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2022年2月 9日 (水)

東京二期会公演「フィガロの結婚」~印象的なスザンナ

この日は、本来は「影のない女」が上演されるはずだったが、中止となり、本当に残念だった。その代わりの演目として「フィガロの結婚」が公表されたときは、「行かない」と思ったが、Wキャストの1組の伯爵夫人が大村博美さん、ケルビーノが小林由佳さんと知り、「もちろん行く」に即変更した。

2月9日から13日までのダブルキャスト公演の初日にして、そのお2人が出演される9日夜、東京文化会館で拝聴した。

依然として厳しい社会状況の中、18時30分開演、25分の休憩を挟んで、22時の終演が行われたのは何よりで、客の入りも、平日の夜にもかかわらず、7割くらいは来場されていたと思う。

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フィガロ役の萩原 潤さんは、ソフトなトーンなので、「良い人。善人なフィガロ」の印象を受ける。

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アルマヴィーヴァ伯爵役の大沼 徹さんも、ソフトなトーンで、役的にはもう少し「厚化粧的な厚かましさ」も欲しい気もしたが、嫉妬深い「小物」のキャラをよく出していて、良かった。

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ケルビーノ役の小林由佳さんは、外見も宝塚の男役みたいにカッコイイし、この役に似あう魅力的なトーンによる歌声で、聴衆を大いに魅了した。とても良かった。

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そして、伯爵夫人役の大村博美さん。

大村さんも大柄な美人なので、その外見からして既に気品が漂っており、潤いと純度の高い歌声による、見事な伯爵夫人を演じ、歌われた。

単に気品だけでなく、女心の移ろいとか寂しさ、戸惑い、孤独感も表出が見事で、第3幕の有名なアリア「どこにあるのかしら。恋に生きた、楽しかった日々は」が終わったとき、この日、最長にして最大の拍手は起きたのは当然のことだった。

伯爵の謝罪に対して、ト長調アンダンテで歌い応える、「私は、あなたよりも素直ですから、ハイ、と申しますわ」の場面での高貴さといったら、例えようのないほど美しく、素晴らしかった。

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そしてこの日、大村さんに負けないくらいの存在感を示したのは、スザンナ役の宮地江奈さんだった。

私は初めて聴かせていただいた歌手。

キュートでコケティッシュさが有り、利発な、「お調子者」のようなスザンナを表出していてステキだった。たぶん小柄で、失礼ながら特別な美声というわけではないが、スザンナ役のマッチ度、ハマリ度、いや、「独特のフィット感」がすこぶる魅力的だった。

それにもかかわらず、傑出した、とか、衝撃的、とかいう大袈裟な言葉は似あわず、鮮烈な、という言葉も的確ではないかもしれないが、敢えて言えば「鮮烈なスザンナ」だった。でも、決して派手ではないのだ。むしろ、その素朴さから滲み出てくる可愛らしさ、愛されキャラ的な演技と歌唱が、極めて印象的だった。

コケティッシュさだけでなく、第3幕終わり近くでの有名なアリア、「早くおいで、美しい喜びよ」では、しっとりと歌って聴衆を魅了し、大村さんに負けないくらいの盛大な拍手を受けていた。

今後、とても楽しみな歌手だと思う。

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出番は少ないながら、第3幕で素晴らしいアリアを聴かせて「持っていく」得なキャラに設定されているバルバリーナ役の雨笠佳奈さんも初めて聴かせていただいたが、役を楽しんでいる感じも含めて、なかなか良かった。

それにしても、あの、ヘ短調のアリアは、「魔笛」のパミーナのト短調のアリアとともに、「短調のモーツァルト」を堪能させてくれる素敵なアリアだ。この曲が有るのと無いとでは、「フィガロ」の印象はだいぶ変わってくるかもしれない。

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マルチェリーナ役の石井 藍さんは、演技も含めて秀逸だったし、バルトロ役の畠山 茂さんも良かった。

なお、ドン・クルツィオ役で出演されるはずだった渡邉公威さんが、何らかの事情で出演されなかったのは残念だった。もう一組の児玉和弘さんが代演された。

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物語はバカバカしくとも、「魔笛」とともに、ステキなアリアのオンパレードのフィガロ。「コジ・ファン・トゥッテ」とともに、アンサンブルオペラとしても、とても充実した「フィガロの結婚」は何と魅力的な、傑出したオペラだろう、音楽だろう、と、あらためて、モーツァルトの偉大さを思い知らされた公演でもある。

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なお、オケは最小限での演奏だったのか、歌手を邪魔しない点では良かったが、「ここは、オケを聴かせたい所でしょ」という場面では、物足りなさも感じた。

舞台を効率的で効果的に使っていたし、第3幕の始めでの色彩を抑えた舞台は、アルマヴィーヴァ伯爵と伯爵夫人の、独白的心境の吐露たる歌唱とよくマッチしていた。

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指揮:   川瀬賢太郎

管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

合唱:   二期会合唱団

演出:   宮本亞門

配役            2月9日&12日              11日&13日

アルマヴィーヴァ伯爵 大沼 徹       与那城 敬

伯爵夫人       大村博美       髙橋絵理

スザンナ       宮地江奈       種谷典子

フィガロ       萩原 潤       近藤 圭

ケルビーノ      小林由佳       郷家暁子

マルチェリーナ    石井 藍       藤井麻美

バルトロ       畠山 茂       北川辰彦

バジリオ       高柳 圭       高橋 淳

ドン・クルツィオ   渡邉公威       児玉和弘

バルバリーナ         雨笠佳奈       全 詠玉

アントニオ             的場正剛       髙田智士

花娘1           辰巳真理恵      金治久美子

花娘2         横森由衣       長田惟子

 

 

http://www.nikikai.net/lineup/figaro2022/index.html

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