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2022年8月20日 (土)

森谷真理さんが歌う「ヴォツェック」より    3つの断章

東京交響楽団の第702回定期演奏会を8月20日夜、サントリーホールで聴いた。

指揮は、ペトル・ポペルカ氏。プラハ生まれ。2010~2019年、ドレスデン・シュターツカペレでコントラバスの副首席奏者を務める中、2016年から指揮活動を開始した、というから、指揮者としてはまだ「駆け出し」だが、既にウィーン・シンフォニカーやゲヴァントハウス管等、欧州の多くのオケに客演し、来月9月からは、プラハ放送交響楽団の首席指揮者兼芸術監督に就任予定、とのこと。

この日も、オケを解り易く牽引する大きな身振りと細かな「振り」は、なかなか良かった。

演奏曲は、

1.ウェーベルン:大管弦楽のための牧歌「夏風の中で」

2.ベルク:歌劇「ヴォツェック」から3つの断章

3.ラフマニノフ:交響的舞曲

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まずは、ベルクから書きたい。

先週の水戸での森谷真理さんリサイタルは、急用で行けなかったが、それでも、私が今年、彼女を聴くのは、これで7回目。

そして、この3年間で、彼女が歌うアルバン・ベルクの作品を聴くのは3回目。

1回目は、コロナ禍元年の2020年7月。その11日には本来、二期会「ルル」が上演される予定だったが、延期となり、代わりに、「東京二期会スペシャル・オペラ・ガラ・コンサート」が同日、沖澤のどかさんの指揮で行われ、森谷さんは、ベルクの歌劇『ルル』より「ルルの歌」を歌われた。

2回目が、正に延期公演となった翌2021年8月の二期会の「ルル」。そして、この日が、森谷さんが歌うベルク作品の3回目の拝聴となった。

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ちょうど100年前の1922年に「ヴォツェック」を完成したベルクだったが、なかなか演奏する機会が無い中、ヘルマン・シェルヘンの提案で、抜粋組曲(いわばデモンストレーション的作品)として編曲した作品が「3つの断章」。

第1曲は第1幕第2場と3場から、第2曲は第3幕の第1場から、第3曲は第3幕の第4場と5場からそれぞれ転用して構成。1924年6月11日に、シェルヘンの指揮で初演されている。

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先日の「イゾルデ」や、「4つの最後の歌」のようなゴージャスなオーケストレーションと違い、ベルクは、結果的には、歌手を全く邪魔することのない、ある種、歌とは無関係の様な、乾いた、無機質で、「mf」や「mp」の音量による楽器音が散りばめられている中を、抜群の声量の森谷さんが歌うのだから、「サスガの圧巻」と言える歌声を堪能できた。

これは、トッパンホールでのヴェルディ特集のデュオ・リサイタル以来の、「これぞ森谷さん」と言える歌声だったし、言うまでもなく、無調(あるいは、それに近い)旋律をいとも容易(たやす)く、と言えるほど、余裕しゃくしゃくで歌うその技術にも、あらためて感心した次第だった。

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前後するが、1曲目は、アントン・ウェーベルンの「夏風の中で」という、なんとも素敵なタイトルの曲。

ブルーノ・ヴィレの詩からイメージした短い交響詩。1904年、23歳のときの作なので、後の12音技法に入っていく以前の、後期ロマン派のテイスト感たっぷりの、しかし割と素朴な曲。

私はスコアも持っているが、シンプルな作品なので、これを「ウェーベルンにしてはステキと感じるか、退屈と感じるか」は、意見が分かれるだろう。

私はこれまでは後者だったが、今回は楽しめた。

それは多分、指揮者のポペルカさんが、「静」の部分(場面)を、極めて丁寧に、精緻に表出していたからと思う。「叙情の徹底さ」と言えるような、誠実で静謐な世界が描かれていて、なかなか良かった。

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休憩後の後半は、ラフマニノフの「交響的舞曲」。

7月に、小川典子さんとラシュコフスキー氏による、2台のピアノ演奏で聴いたばかりだが、オーケストレーションなので、当然、色彩が多様となり、曲から受ける印象は全く違った。

第1楽章は、サクソフォンの旋律、演奏が印象的だった。

第2楽章は、冒頭の管楽器による和音が印象的だし、オーボエによる旋律も魅力的だった。

惜しいのは第3楽章。色々盛り込みすぎというか、構成も曲想も散漫な印象を受けた。最後のドラのロングトーンは印象的だったけれど。

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日本のオケも外国のオケも、マンネリのプログラムが圧倒的に多い中、しかも、日本デビューのコンサートにもかかわらず、こうした、比較的マイナーな曲を揃え、立派な指揮による演奏をされたポペルカさんに、心から拍手を送りたい。今後が楽しみだ。

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