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2021年12月 2日 (木)

マタイ受難曲~田尾下 哲 演出~舞台劇形式

ユニークな上演形式でのバッハの「マタイ受難曲」を12月2日夜、東京文化会館で聴いた。
普通のコンサート形式と思っていたら全く違い、田尾下 哲さんの斬新な演出に驚き、面白かった。強いて言えば、サイモン・ラトルがベルリン・フィルと演奏した映像を連想させるが、歌手はあんなに動き回らないし、あれほどオペラティックではないが、バッハの最高傑作と言うより、人類の偉大な遺産、至宝である「マタイ受難曲」が、ユニークな演出で行われ、貴重な感動体験をさせていただいた。後述のとおり、何より、ソロ歌手の皆さんが素晴らしかった。この日の来場者は、恐らく一生忘れられないほどの強い印象と思い出を共有したと想像する。
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演奏は、柴田真郁さん指揮、ザ・オペラ・バンドという管弦楽と、ザ・オペラ・クワイヤという合唱団および世田谷ジュニア合唱団。
ザ・オペラ・クワイヤは、BCJのメンバーも数人名簿にあるから、バッハ等バロック系を歌うことの多いプロ歌手で構成された臨時編成の合唱団だと思う。第1コーラスが4パート合計17名、第2が同16名での演奏だった。
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田尾下 哲さんの演出
東京文化会館大ホールの左奥にオケがギュッと置かれ、エヴァンゲリストが指揮者とオケの間に入るという配置。その部分以外の、「ノ」の文字のように空いたステージにおいて、ソロ歌手が演技を行いながら歌った。
「演技」と言っても、スローモーションで動くか、静止したまま、という場面のほうが長い。すなわち、「静」を基盤とした古代寸劇あるいは聖典劇、と言える様な雰囲気の舞台、という演出。
衣装は、イエスが上下白(ズボン)で、他の3人は、ダーク系の色の古代衣装的な装い。
道具としては、前半はイエスに巻き付く、黒く太い縄や、後半の白く長い(大きな)布(レース)を効果的に用いるなど、印象的なものだった。エンディングでは、赤系の色の布を用いていた。
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合唱団は、舞台一番奥に、直接でなく、シルエットで見えるかたちでの合唱。もっとも、後半では一群がステージに出て、演出に加わりながら歌うシーンもあった。これは児童合唱も同様。
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譜面を持って歌ったのは、エヴァンゲリストと合唱団のみで、演技しながらの4人の歌手は暗譜での歌唱だった。
よって、暗譜の分量的にはイエス役が最も大変だが、以下のとおり、イエスを歌われた大西宇宙(宇宙と書いて、タカオキ)さんだけでなく、皆さん、充実のシリアスな歌唱で感動した。
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エヴァンゲリストの櫻田 亮さんは、細目のスタイリッシュな声で、凛として見事なエヴァンゲリストだった。
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イエスを歌われた大西宇宙さんは格調高い歌声で、舞台で静止状態の多い大変な演技、演出にも見事に応えて素晴らしかった。
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ピラトを含むバスソロのジョン・ハオさんが、いつもながらの深い響きと、威厳と声量のある歌声が見事で感動した。
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ある意味、一番驚いたのはアルトソロの高野百合絵さんだった。妖艶ながら健康的なカルメンとも違い、明るくユーモラスな「メリー・ウィドウ」のハンナとも違う、まるで別人の様な、一層深く、情感豊かでシリアスな、正に「これぞアルトの声」を聴かせてくれた。
一瞬、クリスタ・ルードヴィヒか?と思ったほどで、高野百合絵さんのレパートリーの広さと豊かな才能に驚くとともに、今後、どこまで進化して行くのだろう?と益々、今後の活躍が楽しみになった。
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テノールソロの城 宏憲さんも、実に伸びやかで、明朗、明りょうな美声で、魅力的だった。
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久しぶりに聴かせていただいたソプラノソロの青木エマさんは、ピラトの妻役も含めて、凛とした歌声が見事で、背が高く、外人っぽい外見もあって、ステージでの立ち姿自体、実に格好良かった。
10日のヴィオレッタが楽しみだ。そうそう、10日のHakujuでの「椿姫」も、田尾下さんの演出で、アルフレードが城さん、ジェルモンが大西さんだ。
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柴田真郁さん指揮によるオケは、バロック様式と言っても、流行りのような速いテンポはとらず、基本的にオーソドックスと言えるテンポだったし、曲によっては、ゆったりとしたテンポ設定により、じっくり聴かせてくれた。
例えば、後半、アルトのソロで歌われるト短調のアリアは、とてもゆったりとした3拍子で、高野百合絵さんの名唱とともに感動的だった。
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福音史家:櫻田亮
ソリスト
イエス:大西宇宙
ソプラノ:青木エマ
アルト:高野百合絵
テノール:城 宏憲
バス:ジョン・ハオ

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