  (1)ラフマニノフ:音の絵 Op.33-2

  (2)ラフマニノフ:楽興の時 第6番Op.16-6

6.水谷川さん&松田さんで

  ラフマニノフ:チェロ・ソナタOp.19より「アンダンテ」

 (休憩)

7.八木大輔さんのソロで

  クライスラー:ラフマニノフ編曲:「愛の喜び」

8.秋川風雅さんのソロで

  ストラヴィンスキー:グイド・アゴスティ編曲:

   火の鳥より「凶悪な踊り」

9.八木さんと秋川さんで

  ラフマニノフ:イタリアン・ポリカ 変ホ長調

10. 福間さんと宮谷さんで、ブラームス:ハンガリー舞曲第6番

11. 松田さんと宮谷さんで、ブラームス:ハンガリー舞曲第5番

アンコール

1.宮谷さん、福間さん、松田さんで

ラフマニノフ:ワルツ

2.全員で J・シュトラウス「ラデツキー行進曲」

2022年10月 1日 (土)

小川典子さん~公開マスタークラス

小川典子さんによる公開マスタークラスを10月1日の午後、埼玉県入間郡三芳町の「コピスみよし」(三芳町文化会館)で拝聴した。

開館20周年コピスみよし音楽祭の一環でもあるこのマスタークラスの募集対象は、小学4年生から29歳までの、三芳町に在住・在学・在勤の人で、選ばれた人とレッスンを受けた曲は下記の4名(名前はもちろん伏せる)。

公開マスタークラス自体、初めて見させていただいたし、ソロ活動だけでなく、英国ギルドホール音楽院教授、東京音楽大学の特任教授として指導され、浜松国際ピアノコンクールの審査委員長を務めるなど、積極的に活動されている小川さん。

明るく大きな声(もちろん会場向けにマイクを使用されたが)による指導を拝見、拝聴し、優れた指導者としての小川さんを知ることができたし、レッスンの内容自体も、とても勉強になった次第。

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Aさん(小学5年生、女性)

ドビュッシー:2つのアラベスクより第2番ト長調

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Bさん(小学6年生、女性)

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」より第3楽章

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Cさん(中学2年生、男性)

ドビュッシー:喜びの島 イ長調

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Dさん(大学4年生、女性)

シマノフスキ:メトープ―3つの詩「セイレーンの島」

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