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2022年6月24日 (金)

二期会デイズ~東京二期会物語~青碧の時代

二期会70周年~東京二期会物語~青碧の時代

特に、年齢を感じさせない大倉由紀枝さんに感動

「二期会デイズ」として6月24日から26日の3日間、サントリーホールのブルーローズで開催される企画コンサートの初日を拝聴した。

この日は、「東京二期会物語~青碧の時代~」と題され、1952年に、ソプラノの三宅春惠、アルトの川崎靜子、テノールの柴田睦陸、バリトン中山悌一の4名が中心となり、総勢16名で結成された「二期会」の70周年に際し、その誕生逸話の寸劇を交えながら進行するコンサート。

この4人は、若くしてビクターレコードと契約し、数々の録音を発表して、30代前半で声楽界の四天王と呼ばれていたとのこと。

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この日の出演者は下記のとおりで、レジェンドとも言えるベテランと、中堅世代のコラボのような構成だったが、もはや大御所と言うべきベテラン歌手の皆さんが特に素晴らしかったし、後述のとおり、会場に流された録音での、三宅春惠さんと川崎靜子さんの歌声は、仰天するほど素晴らしかった。

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なお、寸劇は、三宅春惠役を種谷典子さんが、川崎靜子役を成田伊美(よしみ)さんが、柴田睦陸役を山本耕平さんが、中山悌一役を加耒徹さんが、それぞれ演じた。

構成、台本、ナビゲーター(司会)は、テノールの高田正人さん。

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「二期会」の名称は、それまでの我が国におけるオペラ・声楽運動を「第一期」とみなし、その時代の先人たちの労苦を偲ぶとともに、その遺業を継承し、さらに発展させることを目的とすることを「第二期」とすることから命名された。現在は、会員、準会員合わせて2,700名以上在籍されている。

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出演者

ソプラノ:大倉由紀枝、佐々木典子、全詠玉、種谷典子

メゾソプラノ:成田伊美

テノール:成田勝美、福井敬、山本耕平

バリトン:大島幾雄、加耒徹

ピアノ :山田武彦

構成、台本、ナビゲーター(司会):高田正人(テノール)

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プログラム

1.プッチーニ:『ラ・ボエーム』より

「さようなら、甘い目覚めよ」(惜別の四重唱)」

ロドルフォ:福井 敬、ミミ:大倉由紀枝、

ムゼッタ:全 詠玉、マルチェッロ:大島幾雄

大倉由紀枝さんは、久しぶりに聴かせていただいたが、外見の美しさといい、衰えを感じさせない安定した歌唱といい、とても素晴らしかった。高田さんとのインタビューの中で、「二期会が誕生した年に生まれました」と、カミングアクトされたのだが、とても、70歳には思えない歌唱力と美貌に、高田さんも私も含めて、会場中が大いに沸いた。まだ現役として十分ステージに立てる歌唱で、実に見事だった。

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また、「1986年の1月に出産し、11月にはオペラで歌いました。その前、そろそろ子供が欲しいと思った時期、子持ちで歌われている先輩たちに、「出産後、いつごろから歌えますか?」と質問すると、「3か月後には歌えるわよ」、と言われましたし、実際、私は、さっき11月にオペラに出たと言いましたが、実は3月には、他の場で歌っていたんです」、というコメントにも、大いに感じ入った。

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私は、大倉さんには少し思い出があって、1986年4月に、山田一雄さん指揮で、マーラーの「千人」に合唱で出た際、全員での最初のリハーサルが立教小学校であり、会場に行ったとき、下駄箱で大倉さんとバッタリご一緒(遭遇)したのだった。あのとき、既に生後3か月のお子さんがいたんだ、と、この日、初めて知った。

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今でこそ、ママさん歌手は、大勢いらっしゃるが、ご家族等、周辺のサポートの大変さ、大事さは、大倉さんが出産された36年前も今も同じだろうし、もっと以前、三宅春惠さんも川崎靜子さんもママさん歌手だったそうだから、50年以上も前に、見事に両立させて、名歌手になられた大先輩がいたわけだ。

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音楽家に限らず、また、結婚の有無に関係なく、「ずっと働いていたい」という人生観に立つ女性にとっては、いざ、結婚や出産を選択する場合、その両立の大変さは、独身男性には想像も付かないが、「ずっと歌い続けたい。演奏活動を続けたい。仕事を続けたい」と強く思う人は、その両立が叶うだろうし、実際、そういう音楽家や会社員等を、直接間接、たくさん知っている。他の男性諸氏も、同じく感じているに違いない。結局、「思う力の強さと、活動を継続させる事こそが大事」で、それが「活躍できるか否かを決める要因」なのだと思う。

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2.ヴェルディ:『オテロ』より「神にかけて誓う」

オテロ:成田勝美、イアーゴ:大島幾雄

成田勝美さんは久しぶりに聴かせていただいたが、若々しく、衰えの無い声量が素晴らしい。

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録音の紹介

三宅春惠さんが歌う『夕鶴』より「つう」のアリア。

清々しく透明感ある声に驚く。MCの高田さんも言及されていたが、「今、ここで歌われているかのような」、全く「昔」感のない初々しい声で、実に素晴らしかった。この時代に、既にこんなにハイレベルでステキ歌手がいたのだ。

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3.團 伊玖磨:『夕鶴』より

「与ひょう、私の大事な与ひょう」~つう:種谷典子

本日、三宅春惠役を務めるに際しての、初挑戦の歌唱。

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録音の紹介

川崎靜子さんが日本語で歌う「カルメン」の「ハバネラ」

メゾと言うより、ソプラノの質感を感じさせる美声で、とても魅力的だった。三宅さんと同じく、「この時代に、既にこんなにハイレベルでステキ歌手がいたのだ」。

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4.ビゼー:『カルメン』より「ハバネラ」

カルメン:成田伊美

成田伊美さん~成田勝美さんの娘さん~は、初めて聴かせていただいたかもしれない。とても魅力的なメゾ。

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5.ヴェルディ:『ドン・カルロ』より「われらの胸に友情を」

ドン・カルロ:福井 敬、ロドリーゴ:加耒 徹

二期会オペラ研修所マスタークラスを最優秀の成績で修了した歌手に「川崎静子賞」が贈られるが、福井さんと加耒さんも受賞者。迫力ある二重唱だった。

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6.R.シュトラウス:『ばらの騎士』より「心から愛しています」

元帥夫人:佐々木典子、オクタヴィアン:成田伊美、

ゾフィー:全 詠玉

佐々木典子さんの元帥夫人は、久しぶりに聴かせていただいた。私の憧れの歌手の一人。

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(休憩)

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7.モーツァルト:『フィガロの結婚』より「そよ風に(手紙の二重唱)」

伯爵夫人:大倉由紀枝、スザンナ:種谷典子

この曲でも、断然、大倉由紀枝さんが魅力的だった。

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8.ヴェルディ:『椿姫』より

 (1)「プロヴァンスの陸と海」~ジェルモン:大島幾雄

 (2)「パリを離れて」

ヴィオレッタ:全 詠玉、アルフレード:山本耕平

大島さんの安定感。全さんと山本さんの初々しいデュオ。

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9.ワーグナー:『タンホイザー』より「親愛なる歌の殿堂よ」

エリーザベト:佐々木典子

素晴らしいエリーザベトの歌声。さずが、元ウィーン国立歌劇場専属歌手。

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10.ワーグナー:『ワルキューレ』より「我が名こそジークムント」

ジークムント:成田勝美

圧巻と言えるほど、見事。高田さんとのインタビューでは、ワーグナーを歌うようになったキッカケや、「35年間、楽しいことも沢山あったが、苦しいことも沢山あった。都度、多くの先輩に相談して乗り越えて来た」という主旨の話は特に印象的だった。

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11.ヴェルディ:『リゴレット』より「いつかあなたに会った時から」

マントヴァ公爵:山本耕平、リゴレット:加耒 徹、

ジルダ:種谷典子、マッダレーナ:成田伊美

アンサンブルとしては、この日、最高に魅力的だったかもしれない。

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12.プッチーニ:『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」

カラフ:成田勝美、福井 敬、高田正人、山本耕平

「お祭り」としての、迫力ある楽しいエンディング。

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アンコール

ヴェルディ「乾杯の歌」

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最後になったが、高田さんの司会は、いつにも増して丁寧で、とても良かったし、出演者へのインタビューも含めて「面白さ」もあった。大抵1つか2つ生じる「進行ミス」も、結果的には、ほとんど「受け狙い」の域にあると言える。

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これからも、益々、二期会による公演が楽しみになった。そう強く感じさせてくれる、素晴らしい企画によるコンサートだった。

 

http://www.nikikai21.net/concert/days_2022.html

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