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2022年1月29日 (土)

田部京子さん~吉松さん編曲の新協奏曲を弾く

田部京子さん~シューベルトの「ピアノ協奏曲」を初演

「えっ? シューベルトは、ピアノ協奏曲なんて作曲していないよね?!?」

「はい。ピアノ・ソナタ第21番を、吉松隆さんが「協奏曲」としてアレンジした「作品」でして、この日がその初演だったのです」。

藤岡幸夫さん指揮、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団による、前半にその曲が置かれた演奏会を、1月29日午後、ティアラこうとう大ホールで聴いた。後半のプログラムはシベリウスの交響曲第1番。

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編曲に関するいきさつを、吉松さんがプログラムに寄稿されている。それによると、

吉松さんが、田部さんが演奏するシューベルトのソナタ第21番を聴いたのは1994年で、とても魅了され、それがきっかけで、あのユニークな「プレイアデス舞曲集」の録音に繋がり、1998年には、あの美しく、素晴らしいピアノ協奏曲「メモフローラ」が誕生し、田部さんと藤岡さんにより、英国で録音されたのだが、その英国CHANDOSとの契約では、藤岡さん指揮により、吉松さんの作品のCD録音を、年1枚位のペースで開始されてもいたので、吉松さんは密かに、この曲のアレンジを思い付いたという。

「誰に頼まれたわけでもなく、演奏の当てがあったわけでもなく」取り掛かり、2000年の春には完成したが、「面白そうだね」とは言われながらも、今日まで20年以上「お蔵入り」的に演奏される機会が無く、「絵に描いたような自業自得」だったと自嘲ぎみに書かれている。

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ステージに置かれたピアノはスタインウェイではなく、ベーゼンドルファー。最初、吉松さんか、田部さんの希望か、と思ったが、ホールで最近、導入されたようなので、あるいは、そのお披露目の意向がホールからあったのかもしれないが、結果的には、原曲的にも、吉松さんのアレンジ的にも、スタインウェイの強靭さより、ベーゼンドルファーの柔らかで「しなやかな」トーンが、作品と演奏に、より相応しいものとして寄与された様に感じられた。

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さて、第1楽章の開始は、どう開始させるのだろう? 原曲のとおり、ピアノのソロからだろうか?と興味があったが、弦による美しい和音で開始し、直後、あの冒頭を田部さんが弾き始めた。なるほど、巧い開始だ。

その後、当然ながら、本来はピアノのソロの旋律であっても、オケに取って代わられ、ピアノはオブリガートに回るなど、様々な工夫はされていた。第3楽章は木管が美しく使われるなど、全体として、とても美しいオーケストレーションで、「さすが、抒情性の吉松」と納得できた。

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ただ、それでも、強いて言えば、編曲は編曲であって、これはシューベルトの「作品」ではなく、「完全に純粋な吉松作品でもない」。

如何に吉松さんの才能をもってしても、アレンジという行為には「限界」は当然ある。

ユニークな内容だし、田部さんも楽しんで演奏されただろうことは間違いないが、聴いている中、私は原曲の素晴らしさをあらためて実感せざるを得なかった。

シューベルトが、自分の死期を意識する中、奇跡的なまでの天国的な楽観的な、長大な音楽に自らを遊ばせた余裕、それを内包し得たという信じがたい作品の見事さを、吉松さんの編曲を楽しむ中で、あらためて実感したのだ。吉松さんのアレンジが見事であるが故に、かえって益々オリジナル作品の見事さが浮き彫りになったようにも感じられた。

そして(と言うか、しかし、と言うべきか)、これは、吉松さんにとっても、不名誉なことではなく、むしろ名誉な事に違いない、と、それこそ氏の名誉にためにも強調しておきたい。

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そして、もう一度言うなら、昨年、浦安と浜離宮で2回聴かせていただいた、田部さんによるこの名曲を、この大ホールで、オリジナルのまま、もう一度聴きたい、聴かせていただきたい、と強く感じた次第だった。

終演後は、美しいオーケストレーションによるユニークな企画に加え、田部さんのファン、吉松さんのファン、藤岡さんのファン、東京シティ・フィルのファンなどの相乗効果からか、長く盛大な拍手が続き、カーテンコールは4回に及び、前半のプログラムが終了した。

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休憩後の後半は、シベリウスの交響曲第1番 ホ短調 Op.39

第2楽章の瑞々しさ、第3楽章の躍動感も印象的だったが、それまで端正でスタイリッシュな印象を受けていた中、終楽章のエンディングに向かう中、雄大さがそれに加わって見事だった。

オケの熱い演奏は、そのまま、藤岡さんの「シベリウス愛」を感じさせる演奏と言える。

 

 

https://www.cityphil.jp/concert/detail.php?id=241&

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