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2022年4月24日 (日)

中本椋子さん~SPRING CONCERT

音楽家に限ったことではないだろうけれど、凄い才能であっても、未だ全国的な知名度に至ってはいないアーティストは、国内だけでも各地に、たくさんいるに違いない。

中本椋子さんは、その一人だと思う。もっとも、リサイタルには必ず常連衆が来るし、2012年、日生劇場開場50周年記念公演「フィガロの結婚」のバルバリーナ役でデビューし、2013年には、佐渡裕さんのプロデュースオペラ「セビリャの理髪師」で、ロジーナ役の森 麻季さんのカヴァーも務めて、佐渡さんや麻季さんから可愛がられたりしてきたから、「知る人ぞ知る」コロラトゥーラソプラノ歌手だ。

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鮮やかなコロラトゥーラ技巧。

それだけでは勿論なく、日本歌曲でも清らかで凛とした歌唱を聞かせてくれるし、イタリア語のアリアだけでなく、ドイツ語やフランス語でのアリア等も十分魅力的に歌われる。

私がもし、マネジメントの仕事をしていたら、売り出したいと注力するに違いない歌手。少なくとも、その有力な一人だ。

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前置きが長くなったが、4月24日夜、駒込 Sophia Saal という、小ぢんまりとした、アットホームな雰囲気のある会場で、「SPRING CONCERT」と題されたサロンコンサートを拝聴した。

ピアノは坂本恵梨さんで、このコンビでのリサイタルは、昨年12月18日の紀尾井町サロンホールでも拝聴したが、この日も、昨年12月同様、中本さんは歌だけでなく、ジャスピアノ~絶対音感を持たれていることもあり、上原ひろみさんの長い曲も、「耳コピ」で覚え、弾いてしまうという特技を~披露するなど、多芸ぶりを発揮して、下記記載のとおり、多彩なプログラムにより、聴衆を楽しませてくれた。

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プログラム

1st.stage

1.中田喜直「はなやぐ朝」~「魚とオレンジ」より

2.シューマン「春(彼)だ!」

3.R・シュトラウス「ばらのリボン」

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中本さんのピアノ弾き歌いで5曲

1.トスティ「薔薇」

2.中田喜直「たんぽぽ」

3.中田喜直「たあんき ぽ~んき」

4.山田耕筰「たたえよ、しらべよ、歌いつれよ」

5.團 伊玖磨「紫陽花」

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1.中本さんのピアノ・ソロで

ラフマニノフ プレリュード Op.23-5

2.坂本さんのピアノ・ソロで

パガニーニの主題による狂詩曲より第18変奏

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3.A・トマ:オペラ「ハムレット」より「オフィーリアの狂乱」

 (休憩)

2nd.stage

1.滝 廉太郎「花」

2.中本さんのピアノ・ソロで

  上原ひろみ「Tom and Jerry’s show」

3.ロッシーニ「約束」

4.ロッシーニ「フィレンツェの花売り娘」

5.ミュージカル「CATS」より

「Memory」~A.ロイド・ウェバー

   歌=坂本さん、ピアノ=中本さん

6.中本さんのピアノ・ソロで、

  上原ひろみ「Mr. C.C」

7.ドニゼッティ:オペラ「シャモニーのリンダ」より「この心の光」

アンコール:小林秀雄「すてきな春に」

 

参考

すてきな春に 中本椋子 Ryoko Nakamoto 小林秀雄 :作曲 峯陽 :作詞

https://www.youtube.com/watch?v=Ks_27vNi7_k

 

2022年4月23日 (土)

リーズ・ドゥ・ラ・サールさん~久しぶりの来日ライヴ

シェルブール生まれのリーズ・ドゥ・ラ・サールさんが弾くラヴェルのピアノ協奏曲 ト長調を4月23日午後、東京オペラシティで聴き、大いに堪能した。コンサート2曲目の曲としての演奏。

オケは東京交響楽団で、指揮は1986年ニース生まれのリオネル・ブランギエさん。2005年、19歳で、ブザンソン国際指揮者コンクールに優勝している。

リーズ・ドゥ・ラ・サールさんが東京交響楽団と共演するのは、2007年以来とのことだが、彼女は2004年の初来日以降、度々来日している。

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私はこれまで、2012年6月と2013年5月の2回、聴いており~2つのブログ記事を添付します~、いずれも終演後に、サインをいただいている。2回目のときは、覚えていてくれた感じで、私を見るや、「あっ」という表情で、ニコッとしてくれた。

あどけない少女の印象が強かった当時の彼女も、今や、ベテラン奏者の雰囲気を外見からも醸し出す、一層魅力的なピアニストに成長している感じがして、私にとっては、今回の来日公演ほど嬉しいコンサートは、過去になかった。

それは、コロナ禍初年度の2020年に、彼女は自宅での演奏を精力的に配信していたことを見、聴いて、知っていたからでもある。そして、やっと、彼女を日本で、東京で聴く機会が来たのだ。

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前置きが長くなったが、今回の演奏曲は、待望のラヴェルのピアノ協奏曲。

第1楽章は、エレガントさよりも、打鍵的特徴を強調したアグレッシブな演奏。開始間もなくの、トランペットの難しいパッセージは完璧で、とても良かった。

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曲としても、演奏としても白眉は第2楽章。

繊細と言うよりも、ふくよなかで柔らかく温かな音自体が素晴らしい。アゴーギクも過剰にはせず、微妙な使用に止めていながらも、独特の詩情を創り出していて、とても魅力的な演奏だった。

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第3楽章は、第1楽章にも増してアグレッシブで、「ゴジラのテーマ」も含めて、打鍵的力感が素晴らしく、第2楽章の叙情から一転しての、この楽章の持つ、野性的な迫力を十分に引き出した、見事な演奏だった。

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長く盛大な拍手が続き、アンコールでは、弾く前に、彼女はこう聴衆に語った。

「ありがとう(と日本語で。会場笑)」

「シューベルト~「An die Musik」~for peace of the world」

そう言ってから、有名な歌曲「音楽に寄せて」を、瑞々しさと温かな清らかをもって弾いたのだった。

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このコンサートでの他の演奏曲について

1曲目が、指揮者として有名なエサ=ペッカ・サロネン(1958~)が、BBCから委嘱されて2005年に作曲した「ヘリックス」、という作品。「ヘリックス」とは、「螺旋」を意味するとのこと。10分ほどの曲で、終わり近くに少しテンポアップしたが、全体的にはモデラートでの、祝祭的な雰囲気のある曲。

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2曲目が、先述のラヴェルのピアノ協奏曲。

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休憩後の3曲目は、ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」。

オケの落ち着いたキャラの関係か、割と端正なラヴェル、という感じがした。もちろん、個性的で温かな色彩感はラヴェル固有のもの。

最後の曲は、ストラヴィンスキーの「火の鳥」(1919年版)だったが、私が所属するオケの練習開始時間の関係で、残念ながら聴かずに退席した次第。

 

https://www.amati-tokyo.com/artist/piano/post_35.php

 

2012年6月5日のブログ

http://susumuito.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/l.html

2013年5月26日のブログ

http://susumuito.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-57a1.html

2022年4月14日 (木)

オンプラゾリステン主催「トンガとウクライナのためのチャリティーコンサート」~初めて知った曲も盛りだくさんのプログラム

銀座の「音楽ビヤプラザライオン」が、コロナ禍の影響で、2020年11月15日に閉店してしまったが、常連の出演者メンバー同士と、お客様との縁を、今後も大事にして活動を続けてゆくとして再スタートした「一般社団法人オンプラゾリステン」主催によるチャリティーコンサートを4月14日夜、としま区民センターの小ホールで拝聴した。

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このチャリティーコンサートは、当初、今年1月15日に起きた火山噴火により、大きな被害が生じたトンガ王国支援として企画されたものだが、ウクライナの惨状が生じたため、2つの国民に対するチャリティーコンサートとして開催された。よって、募金箱も2つ用意され、私も少額ながら2箱に投じさせていただいた。

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仮に、係る主旨でなかったとしても、以下のとおり、内容は盛りだくさんで充実しており、純粋にコンサートとして、十分に楽しめる内容だった。初めて聴き、知った曲も多く、特に「ひらがなの生き方」は素晴らしい歌なので、詳しく後述したい。

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出演者は、ソプラノの菊地美奈さん、佐藤泰子さん、山下尚子(しょうこ)さん。

メゾソプラノの杣友惠子(そまとも けいこ)さん、テノールの納谷善郎さん、トロンボーンの竹田年志さんで、ピアノは瀧田亮子さん。

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第一部

まず、全員で、瀧 廉太郎の「花」、中山晋平の「背くらべ」、岡野貞一の「朧月夜」、弘田龍太郎の「靴が鳴る」、シューベルト「野ばら」(日本語とドイツ語)、そして、この日の主旨にも関わる「トンガ国歌」が歌われた。

「トンガ国歌」は、さすがに全出演者も、私を含む聴衆全員も、今回初めて知った曲で、係る機会でないと、なかなか聴けないゆえ、とても興味深かった。

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次いで、杣友惠子さんが、大中寅二作曲の「椰子の実」を歌われた。

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続いて、菊地美奈さんが(合唱付きで)、ウクライナ民謡の「鳥の歌」をウクライナ語で歌われた。

「鳥の歌」と言っても、正式には「また秋が来て」という歌曲なので、カザルスの演奏で有名になったカタロニア民謡とは違う曲。初めて聴いたけれど、哀愁漂う、とてもステキな曲なので、これについては、別途(後日)、ユーチューブにある演奏をご紹介します。

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そして、プログラムには無かったが、映画「ひまわり」のテーマ曲を全員で歌われた。ソフィア・ローレン主演の有名な作品で、戦争を題材とし、撮影がウクライナで行われたこともあり、現在、あらためて注目され、DVDだけでなく、最近、都内の映画館でも上映されている。テーマ曲としても、素晴らしい名曲だ。

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次はガラッと変わって、佐藤泰子さんのソロで、グノー 歌劇「ロミオとジュリエット」より「私は夢に行きたい」。曲想と佐藤さんの声質がとても合っている感じがした。

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次いで、メインMCも兼務されたテナーの納谷善郎さんのソロで、クルティスの「泣かないお前」。

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そして、沖縄の歌が3曲。

まず全員で、沖縄民謡「てぃんさぐぬ花」。次に、プログラムに無かった沖縄民謡「芭蕉布」を納谷さんが歌われた後、全員で琉球民謡「だんじゅ嘉利吉」が歌われた。

「芭蕉布」は特に有名な曲であることを後から知ったが、私は3曲とも初めてで、とても興味深く拝聴した。

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休憩後の第二部

まず、竹田年志さんによるトロンボーンのソロで、シュレック「天使ガブリエルの嘆き」という、とても難しそうな曲が見事に演奏された。

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佐藤泰子さんが歌われた笠松泰洋さん作曲の「Lacrimosa」も、とても美しく、ステキな曲だった。

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続いて、フォーレ「レクイエム」より、まず、山下尚子さんのソロで「Pie Jesu」。そして、全員で「Agnus Dei」。山下さんは、ピュアというより、情感深い「Pie Jesu」が印象的で、「Agnus Dei」では、オペラ歌手による合唱の素晴らしさが十分示され、素晴らしかった。

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次いで、杣友惠子さんが「The Sound of Music」のテーマ曲を日本語で歌われた。

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次の、山下尚子さんが歌われた、村上信夫さんの詩に、長森かおるさんが作曲した「ひらがなの生き方」は、初めて聴き、知った曲の1つだが、とても素晴らしい曲で、感動した。

これは、「あ」いしています~「い」まここに~「う」んでくれて~「え」らんでくれて~「お」かあさん(あいしています)~と、以下も、五十音順で、「か」から「わ」までを、それぞれセンテンスの冒頭に置いて開始する歌で、係る技術的工夫だけでなく、心温まる歌詞内容が見事だし、メロディーも素晴らしいので、これについても、「鳥の歌」同様、別途(後日)、ユーチューブにある映像をご紹介させていただきます。

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納谷善郎さんのソロで、玉置浩二さんの「メロディー」。納谷さんも事前に言及されたように、多くのオペラ歌手が絶賛する名歌手、玉置浩二の曲なので、素晴らしいと同時に難しい曲であることは、納谷さんの歌唱を聴いていても解ったが、納谷さんの歌唱もステキだった。

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そして、菊地美奈さんのソロで、シャルパンティエの歌劇「ルイーズ」より「その日から」が歌われたのだが、「さすが美奈さん」と言うべき、素晴らしい歌唱で、とても感動した。世界のどの歌劇場で、このまま歌われても、絶賛されるに違いない歌唱だと思った。

この日、曲自体に関しての最大の感動は、先述の「ひらがなの生き方」だったが、演奏として最も感動した歌唱は、この、美奈さんによる「その日から」だった。

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プログラム最後は、全員で、「Amazing Grace」を歌い(編曲は、加藤千鶴さん)、アンコールとして、もう一度「トンガ国歌」が歌われて、このチャリティーとしての意義深く、また、多くの初めて知ったステキな出会いのあった素晴らしいコンサートが終了した。

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演奏曲

第一部

1.瀧 廉太郎 「花」  (詩:竹島羽衣)

2.中山 晋平 「背くらべ」(詩:海野 厚)

3.岡野 貞一 「朧月夜」 (詩:高野辰彦)

4.弘田 龍太郎「靴が鳴る」(詩:清水かつら)

5.シューベルト「野ばら」 (詩:ゲーテ)

6.トンガ国歌

7.大中 寅二 「椰子の実」(詩:島崎藤村)

8.ウクライナ民謡「鳥の歌」

9.映画「ひまわり」のテーマ曲

10.グノー 歌劇「ロミオとジュリエット」より

   「私は夢に行きたい」

11.クルティス 「泣かないお前」

12.沖縄民謡「てぃんさぐぬ花」

13.沖縄民謡「芭蕉布」

14.琉球民謡「だんじゅ嘉利吉」

 (休憩

第二部

1.シュレック「天使ガブリエルの嘆き」

2.笠松 泰洋 「Lacrimosa」

3.フォーレ「レクイエム」より

 (1)Pie Jesu

 (2)Agnus Dei

4.ロジャース「The Sound of Music」

5.長森 かおる「ひらがなの生き方」(詩:村上信夫)

6.玉置 浩二「メロディー」

7.シャルパンティエ 歌劇「ルイーズ」より

   「その日から」

8.Amazing Grace

アンコール:トンガ国歌

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出演者

ソプラノ:菊地美奈、佐藤泰子、山下尚子

メゾソプラノ:杣友惠子

テノール:納谷善郎

トロンボーン:竹田年志

ピアノ:瀧田亮子

2022年4月12日 (火)

小平奈緒さんと彼女を支えた相澤病院

小平奈緒さんが10月に現役生活を退くと表明~彼女を支えた相澤病院
尊敬し、大好きなアスリートの一人、小平奈緒さんが、今年10月の全日本距離別選手権を最後に現役生活を退くと表明された。会見では、「アマチュアスポーツに、引退という言葉はない」として、「引退」の言葉は使わなかった。知的な小平さんらしい。
2009年、信州大学教育学部生涯スポーツ課程地域スポーツ専攻卒業。長野県松本市の相澤病院にスポーツ障害予防治療センターのスタッフとして採用される。彼女は、「半日は職員として勤務したい」と申し出たが、院長は「全ての時間を競技(練習)に費やしてよい」とし、「長期出張」扱いとして競技に打ち込ませた。
相澤病院は、私の祖父と叔母が「最期」にお世話になった病院。
小平さんに特別な親近感を覚えると同時に、小平さんと、彼女を支えてきた相澤病院を心から尊敬する。
https://news.yahoo.co.jp/articles/269fef440eb4554c264346fd92d2489947c95916

小平奈緒が引退 所属の相澤病院はサポート継続へ「小平さんは仲間」「共に歩んでいきたい」
https://news.yahoo.co.jp/articles/b4e5969d3c8ad53cdcf188668b376f473731add7

2022年4月11日 (月)

宮谷理香さん~神田お茶の水ホール竣工記念リサイタル

武蔵小金井駅近くには「小金井 宮地楽器ホール」(旧:小金井市民交流センター)があり、何回か行ったことがあるが、小金井市の公立文化施設のようで、出資の関係からか、「宮地楽器」が付いていると想像する。

似たケースとしては、八王子市民会館が2011年4月の開館の際、オリンパスが10年契約で命名権を取得し、「オリンパスホール八王子」と命名され、今年3月に命名使用期限が終了し、今度は、ジェイコム東京が命名権料年間1,200万円、命名期間5年の契約を結んで、「J:COMホール八王子」に変更されたし、2017年4月にオープンした浦安のホールも「J:COM浦安音楽ホール」という名称となっている。

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前置きが長くなったが、千代田区神田小川町に本社があった宮地楽器(株式会社 宮地商会)が創業105周年を迎え、新たな本社屋として、丸ノ内線の淡路町駅近くに「神田宮地ビル」を完成させ、同時に神田お茶の水ホールも新設し、その竣工記念コンサートとして、4月9日午後、宮谷理香さんによるリサイタルが開催された。休憩無しの80分によるミニ・コンサートで、ヤマハの新しいピアノ「Premium Grand Piano CF4」のお披露目コンサートでもあった。

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演奏曲は下段に記載のとおりで、どれも素晴らしかったが、とりわけ、ショパンの舟唄、「英雄」ポロネーズ、アンコールでの「革命」エチュードが充実していた。

また、マズルカに関する詳細な解説が興味深く、とても勉強になった。

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終演後、コロナ禍以降、どのホールでの、どの演奏家によるコンサートでも途絶えている、演奏者によるCDサイン会が開催されて、驚きの嬉しさだった。こうしたことは、そろそろ再開されてよいと思っていたが、なかなか現状は中止されたままだ。そんな中、小さなホールでのサロンコンサートとはいえ、サイン会を再開された宮谷さんは、サスガだと思う。この判断と行動を、私は強く支持する。

宮谷さんと直に話すのも久しぶりだったが、フェイスブックでの宮谷さんのアップに対して、私は、よくレスポをしていることもあり、「あ、伊藤さん、お久しぶり。いつも「いいね」をありがとうございます」、という感じで、長い年月、話していない、という感じはしなかった。

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演奏曲

1.スカルラッティ:ソナタ K.159 L.104 ハ長調

2.モーツァルト:ソナタ ハ長調 K.330より第1楽章

3.リスト:愛の夢 第3番

4.リスト:ラ・カンパネラ

5.ショパン:前奏曲 変ニ長調 Op.28-15「雨だれ」

6.ショパン:舟唄 嬰ヘ長調 Op.60

7.ショパン:マズルカ Op.17-4 イ短調

8.ショパン:ワルツ 第6番 Op.64-1「子犬のワルツ」

9.ショパン:ポロネーズ 第6番 変イ長調 O.53「英雄」

アンコール

1.ショパン:ノクターン 変ホ長調 Op.9-2

2.ショパン:練習曲ハ短調作品10-12「革命」

2022年4月 6日 (水)

新国立劇場~歌劇「ばらの騎士」を鑑賞

新国立劇場にて4月6日夜、R・シュトラウスの「ばらの騎士」を鑑賞した。

指揮は、ウィーン生まれのサッシャ・ゲッツェル氏。オケは東京フィルハーモニー交響楽団。合唱は新国立劇場合唱団と児童合唱の多摩ファミリーシンガーズ。演出は、ジョナサン・ミラー氏。

第1幕

前奏(導入曲)でのホルンがステキ。弦にはもっと響のパワーが欲しいが、「Tranquillo」の部分は、ゆったり、しっとりと歌い、美しかった。

幕が開く。オクタヴィアン役の小林由佳さんが声量も含めて素晴らしい。ズボン役、少年役なので、アルト色の強いメゾより、ソプラノに近いメゾが役に相応しいと思うし、その点でもピッタリだ。由佳さんは2017年7月の二期会公演でも同役を歌われているので、良い意味での余裕を感じさせる。

その公演について、当時、私はブログに、「ばらの騎士~小林由佳さんのオクタヴィアンの素晴らしさ」、と題して書き、由佳さんを絶賛したのだが(添付参照)、そのときの感想が正しかったことを確信した。

結論を先に言ってしまうと、本公演では、小林由佳さん、安井陽子さん、宮里直樹さんが素晴らしく、もちろん後述する妻屋秀和さん、森谷真理さんも、とても良かった。

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元帥夫人役のアンネッテ・ダッシュさんは初めて聴かせていただいた。美人で、本物の貴族のような気品があり、欧州で大活躍中だが、意外にも声量がやや弱い気がした。少なくとも声量に関しては、私は満足できなかった。ラスト近くの有名な三重唱は素晴らしく、「この部分のためにセーブしていたのか?」と思ったほどだが、さすがにそんなことはないだろう。今後も何回か聴いてみたいし、それによって感想も違ってくるだろう。

ただ、今回の内容だけで言うなら、後述のマリアンネ役で出演された森谷真理さんが、2017年7月の二期会公演で元帥夫人を歌われているので、森谷さんで聴いてみたかった、という思いを強く抱いた。

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オックス男爵役の妻屋秀和さんは、さすがの余裕。全幕を通して、量的に最も多くの出番がある、とても重要な役を魅力的に歌い、演じた。先述の2017年7月の二期会公演でも同役で出演され、ブログに私はこう書いた。「オックス男爵の妻屋秀和さんの素晴らしさはこの日も健在で、とりわけ得意とするドイツ語によるオペラの、好色で滑稽な役柄をユーモアたっぷりに歌い演じ、あらためてこのオペラにおけるオックス男爵の存在意義の重要さを感じさせて出色だった」。

今回もこのまま引用できる。「女好きな大柄だけれど小物」を巧みに演じ、第2幕最後の、下の「E」のロングトーンもよく聴こえていた。当たり前だけど。

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特に素晴らしかったのは「テノール歌手役」の宮里直樹さん。

歌い出した瞬間から、それまでの舞台の雰囲気を一変させるほど、明るく、朗々と、伸びやかで素晴らしい歌声。バーンスタイン盤で、ドミンゴがこの役を歌い出した瞬間から、それまでの状況を全てを忘れさせるほど、「持っていってしまった」見事な歌唱を聴かせてくれたが、それに近いと言えるくらい、聴衆が聴き惚れたに違いないと想像、いや確信できるほど、素晴らしい歌唱だった。この役にピッタリだ。

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なお、公証人役の晴 雅彦さんは、2007年以来、なんと過去4回も、この役を新国立劇場で歌われているのが凄い。

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第2幕

ゾフィー役の安井陽子さんも、2011年4月の新国立劇場で同役を歌っているので、得意な役。いつもながらの伸びやかで透き通るような美しい声で聴衆を魅了した。この役に限らないが、安井さんほどの完成度をもって歌われる歌手というのは、決して多くはないように思える。素晴らしい歌手だ。

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マリアンネ役の森谷真理さんは、出番は少ないながら、「さすが森谷さん」と思わせる、生き生きとした歌唱がステキだった。

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ファーニナル役の与那城 敬さんは、歌声の魅力だけでなく、第3幕も含めて、「お調子者のファーニナル」を巧みに(敢えて過剰に)演じ、一人だけ喜劇役者がいた感がして、面白かった。

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アンニーナの加納悦子さんも、この役を得意とされており、新国立劇場での2011年、2015年、2017年と、過去3回、この役を歌われている。さすがの余裕の歌唱。

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第3幕

料理屋の主人役のテノール、青地英幸さんが、とても美しく良い声でステキだった。

先述のとおり、有名な三重唱と、それに続く二重唱が見事で、聴衆を十分魅了して、本公演を終えた。

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演出について

奥行を(縦長に)効率的にセットし、第1幕と第2幕は、ケバケバしく なく、シンプルで美しい舞台だった。惜しいのは第3幕だ。前半のドタバタ部分では、ある種、殺風景なこの設定でも構わないが、途中から、「まさか、このセットのまま、あの美しい三重唱と二重唱をやるのだろうか?」と心配になったのだが、結局、危惧そのままに、照明を抑えた、やや陰鬱な舞台のまま、あの素晴らしい三重唱と二重唱が歌われ、エンディングとなった。

若い二人の恋の成就だけでなく、元帥夫人の寂しさを内包する物語ではあっても、薄暗さと殺風景なセットでのエンディングには、好き嫌い、賛否が分かれるだろう。

私は、感心はしなかった。

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それでもなお、ドタバタ喜劇をベースとしながらも、哀感のある、そして、過剰なまでの音に溢れた豪華絢爛な音楽物語を、十分楽しませていただいたことに感謝したい。

親しくしていただいている小林由佳さんと与那城 敬さん。一度お話しさせていただいたことのある安井陽子さん。先日、あるコンサートで、偶然だが、ご本人に先んじて、お母様とご挨拶する機会があった森谷真理さん、という、ご縁ある4人が出演され、素晴らしい歌声を聴かせていただいたことに、深い感覚を覚えるし、なんか「今まで生きて来て良かった」と思う。

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出演者、スタッフ

【指 揮】サッシャ・ゲッツェル

【合唱】新国立劇場合唱団

【児童合唱】多摩ファミリーシンガーズ

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【演 出】ジョナサン・ミラー

【元帥夫人】アンネッテ・ダッシュ

【オックス男爵】妻屋秀和

【オクタヴィアン】小林由佳

【ファーニナル】与那城 敬

【ゾフィー】安井陽子

【マリアンネ】森谷真理

【ヴァルツァッキ】内山信吾

【アンニーナ】加納悦子

【警部】大塚博章

【元帥夫人の執事】升島唯博

【ファーニナル家の執事】濱松孝行

【公証人】晴 雅彦

【料理屋の主人】青地英幸

【テノール歌手】宮里直樹

【帽子屋】佐藤路子

【動物商】土崎 譲

 

https://www.nntt.jac.go.jp/opera/derrosenkavalier/

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