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2022年9月24日 (土)

田部京子さんが「面白クラシック講座」に登場

9月24日の午後、音楽評論家の真嶋雄大さんが主催する「面白クラシック講座」に、田部京子さんが出演されました。会場は、山梨県甲府市のYCC県民文化ホール。ただし、大ホールでも小ホールでもなく、3階の大きな会議室で、そこでは毎月1回、真嶋さんが色々な演奏家を招いて、トーク&コンサートを実施しており、真嶋さんいわく、「待望の田部さん登場」ということでのご出演。目算ですが、100人以上は来場されていましたし、ホールではなく、会議室でのグランドピアノの演奏という懸念点も、十分良く響き、全く問題ありませんでした。

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真嶋さんは、ヤマハ(銀座)や、ベーゼンドルファー東京のショールーム(中野坂上)で開催している「美女と野獣のトーク&コンサートwith Bösendorfer」も展開しており、それには、田部さんは2019年8月に出演されていますが、それでも、田部さんのトークを交えてのコンサートというものは、それ自体とても珍しく貴重ですし、嬉しく拝聴ましたので、以下は~演奏が素晴らしいことは言うまでもないので~トークの概要を主としてご紹介します。

真嶋さんが田部さんに質問やテーマを投げかけるかたちで進行という、2人のトークを織り込みながら演奏された全曲の一覧は、最下段に記載のとおりです。冒頭、真嶋さんは、「本日は、いわゆる小品集の演奏ですが、小品こそ、短い1曲の中に起承転結があるので、演奏は難しい」という主旨の言及がありました。

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演奏1.吉松隆さんの「プレイアデス舞曲集」より4曲。シンプルにして、独特の美しさのある4作品の演奏。

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トーク1.真嶋さんと田部さんによる最初のトーク。

(1)吉松さんから曲を献呈されるなど、親しくなった「いきさつ」を問われた田部さんは、「吉松さんもシューベルトの第21番のソナタが好きで、私の演奏を聴かれて関心を持たれ、「プレイアデス舞曲集」の演奏の打診があったこと」等々を語られました。

(2)メンデルスゾーンの曲の特徴を問われると、「シンプルな構造ながら、それゆえ実は、演奏はとても難しい」という主旨の内容を語られました。

(3)シューベルトの晩年の作品について、田部さんは、「31歳で亡くなる1~2年前の間に、それまでの人生の喜びや悲しみ、苦悩などが盛り込まれていることは驚きですし、そしてどこか「救い」もあると感じます」等を語られた他、「これから弾く即興曲第3番もそうですが」として、シューベルトには、「タン(2分音符)タ(4分音符)タ(4分音符)」+「タン(2分)タン(2分)」という旋律を多く用いている~例えば「ロザムンデ」や「さすらい人幻想曲」等~について指摘(言及)されたことは、興味深かったです。

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演奏2.メンデルスゾーンの「無言歌集」より「甘い想い出」、「ないしょ話」、「ベニスのゴンドラの歌 第2番」。

演奏3.シューベルトの4つの間奏曲D.899より、第3番 変ト長調。

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休憩後

演奏4.グリーグの「抒情小品集」より「アリエッタ」、「ノクターン」、「春に寄す」、「トロルドハウゲンの婚礼の日」。

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トーク2.

グリーグについて問われた田部さんは、「私は北海道生まれなのですが、似た空気感と言いますか、とても親近感を覚える曲が多いし、北欧に行ったときも、その親近感を覚えました。また、グリーグの曲には民族的な曲想(要素)も感じますし、「北欧のショパン」と言われていますが、むしろ、シューマンのようなドラマ性も感じます」、という主旨を述べられた他、「ペールギュント」については、「どうしても管弦楽曲のイメージが先行しますが、ピアノ版独自の良さ、面白さがあるので、それを聴いていただけたら」として演奏に移られました。

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演奏5.グリーグ:ペールギュント第1組曲~「朝」、「オーゼの死」、「アニトラの踊り」、「山の魔王の宮殿にて」。

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トーク3.このトークが、とりわけ興味深い内容でした。

(1)まず、真嶋さんが、「ブラインド審査による、シューベルトのソナタ第21番に関する逸話」を田部さんに披露してもらうべく促しました。それによると、カルミナ四重奏団と共演することになったとき、そのリーダーに「どうして私を選んでくれたのか?」を問うと、「放送局で、シューベルトのソナタ第21番の多くの録音を、演奏者名を伏せて流し、どの演奏が良かったかを投票する、というイベントがあった。私の第1位は、他の人全体での第1位と同じだったのですが、フタを開けると、田部京子、という名前のピアニストだったのです」とのことでした。

田部さんいわく、「ホロヴィッツとか、錚々たる巨匠たちの録音が流されたそうで、その中で、私のような無名の者が選ばれて」、と謙遜の言葉。

真嶋さんが、「凄いことですよね」と称え、会場も大きな拍手。

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(2)続いて、大活躍中の辻井伸行さんのことを真嶋さんが話題にされました。辻井さんが、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝されたのは、上野学園大学の3年のときですが、当時、同大学で、1年からの指導教授の一人が田部さんだったので、彼がハンディの中でどう練習するか、音を記憶する能力の高さや、体と一体となって両手両腕が飛躍するその俊敏さ等、色々な情報を語られ、とても興味深く拝聴しました。

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(3)田部さんが東京藝術大学時代の恩師だった田村宏さんについても、真嶋さんが「田村先生って、怖いことで有名でしたね」と話題を向けると、田部さんは、まるで桐朋学園の斎藤秀雄さんを彷彿させるような逸話を語られたことも、それこそ興味深かったです。真嶋さんいわく、「今じゃ、考えられないこと(厳しさ)ですよね、パワハラって言われるような」。田部さん「そうですね。時代の違いを感じます」。

このあと、田部さんが語られたことこそが更に印象的で、こう述べられました。「私も自分が教える立場になり、生徒に、もっと厳しく言うべきなのかな、と思うこともあるのですが、なかなか難しいことですよね」。

「怖い田部さん」は想像つきませんが(笑)、教師としての、指導することの難しさを語られた、とても印象的な発言でした。

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演奏6.ドビュッシーのベルガマスク組曲より「月の光」。

真嶋さん~「静かで素晴らしい余韻で終わる演奏でした。このまま終わりにするのが良いのでしょうが、そうは問屋が卸さない」と会場を笑わせ、アンコールをリクエスト。

「では」として、グリーグの「君を愛す」を演奏され、この素敵な講座コンサートが終了しました。

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なお、終演後は、ロビーでサイン会も開催されました。

ご承知のように、コロナ禍以降、ほとんどのコンサート会場では、以前は当たり前のように開催されていたサイン会~ユジャ・ワンだろうとヒラリー・ハーンだろうと~が行われていません。出演者と来場客、あるいは来場客同士の「密」回避、という主旨でしょう。この日は、いわば、真嶋さんの常連客をメインした講座という、特別な状況、関係性からの開催だと思いますし、演奏者と来場者のサイン会自体、久しぶりに見たので~それも、田部さんです~それ自体も嬉しく眺めていた次第でした。

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演奏曲

1.吉松隆:「プレイアデス舞曲集」より「前奏曲の映像」、

「線形のロマンス」、「鳥のいる間奏曲」、「真夜中のノエル」

2.メンデルスゾーン:「無言歌集」より「甘い想い出」、

  「ないしょ話」、「ベニスのゴンドラの歌 第2番」

3.シューベルト:4つの間奏曲 D.899 より、第3番 変ト長調

 (休憩)

4.グリーグ:「抒情小品集」より「アリエッタ」、「ノクターン」、

「春に寄す」、「トロルドハウゲンの婚礼の日」

5.グリーグ:ペールギュント第1組曲~「朝」、「オーゼの死」、

  「アニトラの踊り」、「山の魔王の宮殿にて」

6.ドビュッシー:ベルガマスク組曲より「月の光」

アンコール~グリーグ:「君を愛す」

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