仲道祐子さん~デビュー25周年記念リサイタル
仲道祐子さんの「デビュー25周年記念 原点回帰」と題したピアノ・リサイタルを、3月25日夜、Hakujuホールで拝聴した。
今更「郁代さんの妹さん」と書くのは失礼だろう。色々な企画を含めたコンサートや、大阪芸術大学の教授として後進の指導など、とても活躍されているのだから。
ライヴの拝聴は久々で、CDでの印象だと、端正な演奏という記憶があったが、この日の仲道さんの演奏は、全体として、「豊麗な音による、豪快でダイナミックな、ドラマティックな演奏をされるピアニスト」という、真逆な印象を受け、良い意味でとても意外で、大いに興奮し、感動した。
演奏曲全体は、最下段に記載のとおりだが、どの曲も素晴らしい演奏だった。
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1曲目と2曲目は、メンデルスゾーンなのだが、流麗さはショパンのようだし、ダイナミズムはリストのようで、「本当にメンデルスゾーンの曲?」と思ったほどだった。
その1曲目の「ロンド・カプリッチョーソ」は、着用されたドレスに着いてキラキラと点在したアクセサリーのごとく、美しく華麗な演奏だったし、2曲目の「厳格な変奏曲」は、ブラームス的な低音の重厚感と、リストのような煌びやかさがステキで、豊麗な音による堂々たるダイナミズムが魅力だった。
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この流れだから、3曲目と4曲目のリストの曲の演奏は、「推して知るべし」というところだ。
3曲目の3つの演奏会用練習曲 「ため息」の流麗さ、4曲目の「バラード 第2番 ロ短調」における圧巻な、豪快な響による壮大な演奏、と、ただただ聴き惚れてしまうほどの見事なものだった。
なお、前後するが、2曲目のメンデルスゾーンが終わってから、仲道さんはマイクを手に、以降、曲の解説などのトークを交えながら、進行された。
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休憩後の後半、最初の曲は、田中カレンさんの こどものためのピアノ小品集「愛は風にのって」~ 三善晃先生の思い出に~から、6曲が演奏された。文字通り、田中カレンさんが、桐朋学園での師匠、三善 晃さんに関する色々な思い出、逸話を基に作曲した21曲による曲集から、シャンソン風の<ラム酒の樽>など、どれも愛らしく、楽しい曲だった。
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シューマン=リストの「献呈」は、自然体な息吹な魅力的な、叙情的な演奏。
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プログラム最後は、ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」。
演奏に先立ち、ベートーヴェンのピアノ・ソナタの作曲が、ピアノの改良、進化と強い関連があったことについて、詳細な解説があった。
仲道さんが弾く「ワルトシュタイン」は、シューベルトの様な歌謡性と瑞々しさがあり、ノンペダルが少ないのか、常に豊かな響が連続しているのが特徴的に感じられた。
敢えて言えば、「ロマン派の作曲家が、古典的なアプローチで作曲したピアノ・ソナタ」という感じがしたのが興味深かった。
第2楽章も、弱音での神秘性ではなく、「P」と言うより「mP」を主体として、弱すぎないように配慮された音による、自然体な歌が印象的だった。
第3楽章への「合図」である「G」音のロングトーンも、特別には強調はせず、ごく自然な感じで、第3楽章に入った。流動感と自然な流れを基本に、ダイナミックで朗々と歌う音楽。とても良かった。
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アンコールの1曲目は、ショパン ノクターン Op.9-2で、明るくピュアな、健康的なノクターン。
2曲目のグリーグ「春に寄す」を、モヤっとではなく、しっかりと抒情性を持った音楽として描かれた演奏により、このステキなコンサートが終了した。
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演奏曲
メンデルスゾーン: ロンド・カプリッチョーソ Op. 14 U 67 ホ長調
メンデルスゾーン: 厳格な変奏曲 Op. 54 U 156
リスト: 3つの演奏会用練習曲 「ため息」 S. 144 / 3 R. 5 変ニ長調
リスト: バラード 第2番 S. 171 R. 16 ロ短調
(休憩)
田中カレン: こどものためのピアノ小品集 「愛は風にのって」
~ 三善晃先生の思い出に ~ より
<ラム酒の樽><淋しい料理人><黒のタートルネック>
<笛吹きと縄文土器><クリスマスの思い出><愛は風にのって>
シューマン=リスト:「献呈」S566 / R253
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」Op. 53 ハ長調
アンコール
1.ショパン ノクターン Op.9-2
2.グリーグ「春に寄す」
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