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2022年8月27日 (土)

沖澤のどかさん指揮「フィガロの結婚」

セイジ・オザワ松本フェスティバル30周年

沖澤のどかさん指揮「フィガロの結婚」~充実の公演

スザンナのイン・ファンが素晴らしかった。なかなか聴けないレベルのスザンナ。詳細は後述します。

セイジ・オザワ松本フェスティバル(旧サイトウ・キネン・フェスティバル)における「フィガロの結婚」3公演の最終日、8月27日の公演を鑑賞した。会場は、まつもと市民芸術館。私がこのフェスティバルで、この会場に来たのは今回で3回目。

指揮者は、若くして来年4月から、京都市交響楽団の常任指揮者就任が決まっている沖澤のどかさん。演出はロラン・ペリー氏。演出も、とても良かった。これも後述する。

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私のチケットは1階8列だが、6列はオケピットとなっているので、事実上の2列目。ステージを見て最も右の席だったので、ピット内のほとんどと、沖澤さんの右顔からの表情も含めて、終始、指揮を見ることができる席だったのは、ラッキーだった。

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8年くらい前か、当時、私が所属していた合唱団の下振り(練習指導)で来ていた沖澤さんと面識を得、いっしょに帰った電車内で、指揮者について、「一生をかけるに値する仕事だと思います」、と力強く言った、しかし当時は未だ無名だった彼女が、その後、アマオケを中心に多く指揮する機会を得るようになり、2018年に東京国際コンクール指揮部門で1位、翌2019年は、ブザンソン国際指揮者コンクールで1位。2020年には、ムーティのオペラ・アカデミーを受講し、20~21年シーズンは、ベルリンで、ペトレンコのアシスタントを務め、そして、とうとう、旧サイトウ・キネンであるセイジ・オザワ松本フェスティバルにおけるオペラの指揮者として迎えられたことに、偶然とはいえ、デビュー前から彼女を知る者として深い感慨を覚え、颯爽として堂々とした、自信に満ちた指揮を直ぐ近くから見、聴けたことは、とても嬉しかった。

2020年11月の二期会「メリーウィドー」など、数回オペラの指揮は経験があるとはいえ、今回の抜擢は、彼女にとって、大きな自信と財産になったことだろう。

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指揮とオケの演奏は、躍動感があり、若々しく、颯爽としていて、沖澤さんそのもの様だった。

アリアでは、逆にテンポをゆったりとったものが多く、その対比も素敵だった。

例えば、ケルビーノの「恋とはどんなものかしら」や、スザンナの「早く来て、美しい喜びよ」等々。

これは、沖澤さんと歌手たちとの間で、十分な確認と稽古ができている証拠でもある。

サイトウ・キネン・オーケストラは、オペラだから当然、ピットに入れる最少人数による演奏だが、どのパートも、国内外のオーケストラの首席クラスの奏者が集まっているだけに、アンサンブルは申し分なかった。

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歌手の皆さん。まずは、何と言っても

スザンナ役のイン・ファンさん。

パミーナの様な純な声によるスザンナ。そして声量の抜群のスザンナ。それも、特別フォルテで歌う場面でなくとも、あるいは、小声のレスタティーヴォであっても、オケを飛び越えて明瞭に客席に届く声。

加えて気品があるのが素晴らしい。彼女は、今すぐにでも伯爵夫人が歌える声だと思う。「ばらの騎士」なら、ゾフィーも歌えるし、元帥夫人も歌える、そんな感じがしてしまう、実に魅力的で力量のあるスザンナ。こんなに優秀なスザンナは、録音やライヴを含めて、あまり記憶がないほどだ。実に素晴らしかった。

一番出番が多いというだけでなく、ドラマ全体の要になっているという点でも、「フィガロの結婚」の真の主役、あるいは実質的な主役はスザンナだと思う。その点からも、この公演の最大の特色ある成功したキャスティングは、中国・寧波市出身のスザンナ、イン・ファンさんだった。

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フィガロ役のフィリップ・スライさん

外見は真面目そうだけど、歌自体がとても巧いフィガロ。

「もし、踊りをなさりたけば」での、2回繰り返す「Le suonerò,si」の「si」を、1回目は「P」で、2回目を「F」か「FF」くらいで歌い分ける部分など、素敵で見事だったし、「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」では、数小節単位で、トーンやニュアンスを変えて歌うなど、とても魅力的だった。リサイタルやソロアルバムだと「やり過ぎ」の歌唱かもしれないが、これは本番のオペラの舞台なのだ。このくらいやってくれてこそ、聴き応えのあるライヴと言える。

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ケルビーノ役のアンジェラ・ブラウワーさん

とても魅力的だった。美声に加え、部分的にボーイッシュな声も混ぜて歌える人。

「自分で自分がわからない」の終わり近くの、アダージョになった部分での感情移入も見事で、思わず「グッ」と来て感涙したほどだった。

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伯爵夫人のアイリン・ペレーズさん

多面な要素を聴かせてくれたので、どう伝えればよいか、逆に難しい感じがする。

気品というよりは、人間的というか、一人の普通の女性が持つ寂しさが滲み出ていたかと思うと、ケルビーノとの場面では、幸せそうな満面の笑みで演じる。

有名な「あの楽しかった毎日はどこへ」は、感情移入というより、一つの名アリアとして、キチンと歌った、というイメージを感じた。

終わり近く、伯爵の謝罪に対して、ト長調アンダンテで歌い応える、「私は、あなたよりも素直ですから、ハイ、と申しますわ」の場面では、気品があった。

というように、様々な感情の様を見せ、歌ったという印象。

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アルマヴィーヴァ伯爵役のサミュエル・デール・ジョンソンさん

嫉妬深い役柄を巧みに演じたが、もう少し「アク」の強さと声量が欲しかった。

終わり近く、ト長調アンダンテでの「妻よ、許してくれ」という謝罪の場面では、誠実さを感じさて、とても良かった。

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マルチェリーナ役のスザンヌ・メンツァーさん

ベテランのメンツァーさんは、カーテンコールで、他の出演者たちから喝采を受けるなど、ドラマ全体を根底でしっかり支える役として歌い、演じられていた感があった。

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バジリオ役のマーティン・バカリさんは個性的なテナーだった。

バルトロ役のパトリック・カルフィッツィさんとアントニオ役の町 英和さんは、安定感ある歌唱と。ユーモアある演技がステキ。

ドン・クルツィオ役の糸賀修平さんの声は伸びやかに出ていた。

予定されていたバルバリーナ役のシャイアン・コスさんが体調の関係で、カヴァー・キャストを務めていた経塚果林さんが代演し、しっかりと対応されていた。

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合唱

16人の東京オペラシンガーズ中には、テノールの吉田連さん、アルトには成田伊美さんなど、ソロでも活躍されている歌手も多くいて、充実のメンバー。

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演出

最後になってしまったが、演出も舞台設定もとても良かった。

ステージの上に、円形と思われる回転する薄い台を設置し、その上で、建物や人物のやりとりがなされるのだが、どの場面も豪華ではない分、簡素で品があり、効率よく展開がなされる。

幕開きは、出演者紹介の如く、一人一人が円台の縁に立ったまま回転して開始したが、エンディグも同じような演出がなされ、最初と最後を、統一感をもって閉めたのも印象的だった。

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カーテンコール

幕が下り、合唱や歌手たちのカーテンコールが開始されたとき、指揮台を下りた沖澤さんが、オケの多くの奏者と、にこやかに握手して感謝を示していたのが印象的だった。

その後ステージに上がって、オケを称えて起立を促すと、オケは立たずに、まず沖澤さんに対して一斉に拍手を送ったのは素晴らしいシーンだった。その後はもちろん起立して、ほとんどスタンディングオベーション状態の観客の拍手に応じたのだった。

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キャスト

アルマヴィーヴァ伯爵:サミュエル・デール・ジョンソン

伯爵夫人:アイリン・ペレーズ

スザンナ:イン・ファン

フィガロ:フィリップ・スライ

ケルビーノ:アンジェラ・ブラウワー

マルチェリーナ:スザンヌ・メンツァー

バルトロ:パトリック・カルフィッツィ

バジリオ:マーティン・バカリ

ドン・クルツィオ:糸賀 修平

バルバリーナ:経塚果林

アントニオ:町 英和

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