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2022年3月26日 (土)

森谷真理さん&鳥木弥生さん~ゲキジョウシマイ

ソプラノの森谷真理さんと、メゾ・ソプラノの鳥木弥生さん、という、とても活躍されている2人のオペラ歌手によるデュオコンサートを、3月26日午後、王子ホールで拝聴した。ピアノは江澤隆行さん。

アンコールで個別に1曲ずつ歌われた以外は、開始からエンディングまで全てデュオ、というコンサート形式自体、珍しいと思う。

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2人によるコンサートを聴かせていただいたのは、私は初めてだが、「ゲキジョウシマイ」製作委員会の主催によるこの企画自体は、この日が初めてではなく、これまで何回か開催され、今後も継続して行くシリーズもの、ということも今回、初めて知った。

お2人の接点も、オペラやコンサートでは、あまり多くないような印象を持っているが、武蔵野音楽大学出身の先輩(姉)鳥木さん、後輩(妹)森谷さん、ということも強い要因(きっかけ)としてあるようだ。

プログラム終演後のトークコーナーでも、2人が既に気心の知れた、仲の良い関係であることが示されていた。

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この日のコンサートは、「シマイのヘヤシマイC→D」と銘打たれていて、東京オペラシティの「B→C」ならぬ、「C→D」とは、取り上げた作曲家で前半のカリッシミの「C」、後半のドヴォルザークの「D」ということだろうと推測する。

全曲目は最下段に記載のとおりだが、アルカンの曲のみ、江澤さんのピアノ・ソロによる演奏で、他は先述のとおり、アンコールは別として、全てが二重唱だった。

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1曲目のジャコモ・カリッシミ(1605~1674)二重唱曲集からの3曲は、バロック期の作品らしい格調と、同時に、とても親しみ易いデュオ曲。

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次いで、「ヘラクリトスとデモクリストス」というタイトル繋がりから、江澤さんのソロで、シャルル=ヴァランタン・アルカン(1813~1888)の「ヘラクリトスとデモクリストス」が演奏された後、再び、カリッシ作曲の「ヘラクリトスとデモクリストス」~哲学者たち~の二重唱。

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そして、前半最後が、ヨハン・セバスティアンの息子の一人で、ロンドンで活躍した作曲家、ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735~1782)の」6つのカンツォネッタ 作品4」より4曲が演奏された。

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休憩後の後半は、ドヴォルザークの「モラヴィア2重唱曲集」。1876年の作品で、13曲の曲から構成される。素朴で愛らしい曲がかりで、楽しめた。チェコ語の訳詞は鳥木さんが行ったとのこと。

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全曲に共通して言えることは、前半はもちろん、後半のドヴォルザークも、ソプラに特別な高音を与えてはいないこともあり、優れたソプラノとメゾによる掛け合いの面白さ、声質の違いと、溶け合うトーンの心地良さを、じっくり楽しませていただけた、ということに尽きる。

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先述のとおり、全プログラム終演後は、室田尚子さんの進行により、2人とのQ&Aを中心としたトークが20分ほどだったか行われて、お2人のお人柄の一端も窺えて楽しかった。

そして、鳥木さんがカルメンを、森谷さんがムゼッタを歌い、この楽しいコンサートが終了した。

今後も楽しみな企画コンサートだ。

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曲目

1.ジャコモ・カリッシミ:二重唱曲集

(1)安らかに (2)飛び去ればいい (3)優雅な眼差し

2.シャルル=ヴァランタン・アルカン

  「ヘラクリトスとデモクリストス」~ピアノ・ソロ

3.ジャコモ・カリッシ

  「ヘラクリトスとデモクリストス」~哲学者たち~

4.ヨハン・クリスティアン・バッハ

 6つのカンツォネッタ 作品4 より

(1)愛のさざなみ (2)未練 (3)不満足 (4)容疑者

 (休憩)

5.ドヴォルザーク「モラヴィア2重唱曲集」

(1)私を捕まえて (2)遠距離恋愛 (3)負け惜しみ

(4)恨み (5)格差婚 (6)恋の弔い (7)厭世

(8)謙遜 (9)指輪 (10)芽吹き (11)大丈夫 (12)旬

アンコール

1.鳥木さん~「カルメン」より「ハバネラ」

2.森谷さん~「ラ・ボエーム」より「私が街を歩けば」

2022年3月25日 (金)

仲道祐子さん~デビュー25周年記念リサイタル

仲道祐子さんの「デビュー25周年記念 原点回帰」と題したピアノ・リサイタルを、3月25日夜、Hakujuホールで拝聴した。

今更「郁代さんの妹さん」と書くのは失礼だろう。色々な企画を含めたコンサートや、大阪芸術大学の教授として後進の指導など、とても活躍されているのだから。

ライヴの拝聴は久々で、CDでの印象だと、端正な演奏という記憶があったが、この日の仲道さんの演奏は、全体として、「豊麗な音による、豪快でダイナミックな、ドラマティックな演奏をされるピアニスト」という、真逆な印象を受け、良い意味でとても意外で、大いに興奮し、感動した。

演奏曲全体は、最下段に記載のとおりだが、どの曲も素晴らしい演奏だった。

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1曲目と2曲目は、メンデルスゾーンなのだが、流麗さはショパンのようだし、ダイナミズムはリストのようで、「本当にメンデルスゾーンの曲?」と思ったほどだった。

その1曲目の「ロンド・カプリッチョーソ」は、着用されたドレスに着いてキラキラと点在したアクセサリーのごとく、美しく華麗な演奏だったし、2曲目の「厳格な変奏曲」は、ブラームス的な低音の重厚感と、リストのような煌びやかさがステキで、豊麗な音による堂々たるダイナミズムが魅力だった。

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この流れだから、3曲目と4曲目のリストの曲の演奏は、「推して知るべし」というところだ。

3曲目の3つの演奏会用練習曲 「ため息」の流麗さ、4曲目の「バラード 第2番 ロ短調」における圧巻な、豪快な響による壮大な演奏、と、ただただ聴き惚れてしまうほどの見事なものだった。

なお、前後するが、2曲目のメンデルスゾーンが終わってから、仲道さんはマイクを手に、以降、曲の解説などのトークを交えながら、進行された。

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休憩後の後半、最初の曲は、田中カレンさんの こどものためのピアノ小品集「愛は風にのって」~ 三善晃先生の思い出に~から、6曲が演奏された。文字通り、田中カレンさんが、桐朋学園での師匠、三善 晃さんに関する色々な思い出、逸話を基に作曲した21曲による曲集から、シャンソン風の<ラム酒の樽>など、どれも愛らしく、楽しい曲だった。

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シューマン=リストの「献呈」は、自然体な息吹な魅力的な、叙情的な演奏。

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プログラム最後は、ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」。

演奏に先立ち、ベートーヴェンのピアノ・ソナタの作曲が、ピアノの改良、進化と強い関連があったことについて、詳細な解説があった。

仲道さんが弾く「ワルトシュタイン」は、シューベルトの様な歌謡性と瑞々しさがあり、ノンペダルが少ないのか、常に豊かな響が連続しているのが特徴的に感じられた。

敢えて言えば、「ロマン派の作曲家が、古典的なアプローチで作曲したピアノ・ソナタ」という感じがしたのが興味深かった。

第2楽章も、弱音での神秘性ではなく、「P」と言うより「mP」を主体として、弱すぎないように配慮された音による、自然体な歌が印象的だった。

第3楽章への「合図」である「G」音のロングトーンも、特別には強調はせず、ごく自然な感じで、第3楽章に入った。流動感と自然な流れを基本に、ダイナミックで朗々と歌う音楽。とても良かった。

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アンコールの1曲目は、ショパン ノクターン Op.9-2で、明るくピュアな、健康的なノクターン。

2曲目のグリーグ「春に寄す」を、モヤっとではなく、しっかりと抒情性を持った音楽として描かれた演奏により、このステキなコンサートが終了した。

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演奏曲

メンデルスゾーン: ロンド・カプリッチョーソ Op. 14 U 67 ホ長調

メンデルスゾーン: 厳格な変奏曲 Op. 54 U 156

リスト: 3つの演奏会用練習曲 「ため息」 S. 144 / 3 R. 5 変ニ長調

リスト: バラード 第2番 S. 171 R. 16 ロ短調

(休憩)

田中カレン: こどものためのピアノ小品集 「愛は風にのって」

~ 三善晃先生の思い出に ~ より

<ラム酒の樽><淋しい料理人><黒のタートルネック>

<笛吹きと縄文土器><クリスマスの思い出><愛は風にのって>

シューマン=リスト:「献呈」S566 / R253

ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」Op. 53 ハ長調

アンコール

1.ショパン ノクターン Op.9-2

2.グリーグ「春に寄す」

2022年3月23日 (水)

ゼレンスキー大統領の演説

「プーチンの最大の誤算は、ゼレンスキーがウクライナの大統領だったことかもしれない」
そう思ったほどの、見事な演説だった。
冷静にして、誠意と説得力ある内容。プレゼンテーション能力の高さに驚く。ただ者ではない。大統領に、なるべくしてなった人だと思う。
日本向け演説では、早期からの支持、支援に何度も感謝を述べ、ロシアに対する経済制裁の継続を強く要望するとともに、「戦後」のウクライナ支援、機能していない国連改革や、アジアのリーダーとして期待する旨の言及もあった。
これまで各国での演説で行ったような、その国の歴史的悲劇や、偉人の言葉などの引用によって国民感情に訴える、ということは全くせず~強いて言えば、「津波」という言葉を使ったことくらいだろう~、子供を含む国民が殺されている理不尽な現状、原発への攻撃や、ウワサされるサリン等の攻撃の危険性などにも言及し、ウクライナにある危機が、同国のみのものではない、国際的な危機である点も強調した。
誠実に、冷静に、他国民に訴えかけてくる「言葉の力」を持った政治家が、過去も含めて日本にいたのかどうか、私は知らない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/cee512d939d58f24b7ece46adb6c6ed034531d48

2022年3月19日 (土)

鳥越俊太郎発言を批判する

ウクライナのゼレンスキー大統領が、日本の国会でオンライン演説を行う予定であることを受け、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏がツイッターで、下段に記載のとおり、激しい反対の意向を示した。
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まず、この発言についての私の意見
これは、「日本の平和理念さえ守れば、他国の平和と安全、人々の生命はどうでもよい」という、一国平和論の典型だと思います。致命的なのは、「ヒューマニティの欠如」ということ。今、世界の多くの国は、協力して、なんとかウクライナに平和をもたらせたい、そのために色々試みているのに、「日本は関わるな」と言っているに等しい発言です。
事実関係においても間違っていて、「紛争の当事者」ではなく、一般国民も殺されている「侵略された被害者」です。ウクライナが開始した戦争ではない。
普段「平和」とか言っている人の一部は、実際の国際紛争や戦争に直面すると、如何に論理的に脆弱で、口先だけの平和論を言っているだけの観念主義者であるか、ということを、いみじくも露呈した感があります。
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鳥越俊太郎氏の発言内容
「ウクライナ大統領が日本の国会でオンライン演説をするそうだ。紛争の一方の当事者の言い分を、国権の最高機関たる国会を使っていいのか?国民の声も聞かずに! 中国・台湾紛争でも台湾総統の演説を国会で流すのか?」
「私はゼレンスキーに国会演説のチャンスを与えるのには反対する! どんなに美しい言葉を使っても所詮紛争の一方当事者だ。台湾有事では台湾総統に国会でスピーチさせるのか?」
「紛争の当事者だ。何を言うか、分からんねぇ?国民は許さない。たとえ野党まで賛成してもだ‼」

2022年3月16日 (水)

葵トリオ~紀尾井レジデント・シリーズ第1回公演

葵トリオのライヴを3月16日夜、紀尾井ホールで初めて聴いた。

2016年に結成され、2018年、第63回ミュンヘンARD国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で優勝し、一躍有名になった。

「葵」は、ピアノの秋元孝介さん(A)、ヴァイオリンの小川響子さん(O)、チェロの伊東 裕さん(I)の、姓の頭文字を取り、花言葉の「大望、豊かな実り」に共感して命名したとのこと。

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一般論で言えば、弦楽四重奏が、綿密なアサンブルの典型、粋と言える室内楽なら、ピアノ三重奏は、どちらかと言うと、名人同士のぶつかり合いに妙味(面白さ)がある演奏形態と言えるかもしれない。

しかし、ライヴを初めて聴いた私の私見では、葵トリオは、名人同士のぶつかり合いとは全く違うテイストを持つ演奏をする。正に、弦楽四重奏の最上級のアンサンブルを、ピアノ三重奏でやっている、そういう綿密にして繊細な、気品のある演奏をする。巨匠的な3人で激しくぶつかり合いながら盛り上げる、というのとは、全く違う三重奏、という印象を抱いた。

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ピアノの秋元孝介さんは、品の良い音と演奏。

ヴァイオリンの小川響子さんは、エレガントなヴァイオン。

チェロの伊東 裕さんは、音量は控え目かもしれないが、ピュアで愛らしい演奏をする。

3人の無垢なまでの品の良い抒情性、エレガントさが、とりわけ生かされていたのは、シューマンのピアノ三重奏曲 第1番の第3楽章の「Langsam」、シューベルトのピアノ三重奏曲 第1番の第2楽章のアンダンテだった。

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演奏曲は、

1.W・リーム:「見知らぬ土地の情景Ⅲ」

2.シューマン:ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 Op.63

3.シューベルト:ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調 Op.99(D898)

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ヴォルフガング・リーム(1952~)が1984年に作曲した「見知らぬ土地の情景Ⅲ」

3つの楽器とも、高音での現代的書法による音や、特にピアノの低音での打楽器的要素を含めて、様々な要因が散りばめられた曲だった。

もっとも、私は、それ以上のコメントをする気はない。

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シューマンのピアノ三重奏曲 第1番は、第2楽章の情念と颯爽感も良かったが、先述のとおり、第3楽章の「Langsam」が美しく、第4楽章のアグレッシブ感も良かった。

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休憩後の、シューベルトのピアノ三重奏曲 第1番は、第2楽章のアンダンテが美しかったし、第1楽章も叙情性十分、第3楽章のユーモラス感、第4楽章の洗練された統一感も良かった。

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アンコールは、シューベルトの13分ほどの、極めて美しい、ピアノ三重奏曲変ホ長調 op.148(遺作)D897《ノットゥルノ》が演奏された。素晴らしい曲の素晴らしい演奏だった。

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なお、紀尾井ホールでの、このシリーズとして、2024年までの残り2回、シューマンを核としたプログラムで、開催するとのことなので、楽しみだ。

2022年3月14日 (月)

クァルテット・エクセルシオ~ショスタコーヴィチ

クァルテット・エクセルシオ(以下「エク」)による「ショスタコーヴィチ プロジェクト」のVol.2として、弦楽四重奏曲第4番から第6番までの3曲を、3月14日夜、鶴見区民文化センター サルビアホールで聴いた。

これまで、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は、ほとんど聴いてこなかったが、ちょうど、昨今の状況下、交響曲第13番「バビ・ヤール」を集中して聴いている時期でもあり、ショスタコーヴィチに対する関心はこれまで以上に高く、また、私は、「エクフレンズ」という「エク」のサポート会員でもあり、「エク」が演奏するなら良いキッカケだ、ということで、楽しみにでかけた。

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1.弦楽四重奏曲 第4番 ニ長調 Op.83

1949年の作品。4楽章制の曲で、冒頭から、ロマン派の音楽かと思うくらい、明るく爽やかに開始され、この基調は全楽章を貫いていた。

もちろん、ショスタコーヴィチ独特の「色」やリズム等は多々出てくるが、近現代的な要素よりも、いわゆる国民楽派的な土俗性を感じさせる音楽で、特にそれは第4楽章に顕著だった。

いずれにしても、ショスタコーヴィチにしては、とても聴き易い曲。

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2.弦楽四重奏曲 第5番 変ロ長調 Op.92

この日、一番の聴き物だった。1959年の作品。3楽章制だが、この曲が一番長かった気がするし、内容的にも充実していた。

第1楽章は、ユーモラスというより独特のアイロニカルなテーマがあり、そこから発展して行く展開が見事だったし、第2楽章と第3楽章において、様々な要素や、近現代的響を織り交ぜながら、技術の粋をかけて練り上げていく作曲技法が素晴らしく、あらためて「天才だ」と思った次第。

「エク」の高度な演奏技術も見事に示された。「凄い曲の充実した演奏」だった。

第1ヴァイオリンの西野ゆかさん の、G線での充実したトーンも素晴らしかった。

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休憩後

3.弦楽四重奏曲 第6番 ト長調 Op.101

1956年の作品で、4番にも増して明朗で、4つの楽章の全てが、まるでロマン派の音楽であるかのようだった。演奏時間も、3曲中、一番短かったと思う。

再婚直後に書かれた作品だそうだが、「再婚ボケかも」と皮肉を言いたくなる位、「幸せ」な感じで、それはそれで結構だし、「最もショスタコーヴィチっぽくない作品」、という意味では面白かったけれども。

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「エク」の古典派やロマン派作品の演奏もステキだが、「エク」が如何に優れた弦楽四重奏団であるかを示すには、もしかしたら、こうした近現代の作品こそが相応しいのかもしれない。

いずれにしても、今後の「エク」による第7番以降、15番までのコンサートがますます楽しみになった。

2022年3月13日 (日)

ブラームス~室内楽マラソンコンサートの第3部を聴いて

W響子さんの連携に感動そして名曲クラリネット五重奏曲を堪能

諏訪内晶子さんが芸術監督するプロジェクト、国際音楽祭NIPPON 2022は、彼女によるバッハの無伴奏曲のコンサートで開始したが、そのラストを飾る「ブラームス 室内楽マラソンコンサート」の第3部を、3月13日夜、東京オペラシティで聴いた。

「オール・ブラームス・プログラム」の室内楽コンサートの第1部は、午前10時30分に開始して4曲が演奏された。第2部が一番長丁場で、13時30分に開始。6曲が演奏されて、18時20分ころ終了。

私が聴いた第3部は19時に開始し、15分の休憩を挟んで21時30分終了。聴き応えある4曲のコンサートだった。

第3部について書いた後、最後にご参考として、第1部と第2部の演奏曲と演奏者を付記する。

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1.弦楽五重奏 第1番 ヘ長調 Op.88

1Vn.マーク・ゴトーニ、2Vn.小林美樹、

Va.田原綾子、村上淳一郎、VC.上野通明

全体的に明るく、温かな、安定感のある格調高い演奏で、見事だった。

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2.弦楽五重奏 第2番 ト長調 Op.111

1Vn.米元響子、2Vn.小川響子、

Va.鈴木康浩、村上淳一郎、VC.辻本 玲

冒頭から、5人は、まるで、ベルリン・フィルのように大きく体を動かしての演奏が素晴らしく、唖然とするほど楽しかった。これこそ、室内楽ライヴの醍醐味だ。

特に、ヴァイオリンの米元響子さんと、葵トリオの小川響子さんという「W響子」ということでウマが合うのか、演奏中も、まるで、おしゃべりしながら弾いているかのような、コミュニケーション力抜群の演奏で、強烈な印象を受けた。

米元さんは、小川さんやチェロの辻本さんが座る左側を度々見ながら、アイコンタクトを続ける。小川さんも、それに応じる。辻本さんも然り。ヴィオラの2人は、米元さんの向かいにいるから左を向く必要が無い。米元さんには見えていて、2人もしっかり見ているからだ。

米元さん、小川さんのW響子さんによる情熱的で、コミュニケーション力の高い演奏が、他の3人を牽引し、3人もそれに刺激を受けているかのように応じたアンサンブルは、アグレッシブで、情熱的な演奏で、圧巻で、素晴らしかった。

終演後、聴衆の多くが両腕を高く上げて、盛大な拍手を送っていたので、私と同じような興奮と感動を覚えたに違いないことが確認できた。

「こんな素晴らしい室内楽の演奏は初めて聴いた」、と言いたい。

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 (休憩後)

3.クラリネット三重奏曲 イ短調 Op.114

クラリネット:金子 平、ピアノ:阪田知樹、VC.中本健二

金子さんのクラリネットのニュートラルな安定感も良かったが、阪田さんの明るいピアノの響と、自在なテクニックの中本さんのチェロが特に印象的だった。

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4.クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115

クラリネット:金子 平、Vn.諏訪内晶子、マーク・ゴトーニ、

Va.鈴木康浩、VC.辻本 玲

名曲中の名曲。交響曲も含めて、もしかしたら、ブラームス最高の傑作は、この曲かもしれない、と思うくらい、素晴らしい曲。

秋の気配漂う冒頭から、深い情感と気品と、絶妙なアンサンブルとして作曲された曲想が続く。温かさ、しなやかさ、哀愁と同時に、凛とした佇まい。自在さと規律の形式的バランスの見事さと、その中に散りばめられた様々な感情の移ろい。奇跡としか言い様のない素晴らしい曲だ。

演奏も実に良かった。クラリネットの金子さんの安定した美しいトーン。とりわけ、ニュートラルな明るさと品が生かされたのは第2楽章だった。

弦の4人がそれを見事に支えて歌っていく。

決して激しないように、丸みと明るさを湛えての演奏は、諏訪内さんによるトーンの統一、リードの表れだろう。温かな品の良い弦と、穏やかな安定感あるクラリネットによる絶妙な演奏で、素晴らしかった。

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(参考)

第1部~10:30開始

1.ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調 Op.8

Vn.マーク・ゴトーニ、VC.中本健二、ピアノ:菊池洋子

2.ピアノ三重奏曲第2番 ハ長調 Op.87

葵トリオ~ピアノ:秋元孝介、Vn.小川響子、VC.伊東裕

3.ピアノ三重奏曲第3番 ハ短調 Op.101

Vn.米元響子、VC.上野通明、ピアノ:阪田知樹

4.ホルン三重奏曲 変ホ長調 Op.40

ホルン:日髙剛、Vn.小林美樹、ピアノ:菊池洋子

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第2部~13:30開始

1.弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 Op.18

Vn.米元響子、小林美樹、Va.村上淳一郎、田原綾子、VC.辻󠄀本玲、上野通明

2.弦楽六重奏曲第2番 ト長調 Op.36

Vn.マーク・ゴトーニ、諏訪内晶子、Va.鈴木康浩、田原綾子、VC.上野通明、辻󠄀本玲

3.ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 Op.25

葵トリオ+Va.鈴木康浩

4.ピアノ四重奏曲第2番 イ長調 Op.26

Vn.マーク・ゴトーニ、Va.田原綾子、VC.中本健二、ピアノ:髙木竜馬

5.ピアノ四重奏曲第3番 ハ短調 Op.60

Vn.米元響子、Va.鈴木康浩、VC.辻󠄀本玲、ピアノ:阪田知樹

6.ピアノ五重奏曲 ヘ短調 Op.34

Vn.米元響子、Va.田原綾子+葵トリオ

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全出演者

諏訪内晶子、マーク・ゴトーニ、米元響子、小林美樹(ヴァイオリン)

鈴木康浩、田原綾子、村上淳一郎(ヴィオラ)

イェンス=ペーター・マインツ、辻󠄀本玲、上野通明(チェロ)

阪田知樹、菊池洋子、髙木竜馬(ピアノ)

葵トリオ<秋元孝介(ピアノ)、小川響子(ヴァイオリン)、伊東裕(チェロ)>

金子平(クラリネット)

日髙剛(ホルン)

2022年3月12日 (土)

第13回 東京チェロアンサンブル

若手チェリストたちによる「東京チェロアンサンブル」の第13回公演を、3月12日午後、紀尾井ホールで聴いた。

休憩無しの約70分公演で、12時30分開始と、15時45分開始の二部制(同じプログラム)によるコンサートで、私は後者を拝聴。

東京チェロアンサンブルは、2008年3月の第1回公演から「今の自分たちにしかできないアンサンブル」という目標を掲げ、ソロやオーケストラで活躍する10人により活動が継続されてきた。

今回は、「それでもチェロはうたう~Play for Pray」と題され、「祈り」をコンセプトに置いた公演で。演奏曲と出演者は以下のとおり。

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出演者(プログラム記載順)

荒井 結、清水詩織、髙木慶太、中 実穂、

新倉 瞳、堀 沙也香、三宅依子、宮坂拡志、

宮田 大、横山 桂の各氏。演奏曲は、

1.クレンゲル:「2つの小品」

2.ソッリマ:「チェロよ 歌え!」

3.シューベルト:「魔王」(編曲:小林幸太郎)

4.モーツァルト:レクイエム ニ短調K.626(ラクリモサ絶筆まで)

5.モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス

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1.クレンゲルの「2つの小品」は、

1vc清水、2vc中、3vc三宅、4vc宮坂の4人による演奏。

有名な美しい作品。冒頭から、温かく、穏やかで、しなやかなアンサンブルに癒される。

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2.ソッリマの「チェロよ 歌え!」は、

1vc宮田、2vc髙木、3vc横山、4vc新倉、5vc中、6vc堀、7vc清水、8vc荒井の8人で、宮田さんと髙木さんがソリストという立場。

1962年にイタリアで生まれたソッリマのこの曲は、無調ではないが、特殊奏法を含めた現代的な、アグレッシブな曲と演奏で、面白かった。

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3.シューベルトの「魔王」は、チェリストでもある 小林幸太郎さんによるアレンジ。

1vc新倉、2vc高木、3vc横山、4vc堀、5vc宮坂、6vc荒井、7vc三宅、8vc宮田の8人による演奏。

語りのパートを、5vc宮坂さんと6vc荒井さんが演奏(ユニゾンではなく、部分的に交代。以下同様)。

父親パートが、3vc横山さんと4vc堀さん。

子供パートが、1vc新倉さんと2vc高木さん。

魔王パートが、7vc三宅さんと8vc宮田さん。

アレンジも含めて、面白かった。

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4.モーツァルトの「レクイエム」の冒頭から「ラクリモサ」まで演奏されたが、「ラクリモサ」は全部ではなく、モーツァルトの絶筆となった8小節までの演奏。

そこに近づくと、ステージも照明が落とされて、ホール全体が暗くなり、再度、明るくなってから、次の「アヴェ・ヴェルム・コルプス」の演奏が開始、という演出がなされていたが、やはり「ラクリモサ」は全部演奏して欲しかった。なお、編曲は、ジャズの作曲も含めて活躍されている狭間美帆さん。

パート分けは、1vc中、2vc堀、3vc髙木、4vc三宅、5vc荒井、6vc宮田、7vc新倉、8vc横山、9vc清水、10vc宮坂各氏の全員。

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5.したがって、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」は、「レクイエム」と同じく全員で、座席位置は変えずに、1vcを中、堀、髙木、2vcを三宅、荒井、3vcを宮田、新倉、4vcを横山、清水、宮坂各氏として演奏された。

最後でまた癒された。

吉田秀和さんが言った「モーツァルトだけは、戦争映画に使用されることに最も似合わない、相応しくない音楽」という主旨の言葉を思い出した。

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中さんの「今後も、このアンサンブル活動を続けて行きたい」とする挨拶の後、アンコールとして「故郷」(武澤陽介さん編曲)が演奏された。アレンジも良かった。

2022年3月 2日 (水)

武満 徹 弧(アーク)コンサート

武満 徹 「弧(アーク)」 と題された、オール武満プログラムのコンサートを3月2日夜、東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアルで聴いた。指揮者はシンガポール出身で、若くして とても評判の良いカーチュン・ウォンさん。オケは東京フィルハーモニー交響楽団。

ピアノが大ベテランにして、武満さんと縁の深かった高橋アキさん。高橋さんの出演というだけでも、武満ファン、現代音楽ファンにはたまらない魅力、待望のコンサートと言えるだろう。

東京オペラシティの1階から3階、ほぼ満員と言える盛況。

オール現代作品で~しかも、作曲者は故人で~このホールをほぼ満席まで集客できる作曲家は、武満さんくらいだろう。

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いきなり余談だが、故・岩城宏之さんが札幌交響楽団と「オール武満プロ」を企画、提案すると、札響事務局から「札響をつぶすきですか」、と猛反対された。岩城さんは「僕が全責任を負いますから」と初志貫徹で実施。蓋を開けたら「満員御礼」。「聴衆をナメルナよ」と言うところだろう。

この日も、その「武満を聴きたい」という聴衆の思いが充満する会場だった。

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タイトルの「弧(アーク)」を後半に置いたプログラムだが、前半を含めて、まず演奏曲を記載し、私も感想も付記したい。

曲目曲

1.地平線のドーリア(1966)

2.ア・ウェイ・ア・ローンⅡ(1981)

3.弦楽のためのレクイエム(1957)

 (15分休憩)

4.弧(アーク)(1963―66、76)

 (1)第1部

 (15分休憩)

 (2)同曲の第2部

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1.地平線のドーリア

この曲は、武満さんの親友、大江健三郎さんが珍しく批判したことで、武満さんが激怒し、しばらくの期間、2人は絶縁状態が続いた、という、いわく付きの曲。

また、小澤征爾さんも、「この曲だけは、よく解らないや」と、レコーディングに消極的だった唯一の曲で、武満さんの「ぜひ録音を」との、たっての願いで収録された、と、これまた「マイナス的な逸話」のある曲だ。

私は、スコアも持っているので、だいぶ以前、それを見ながら、CDだかLPだかで初めて聴いたとき、武満さんの曲の中では、私も「はあ?」、と思った唯一の曲だった。

でも、この日のように、初めて実演に接してみると~変わった曲で、面白いとは言えないまでも~、「西洋楽器(群)を、よくもここまで「素材」として分解しながら、独特の音で構成し得たな」、という点で、興味深く、好意的な感想は抱いた。

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2.ア・ウェイ・ア・ローンⅡ

この日、唯一の80年代の曲で、初演は1982年6月27日、岩城宏之さん指揮の札幌交響楽団。

弦楽四重奏曲による「ア・ウェイ・ア・ローン」の弦楽合奏アレンジ版なので、「Ⅱ」。

武満さんにしては、アグレッシブな曲で、音量の頻繁な増減に特徴があり、波の様に揺れる音の交差も印象的。

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3.弦楽のためのレクイエム

「もはや古典だ」、と聴きながら思った。「なんと美しく、哀しく、個性的にして普遍的なのだろう」、とも思った。「二つのレント」を別とすれば、実施的なデビュー曲にして、ストラヴィンスキーに激賞されたことで、曲も武満も有名になったわけだが、ストラヴィンスキーより前に(もっと早い段階で)、日本人の中で、もし褒める人が全くいなかったとしたら(いただろうけれど)、なんだか寂しい。有名外国人作曲家から褒められなくたって、これは見事な作品だ、と、この日もあらためて思った。もちろん、私はスコアも持っている。

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最初の休憩後は、弧(アーク)(1963―66、76)の第1部と(もう一度休憩を挟んで)第2部。いずれも15分(ずつ)くらいの曲。ピアノとオケによる、二部構成(全6曲)から成る曲で、私は全曲としては初めて聴いた。もちろん、ライヴも初めて。

第1部が、(1)「パイル」、(2)「ソリチュード」、(3)「ユア・ラヴ・アンド・ザ・クロッシング」。

第2部が、(1)「テクスチュアズ」、(2)「リフレクション」、(3)「コーダ シャル・ビギン・フロム・ジ・エンド」。

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高橋アキさんは、「私がこの曲を弾いたのは1990年、武満 徹さんの 還暦祝いコンサートだから、もう31年前になります。10月8日がお誕生日で、その翌日に、サントリーホールで大々的に、岩城宏之さん指揮でやりました。武満さんもお元気で、つきっきりでリハーサルもいらして。すごく印象に残っています」と語っているが、加えて、「1960年代(を感じる)の曲」とも語っている。

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私も、「これは、作曲年代的にも、内容的にも、実験的要素を基盤においた、意欲作、野心作だな」、と感じた。決して、「ギーッ、ガッチャン、バッタン」、などの無機的な音の羅列ではないが~むろん完全無調~後年のような抒情性は皆無。凄い作品で、とても面白かった。

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この作風を含めて、戦後の無調、偶然性等を含めた実験的試みを「誤解」した若者が、1970年代、80年代に、日本音楽コンクールの作曲部門応募作で頻出した、「ギーッ、ガッチャン、バッタン」だけのような、「無機的で、変わった音の構成と合成のみで終始し、二度と演奏されないブザマなゲンダイオンガク」を生んでいったとしたら、残念なことだ。

実際、肝心の、当の武満さんは、後年、この「弧(アーク)」で聴かせた、実験的作風とは、全く別の道に進んで行った。

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70年代、80年代以降の武満さんは、「グリーン」のエンディングに象徴されるような、ドビュッシー的な抒情を含みながらも、独特の「タケミツトーン」を創造していった。調性を含んだ、と言う様な、決して単純なものではないにしても、

「誰が聴いても、最初の1音、1小節で、『タケミツだ』と解る音色と音楽」。

その領域にまで行ったのが武満で、これは「日本人の中で」では無論なく、「世界で唯一無二のタケミツトーン」を、多くの、しかし1曲1曲は決して長くない作品を創って行く中で、その領域に達したのが武満 徹さんだった。

そこに転じて、深化して行く前の、実験的にして、野心的な試みに満ちた凄い作品である「弧(アーク)」をライヴで聴けて、本当に良かった。

満員のお客さんも、きっと同じく幸福なひとときを過ごせたことだろう。

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指揮者のカーチュン・ウォンさんは、私は初めて聴いたが、現代音楽も振り慣れている感さえあり、驚いた。「もしや、初演魔の岩城宏之さんが、現代曲を振る映像を全て見ているのではないか?」と思うほど、良い意味で要領を得た、「プロの指揮」。もう何十年も現代曲を振ってきたかのような、あるいは、「岩城さんの30代って、こんな感じだったかも」と想像させるような指揮ぶりだった。

曲が終わるごとに、両手でスコアをかざして、聴衆に見せていたのも、武満に対するリスペクトと、ウォンさんの人柄を想像できるステキなパフォーマンスだった。

全曲終演後の数回のカーテンコール後、聴衆に語りかけもしたが、マスク越しの小さな声だったので~日本語を交えていたとしても~彼の近くの人にしか聞こえなかった点は残念だったが、彼の人柄が滲み出たシーンだった。

岩城宏之さん亡き後、現代音楽を積極的に指揮する指揮者の登場が危惧されたが、山田和樹さんといい、この、カーチュン・ウォンさんといい、現代作品にも積極的に挑む優れた指揮者が出て来ているのは嬉しいことだ。

 

https://ebravo.jp/archives/110304

 

高橋アキさんインタビュー

https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/30811

 

武満徹の音楽を、次代をリードするカーチュン・ウォンと一緒に学ぼう

https://ontomo-mag.com/article/event/toru-takemitsu-arc/

2022年3月 1日 (火)

小林愛実さんからのメッセージを しっかりと 受け止めた聴衆

2月28日夜の東京文化会館は、
大野和士指揮、東京都交響楽団の演奏会。
前半のプログラムで小林愛実さんが弾いた曲は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。
彼女が弾くと、中期の作品というより初期の作品、いや、ベートーヴェンといより、モーツァルトのような初々しさを感じる演奏だった。
盛大な拍手に応えてのアンコールは、
ショパンの前奏曲 作品28の第4番ホ短調。
正直、驚いた。
ショパンは、聴衆にしたら「待っていました」だろうが、ベートーヴェンの愉悦なト長調の協奏曲のあと、暗さが全面漂う第4番 ホ短調のプレリュードとは。
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彼女は間違いなく、今の世界情勢を念頭に置いて演奏した、と想像する。
ポーランドには、今、続々と、ウクライナから人々が退避して来ている。
それを思っての、この悲しい曲の選曲に違いない、と私は、いや、全ての聴衆は感じ取ったに違いない。
私達は間違いなく、彼女からの思い、メッセージを受け取ったのだった。
https://twitter.com/TMSOnews/status/1498283324829097987/photo/1

 

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