ソフィー・デルヴォー~ファゴット・リサイタル
ステージに出てきて直ぐ思ったのは、「カッコイイ」。
吹いている顔も可愛い。
って、いきなり外見かぁ~(笑)
話題のファゴット奏者、ソフィー・デルヴォーさんのリサイタルを5月24日夜、紀尾井ホールで拝聴した。5会場で行われた来日リサイタルツアーの最終回でもある。
ピアノは1992年フランス生まれのセリム・マザリ氏。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
フランス人のデルヴォーさんは1991年生まれの若さにして、2015年からウィーン・フィルとウィーン国立歌劇場管弦楽団の首席ファゴット奏者を務めており、その前は、ベルリン・フィルの首席コントラファゴット奏者を務めていた、という仰天するような経歴の持ち主。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
優秀なことは間違いないが、ウィーン・フィルもベルリン・フィルも、女性に対して門を閉ざしていた時代が長くあり、ベルリン・フィルが先んじて、徐々に女性団員が増えていったが、そのころでも、ウィーン・フィルは依然として閉ざしており、某幹部など、「女性奏者は要らない」と公言していたくらいだ。
デルヴォーさんが、そうした時代に成人にならずに、本当に良かったと思う。優秀でも、女性というだけで入団できなかったのだから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2020年1月、コロナ禍直前に来日したフィルハーモニア管弦楽団の首席ファゴット奏者も美人で、しかも「春の祭典」を演奏したから、否応なく話題になった。
男女を問わず、器楽、声楽を問わず、今は若く優秀な音楽家が多い時代だし、日本のアマオケでさえ、「春の祭典」の冒頭のハイCを「別に、普通に吹けます」というファゴット奏者は多くいる時代だ。
そうした状況の中においても、ベルリン・フィルとウィーン・フィルに首席で入団し、外国でソロ・リサイタルを開けるファゴット奏者は、稀なほどの実力と幸運の持ち主に違いない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
客入りは、7~8割くらいだったが、若い人を中心に、それも女性が多く来場していた。管楽器をやっている人も少なからず来場していたと想像する。
なお、デルヴォーさんは、1曲が終わると、ユジャ・ワンと同じように、深々とお辞儀するステージマナーにも好感が持てた。
前置きが長くなったが、以下、曲順に短いコメントを添えて記載したい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.モーツァルト:ファゴット・ソナタK.292
原曲は、チェロとファゴットのためのソナタ。
ソフトな音色と安定感抜群の演奏。難しい楽器のハズだが、そんなことは全く感じさせない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.テレマン:ファゴット・ソナタ へ短調 TWV 41:f1
テレマン(1681~1767)のこの曲は初めて聴いたが、とても魅力的な曲なので、驚き、嬉しくなった。
まるで「演歌」のように始まる第1楽章と、同様にメランコリックな第3楽章がステキで、キビキビ感だる第2楽章と第4楽章の対比も面白かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.ピアノソロで、シューマン:「ウィーンの謝肉祭の道化」より
間奏曲、フィナーレ
自然な流動感と果敢な演奏ではあったが、基盤にはエレガントさも感じた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.シュレック:ファゴット・ソナタ 作品9
グスタフ・シュレック(1849~1918)が1880年代に書いたと言われる3楽章制の作品で、後期ロマン派らしく、第1楽章と第2楽章は、とてもロマンティックで素敵だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(休憩)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5.ドビュッシー:月の光
2人にとって、いわば「お国もの」を、しっとりと聴かせてくれた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6.ビッチュ:コンチェルティーノ
マルセル・ビッチュ(1921~2011)は、コンセルヴァトワール(パリ音楽院)に学んだ人。この曲は1948年に作曲。前半はメランコリックな感じだが、後半はラプソディのような曲想で、とても技巧的な曲。今回のプログラム中、最も技巧的な曲だったと思う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7.ピアノソロで、プーランク:3つのノヴェレッテ
特に3曲目が、和音も含めて、いかにもプーランクらしくて、素敵だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8.サン=サーンス:ファゴット・ソナタ ト長調 作品168
洒脱な第1楽章。スケルツォの第2楽章。第3楽章は、のんびりと独り言を言うかのように始まり、基本的には同様なテイストが続いた後、最後はテンポアップして終わる、親しみ易い曲だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アンコール
1.アーン:「クロリスへ」(編曲:C.コロンボ)
有名な歌曲をしっとりと聴かせてくれて、編曲も含めて素晴らしかった。
2.ドビュッシー:「美しき夕暮れ」(編曲:S.デルヴォー)
静かな余韻により、この日の、そしてデルヴォーさんの来日リサイタル最終日のコンサートが終わった。
https://www.amati-tokyo.com/performance/2204181953.php
レコーディングについての語りと演奏シーン有
https://www.hmv.co.jp/artist_Bassoon-Classical_000000000058550/item_Impressions%E3%80%9C%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%B4%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E4%BD%9C%E5%93%81%E9%9B%86-%E3%82%BD%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%80%81%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%B6%E3%83%AA_11879489
最近のコメント