マイケル・コリンズ~クラリネット・リサイタル 小川典子さんとともに
クラリネット奏者マイケル・コリンズさんのリサイタルを、台風が接近する8月13日午後、銀座のヤマハホールで拝聴した。
~小川典子とともに~とプログラムに記載のとおり、ピアノは小川典子さんで、2人は英国ギルドホール音楽院の教授仲間でもある。
コリンズさんは、フィルハーモニア管弦楽団の首席奏者を務めた後、ソリストとしても活躍しつつ、近年は指揮者としても活躍されている。
ニコニコ笑顔のコリンズさんは、2曲目と6曲目のイギリス人作曲家の作品の演奏に先立っては、解説も行い~もちろん、小川さんが通訳で伝えた~母国の作曲家の紹介にも注力されたのが印象的だった。
演奏曲は以下のとおりで、聴いたイメージも後段に記す。
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演奏曲
1.C-M・ヴィドール:序奏とロンド Op.72
2.G・フィンジ:5つのバガテル Op.23
3.F・プーランク:クラリネット・ソナタ FP184
(休憩)
4.C・ドビュッシー:クラリネットのための第1狂詩曲
5.C・サン=サーンス:クラリネット・ソナタ 変ホ長調 Op.167
6.M・アーノルド:クラリネット・ソナチネ Op.29
アンコール
A・ポンキエッリ:「出会い」(2つのクラリネットとピアノ編)
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1曲目は、シャルル=マリー-・ヴィドール(1844~1937)の「序奏とロンド」Op.72
1898年にパリ音楽院のクラリネット科卒業試験のために作曲された曲で、映画音楽的な親しみ易さ、ジャジーさ、抒情性等々、短いながら様々な要素のある素敵な曲だった。
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2曲目は、ジェラルド・フィンジ(1901~1956)の「5つのバガテル」Op.23
フィンジは、ヴォーン・ウィリアムズとも親交があり、王立音楽院でも教鞭をとった作曲家。
この作品は、「プレリュード」、「ロマンス」、「キャロル」、「フォルラナ」、「フゲッタ」の5曲から構成され、それぞれが親しみ易く、魅力的だった。
興味深かったのは、2曲目は、クラとピアノが同時に入るのだが、小川さんは、コリンズさんを直接見ることなしの感じでピタリと見事に入ったのは、プロとしては当然なのだろうけれど、それにしても見事で、多分、コリンズさんの、吹き出す直前の首の上下を察しての入りか、吹く瞬間0.01秒前くらいの息遣いを聴いて入る、というテクニックなのだろうと推測した。
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3曲目は、フランシス・プーランク(1899~1963)の「クラリネット・ソナタ」FP184
1962年に作曲されたこの曲は、3曲から構成され、1曲目は近代的な響きと諧謔的な要素のある曲。2曲目は、エレジーのようで素敵だった。3曲目は軽快でユーモラスな曲。
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休憩後、
4曲目は、クロード・ドビュッシー(1862~1918)の「クラリネットのための第1狂詩曲」
1910年に、パリ音楽院主催の管楽器コンクールの課題曲として作曲されたこの曲は、課題曲と言う事情や、楽器固有の特性があるとはいえ、ドビュッシーの器楽曲の中でも、極めて技巧的な曲に感じされて、面白かった。
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5曲目は、カミーユ・サン=サーンス(1835~1921)のクラリネット・ソナタ 変ホ長調 Op.167
4つの楽章から構成される。
第1楽章は、冒頭からロマン溢れる曲。第2楽章は、スケルツォ的な曲想。第3楽章は、ピアノの重厚な和音が印象的な曲。第4楽章は、エチュードのようなテイストのある軽快な曲だが、最後に、第1楽章の、ゆったりしたロマンが再現されて終わった。
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プログラム最後6曲目は、「サー」の称号を持つマルコム・ヘンリー・アーノルド(1921~2006)のクラリネット・ソナチネ Op.29
ロンドン・フィルで首席トランペット奏者もしたが、その後、作曲に専念。映画『戦場にかける橋』でアカデミー作曲賞を受賞。9つの交響曲を作曲している。
この曲は、1951年の作品で、第1楽章は、ジャジーで軽快な曲。第2楽章は、最初と最後が素朴で親しみ易い曲。中間部は、ややエキゾチックな感じがした。第3楽章は、ピアノの連続打鍵など、バルトークを連想させる曲想でもあり、力感ある曲だった。
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アンコールは、アミルカレ・ポンキエッリの「出会い」(2つのクラリネットとピアノ編)
ギルドホール音楽院で、コリンズさんに師事している白井宏典(こうすけ)さんが加わってのトリ演奏。
多くの要素(場面)から構成される曲で、多分、10分前後の演奏だったと思うが、白井さんは2人の教授との共演を立派に果たし、素敵な三重奏だった。
なお、コリンズさんの楽器は、ヤマハYCL-SE Artist Model
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