« 徳永二男さん企画コンサート~田部京子さんのベートーヴェン | トップページ | コール・ミレニアムによる「メサイア」 »

2021年6月13日 (日)

日生オペラ~「ラ・ボエーム」13日公演

日生オペラ~「ラ・ボエーム」13日公演

日生劇場主催のNISSAY OPERA 2021「ラ・ボエーム」、6月12日と13日のダブルキャスト公演のうち、13日の組の公演を同劇場で鑑賞した。

園田隆一郎さんの指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏。演出は伊香修吾氏。

バリトン歌手の宮本益光さんによる日本語訳詞での公演。

外国語オペラを日本語に置き換えての上演では、納得した公演がほとんど無い印象があるが、宮本版での訳詞は、ムリ(不自然さ)がほとんど無い感じで、違和感は少なく、とても印象的な公演だった。

学生のころから歌の勉強だけでなく、係る研究をし、東京芸大の博士課程修了論文「オペラの日本語訳詞、その方法論」により博士号を取得されただけのことはあるな、と感じ入った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

演出に関しては後述するけれど、冒頭からマルチェッロ役の池内 響さんが素晴らしかった。今まで聴いたライヴと録音の中で、少なくとも日本人の中で一番良いと思った。声量が素晴らしいし、風格だけでなく、若々しさもある。

思うに、このオペラは、開始直後の第一声を発するマルチェッロの「デキ(印象)」で、オペラ全体のイメージに大きな影響を与える重要な役だと思う。もし、マルチェッロの声質が気に入らないで、ガッカリすると、この後の、ロドルフォとミミが相当良くない限り、「ガッカリ感」が継続されてしまう。そのくらい重要な役だ。

池内 響さんは初めて拝聴したが、「ドン・ジョヴァンニ」のタイトルロールを歌われているなど活躍されていて、「なるほど」と思った。この日の歌手の皆さんは、後述のとおり、皆さん素敵だったし、成功した公演だと思うが、もし、「一人だけ、あなたにとっての主役を選べ」と言われたら、私は「マルチェッロの池内 響さん」を選ぶ。今後も大いに期待したいバリトン歌手。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ロドルフォ役に抜擢された岸浪愛学さんも初めて拝聴。伸びやかな良い声だし、声量も十分あったが、イメージ的には、声もキャラも真面目な感じで、「恋より学問」というイメージも受けたが、第4幕での「泣き」も含めて感情移入は自然体で、見事だった。声に「色気」が付いたなら、鬼に金棒かもしれない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ミミ役の迫田美帆さんは、良い意味で普通の感じ、というか、慎ましさを感じさせる歌声で、悲しみの表現も素敵だった。十分好感の持てる演技と歌唱だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ムゼッタ役の冨平安希子さんは、第2幕でのコケティッシュな役柄も魅力的だったが、実は第4幕での、ミミを案じる優しさこそ、第2幕にも増して重要な役所であることをしっかりと示し、「優しいムゼッタ」を見事に演じ、歌われた。派手さやお転婆(ヤンキー)っぽさ以上に、優しさに重心を置いた、魅力的なムゼッタだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ショナール役の近藤 圭も良い声。

コッリーネ役の山田大智さんは、第4幕での有名な「外套の歌」で、思いやり深い悲しみがよく出ていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ベノア役の清水良一は、声を巧みに脚色して、性格テナーの面を出すなど、面白かった。この役で印象に残る人は少ない気がするが、清水さんのベノアはとても印象的だった。

アルチンドロ役の三浦克次も堂々とした体躯の良い声で、ムゼッタとの掛け合いも良かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回、あらためて思ったのは、第3幕の終わり近くで、ミミとロドルフォが、シリアスにしてロマンティックに歌っている中、マルチェッロとムゼッタが突如表れて「罵り合う」場面。「あそこ、好き」、だ。面白い。本来なら禁じ手の様にも思えるが、とにかく「あそこ、好き」。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

演出について

伊香修吾さんの演出は、第2幕で、冒頭での街の賑わいをそのままステージに置くのではなく、窓の外下として、あくまでも下界での事としたり、児童合唱を無くし(コロナ下での配慮ということは当然あっただろう)、大人の合唱も、舞台裏に終始させる工夫があったり、第3幕での展開と舞台の関係ではやや厳しい点もあったものの、総じて、劇場の広さ(というか、狭さ)を考慮した、効率良い工夫が施されるなど、斬新でユニークな場面も多々あった。

問題は第1幕で、ミミが訪問してくる前までの、青年4人によるやりとりの間中、ミミが「あの世から見ているような、見えない存在、幻影」として、彼らの様子を見聞きする設定は、意味も意義も感じなかった。必然的必要性は無いと思った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【キャスト】      6月12日(土)   6月13日(日)

ミミ           安藤 赴美子         迫田 美帆

ロドルフォ          宮里 直樹     岸浪 愛学

ムゼッタ             横前 奈緒     冨平 安希子

マルチェッロ       今井 俊輔             池内 響

ショナール          北川 辰彦             近藤 圭

コッリーネ         デニス・ビシュニャ 山田 大智

ベノア       清水 宏樹             清水 良一

アルチンドロ      小林 由樹             三浦 克次

パルピニョール     工藤 翔陽(両日)

https://www.nissaytheatre.or.jp/schedule/boheme2021/

« 徳永二男さん企画コンサート~田部京子さんのベートーヴェン | トップページ | コール・ミレニアムによる「メサイア」 »

ブログ HomePage

Amazon DVD

Amazon 本

最近のコメント

最近のトラックバック