森谷真理さん&大西宇宙さん~Viva Verdi! Ⅱ中期
正に圧巻だった。こういう大仰な表現は極力控えたいが、特にプログラムの後半は、そうとしか言い様のないデュオ・ステージだった。
トッパンホールにおける森谷真理さんの“ヴェルディ・プロジェクト”第2弾は、「Viva Verdi! Ⅱ中期」と題され、武蔵野音楽大学の後輩で、「先輩、真理さんを追いかけて、留学先をアメリカに決めた」というバリトンの大西宇宙(たつおき)さんとのデュオ公演。5月27日夜、同ホールで拝聴した。
2人の共演は今回が初めてとのこと。
プログラムはタイトルどおり「オール・ヴェルディ・プログラム」で、ピアノは、河原忠之さん。
以下、短い感想を記しながら、プログラムをご紹介したい。
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1.森谷さんのソロ~エレーナ役
歌劇「シチリア島の夕べの祈り」より
(1)「アリーゴよ!ああ、心に語れ」
(2)「ありがとう、愛する友よ」
森谷さんの低音の厚みと、高音のキラキラ感がステキだ。
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2.大西さんのソロ~レナート役
歌劇「仮面舞踏会」より
(1)「希望と喜びに満ちて」
(2)「立て!~お前こそわが魂を汚す者」
HakujuでのTRAGIC TRILOGY「椿姫」のときも書いたが、大西さんは、とにかく声量が凄い。こんなに声量のある日本人バリトンは稀かと思う。ただただ聴き惚れてしまう。
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3.アメーリア:森谷さん、シモン:大西さん
歌劇「シモン・ボッカネグラ」より
「貧しい一人の女に~娘よ、その名を呼ぶだけで」
森谷さんは、この二重唱では、繊細さも感じさせてくれた。
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(休憩)
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4.ヴィオレッタ:森谷さん、ジェルモン:大西さん
歌劇「椿姫」より
「神様は私に、天使のような娘を~美しく清らかなお嬢さんに」
森谷さんは、メゾのような情感豊かな表現力による、正に「泣き」「泣かせ」の歌声。哀感と繊細。
「ドラマティックな森谷さん」というイメージとは全く異なるトーンと表現力で、別の森谷さんを聴かせてくれて見事で、素晴らしかった。表現力、感情移入の素晴らしさという点で、この日の白眉。
大西さんも声量を抑え、役どころの、クールながらも揺れる心を示された歌唱だった。
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5.レオノーラ:森谷さん、ルーナ:大西さん
歌劇「トロヴァトーレ」より
(1)「君の微笑みの妙なる輝きは」
この曲で、大西さんは、声量を戻して、「らしさ」を感じさせる歌唱。
(2)「聞いたかな、朝ともなれば~命は助かったと」
2人による求心力あるデュオ。
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6.ジルダ:森谷さん、リゴレット:大西さん
歌劇「リゴレット」より
「いつも日曜に教会で~娘よ、お泣き~復讐だ」
大西さんは、前半では声量を抑え、しかし、ジェルモンのときのようなクールさではなく、情感豊かに歌い、大西さんとしては、この日、「一番の美声」だった。正にベルカント。素晴らしい。
後半では、声量を戻し、森谷さんともども、情感と伸びやかさで魅了した。
2人とも、十分な感情移入にあっても、2人が冷静に自らをコントロールしているのも解る。その完成度の高さ。
2人とも、前半から後半の「トロヴァトーレ」までの各曲において示された様々な良さ、トーン、表現等の集大成のようなデュオだった。
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アンコール
1.森谷さんのソロで、ヴェルディ「マクベス」より
「早く来て、あかりをつけておくれ~今こそ立て、皆のもの」
迫力、トーンの魅力、圧巻。
2.大西さんのソロで、ヴェルディ「椿姫」より
「プロヴァンスの海と陸」
温かく、格調高く、素敵。
3.ヴェルディ「椿姫」より「花から花へ」
まず、森谷さんがステージで歌い出し、大西さんによるアルフレードの呼応は、客席の後扉から入って来て、驚くほどの声量で歌われた。この日、最大の声量かもしれない。
もちろん、森谷さんも素晴らしく、この圧巻フィナーレに会場は興奮し、スタンディングオベーション。
素晴らしいデュオ公演に感謝し、最大の賛辞贈りたい。
2人へのインタビュー
https://www.toppanhall.com/archives/voice/bn_085.html
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