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2021年7月16日 (金)

佐渡裕プロデュースオペラ「メリー・ウィドウ」

「原作の逸脱(笑いの付加)こそ、このシリーズ企画公演の特徴」

「楽しくなければオペラではない、を地で行く関西パワーの凄さ」

佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2021喜歌劇「メリー・ウィドウ」(日本語での、Wキャストによる公演)の初日を、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールで楽しく鑑賞、拝聴した。

佐渡 裕 指揮、兵庫芸術文化センター管弦楽団、ひょうごプロデュースオペラ合唱団。演出・日本語台本=広渡 勲。

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今月16日から25日までのロングラン。休みは19日と23日のみで、2組が4公演ずつ出演される。

佐渡さん企画のこのシリーズは2005年「ヘンゼルとグレーテル」を皮切りに毎年開催されて来た。もちろん、昨年は例外的に、コロナ禍ゆえ、中止となったが。

私がここで楽しんだのは今回が2回目で、前回は、ちょうど10年前の2011年7月。作品は「こうもり」だった。あのときは、小林沙羅さんが出演される、ということが遠出するきっかけだったが、今回は、20代の若さで主役ハンナ役に抜擢された高野百合絵さんがご出演されるから。

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オープニングから笑いを交えた演出

佐渡さんが登場し、会釈後、一瞬、指揮台を降りて見えなくなり、再度「聴衆に背を向けて指揮台に上った人」が振り向いて、あの声とトーンで言った。「いらっしゃ~い」。

ニエグシュ役で出演される桂 文枝さんだった。会場、爆笑。文枝さんがストーリーの概要をトーク。

「ハンナは大金を得たわけです。和歌山県でも似た話がありましたが」(会場、爆笑)。

その他にも、劇中でのセリフで笑わすこと多々のほか、第2幕と3幕の幕間だったと思うが、客席側に「眼鏡をかけたら東海林太郎さんのよう」な恰好で出て来て話たかと思うと、佐渡さんに近づき。パリに関しての会話。10年前も、こうした役回りを桂ざこばさんがされていたので、同じスタイルだ。

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新スター~高野百合絵さん

高野百合絵さんが最初に歌う曲は、シャンソンの様な雰囲気が出ていてステキだったし、第2幕での有名な「ヴィリアの歌」では、聴衆が静まり返り、感動して聴いているのが、ひしひしと伝わってきた。

第3幕での有名な「唇は語らずとも」で、目頭と胸が熱くならない人がいるだろうか?

ダニロ役の黒田さんと2人のデュオに、会場がウットリしたのだった。

メゾゆえ、中音域でのトーンが安定感あり抜群だし、高野さんはメゾと言っても、ソプラノと言ってよいほどの高音も魅力的で、技術も巧みなので、この日も実に伸びやかな美声で聴衆を魅了したのだった。

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高野さんは、もはや スター歌手。背の高い美人、という外見も含めて天性のもの。

20代での主役抜擢自体、素晴らしいし、歌といいセリフといい、歴史を重ねつつある毎年の企画公演に初出演とは思えないほどの、堂々たる演技と歌唱。

私は、2018年11月の日生オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」で、高野さんがドラベッラ役を歌われたときに初めて知り、聴き、「素晴らしい歌手が出て来た」と感心して以来、ファンとなり、FB友人にもなっていただいている。

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他の出演者で特に印象的だったのが、カミーユ・ド・ロシヨン役のテナー、小堀勇介さんだ。どこまでも伸びやかな歌声は素晴らしく、秀逸。とても優秀なテナーだと思う。今後も活躍するに違いない。

ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵役の黒田祐貴さんも、とても良かった。正統派にして、安定感と格調の高さを感じさせる歌声が素敵だ。

ヴァラシエンヌ役をコケティッシュに演じ、歌った高橋 維さんも可愛らしくて良かった。

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元宝塚の香寿たつきさんによる「宝塚劇場」

シルヴィアーヌ役で出演された、宝塚歌劇団出身の香寿たつきさんが、この公演を更に魅力的なものとしたのは間違いない。

劇中の会話で、「愛」の話となり、「愛、愛?」~「あ~い~、それは~」と「愛あればこそ」の一節を歌っただけでなく、第3幕だったか、なんと、「すみれの花咲く頃」を歌われ、聴衆を楽しませた。

「おお、これが宝塚スターだ」、と私も歓喜した。

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ダンサー陣の活躍

第2幕でのパーティーや、第3幕でのマキシムでの「フレンチ・カンカン」など、多くの男女のダンサーたちの活躍もステキだった。

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劇場の構造

10年前にもブログに詳細に書いたが、今回も、このKOBELCOでは、オケピットと客席の間に、花道(渡り廊下、回廊)のような横断する細い特設通路=エプロンステージが設けられたのだが、これは宝塚歌劇の伝統装置である「銀橋(ぎんきょう)」とのことで、ここでヅカガールが観客にアピールするように、この公演でも、下記記載のグランド・フィナーレを含めて、随所で有効に活用された。

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カーテンコールの後のプライズ的グランド・フィナーレ

第3幕最後の全員での「女・女・女」のコーラスで締め、カーテンコール。この「後」が長かった。

8年前にも私はこう書いている。「エンディングを迎えてのソリストたちのカーテンコール、二度目は「銀橋」に出て来てのそれだから、近くの聴衆は喜んだ。しかし、これでは終わらなかった。実は「ここからがサプライズであるグランド・フィナーレの開始」だったのだ」。

今回もそう。まるで、新しい幕が始まったかと思うほどだ。

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高岸直樹さんと吉岡美佳さんのクラシック・バレエに始まり、(以下、順番は正確ではないと思うが)再度、大勢のダンサーによる「フレンチ・カンカン」。男声ソリスト陣による「女・女・女」のコーラス。白ハット、白いスーツの宝塚男役スタイルでカッコ良く登場した香寿たつきさん。「銀橋」での、カミーユ小堀さんとヴァランシエンヌ高橋さんのデュオ。

ステージでのダニロ黒田さんのソロに続き、再び、ハンナ高野さんの「ヴィリアの歌」。2人による「唇は語らすとも」。

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まだ続く。

佐渡さんがステージに上り、指揮台には桂文枝さん。この7月16日は、文枝さんの78歳の誕生日とのことで、オケと全員で「HAPPY BIRTHDAY to you」の大合唱。

文枝さんの指揮で、佐渡さんが「女というものは」と「女・女・女」を歌い始め、合唱。

文枝さんがステージに上がり、誕生日祝いの花束贈呈と大きいケーキの登場。などなど。

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佐渡さんの企画と、関西の「ノリ」

このように、いくらオペレッタとはいえ、ヴァラエティ豊富な内容は、ここでの公演ならではのもの。この「関西のノリ」は凄い。この「ノリ」は東京には無いもの。今回は、「宝塚公演」と合体したかのような内容が素晴らしかった。

この展開は、佐渡さん自身による「日本語による、宝塚歌劇や関西のお笑いの要素を問い入れた、今でも自負している2008年のメリー・ウィドウ」をベースとしたもの。

東京でここまでやるのは、ちょっと想像できないし、東京だと、「堅苦しい考えのヤツ」が「逸脱し過ぎだ」と批判しかねない。しかし、私はこの「ノリ」を強く支持する。

かつて、吉田秀和さんが言った、「やりすぎ(?)、それこそ、バロックだ」を思い出す。

そう、「やりすぎ(?)、これこそオペラだ、オペレッタだ」、と強く支持する。

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演出について

「やり過ぎの演出」は嫌なものが多いが、広渡 勲さんによるこの公演での演出自体は、奇を衒(てら)ったところのない各セットで、シンプルにして美しいものだった。とても良かった。

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感染対策

なお、劇場の客席は、一席空けではなくて「強き」とも言えるが、これは新国立劇場でも同様だし、今や、東京文化会館でも同様の対応となっている。

そして当然ながら、出演者全員は入念な対策を繰り返しながら、この日を迎えている。プログラムには、小味淵彦之さん(音楽評論家)の寄稿により、その概要と、以下の文も書かれていたので、ぜひご紹介したい。

「劇場という空間では、建築基準法上、非常に厳しい換気基準が求められていて、KOBELCO大ホールでも、内部の空気が30分でほぼ入れ替わる設計になっている。検証でも、実際の気流の流れが確かめられ、舞台上の空気はほとんど客席に下りず、天井方向から速やかに排出されることが実証された」

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トイレがキレイに

このホールはトイレが多く、東京の有名なホールのように、トイレに「ケチイ」というところがない。東京の「気取り」はなく、実にたくさんトイレが配備されていて素晴らしい。

10年前は、個室がシンプルな便器だったが~使用しなかったが、私は施設のトイレの個室の状況で、その施設の「衛生配慮の本気度」を判断するので、初めて行った施設では、使わなくても、必ず見て確認することを常としている~今回は2回目だったが確認すると、全ての個室が、温水洗浄便座になっていたので、驚いた。

これは、コロナ禍がもたらした良い点のものか、それ以前に既に改善されていたかは知らないが、とにかく、とても感じ入った次第。

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キャスト

配役:    7月16、18、21、24日:7月17、20、22、25日

ハンナ・グラヴァリ:      高野百合絵    並河寿美

ミルコ・ツェータ男爵:   折江忠道     片桐直樹

ヴァランシエンヌ:    高橋 維     市原 愛

ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:黒田祐貴   大山大輔

カミーユ・ド・ロシヨン: 小堀勇介     樋口達哉

カスカーダ子爵:     小貫岩夫     水口健次

ラウール・ド・サンブリオッシュ:大沼 徹  晴 雅彦

ボグダノヴィッチ:    泉 良平     ジョン・ハオ

シルヴィアーヌ:  (全日)香寿たつき

ニエグシュ:    (全日)桂 文枝

プリチッチュ:      志村文彦     三戸大久

プラスコヴィア:     押見朋子     清水華澄

クロモウ:        森 雅史     河野鉄平

オルガ:         鈴木純子     板波利加

エマニュエル:   (全日)鳥居かほり

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