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2020年10月17日 (土)

トゥーランドット~神奈川県民ホール~初日組

10月17日、18日のダブルキャストでの「トゥーランドット」初日組を鑑賞した。
同ホールも新型コロナ関係で、8月末まで休館を余儀なくされ、再開後の初のオペラ公演。
指揮は佐藤正浩さんで、管弦楽は神奈川フィルハーモニー管弦楽団。担当コンマスは﨑谷直人さん。
合唱は二期会合唱団、児童合唱が「赤い靴ジュニアコーラス」。
また、詳細は後述するが、今回の演出は、「H・アール・カオス」というダンサー組織から5名のダンサーが出演し、公演の特徴づけと成功に大いに貢献した。
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なお、指揮者に関しては、当初予定されていたアルベルト・ヴェロネージ氏が、新型コロナ関係の出入国制限により入国できなくなったことによる変更。10月17~18日神奈川公演および24日大分公演を佐藤正浩さんが、31日の山形公演を阪 哲朗が指揮されることになった。こう言ってはなんだが、ヴェロネージ氏には申し訳ないが、代演であっても、日本人音楽家が活躍できる機会が増えたこと自体は良いことだと思う。この事は、先日の新国立劇場での「夏の夜の夢」の感想において言及済。
また、10月17日神奈川公演および24日大分公演で、リュー役の予定だったフランス在住の大村博美さんも、新型コロナ関連出入国制限により入国できなくなり、木下美穂子さんに変更となった。
大村博美さんは、私が所属する合唱団が昨年12月にベートーヴェンのハ長調ミサを演奏した際、ソリストの一人として出演いただき、面識を得たことから今回楽しみにしていただけに、とても残念だったが、後述のとおり、木下美穂子さんのリューはとても素晴らしかった。
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客席は左右1席空けだが、1~3階までほぼ埋まっている感じ。1階の前3列が完全空席対応なのは、大ホールでの今やトレンドと言える。
演出・振付は大島早紀子さんで彼女についても後述する。装置デザイン:二村周作、衣裳デザイン:朝月真次郎。
歌手を列記後、舞台での登場順~歌い出す順~で、感想を書いてみたい。
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トゥーランドット姫:田崎尚美、王子カラフ:福井敬
リュー:木下美穂子、ティムール:ジョン ハオ
皇帝アルトゥム:牧川修一、役人:小林啓倫
大臣ピン:萩原潤、大臣パン:児玉和弘、大臣ポン:菅野敦
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佐藤さん指揮の冒頭。速めのキビキビとしたテンポで開始。
合唱は全幕、どの場面も全て素晴らしかった。児童コーラスも可愛らしかった。
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役人役の小林啓倫さん
落ち着いた、安定感ある良い声。
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王子カラフ役の福井敬さん
声量と美声はもちろん、一途さがよく出ており、格調高い名歌唱。サスガの感がある。演技、表情、表現とも巧く、ベテランの面目躍如。ここ何年も多くのオペラの主役を歌い、NHKニューイヤーオペラコンサートでは毎回トリを歌うが、「そろそろ後輩にその場を譲ってあげれば」と内心思うものの、しかし、こうした歌唱と演技を観、聴かされると、現実問題としては、福井さんのお株を奪うほどに取って代わることのできるテナーは、日本人の中には未だあまりいないのかもしれない。
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リュー役の木下美穂子さん
前述のとおり、大村博美さんの代役としての出演だが、情感溢れる美声で、声量もあり、とても素晴らしく、大成功のピンチヒッターだった。木下さんも名歌手たる面目躍如というところ。
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ティムール役のジョン ハオさん
悲しみを全面に出した役に相応しい歌声と演技に魅了された。控えめながらも深い声が素晴らしかった。
実は、大村さんに関する前述で触れた、私が所属する合唱団の昨年12月のハ長調ミサの際、ハオさんもソリストの一人として出演していただいたのだが、終演後のレセプションで見せていた笑顔とは、当然ながら別人のようなシリアスな表情と演技がステキだった。
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ピン、パン、ポンの3人組
強烈な印象とまでは行かなかったが、ユーモラスな面も含めて、十分活躍されたし、アンサンブルも良かった。
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皇帝アルトゥム役の牧川修一さん
「老いた皇帝」という役設定ゆえ、テナーなのに堂々と歌えず、弱々しく歌わねばならない、という難しい役だが、そのキャラをよく表していて、巧かった。
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トゥーランドット姫役の田崎尚美さん
本当は底辺に悲しみを抱いているのだ、ということを感じさせる歌唱。堂々たる歌唱と演技だったし、歌声自体に一種の憂いがある色があったので、トゥーランドットも強さだけではなく、悲しさも表現されていたと思う。
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全体におけるダンサーたちによる振付と演出が秀逸
ダンスは「H・アール・カオス」から、メインダンサーとして白河直子さん、ダンサーとして斉木香里さん、木戸紫乃さん、野村真弓さん、坂井美乃里さんが出演。
H・アール・カオスは、日本のコンテンポラリー・ダンスのカンパニーで、大島早紀子さんと白河直子さんにより1989年に設立とのこと。
「宙吊り」を含めた高所でのパフォーマンスも多く、激しい振付も頻出。音楽に添って感情や情念を表す激しいダンスが素晴らしく、音楽を邪魔することなく、劇進行における意図をフォローし、盛り上げる効果絶大だった。
本公演の個性的特徴づけと成功に、大いに貢献するダンサーたちと振付と演出だった。
それを担当して統率した演出・振付の大島早紀子さんは、終演後、カーテンコールに登場したが、現役のダンサーみたいにスタイル抜群でカッコいい。しかも、休憩時間にはロビーに出て来て、関係者と談笑していた。18日も同様。もし、気難しい男性演出家という人がいるとしたら、そういう人より、よほど親しみが湧くし、何より、演出自体がとても素晴らしかった。
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その他
第2幕が壮大な合唱で終わって2回目のインターバルに入るとき、「この日常の中の、非日常感の感動こそ尊い。これが失われていた半年間の世界は異常だ」、とつくづく思った。
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最後になったが、指揮者の佐藤正浩さんと神奈川フィルハーモニー管弦楽団に心からの拍手を送りたい。オケは2日目に、金管に若干疲れのようなものを部分的には感じたが、オケとしての練習時間が制限されてきたここ数か月のことを考えれば、立派なデキだったと思う。
https://www.kanagawa-kenminhall.com/oita-yamagata-turandot/

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