ベートーヴェンの世界~永遠の愛~サントリーホール
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高橋多佳子さんデビュー30周年記念リサイタル「新しき道」
~これまで弾いてこなかったブラームスに挑戦~
~挑戦し続ける姿勢に感動。そして圧巻の演奏~
高橋多佳子さんが「新しき道」と題してのデビュー30周年記念リサイタルを11月21日午後、東京文化会館(小)で拝聴した。
1990年のショパン国際コンクールで第5位に入賞し、翌1991年から本格的に演奏活動を開始。東京での正式なデビューは1992年5月2日で、会場はこの日と同じ、東京文化会館小ホールだった。
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プログラムは下段に記載のとおりだが、シューマンがブラームスを新しい時代の天才として、「新しき道」と題して世に紹介した言葉を転用しての記念公演は、後述のとおり、決して「お題目」(掛け声)だけのものではなく、ベテランと言えるはずの高橋多佳子さんが、「これからの新たな自分の歩む道」、「あらためて挑戦し続けるという意味での新しき道」という命名に相応しい、素晴らしいコンサートだった。
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前半はオール・ショパンで
最初の「2つのノクターン作品15」は、いずれも優しさある開始と、中間部での激情への移行が自然で、純度の高い演奏だった。
2曲演奏後、高橋さんはマイクを手にして挨拶。
「こういう状況下なので、記念リサイタルを開催するか否か、迷った」。「30年は、とても長い年月だけれど、開演前の気持ちを含めて、自分自身は変わっていない気がする」等々の話の後、
「バラード第1番 ト短調 作品23」。入念にして場面ごとの変化のニュアンスも巧みで、スケール感ある演奏。
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再びマイクを手にし、ポーランド留学時の話と、演奏する「マズルカ」と「ポロネーズ」の、ショパンの作品の中での、立ち位置的存在について話された。
「ショパンを知りたければ、マズルカを聴け、と言えるかもしれません」、という言及が印象的だったし、そうなのだろうな、と思った。そして演奏された「4つのマズルカ 作品17」は、繊細にして内省的な演奏。
「ポロネーズ第6番 変イ長調 作品53「英雄」」は、スケール感が素晴らしかった。
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後半こそが、この日の白眉だった。
まず、シューマンの「アラベスク ハ長調」は、ロマンティックな演奏。この曲は、いつ聴いても実に素晴らしい曲だと惚れ惚れする。
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ここで、またトーク。
シューマンは他の新進気鋭の作曲を紹介したが、ショパンに関しての有名な言葉、「諸君、脱帽したまえ。天才だ」、に言及された後、ブラームスを新時代の天才と紹介したときは、シューマン自身もまだ21歳だったことに触れ、「普通、21歳なら、自分自身がこれから、どう世に出て行こうかと思う時期なのに、人を世に紹介していったわけですから、シューマンは懐の深い人ですよね」。同意、同感。
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そして、プログラム最後の曲、ブラームスのピアノ・ソナタ第3番を、事前に解説された。
「私は、ブラームスのシンフォニーは好きですが、手があまり大きくないこともあり、ピアノ曲を(公では)ほとんど弾いて来なかった」。
「しかし、最近、室内楽でブラームスを演奏する機会が増え、ブラームスを身近に感じるようになって来た」。
「ブラームスを弾いてこなかった者が、ソナタ第3番を弾くことは、結構な冒険」。
「ロマン派を代表する名曲だけれど、ブラームスがこれを作曲したのは20歳のとき。シューマンのソナタ第3番の影響は受けている気がするが(として「クララのテーマ」を紹介)、大変な名曲」。
「ピアノ曲というより、管弦楽の作品のようなので、今日は(全体を俯瞰する)指揮者になった様な気持ちで演奏してみたい」。
「では、覚悟して弾きます」、として、演奏を開始。
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素晴らしい名曲だ。ブラームスの、というより、あらゆるピアノ・ソナタの中でも、最高峰の一つだと、あらためて、まず曲自体に感動した。
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そして、高橋さん。
記念リサイタルの最後の曲なのに、この日、初めて譜面をピアノに立てた。しかも、譜めくり介助者無し。これ自体、「本当に、今、研究中の曲なのだな」、ということが判り、かえって感動した。
そして、演奏は実に見事だった。
とても弾き慣れていない曲には思えないほどで、これまで何度も弾いてこられた曲、という印象を受けるほど、圧巻というほどに素晴らしい演奏だった。
「新しい自分に挑戦」され、見事に成功した最初の成果と言えるだろう。
自分の記念すべき30周年記念リサイタルだから、普通なら、最も得意とする曲~例えば、ショパンのソナタ第3番 ロ短調~を弾いて、得意満面で終わることだってできたはずだが、そうした「安易な選曲」をせず、敢えて、これまで弾いていなかったブラームスの難曲にして大曲である、ソナタ第3番を選曲された、その姿勢自体に深く敬意を払いたいし、結果、素晴らし過ぎるくらい見事な演奏を聴かせていただき、感動したことに感謝し、このコンサートを祝いたい。
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なお、この時点で、14時開始のコンサートが、なんと、16時20分くらいになっていたし、大曲の後なので、アンコールは弾かなくてもよいくらいだったが、そこは、聴衆思いの高橋さん。
ショパンの「幻想即興曲」を流麗にして、Des durの部分はロマンティックに演奏し、「もう1曲、短い曲を」として「子犬のワルツ」を演奏し、この記念すべき、感動的なコンサートを締め括ったのだった。
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プログラム
前半はオール・ショパンで
1.2つのノクターン 作品15
(1)ヘ長調 Op15-1
(2)嬰ヘ長調 Op15-2
2.バラード第1番 ト短調 作品23
3.4つのマズルカ 作品17
(1)変ロ長調 (2)ホ短調 (3)変イ長調 (4)イ短調
4.ポロネーズ第6番 変イ長調 作品53「英雄」
(休憩)
5.シューマン:アラベスク ハ長調 作品18
6.ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 作品5
アンコール
1.ショパン:幻想即興曲
2.ショパン:子犬のワルツ
https://www.t-bunka.jp/stage/12087/
人気ソプラノ歌手 砂川涼子さんのリサイタルを、11月20日(土)午後、成城ホールで拝聴した。
ピアノは、指揮者であり、砂川さんとはオペラも含めて度々共演されている園田隆一郎さん。
このホールには初めて来たが、「成城ホール」というと近代的なイメージを抱くが、心象としては「砧区民会館」と言う名称のほうが、スンナリ納得する感じ。
小さなホールなので、アットホーム感はあるが、音響が悪いのが残念だ。反響板が皆無と思われる残響の無さなので、出演されるアーティストはお気の毒な感じがした。
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主催した「せたがや文化財団」が、同区在住の砂川さんに出演依頼してのリサイタルということで、来場者も、世田谷区民の聴衆が多かったと想像できるし、ご年配の男女が多数だったので、砂川さんも、オペラハウスでの歌唱とは違って、良い意味で、くつろいだ、アットホームさを楽しまれて歌われていたような感じが印象的だったし、もちろん、聴衆も皆さん、大いに楽しまれた雰囲気が、終盤やカーテンコールで伺い知れた。
素敵な区民コンサート、という感じがして、とても良かった。
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前半の2曲目が終わったところで、砂川さんがマイクを手にして挨拶。後半の開始では、砂川さんと園田さんにより、短いトークがなされた。
プログラムは下段に記載のとおりだが、園田さんも言っていたとおり、歌手のリサイタルの多くは、前半が歌曲(系)、後半がオペラアリア、というパターンが多いが、この日は逆だったのが面白かったし、後半での歌曲は、歌手も聴衆も、詩と叙情性を堪能し易い感じがして、これはこれで、とても良いプログラム構成だと感じ入った。
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前半では、特に「コジ」と「イドメネオ」からのアリアが、劇(激)性を感じる素敵な歌唱だった。
後半は、歌自体、初めて聴いた曲が多かったので、曲の印象をメモ的に記載すると、
マスカーニの歌曲の「セレナータ」は、繊細で哀愁ある曲。仕草と共に歌われた「花占い」は、タイトルから受けるイメージと違って、悲しく、情感が大きく揺れる曲。「月」も叙情的だが、短調の曲で、3曲とも短調を基調としていたのが印象的だった。
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R.シュトラウスは、有名な「朝」で、先日、嘉目真木子さんのリサイタルでも聴いたばかりだが、少し速めのテンポによる瑞々しい歌唱。
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レオンカヴァッロ 「朝」は、明るく動的で、スケール感もある曲。これぞイタリアの歌曲、という感じ。
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レスピーギの「夜」は、歌の旋律自体はシンプルながら、ピアノ伴奏が「揺れる波」を想像させる印象的な曲だった。
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アンコール1曲目の、平井庸三郎「うぬぼれ鏡」は初めて聴いたが、「鏡を見つめて微笑む(私)」というような、少女的自己陶酔性を、コケティッシュでユーモラスな旋律とリズムで織り合わせた面白い曲だった。
来年2月にも、砂川さんのリサイタルを聴かせていただく予定なので、今から楽しみだ。
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プログラム:前半はオール・モーツァルトで
1.歌劇《コジ・ファン・トゥッテ》より「岩のように」
2.歌劇《フィガロの結婚》より「恋人よ、早くここへ」
3.歌劇《イドメネオ》より「お父様、兄弟たちよ、さようなら」
4.歌劇《ドン・ジョヴァンニ》より「恋人よ、さあこの薬で」
(休憩)
5.マスカーニの歌曲
(1)「セレナータ」
(2)「花占い」
(3)「月」
6.ピアノソロで、ムゼッタのワルツ「私が街を歩けば」
7.R.シュトラウス 「朝」
8.レオンカヴァッロ 「朝」
9.レスピーギ 「夜」
10.ドヴォルザーク 歌劇《ルサルカ》より「月に寄せる歌」
アンコール
1.平井庸三郎「うぬぼれ鏡」
2.プッチーニ「私のお父さん」
文通費は「日割りがどう、とかいう問題でない」
こんな実質「第2の給与」というものは全廃か、少なくとも半額にすべき。
少なくとも、毎月の利用目的内の報告義務と領収書の添付を必須にすべき。
民間において、経費に関し、内容の報告義務と領収書添付不要などは有り得ない。
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野党が普段から、与党の政策をいくら批判し、反対しようとも、この問題に対しては、全ての野党が黙認してきたことを思うと、国会議員自らは身を削りたくない、という点で、「同じ穴なのムジナ」と思われても、しかたないだろう。
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「文書通信交通滞在費」
国会議員に月100万円支給。言うまでもなく、原資は税金。
1. 非課税
2. 何に使用しても、内容の報告義務なし。よって
3. 領収書も不要
3. 月内で余っても、返還義務なし
しかも、国会議員は、新幹線含めて鉄道やバスはフリーパスなのに、何が「交通費」だ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/483d340206e11247d74fb86962e7cab8629474c4
後日記載します。
11月15日(月)夜、標記のコンサートをサントリーホールのブルーローズ(小ホール)で拝聴した。
仕事の関係で後半のみの拝聴だったが、充実した内容で、十分堪能させていただいた。
宮沢賢治とチェロをモティーフとして、読売日本交響楽団のチェロ奏者、渡部玄一さんが進行の脚本を書き、同交響楽団の合計4名のチェロ奏者による演奏を中心とした企画コンサート。
この公演を知ったきっかけは、賛助出演されたソプラノの岡田 愛さんからの情報。
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言うまでもなく、宮沢賢治は詩を中心とした文学創作のほか、クラシック音楽を愛しただけでなく、農作業や詩の創作をしながら、チェロも練習していた。この事実は、当時においては、「時代的にも地域的にも例外的存在だった」と言っても間違いではないだろう。
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俳優の勝野 洋さんが進行役と詩の朗読を兼ねて演奏された曲は、最下段に記載のとおりだが、私が拝聴した後半の感想を書いておきたい。
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後半1曲目は、チェロ四重奏によるバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番の「シャコンヌ」。
渡部玄一さんがメインとなっての演奏だが、もちろん、場面によっては、他の3人がそれぞれ主旋律部分を受け持つなどの種々の工夫がなされており、テイストは劇的と言うより、入念なアンサンブル志向として、堅実で充実した演奏で、素晴らしかった。
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続いて、宮沢賢治 作詩作曲の「星めぐりの歌」。
チェロ四重奏による粋な編曲で歌われた岡田 愛さんによる歌唱が すこぶる素敵だった。
長野市でのデュオ・コンサートのときも書いたが、愛さんが歌う日本語による歌曲は、格別と言ってよいほど素敵で、控え目なヴィブラートでの清冽な歌声は、清らかさだけでなく、無垢なほどの独特の素朴さと温かさがある。澄んだ星空に、ひとり嬉しく語りかける、そんなステキな雰囲気を、聴衆に届けていた。
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正規プログラムの最後は、ポッパーの演奏会用ポロネーズ。
チェロ奏者にとって、ポッパーは特別な作曲家。遠藤真理さんがメインとして演奏されたこの曲も、超絶技巧にして、愉悦感ある面白い曲で楽しめた。
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アンコールでの、チェロ四重奏による「赤とんぼ」では、四重奏で開始はしたものの、曲の途中で、愛さんが出て来て後半歌われるのかと思ったら、そうではなく、四重奏だけだったのは 少し残念だった。良い編曲ではあったが。
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余談
何回かのカーテンコールの中で、勝野さんがステージから客席「あ、来ているんだ」あるいは「あそこにいた」、という感じで手を向けた方向が私のほうだったので、右横を見ると、奥さんのキャシー中島さんが(友人かご家族と数名で)いらっしゃっていて、一席空けとはいえ、偶然、私の隣だったのが面白かった。
また、先日の長野市でのコンサートでは、ご挨拶できなかった 愛さんの お母様と、終演後に、数年ぶりにご挨拶できた次第。
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出演者
俳優&朗読:勝野 洋
チェロ:遠藤真理、渡部玄一、髙木慶太、富岡廉太郎
ソプラノ:岡田 愛
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曲目
1.バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番より「プレリュード」
2.シューマン「トロイメライ」
3.ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」より
第2楽章(編曲=小林幸太郎)
4.カタロニア民謡「鳥の歌」(編曲=渡部玄一)
5.ピアソラ「鮫」(編曲=菅原拓馬)
(休憩)
6.バッハ 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番
ニ短調 より「シャコンヌ」(チェロ四重奏版)
7.宮沢賢治(作詩作曲)「星めぐりの歌」
(歌+チェロ四重奏版:編曲=山中麻鈴編曲)
8.ポッパー 演奏会用ポロネーズ Op.14
アンコール
チェロ四重奏による「赤とんぼ」
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20211115_S_3.html
11月14日(日)夜、ブリランテムジカ主催の「ハッピーガラコンサート」をルーテル市谷センターで拝聴した。
プログラムは下段に記載のとおりだが、初めて聴かせていただいた歌手の皆さんを含めて、大いに楽しませていただいだ。
今回は、スペシャルゲストとして、ポップス系でも活躍されて来た某有名男声歌手Aさんも出演されだが、事情により、名前も記載することも控えるが、大いに楽しませてくれた。Aさんについては、コメントも控えたい。
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過去、何度も聴かせていただいている押川浩士さんは、第1曲も、それ以降でも、声量と迫力が素晴らしく、大満足。
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同じく何度も聴かせていただいている小林由佳さんは、デリラの歌も良かったが、特に「ジュ・トゥ・ヴ」(あなたが欲しい)が、シャンソン的なセンスが良く出て、とても魅力的だった。
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たぶん初めて聴かせていただいた山口安紀子さんによる「清らかな女神」は、高音でのパワフルな歌声が圧巻で、山口さんの特質の1つだな、と想像した。後半の「熱き口づけ」も情熱的でセクシーでステキだった。
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テナーの所谷直生さんも、たぶん初めて聴かせていただいたと思うが、若々しい声で、伸びやかな美声で素晴らしかった。「また一人、ステキなテナーを知った」と思った。
山口さん同様、今後もっと聴かせていただくようにしよう、と思った次第。
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全曲をパワフルにして瑞々しい演奏で支えたピアノの藤原藍子さんに、心からの拍手。
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出演者
山口安紀子さん(S)、小林由佳さん(Ms)
所谷直生さん(T)、押川浩士さん(Br)
ピアノ:藤原藍子さん
他、スペシャルゲスト1名
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プログラム
第一部
1.ロッシーニ 歌劇「セヴィリアの理髪師」より
(1)「私は町の何でも屋」~押川さん
(2)「それは私のことなのね」~小林さん&押川さん
2.ベッリーニ 歌劇「ノルマ」より
「清らかな女神」~山口さん
3.ボノンチーニ 歌劇「グリゼルダ」より
「お前を讃える栄光のために」~所谷さん
4.サン=サーンス 歌劇「サムソンとデリラ」より
「あなたの声に私の心は開く」~小林さん
5.プッチーニ 歌劇「トスカ」より
「二人の愛の家へ」~山口さん&所谷さん
6.スペシャルゲスト
7.ヴェルディ 歌劇「リゴレット」より
「美しい恋の娘よ」~四重唱
第二部
8.ロッシーニ「猫の二重唱」~所谷さん&押川さん
9.オッフェンバック 歌劇「ホフマン物語」より
「ホフマンの舟唄」~山口さん」&小林さん
10.レハール 喜歌劇「微笑みの国」より
「君こそ我が心のすべて」~所谷さん
11.レハール「熱き口づけ」~山口さん
12.モドゥーニョ「ヴォラーレ」~押川さん
13.サティ「あなたが欲しい」~小林さん
14.スペシャルゲスト「グラナダ」
15.サルトーリ「君と旅立とう」(コン・テ・パルティロ)
(タイム・トゥ・セイ・グッバイ)~全員
アンコール~全員で
1.千の風になって
2.乾杯の歌
https://www.facebook.com/photo/?fbid=6951653664848369&set=a.226775430669593
田部京子さんが11月12日夜、J:COM浦安音楽ホールに初登場された。
開演に先立って館長の挨拶があり、招聘できた喜びと、シューベルトの第21番をリクェストして実現した喜びについて語られたのが印象的だった。
私自身がこのホールで聴くのは3回目で、小さなホールだが、音響がとても良く、ステージに拡がる音が、そのまま曲席に届く感じがする。
この日も、まるで、田部さんを1メートル付近で聴かせていただいているような音響に深く感じ入った。
こうした良さは、浜離宮朝日ホールとはまた違った印象で、田部さんを聴くことができるし、もちろん、同じ小ホールでも、宗次ホールとはまた全然違う心象を覚える。
演奏曲は最下段に記載のとおりだが、各曲、少し感想を記載したい。
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1.吉松 隆さんの「プレイアデス舞曲集」より4曲
吉松 隆さんの「プレイアデス舞曲集」は、1986年の「Ⅰ」から2001年の「Ⅸ」まで、各7曲ずつの全9集があるが、今回演奏されたのは「Ⅱ」から2曲と「Ⅴ」から2曲の計4曲。
吉松さん独特の抒情性に溢れた曲で、いわゆる「ゲンダイオンガク」を拒否した立ち位置からの、現代におけるロマン性と夢想的、幻想的にして爽やかな、ピュアな曲を、田部さんが美しく演奏された。
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2.ブラームスの6つの小品 Op.118
前半の中心とも言うべき、すこぶる充実した、感銘深い演奏だった。
(1)間奏曲イ短調でのダイナミズム、(2)間奏曲イ長調での優しさと抒情性とスケール感、(3)バラードト短調での情念的迫力、(4)間奏曲ヘ短調での奥深さを感じるトーンと余韻、(5)ロマンスヘ長調での清々しさ、(6)間奏曲変ホ短調での孤独感と悲しみを湛えた演奏。
田部さんのブラームの素晴らしさをまざまざと感じることができ、そのままライヴ録音~リリースOKと言えるほどの、サスガ田部さんと言うべき完成度だった。
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3.グリーグ:抒情小曲集より
「アリエッタ」での愛らしさ。「春に寄す」での、単に春への憧れに留まらない、情熱と愛に満ちた感動的な演奏。「トロルドハウゲンの婚礼の日」での、リズムと曲想の特性を十分に表現した演奏。
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4.シューベルト ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調
後半は、シューベルトの大曲にして、結果的には実質的な「白鳥の歌」と言うべきピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調。
冒頭に紹介した、館長の挨拶が象徴するように、「田部さんのシューベルト」ということで、会場の聴衆からも、この曲の演奏に寄せる思いが感じられた。
長大な第1楽章の冒頭から、ソフトにして余裕ある開始。思索的でもあるが、もちろん後半での追い込みも含めた集中力とスケール感ある演奏。この曲がシューマン的ロマン、いや、既にロマン派の開始を完全に予言している曲であることを、田部さんは演奏により見事に提示された。
第2楽章が、このソナタ全体においても、演奏としても白眉と言え、絶対抒情とも言うべき、温かさと慈愛に満ちた、すこぶる感動的な演奏だった。
第3楽章からは、曲自体が、前半と随分と変わる印象があるし、終楽章は古典派回帰も感じるが、田部さんは、それぞれの曲想を的確に、ダイナミックにして格調高く演奏された。
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アンコールの1曲目は、メンデルスゾーンの作品30の「無言歌集」より「ベネチアの舟歌」。
田部さんが、アンコールも含めて~ユーチューブ映像も有る~よく弾かれる嬰ヘ短調の曲で、深いタッチからの芯のある音による抒情性が素晴らしかった。
もう1曲は、これまた、田部さんがアンコールでよく弾かれている、吉松 隆さん編曲による、シューベルト「アヴェ・マリア」。
優しさとスケール感ある編曲による美しいシューベルトの演奏で、このコンサートが終了した。
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演奏曲
1.吉松隆:プレイアデス舞曲集より
(1)「前奏曲の映像」(1992年、Ⅴの第1曲)
(2)「線形のロマンス」(1987年、Ⅱの第3曲)
(3)「鳥のいる間奏曲」(1987年、Ⅱの第4曲)
(4)「真夜中のノエル」(1992年、Ⅴの第6曲)
2.ブラームス:6つの小品 Op.118
(1)間奏曲 イ短調、(2)間奏曲 イ長調、
(3)バラード ト短調(4)間奏曲 ヘ短調、
(5)ロマンス ヘ長調、(6)間奏曲 変ホ短調
3.グリーグ:抒情小曲集より
(1)「アリエッタ」(第1集第1曲、1867年)
(2)「春に寄す」(第3集第6曲、1886年)
(3)「トロルドハウゲンの婚礼の日」
(第8集第6曲、1896年)
(休憩)
4.シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D.960
アンコール
1.メンデルスゾーン「無言歌集」より「ベネチアの舟歌」Op.30-6
2.シューベルト「アヴェ・マリア」~編曲=吉松 隆
https://www.urayasu-concerthall.jp/ev_calendar/?mc_id=9494
東京オペラシティのリサイタルホール(小ホール)におけるシリーズ企画、「バッハからコンテンポラリー」をコンセプトとした「B→C」(ビートゥーシー)の第236回コンサートに、ソプラノの嘉目真木子さんが出演されるとあって、11月9日夜、同ホールに出向いたが、仕事の関係で、後半のみの拝聴となったのが、とても残念だった。それでも、十分、堪能させていただいた。
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曲目は、当然ながら、「バッハと現代曲を必須」としているが、後述のとおり、私が聴けなかった前半の選曲も含めて、特に現代曲に重点を置いた意欲的なプログラムだと、深く感じ入った。
ピアノは、髙田恵子さんで、後述するが、とても素晴らしいピアニスト。
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まず、当然ながら、私が聴いた後半の曲目での感想を記した後、聴けなかった前半の曲目を、帰宅後、後追いで確認したり、調べたりしたことを踏まえて延べ、全体の感想として、まとめてみたい。
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後半の感想
1.ワーグナーの「ヴェーゼンドンク歌曲集」は、嘉目さんと、ピアノの髙田さんの「しっとり感」がマッチし、相乗効果を出したステージでステキだった。
髙田さんは、タッチがソフトで、もちろん歌手に支障など与えることなく、歌うところは伸びやかに歌うステキなピアニストだ。大いに気に入った。
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2.P・ヒンデミットの《ニーチェの詩による歌曲集》から「陽が沈む」(1939年作)は、ユニークだが、親しみ易い曲。
3.A・リッター(1833~1896)の《3つの小さな歌曲》から「おやすみ」は、短く愛らしい小品。
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4.そして、プログラム最後、A・ライマン(1936~)の
「私を破滅に導いた眼差し─ ゲーテの『ステラ』から第2モノローグ」が圧巻だった。
ライマンは、日本でも、オペラ「メディア」が2009年に、「リア」が2013年に上演され、話題になった作曲家。
この曲は、2014年の「キッシンゲンの夏音楽祭」からの委嘱作品で、ゲーテが「若きウェルテルの悩み」を書いた翌1775年に書かれた戯曲「ステラ」を基に作曲。
歌が完全無調で、時折、ベルク的に高音を行き交うが、特に印象的なのは、ピアノで、髙田さんが腰を浮かせて、前かがみの状態で、左手でピアノの弦を直接 ハジキながら(内部奏法)、右手で鍵盤の高音を断片的な音句を弾く場面が頻出し~右手で高音域をハジクところもあった~、座り直してから左手で低音を叩く、などの要素が交錯しながら、進行するのだが、無調の歌とは、(たぶん敢えて)有機的に連携したりせず、融和したりせず、互いに独立しているかのような構成で展開して行った。
正確な演奏時間は判らないが、10分どころか、20分くらいの長さがあったような印象だった。
嘉目さんの新境地開拓を聴く思いがしたし、髙田さんも実に見事だった。
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アンコールは、R.シュトラウスの有名な「明日!」。
斬新で刺激的な現代曲でプログラムを終えた後は、R・シュトラウスの、しっとりとした夢心地の世界を創り出し、聴衆を再びロマンティックに、うっとりとさせて、コンサートが終わった。
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私が聴けなかった前半のプログラムについて
まず、バッハの格調高い2曲を歌われ、ベートーヴェンの「希望に寄せて」は、同じ詩に作曲した親しみ易い作品32ではなく、深淵な曲である作品94を選曲された。この点でも、意気込みが感じられる。
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そして、哲学者、社会学者として有名なアドルノの作品を持ってきたことも凄い。
アドルノは一時期、ベルクに師事して作曲も勉強したのだが、「ブレヒトによる2つのプロパガンダ」は、アメリカに亡命中の作品で、「ヒトラー」という固有名詞が出てくる、ちょっと衝撃的な作品。
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リームの「メーリケの詩による2つの小さな歌曲」(2009年作)と、「3つのヘルダーリンの詩」(2004年作)が聴けなかったのは特に残念。アドルノの曲はユーチューブに在るので、どういう曲か、聴いて確認できるのだが、リームの歌曲自体、ディスクも無さそうだし、ユーチューブにも無い。
いつか、どうにかして聴いてみたい。
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嘉目さんは、マックス・ヴェーバー研究で知られる社会思想学者のお父様が、昔、ハイデルベルクに留学された際、幼い真木子さんを含む ご一家で1年半、同地で過ごされているし、後、哲学者になられたお兄様も、ハイデルベルクに留学されるなどの環境の中で成長されたことを思うと、この「B→C」という場が与えられ、バッハからドイツ現代作品に至る作品を披露されたことは、ある意味、必然的な展開だった、と言えるかもしれない。
そして、その結果、あるいは成果として、見事に、嘉目さんが新境地を開いたとも言えるように思える。
今後も益々の活躍が楽しみだ。
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[全演奏曲目]
1.バッハ:カンタータ第64番
《見よ、父なる神の大いなる愛を》BWV64から
「この世にあるものは」
2.バッハ:カンタータ第149番《勝利の喜びの歌が》BWV149
から「神の御使いは離れない」
3.ベートーヴェン:希望に寄せて op.94
4.テオドール・アドルノ(1903~1969)作曲
「ブレヒトによる2つのプロパガンダ」(1943年作)
(1)ブレヒト (2)既製の歌
5.ウォルフガング・リーム(1952~)作曲
メーリケの詩による2つの小さな歌曲(2009年作)
(1)生命と死(2)カミラ・パウエルの誕生日アルバム
6.ウォルフガング・リーム作曲
3つのヘルダーリンの詩(2004年作)
(1)許しを求めて(2)人生の半ば(3)ツィンマーに
(休憩)
7.ワーグナー:ヴェーゼンドンク歌曲集
(1)天使(2)止まれ!(3)温室で(4)痛み(5)夢
8.パウル・ヒンデミット(1895~1963)作曲
《ニーチェの詩による歌曲集》から「陽が沈む」(1939年作)
9.アレクサンダー・リッター(1833~1896)作曲
《3つの小さな歌曲》op.9から「おやすみ」
10.アリベルト・ライマン(1936~)作曲
私を破滅に導いた眼差し
─ ゲーテの『ステラ』から第2モノローグ(2014年作)
アンコール
R.シュトラウス:4つの歌曲集 op.27 より 第4番「明日!」
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=14376
清水のりこさんのエレクトーン演奏による、シリーズ化しているオペラのハイライト公演、「銀座オペラ」を11月8日夜、いつもの会場である銀座のヤマハホールで鑑賞した。
今年の演目は、プッチーニの「トゥーランドット」。
これまでも複数回拝聴し、都度、書かせていただいたが、「エレクトーン」と言っても、現代エレクトーンの機能は信じられないくらい素晴らしく、清水さんの抜群の技術により、その演奏効果と役割は絶大で、正に「一人オーケストラ」として、このシリーズ企画の大きな支え、基盤となっている。
もちろん、電子楽器ゆえ、オケの各楽器を模した音が、各現物と100%同じ音質ではないが、鑑賞には全く支障も違和感もなく、今や、この公演に無くてはならない「オケ」なのだ。
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出演者は以下のとおりだが、皆さん素晴らしく、大いに満足させていただいた。
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カラフ役の藤田卓也さんが素晴らしいテナーであることは、とっくに知っていたが、今回は正に、藤田さんの力量全開で、惚れ惚れするほどの歌唱を堪能した。
高音の強さと声量の見事さは圧巻。単に「筋力」があるとかでなく、艶のある美声なので、どの場面でも魅了される。
「誰も寝てはならぬ」では、鳴り止まぬ拍手に応え、もう1回歌われた。圧巻のカラフだった。
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トゥーランドット姫役の小川里美さんは、声自体に悲劇色が出ていて、声のコントロールにそれが加わるので、トゥーランドットが、本当は恐い存在というよりも、孤独で悲しみを抱いた姫なのだ、ということが伝わる名唱だった。
最後に、「姫姿」の衣装に変わる前までは、宝塚のズボン役スターみたいで、外見的にも実に格好良かった。
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リュー役の全 詠玉(Yong Ok CHON)さんは、7月の「ファルスタッフ」でのナンネッタ役で感心したばかりで、あのときの透明感ある高音のロングトーンは見事だったが、今回のリュー役では、小川さんとも共通する、声自体に悲しみを湛えた、潤いある歌唱が、とても魅力的だった。ここ数年の活躍が納得できる、見事なリューだった。
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ティムール役のジョンハオさんの、落ち着きと深みと安定感ある声が素敵で、威厳というより、慈悲深さを湛えた声と歌が印象的だった。
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狭い舞台を効果的に使った太田麻衣子さんの演出も良かったが、特に、荒井雄貴さんによる工夫された映像が印象的で、例えば、3つの謎解きの場面での、1~3の数字に、カラフが正解していく中、順次、数字に炎がかかる映像とか、「誰も寝てはならぬ」の前の、全面の星空から、雲海の向こう正面に大きな満月が見えてくる映像とか、エンディングでの万華鏡的な映像等々、印象的な場面が多々あり、楽しめた。
今後、益々楽しみなシリーズ企画である。
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キャスト
トゥーランドット姫:小川里美
カラフ:藤田卓也
リュー:全詠玉
ティムール:ジョンハオ
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ナビゲーター:キンタカオ
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エレクトーン:清水のりこ
演出:太田麻衣子
舞台映像・字幕:荒井雄貴
https://satomiogawa.com/?p=168
今年4月にオープンしたばかりという東武東上線、中板橋駅近くの「マリーコンツェルト」という こじんまりとした素敵なホールで、11月6日(土)午後、デュオ・コンサートを拝聴した。
ソプラノの可児聡子さんとメゾソプラノの小林由佳さん。ピアノは黒木直子さん。
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大ホールでの歌も、もちろん素敵だが、一人の、あるいは二人等、少人数の歌手や器楽奏者をじっくり聴きたい、その個性に集中して聴いてみたい、という思いを叶えてくれる相応しい場は、実は小ホールなのだ。
演奏曲は以下のとおりだが、曲としては初めて聴いたメンデルスゾーン「秋の歌」が素晴らしい曲で驚いた。こんな素敵な曲を知らなかったとは、と、今頃思うほど魅力的な歌。
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可児さんは初めて聴いたが、フランス歌曲を得意とされているだけに、プーランク「愛の小径」が魅力的だったし、チレアの「私は芸術の下僕」もスケール豊かな歌唱だった。
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小林さんは何と言っても「魔王」が圧巻で、この曲を選曲して歌われたこと自体、私には大きな驚きだったが、歌唱も見事で、大きな喜びを感じた次第。
「落葉松」、「恋とはどんなものかしら」、「ハバネラ」等も実に魅力的だった。
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黒木さんのソロによるショパンのノクターン5番も、端正にして瑞々しい演奏で素敵だった。
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前述のとおり、一人、あるいは二人の歌手を、小さなホールで じっくり聴く喜びは、特別なものだ。
以前、嘉目真木子さんが、荻窪の小さな画廊で定期的に開催されていたサロンコンサートも、私はとても気に入っていたのだが、またいつか開催して欲しいものだ。
可児さん、小林由佳さんも、今後もここで、定期的にコンサートを開催されることを希望したい。
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曲目
第一部
1.メンデルスゾーン「ゆけわがそよ風よ」~デュオ
2.メンデルスゾーン「秋の歌」~デュオ
3.アーン「クローリスへ」~可児さん
4.プーランク「愛の小径」~可児さん
5.シューベルト「魔王」~小林さん
6.武満 徹「小さな空」~可児さん
7.小林秀雄「落葉松」~小林さん
8.フォーレ「この世のすべての魂」~デュオ
(休憩)
第二部
9.オッフェンバック「ホフマン物語」より「舟歌」~デュオ
10.モーツァルト「フィガロの結婚」より
「恋とはどんなものかしら」 ~小林さん
11.黒木さんのピアノソロで、
ショパン ノクターン5番 Op.15-2
12.チレア「アドリアーナ・ルクブルール」より
「私は芸術の下僕」 ~可児さん
13.ビゼー「カルメン」より「ハバネラ」~小林さん
14.プッチーニ「蝶々夫人」より「花の二重唱」~デュオ
アンコール
メンデルスゾーン「歌の翼に」~デュオ
https://malykoncert.com/
https://malykoncert.com/hall.html
11月5日(金)夜、「サルバベルカント・オペラ・ガラ・コンサート」と題されたコンサートを、東京オペラシティで聴いた。もっとも、私は仕事の関係で後半のみの拝聴。
人気テナーのステファン・ポップさんを主役としたコンサートで、2日の兵庫県立芸術文化センターに続く公演だが、日本人歌手を中心としたゲストと指揮者が、2日とは異なっている公演。
この日の指揮は、イタリア人のデメートリオ・モリッカ氏で、管弦楽は日本人プロ奏者による臨時編成の「サルバベルカント・オーケストラ」。
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この東京公演でのゲストの歌手は、高野百合絵さん(ソプラノ※)、垣岡敦子さん(ソプラノ)、ロベルト・ボルトルッツィさん(バリトン)。
※日本コロムビアは、11月1日付けで、高野さんについて「メゾ・ソプラノ」から「ソプラノ」へ声種表記の変更をした旨を公表している。
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主催が「サルバベルカント・アソシエーション・ジャパン」という一般財団法人で、文化庁が助成しているが、PRが控え目なのか、開催決定からの期間が短かったのかなど、事情は分からないが、思いの他、客の入りが少なかったのは、公演自体を知らない人が多いのでhないか?と想像できる。
私も、高野百合絵さんご自身によるFB情報で最近知ったばかりだったが、こんな素敵なコンサートが事前にあまり周知されていなかったとしたら、実にモッタイナイことだと思うほど、素敵な公演だった。
前述のとおり、私のように後半のみ聴いた者ですら、そう思ったのだから、全曲聴かれら聴衆は皆、満足で帰途に着いたに違いない。
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ステファン・ポップさんは初めて聴いたが、「女心の歌」や「誰も寝てはならぬ」にしても、明るいトーンで声量のある「これぞテナー」の典型のような明瞭な美声で素晴らしかった。ルーマニア生まれとのことだが、客席への投げキッスを含めたパフォーマンスなどからして、陽気なイタリア人のような感じで、アンコールでの「フニクリ・フニクラ」における解放感ある名唱も含めて、イタリア各地のオペラハウスで人気を博しているのはよく分かる。
ウィーン国立歌劇場等のほか、来年の英国コヴェント・ガーデン等々、益々の活躍が期待されているということが完全に納得でき、魅了された。
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高野百合絵さんによる「ルサルカ」からの「月に寄せる歌」における清らかさ、「トゥーランドット」からの「氷のような姫君も」におけるスケール感が素晴らしかったし、
垣岡敦子さんによるチレア作曲「アドリアーナ・ルクブルール」からの「私は創造の神の卑しい下僕です」のトーンに魅了されたし、ロベルト・ボルトルッツィさんによる「オテッロ」からの「ヤーゴの信条」も内的な求心力ある歌唱が良かった。
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合唱は、前半第1曲のアイーダの凱旋行進曲や、後半第1曲の「行け、わが思いよ、金色の翼に乗って」が聴けなかったのは残念だったが、「誰も寝てはならぬ」や、アンコールでの「フニクリ・フニクラ」、「椿姫」からの「乾杯の歌」などで、マスク越しの合唱でも、その充実感は十分伝わって来た。
写真は、高野百合絵さんからシェアさせていただきました。
左から、高野さん、垣岡さん、指揮のモリッカさん、そして、ポップさん。
https://www.facebook.com/photo/?fbid=4387514867992540&set=pcb.4387572831320077
ステファン・ポップ
https://salvabelcanto.or.jp/stefan-pop/
「フニクリ・フニクラ」
2019年10月31日東京オペラシティコンサートホール
ステファン・ポップ&サルバベルカント祝祭合唱団
https://www.youtube.com/watch?v=qKSefMA-lt4
指揮:クリスティアン・サンドゥ、オーケストラ:Tokyo21C Philharmonic
https://www.youtube.com/watch?v=qKSefMA-lt4
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