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2022年7月17日 (日)

東京二期会~ワーグナー「パルジファル」公演

東京二期会によるワーグナーの「パルジファル」を7月17日午後、東京文化会館で鑑賞した。Wキャストによる計4公演の最終日の公演。

感想等の前に、この日と14日に、ティトゥレル役で出演予定だった 長谷川 顯(あきら)さんが、7月8日、65歳で逝去されましたので、心より慎んでお悔やみ申しあげます。

さて、二期会創立70周年記念公演でもある本公演の指揮は、フランクフルト歌劇場音楽総監督で、読売日本交響楽団の首席指揮者でもあるセバスティアン・ヴァイグレ氏。

オケは読売日本交響楽団。演出は、宮本亞門氏。

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歌手の皆さんは、最下段に記載のとおりで、言わば、ベテラン組と若手組という、よくあるキャスティングであり、私は若手組にこそ興味があったので、この日に拝聴した次第。

ワーグナーの最後にして、「厳粛な」オペラだが、逆に言うと、「厳粛さとは色合いが異なる第2幕が、ドラマとしては面白い」と言えるし、第2幕での主役と言えるクンドリとクリングゾルを歌われた二人が抜群に素晴らしかったので、後述する。

演出に関しては、相当シビアに言わせていただくので、最後に記述したい。

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まず、オケの豊麗な音の連続に驚いた。

日本のオケによるオペラ公演を聴いてきた中で、これほどオケに感心した記憶はあまりない。プログラムで確認すると、読響は、創立40周年を記念して、「パルジファル」を2002年10月~11月に、オケ主体(企画)の舞台上演をしている、というので、驚いた。20年経ってはいるが、当時の団員も何割かいるだろうし、更に、10年前、2012年の二期会創立60周年記念で「パルジファル」が上演された際のオケも読響だったと知り、「なるほど、作品に対して自信と余裕を感じさせる響と演奏のわけだ」、と納得した次第。こういう経験値って、やはり出るものなのだな、と素人ながら、つくづく思う。

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実は、まだある。若杉弘さん指揮による1967年7月の日本初演も、オケは読響だった。さすがに当時の団員は皆無だろうけれど、こういう事実を知ると、「日本でのオペラ演奏の頻度では、まず、東京フィルハーモニー交響楽団が挙げられるが、パルジファルに関して、オケは読売日本交響楽団」、と言えるほどの実績を持っていることを初めて知った次第。

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ヴァイグレさんは、全幕とも、総じて速めのテンポでどんどん進めるので、聴き易い演奏だったと思う。

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第1幕

グルネマンツ役の山下浩司さんとアムフォルタス役の清水勇磨さんの歌唱を聴いて、もう「この公演は成功だ」と確信したくらい良かった。先述のとおり、長谷川 顯さんが歌うはずだったティトゥレル役の清水宏樹さんも、急な代演にもかかわらず、立派な歌唱だった。問題は演出だが、後述する。

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第2幕

先述のとおり、この幕での重要な役であるクンドリ役の橋爪ゆかさんと、クリングゾル役の友清 崇(たかし)さんが素晴らしかった。

まず、友清さんだが、私は久しぶりに聴かせていただいたけれど、失礼ながら「こんなに素晴らしい歌手だったんだ」と改めて認識した。そのくらい見事だった。プログラムで確認すると、2012年の公演でも同じ役を歌われているし、つい先日である今年3月の、びわ湖ホールでの公演でも同役を歌われているから、「得意中の得意の役なのだな」と納得した。

この日の公演で、橋爪さんとともに、最も見事だったのは友清さんかもしれない、と思うほど、実に素晴らしかった。

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そして、橋爪ゆかさん。

「圧巻」と言うと、派手さも連想するが、少し違い、声の奥行の深さと「濃さ」が魅力的だったし、パルジファルとのやりとりの中で、2回ある長い独白の部分での歌唱が素晴らしく、数回ある、絶叫のような声など、東京文化会館の5階の奥まで響き渡っているに違いないと確信するほど、「圧巻」だった。

橋爪さんも、友清さん同様、2012年の公演時も同役を歌われているを知り、これまた「納得」。

そして、「パルジファル」の公演が成功するか否かは、実はクンドリ次第なのだ、という事を、再認識というか、確信した次第。

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「花の乙女たち」の女声合唱(重唱)も素晴らしく、特に宮地江奈さんの声は、大勢の中にあっても、実によく客席に届いていた。

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タイトルロールであるパルジファル役の伊藤達人(たつんど)さん。

以前、王子ホールで初めて聴いて知ったときほどの衝撃はなかったが、若々しい無垢な青年役を好演された。第2幕の開始間もなくは、声があまり出ていない感じもしたが、

「なんという愚か者だ。お母さんを忘れるなんて」の部分や、「アムフォルタス、その傷だ」、「助けてくれ、救い出してくれ、罪にまみれた者どもの手から」などの部分も、伸びやかな美声で、とても良かったし、それ以降、第3幕も含めて安定していた。

若くして、大舞台のタイトルロールを、大先輩の福井敬さんとのダブルキャストで歌われたのだから、きっと大きな自信となっただろうし、今後も益々の活躍を期待したい。

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第3幕

グルネマンツの充実、パルジファルの若い苦悩、男声合唱も第1幕以上の充実感があった。

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宮本亞門氏の演出について

正直、あまり書きたくない。宮本亞門氏は、「パルジファル」の中に(先に)何を見てるのだろうか?

この疑問と問いかけは、そのままブーメランとして私自身に返ってくる疑問点でもある。

第1幕は、美術館のような場面から開始し、複数の宗教画等がブラ下がったりと、意味が解らず、開始後10分で演出に関しては退屈してしまった。

全幕共通に言えることは、衣装も舞台設定も、場面によっては、「昔的」だったり、「現代的」だったりする。頻繁に映し出される地球の映像も含めて、良く言えば、時空を超えた題材であることを象徴したいのだろうけれど、悪く言えば、「全てが中途半端である」という印象は否めない。

時代と場所を行き来し、「聖なるものへの畏敬と尊重」を「パルジファル」に求めるのは、間違った解釈(理解)ではないのだろう。

物語が、他のワーグナー作品にない抽象性、理念性の要素が強いため、演出が極めて難しいだろうことは想像できる。それだからこそ、もっと「徹底したビジョンの明示」が欲しかった。

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もちろん、良かった場面もあった。

第2幕の始まりは、PC(モニター)が大小3つ、机に置かれた部屋という、現代のオフィスのような部屋という、「はあ?」で開始したのだが、「花の乙女たち」の舞台はカラフルで良かったし、クンドリの独白の場面では、青く暗い色調が、なかなか良かった。

第3幕も、開始こそ、サイケデリックな複数の絵画がブラ下がる、殺風景な舞台から開始したが、有名な「聖金曜日の音楽」の場面での映像は印象的で美しかったし、男声合唱による「我らは聖杯を求め~」からの場面も、青色を基調とした舞台が、とても印象的だった。

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それにしても、オペラの演出は難しい。

その原因(理由)、現象として言える事は、国内外を問わず、「演出家が、自分が主役と勘違いして、独善的な読み替えを行うことで自己満足しているだけ」、そういうものが多過ぎることにあると思う。

「オペラの主役は、当然、歌手の皆さんです」。

今日の「パルジファル」は、そこまでヒドクはなかったけれど、ワーグナー全般、とりわけ「パルジファル」の演出の難しさと、オペラそのもの演出の難しさを改めて強く感じてしまった、そういう公演でもあった。

それでも、そうした思いを吹き飛ばしてくれるくらい、歌手の皆さんとオケの演奏は素晴らしかった。

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配役          7月13日、16日 7月14日、17日

アムフォルタス    黒田 博     清水勇磨

ティトゥレル       大塚博章     清水宏樹

グルネマンツ       加藤宏隆     山下浩司

パルジファル       福井 敬     伊藤達人

クリングゾル       門間信樹     友清 崇

クンドリ              田崎尚美    橋爪ゆか

第1の聖杯の騎士 西岡慎介     新海康仁

第2の聖杯の騎士 杉浦隆大     狩野賢一

4人の小姓    清野友香莉    宮地江奈

郷家暁子     川合ひとみ

櫻井 淳     高柳 圭

伊藤 潤     相山潤平

花の乙女たち   清野友香莉    宮地江奈

梶田真未     松永知史

鈴木麻里子    杉山由紀

斉藤園子     雨笠佳奈

郷家暁子     川合ひとみ

増田弥生     小林紗季子

天上からの声   増田弥生     小林紗季子

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