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2021年7月24日 (土)

田部京子さん~ピアノ・リサイタル

田部京子さんが浜離宮朝日ホールで展開している「シューベルト・プラス」の第7回公演を7月24日午後、同ホールで拝聴した。

プログラムは以下のとおりだが、これは本来、昨年予定されていた演目で、同プログラムとしては1年延期公演と言えるもの。

1.シューベルト:ピアノ・ソナタ第4番 イ短調D.537 Op.164

2.ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調「葬送」Op.35

3.シューマン:クライスレリアーナ Op.16

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1曲目のシューベルトのソナタ第4番

第1楽章の音の密度の濃さ。イ短調と言っても、シューベルトならではの、長調部分の多い、即興風な曲想の応じた入念な弾き分けが素敵だ。

第2楽章は、曲想が素朴にして様々な要素が盛り込まれた親しみ易い曲。田部さんが、その音の庭園を散策するが如く、楽しんで弾かれていたように感じた。

第3楽章も即興曲的な曲想を自由自在に、しかし格調高く奏された。

全体として、短調の調性を含めて、「爽やかさ」が印象的だった。

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2曲目は、ショパンのソナタ第2番「葬送」

田部さんがショパンを弾かれるのは珍しいかもしれない。それだけに、昨年から期待のプログラムだった。期待に違わぬどころか、それを大きく超えた素晴らしい演奏だった。

第1楽章では、ショパンと言うより、アグレッシブなシューマンのパッションを想像させ、1曲目のシューベルトが青色の清々しさなら、この第1楽章は、赤色の情念さえ感じられ、そのスケール感を含めてとても印象的で見事だった。

第2楽章のスケルツォでは、リズミックな要素をキチンと立たせての入念な弾き込みが魅力。

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第3楽章の「葬送」は、落ち着いたテンポ設定の中、田部さん特有の微妙なアゴーギクを含みながら、長調の部分での美しさも含めて、純音楽的な楽章としての荘重さと深淵な悲しみを表出されていた。

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第4楽章の冒頭の1音にテヌートをかけてから進行するスタイルは、この曲に限らず、田部さんの特徴の1つだが、その直後からのエンディングまでは、敢えて音のクッキリ感は抑え、むしろ淡いヴェールをまとった様な音の混沌を創り出し、この短くもユニークな終楽章の特徴を結果的に見事に描き出してみせたのだった。

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休憩後のシューマンの「クライスレリアーナ」。

第1曲は、ありがちなパッション全開というよりも、2曲目とは逆に、むしろ、シューマンと言うより、ショパン的繊細さとフレージングの清冽な鮮やかさにおける音の美しさが印象的だった。

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第2曲は、田部さん特有の微妙なアゴーギクが有効的に、しかし自然体として示されながら、抒情性と場面ごとの曲想の弾き分けの見事さが印象的だった。

その後も、動的な曲と静的な曲との特徴の表出がキチンと提示され、特に第6曲での詩的で独白的な演奏や、第7曲での正に「rasch」という表示に相応しいアグレッシブな弾き込みが見事だった。

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アンコールの1曲目は、予想通り「トロイメライ」。

音が上昇する部分での、微妙なアッチェランド(とまでは言い過ぎで、音を持っていく勢い、と言うべきもの)を含めた、もたれ過ぎないが、しかし十分叙情的な歌が、正に夢のように美しかった。

2曲目は、ショパンのノクターン 嬰ハ短調(遺作)。

ゆったりとしたテンポでの、しっとり感は、もしや、この日一番の叙情的演奏だったかもしれない、と言えるほどで、内省的にして、秘めた悲しみが胸一杯に入り、広がっていくが如く感動的な演奏だった。

 

https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/event/2021/07/event1876.html

https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/event/20210724.pdf

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