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2021年6月30日 (水)

コール・ミレニアムによる「メサイア」

2002年に結成された混声合唱団 コール・ミレニアムの第18回定期演奏会を6月29日夜、東京芸術劇場で拝聴した。今年に入って、いや、昨年の4月以降、アマチュアの合唱団の演奏を聴くのは、今月6日の和光市民合唱団に次いで二度目。ようやく、合唱団も長く暗い冬の時代、控え目に言っても、暗中模索の時代の終わりの始まりを迎えている感があり、深い感慨を覚えるし、喜びに堪えない。
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6日にも強く感じたことだが、「歌がある毎日こそ正常な日常」なのだ。
係る状況になる前、ともすれば、音楽ライヴは、ある種、特別な「非日常体験」と感じられたし、「それも真実」ではあるが、係る状況下で強く感じることは、歌手がステージで歌い、合唱がステージで歌うこと、それこそが、実は「真の日常」なのだ、ということ。このことを、この夜も強く感じた。
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この日の演奏曲は、ヘンデルの「メサイア」。ホールの指針に基づき、2時間限定とのことで、後半の数曲がカットされたのは、やむを得ないにしても、指揮者の井﨑正浩さんがプログラムに寄稿されているように、演奏者においてこそ、残念だったに違いない。なお、カットされた曲は、第29曲から36曲までと、第38、39曲、第49曲から52曲まで。
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指揮の井﨑正浩さんは、ハンガリーを拠点にされているとのこと。オケは、この合唱団が2019年にバッハのミサ曲ロ短調を演奏した際のメンバーを中心とした小編成のプロオケであるミレニアム・ソロイスツ室内合奏団。
ソリストは、ソプラノが澤江衣里さん、アルトが高橋ちはるさん、テノールが鏡 貴之さん、バスが加耒 徹さん。4人は普段、ソロ活動だけでなく、バッハ・コレギウム・ジャパンのメンバーとしても活躍されている、という共通点がある。皆さん素晴らしかったが、詳細は後述する。
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マスクに関しては、指揮者と4人のソリストとオケの管楽器を除いて、全員マスク着用での演奏。合唱団が使用したマスクは、東京混声合唱団が使っているものに似て、広く顎下まである布地(と思われる)のもの。通常のマスクよりは歌い易いだろうし、実際、客席で聴いていて、声量的に、とりたてて支障は感じなく、立派に歌われた。それでも、練習の回数や方法において、当然ながら満足いかない状況下で苦心されたのだろうことは想像が付いた。
すなわち、マスクによる本番におけるハンディということよりも、後半の曲で、統一感、アンサンブルにおいて、やや不均衡を感じる場面があった。前半は有名な曲が多いこともあり、良い意味で、歌い慣れしている感があったが、後半は「練習が足りていないのだろうな」と想像できる部分が散見された。
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マスクのハンディが皆無というわけではむろん無く、例えば第24曲の冒頭、「Surely」は良く強調はされていたが、それでも、子音が解放的なまでに高らかに発せられていたかというと、そこまでの完成度は感じなかった。こういう状況でなければ、全員、一人ひとりが、「遠慮なく」存分に「シュ」の音を発せられたはずなのだ。
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それでも~プログラム記載によると~ソプラノ32名、アルト29名、テノール9名、バス17名の合唱は、終始、歌う喜びと感慨を聴衆にも感じさせるに十分な、素敵な合唱を聴かせてくれた。
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井﨑さんの解釈で印象的だったのは、有名な「ハレルヤ」。
決然と開始するのではなく、オケが弱音で開始し、コーラスも、しばらくはソフトな弱音で歌われていた。後半近くから音量を上げたが、場面によっては、音量、強弱、テンポを微妙に変化させるなど、とても斬新でユニークな演奏だった。
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なお、この「ハレルヤ」とラストのアーメンコーラスは、4人のソリストも一緒に歌われたのが良かった。もちろん、その2曲では合唱が主役であることを4人は考慮され、自分たちの声が突出しないように、ごく控え目に歌われていた。
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ソリストでは、贔屓目無しに、加耒 徹さんと澤江衣里さんが、とりわけ素晴らしかった。2人とも、私は毎年、年に1回以上は、必ず聴かせていただいているので、お2人の「進化」を、喜びを持って体感させていただいている。
加耒さんが歌われたソロのナンバーは、いずれも充実のトーンで、声量も素晴らしく、歌詞での強調すべきポイントや、多彩なニュアンスを含めて、素晴らしい歌唱だった。
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澤江さんは、毎年、違ったトーンを聴かせてくれて、その幅の広さに感服する。正確に言うと、毎年と言うより、たぶん、曲によって都度、トーンやニュアンスを絶妙に変えていらっしゃるのだ。
清らかな「ピュア」な歌声で、数年前に拝聴したフォーレの「レクイエム」では、温かさの中の清冽で、神々しいまでに透き通った歌声に心底、驚嘆したが、この日は、同じ「ピュア」でも、バロックの歌唱に徹したアプローチによる軽やかで柔軟な歌唱で、アリアにおいても、レスタティーヴォをそのまま生かして継続する中での歌唱に感じた。すなわち、軽やかな歌の中にも「語り」が常にあるのだ。
毎年、いや、毎回、共通点と同時に違った要素を、多様で多彩なキャラクターを感じさせてくれる澤江さんをデビュー間もないころから~いや、デビュー前から~存じている私としては、澤ちゃんの「進化」を感じることが とても嬉しく、これからも、きっと長く、私達を楽しませてくれるに違いないことを、この日、あらためて確信した。
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テナーの鏡 貴之さんは明るいトーンが印象的で、力みの無い、自然体な歌唱が良かった。
アルトの高橋ちはるさんは端正な歌唱で、歌詞やフレージングが誠実に、丁寧なものとして歌われた。
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演奏終了後は、1階客席で、スタンディングオベーションする人も多く、聴衆が満足したことが明白だった。
前述のとおり、2時間限定ゆえ、ソリストと指揮者の舞台礼は、一度ソデに引き上げてから出て来た1回のみで、早々にして、爽やかな雰囲気で、素敵なコンサートが終わったのだった。

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