アンサンブルセバスチャン&岡田 愛さん室内楽コンサート~混声合唱団「ベーレンコール」との初共演
昨年に引き続き、「アンサンブルセバスチャン」によるコンサートを5月21日午後、長野県塩尻市のレザンホール(中ホール)で拝聴した。
「アンサンブルセバスチャン」は、ピアニストの木内 栄さんを中心に、1995年に結成された弦楽アンサンブルで、長野県内外で活躍するプロの音楽家、県内オーケストラの団員から構成される。毎回、演奏曲により、管打楽器を加えた室内管弦楽団としてのコンサートを2008年から、このホールで開催している。
指揮は、音楽監督の山田哲男さん。
私が拝聴するのは3回目で、きっかけは、長野市出身のソプラノの岡田 愛さんを知ってからだが、塩尻市は、私の亡き両親の故郷でもある、という嬉しい偶然が重なり、レザンホールでのコンサートを楽しませていただいている。
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プログラムは下記のとおりだが、今回は、混声合唱団「ベーレンコール」との初共演があり、後述のとおり、これが素晴らしい内容だった。
<演奏曲>
1.ヴィヴァルディ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ長調 RV.213
第1ヴァイオリン:平波智映、第2ヴァイオリン:平波華映
2.バッハ:ミサ曲 ヘ長調 BWV.233
合唱:ベーレンコール
ソプラノ:岡田 愛 バリトン:松島誠治
3.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第5番 ニ長調 BWV.1050
チェンバロ:木内 栄 フルート:丸山貴菜 Violinソロ:平波智映
(休憩)
4.モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」より
(1)序曲 (2)「三尺、四尺~」 (3)「奥方様からお呼びの時は」
(4)「もう飛ぶまいぞ この蝶々」 (5)「恋とはどんなものかしら」
フィガロ:松島誠治 スザンナ、ケルビーノ:岡田 愛
5.モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299
フルート:丸山貴菜 ピアノ:木内 栄
アンコール~合唱、ソリストを含む出演者全員で
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
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1曲目の、ヴィヴァルディ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ長調は、初めて聴いたが、明るくて、とてもステキな曲。塩尻市在住の平波姉妹~姉の智映さんは桐朋学園大学卒、妹の華映さんは武蔵野音楽大学卒~による演奏は、トーンの違いも含めて楽しませていただいた。
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2曲目が、バッハ:ミサ曲 ヘ長調 BWV.233
先述のとおり、合唱団「ベーレンコール」との初共演で、女声が12名、男声が8名の計20名の合唱団。この曲の指揮は、「ベーレンコール」の音楽監督である中村雅夫さん。
特にテノール4名とバス4名による男声のトーンがソフトで、音量バランスが良く、無理のない発声にして、完璧な音程で素晴らしかったし、女声も特にソプラノ(たぶん6名、ないし5名)の伸びのある歌声がステキだった。アルトも安定感が良かった。
また、少人数とはいえ、マスク無しでの合唱は、聴くだけでなく、見ているだけでも~久々なので~嬉しくなった次第。
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「ベーレンコール」は1984年、中村雅夫氏を中心に結成され、現在は松本市を中心に活動。古典から現代まで全般的な合唱音楽に取り組み、特にプーランクをはじめとする近代フランスの合唱曲、武満徹、三善晃をはじめとする現代邦人作品を多く取り上げているとのことで、昨年は、全日空合唱コンクール中部大会で金賞を獲得されているから、なるほど、と納得のレベルと演奏内容だった。
私が、もし長野県在住者なら、ぜひ入団させていただきたいと思うくらい、この合唱団が好きになった。今後、またいつか、聴かせていただける機会を楽しみにしたい。
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ミサ曲 ヘ長調 BWV.233は、初めて聴いたが素晴らしい曲で、合唱による「Kyrie」、「Gloria」、バリトンソロの「Domine Deum」、ソプラノソロの「Qui tollis」、アルトソロの「quoniam」、合唱の「Cum Sancto Spiritu」から構成される。
「Gloria」は明るくて快活で素晴らしい合唱曲。
バリトンの松島誠治さんによる「Domine Deum」での端正な歌唱、岡田 愛さんによる「Qui tollis」も瑞々しい歌唱だったが、驚いたのは、アルトのソロとされる「quoniam」も愛さんが歌われたことで、ヴァイオリンのソロと通奏低音のみの伴奏による曲を、正に情感深いメゾの声で歌われて見事だった。これは、後述するケルビーノでのテイスト感と共通する。
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前半最後は、バッハのブランデンブルク協奏曲第5番
長い間合いをとった入念なチェンバロ調律の後に演奏された。
チェンバロの木内 栄さんによる長大なカデンツァ部分や、終始、愉悦間ある丸山貴菜さんのフルート演奏。
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後半の最初は、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」特集。
見事なアンサンブルを示した抜群な演奏による「序曲」
フィガロ役の松島誠治さんによる「三尺、四尺・・・」。愛さんが加わっての「奥方様からお呼びの時は」。フィガロの「もう飛ぶまいぞ この蝶々」。
とりわけ印象的だったのが、ズボン姿に着替えてのケルビーノのアリア、「恋とはどんなものかしら」を岡田 愛さんが歌われたことだ。いつもながらの清らかなソプラノの声とは違って、先述のミサ曲での「quoniam」同様、ヴィブラート多めの、この役に相応しいトーンによる歌唱は、とてもステキだった。
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プログラム最後は、
モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲 ハ長調
ハープではなく、木内 栄さんのピアノと丸山貴菜さんのフルートによる演奏だが、なるほど、ハープとピアノには、アルペジオという共通した要素があるので、違和感は全く無かった。
丸山貴菜さんのフルートが、温かく明るいトーンで、実に魅力的だった。優秀なフルート奏者。名演だと思う。
それにしても、素晴らしい曲だ。様式的なユニークさも含めて、モーツァルトの最高傑作の一つだと思う。
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アンコールは、「ベーレンコール」が再登場され(今度はマスクをされたままだったのは、休憩時間での着装のまま、ということだろう)、岡田 愛さん、松島誠治さんも加わって、出演者全員での、モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。
これまた、正に天国的な曲という点で、単純な和声と進行ながら、モーツァルトの最高傑作の一つ。
「全て、偉大なものは単純なのだ」。
これからも、毎年この時期の、このシリーズが楽しみだ。
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