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2022年5月19日 (木)

長谷川陽子さん~デビュー35周年記念公演 ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲演奏会

長谷川陽子さんのデビュー35周年記念リサイタルを5月19日夜、東京文化会館小ホールで拝聴した。

ファンクラブでは、私を含めた会員は皆、「陽子さん」と呼ばせていただいているので、この投稿文でも、以下そうさせていただく。

会場は満員御礼状況。もちろん、1~2年前のような「一席空け」ではなく、通常入りでの、ほぼ満席。さすが、人気チェリストによる記念リサイタルで、その状況自体も、とても嬉しかった。

曲目は、なんと、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ5曲全曲を一夜で演奏する、という意欲的なプログラムであり、今月25日のCD発売に先駆けてのリサイタルでもある。会場ロビーでは、あらかじめ陽子さんがサインしたフォト付きのCDが先行販売されており、当然、私も購入した。

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ピアノは名手、松本和将(かずまさ)さんで、私は、情熱的な演奏をする松本さんも昔から大好きで、CDにサインをいただいたこともある。最近の松本さんは、前橋汀子さんなど、多くの奏者と室内楽を演奏されているし、多くの歌手のリサイタルでも共演するなど、ソロ活動以外でも、とても活躍されている。その点でも期待できたし、後述のとおり、期待に違わず、素晴らしい演奏だった。

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前半は、第1番、第2番、第4番を演奏されたが、1曲が終わると、2人は拍手に応えてお辞儀を1回するだけで、すぐに~軽く調弦(音程を確かめる程度)をして~次の曲に移る、という進行。各曲、特別に長くはないとはいえ、精神的集中力と体力面でも、決して楽ではない構成と展開だった。

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1曲目のソナタ第1番 ヘ長調 作品5の1

気負いのない、自然体で丁寧なアプローチによる演奏には、常に若々しさと大らかさと「詩」があり、その安定感から、ベートーヴェンの初期の作品にもかかわらず、まるで中期の作品のような、作品自体の完成度と佇まい(たたずまい)を感じる演奏だった。

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第2番 ト短調 作品5の2

冒頭の「悲」の思い入れなど、1曲目同様、自然体のアプローチを基本としながらも、短調と長調でのトーンの変化の見事さを感じたし、特に第1楽章のアダージョの部分は、後述する第5番のアダージョとともに、とても印象的な秀演だったと思う。

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第4番 ハ長調 作品102の1

この後期の作品では、前2つの曲で表出した伸びやかさが一段と際立ち、優しさとスケール感をも感じさせる演奏だった。

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陽子さんは普段、とてもアグレッシブな演奏もされる奏者なのだが、前半の3曲で感じたのは、松本さんが情熱的な面を打ち出す分、陽子さんは、むしろ冷静に、客観性と叙情性を主体とするような演奏で、その対比というか、棲み分けと言うか、2人の絶妙なバランスが見て取れ、聴けるような気がして、とても面白かった。

そしてもちろん、後半の曲では更に別の要素が加わる。

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後半について

休憩時、お客から、ケイタイ音に関するクレームが運営サイドにあったようで、後半に入る前、2人の係員が、プラカートを持ち歩きながら、「携帯電話は、お切りください」と念押しアナウンスされた。

それにもかかわらず、陽子さんと松本さんが入場され、いざ演奏、というとき、ケイタイ音がして、いったん収まったかと思ったら、また響く、というハプニングがあり、会場中のヒンシュクを買ったのだが、その間、冷静で明るい性格の陽子さんは、松本さんと苦笑している程度で、ケイタイを持って女性が出て行くと、何事も無かったかのように、「A~E~Fis~」と、第3番の第一主題を弾き始めた。

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第3番 イ長調 作品69

ベートーヴェンの5曲の中だけでなく、あらゆるチェロ・ソナタの中でも最も有名で、優れた曲の1つで、私も大好きな第5番。

前半での自然体な伸びやかさに加え、曲想的からも、陽子さんのアグレッシブ度は~特に第3楽章では~増したし、松本さんも当然、豊かな音と表現力で演奏された。

大好きな第2楽章。極めて印象的な音楽で、ベートーヴェンの全作品の中でも傑作の一つだと思う。この日も、第2楽章が終わった瞬間に思った。「これぞ、ベートーヴェンだ」。

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第5番 ニ長調 作品102の2

プログラム最後の第5番は、陽子さんの落ち着きを基盤とした、精神的余裕とフレッシュさが同居し、精神の充実度と格調の高さで、すこぶる素晴らしい演奏だった。

とりわけ、第2楽章の詩的で、内省的な独白と瑞々しさが素晴らしく、この日の白眉だったと思う。

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この日、全体を通じて感じたことは、気取らない、気さくな性格の陽子さんのお人柄が、そのままストレートに出てくるような、丁寧で誠実な、温かくピュアな演奏、ということ。

ベテランの余裕と、いつまでも若々しい、フレッシュな感性が、そのまま表れてくるような新鮮な演奏が、とても魅力的だった。

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最後に、松本さんについても、再度、記載したい。

終始、頻繁に陽子さんを見ながら、アンサンブルに全身を注ぎつつ、いつもながらの情感溢れる演奏が見事だった。

「陽子さんを見る」、と言っても、演奏位置からして、陽子さんと松本さんは、アイコンタクトはできないのだが、松本さんは、陽子さんの右腕=弓使いと、左手(指盤で)の動きに注力し、あるいは、背中の動き具合、あるいは、息遣い等を確認しながら(であろうところ)のアンサンブルは素晴らしかったし、もちろん、陽子さんを支えるだけでなく、場面においては、自ら牽引してアグレッシブに進行、展開するなど、名手同士の名コラボが遺憾なく発揮された演奏だった。

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全曲が終わり、何回目かのカーテンコールで、陽子さんがマイクを手に挨拶された。

「デビューから35年が経ち、今日、弾いていて思ったことは、もっと上手くなりたい、ということです。ですので、40周年にご期待ください」、と会場を笑わせた後、アンコールとして、CDにも収録されている、ベートーヴェンの<マカベウスのユダ>の「見よ、勝利の英雄の来るのを」の主題による変奏曲の「超抜粋」を演奏されたが、それに先立っても、「(抜粋で演奏するので)ちゃんと全部お聴きになりたいかたは、お帰りにCDをお土産としてください」と、再度、聴衆を笑わせてから演奏し、21時23分ころ、記念リサイタルが終演した。

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演奏曲

いずれも、ベートーヴェンのチェロ・ソナタで

1.第1番 ヘ長調 作品5の1

2.第2番 ト短調 作品5の2

3.第4番 ハ長調 作品102の1

 (休憩)

4,第3番 イ長調 作品69

5.第5番 ニ長調 作品102の2

アンコール

<マカベウスのユダ>の「見よ、勝利の英雄の来るのを」の主題による変奏曲(抜粋)

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