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2020年10月18日 (日)

トゥーランドット~18日公演

ダブルキャストのもう1組の演奏を10月18日、同じく神奈川県民ホールで聴いた。
ダブルキャストで聴く楽しみは、歌手の優劣ではなく、個性の違いを感じ取れる事にある。例えば、同じリューでも、昨日の木下さんと今日の砂川さんとでは質感が全然違う。そこが面白い。
最初に全体的な印象を述べると、初日組がベテランの、経験豊富な歌手が中心のキャスティングであったのに対して、18日公演組は、たぶん平均年齢が若い組による公演、と言えると思う。
よって、色合いで言うなら、17日組が「濃い色合い」だとすれば、18日組は、もう少し「パステルカラー系統のような色合い」にして若き実力者による公演と言えるかもしれない。
ここでも、歌手を列記後、初日組同様、舞台での登場順~歌い出す順~で、感想を書いてみたい。
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トゥーランドット姫:岡田昌子、王子カラフ:芹澤佳通
リュー:砂川涼子、ティムール:デニス・ビシュニャ
皇帝アルトゥム:大野徹也、役人:井上雅人
大臣ピン:大川博、大臣パン:大川信之、大臣ポン:糸賀修平
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役人役の井上雅人さん
初日の小林啓倫さんが落ち着いたトーンだったのに対し、井上さんはやや濃いトーンで、良い意味で権威ある管理者感が出ていた。
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王子カラフ役の芹澤佳通さん
今回初めて聴いたが、高音が素晴らしく、一瞬、ドミンゴかと思ったほど。ただ、大役ゆえ、そうとう大変だったようで、第2幕の後半くらいから、少し声に疲労が感じられた。どうしても前日の福井敬さんと比べてしまうのだが、芹澤さんのせっかくのヘルデン系の美声が、持続的な声量としては少し弱くなる場面があった。後半の声の質的保存力が今後の課題のような気がした。例えば、「誰も寝てはならぬ」は全体としては素晴らしかったが、低音のD(1点ニ)が弱かったのと、最高音Hでは、もう少しだけ持続的な声量があったら最高だった。それでも十分魅力的なアリア歌唱だったし、オペラ界に素敵な歌手が登場したと思う。
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リュー役の砂川涼子さん
外見的にも小柄で可愛らしい素敵な容姿だが、それが歌声にも出ていて、ピュアで可憐で、「せつなさ」一杯溢れる歌声で素敵だった。声量は木下さんほどではないにしても、第1幕でのアリアや、第3幕での有名なアリアでは、凛とした清らかさと哀愁が共存する見事な歌唱だった。
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ティムール役のデニス・ビシュニャさん
前日のハオさんが慈愛を感じさせたのに対し、ビシュニャさんは威厳を感じさせる父親像を表出していて印象的だった。どちらも見事なティムールだと思う。
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ピン、パン、ポンの3人組
正直に言わせていただくと、前日以上に、この18日組の3人が特に良かった。ピン役の大川博さんが堂々たる声でリードし、ポン役の糸賀修平さんがとても個性的な声で印象的。パン役の大川信之さんも良かった。
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皇帝アルトゥム役の大野徹也さん
敢えて地声で歌う、という難しい役で、ちょっと苦労されているなあ、という印象を受けた。テナーなら、遠慮することなく堂々と歌いたいところ、「それをやれない役所」という難しい役だ。
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トゥーランドット姫役の岡田昌子さん
岡田さんは決して太い声ではなく、むしろ、シルクのような気品のある美声だが、ここぞという場面での声量は十分あって素晴らしかったし、謎かけの場面とそれ以降におけるドラマティックな歌唱は、お世辞抜きで本当に見事だった。第3幕での叙情的歌唱も美しかった。
第3幕の終わり近くでは、高音で強く入った(強靭な発声で歌い出した)かと思ったら、subito(スービト。すぐに)で、ピュアなトーンに変化させたのには心底驚き、感動した。凄い技術で、敢えて口幅ったく言わせていただくと、「凄く成長されたな」と思ったし、その成長に胸が熱くなる思いがした。その場面は、フェルマータしてディミヌエンドする部分だったかもしれず、それだと、プロ歌手としては当然の表現なのかもしれないが、それにしても抜群のトーン変化で、とても感動した。
2012年2月のヴェルディ「ナブッコ」公演で、アビガイッレ役を歌い演じた岡田昌子さんに感動し、厚かましくも友人になっていただて以来、ずっと応援してきたが、益々進化し続ける岡田昌子さんに今後も期待したい。

2020年10月17日 (土)

トゥーランドット~神奈川県民ホール~初日組

10月17日、18日のダブルキャストでの「トゥーランドット」初日組を鑑賞した。
同ホールも新型コロナ関係で、8月末まで休館を余儀なくされ、再開後の初のオペラ公演。
指揮は佐藤正浩さんで、管弦楽は神奈川フィルハーモニー管弦楽団。担当コンマスは﨑谷直人さん。
合唱は二期会合唱団、児童合唱が「赤い靴ジュニアコーラス」。
また、詳細は後述するが、今回の演出は、「H・アール・カオス」というダンサー組織から5名のダンサーが出演し、公演の特徴づけと成功に大いに貢献した。
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なお、指揮者に関しては、当初予定されていたアルベルト・ヴェロネージ氏が、新型コロナ関係の出入国制限により入国できなくなったことによる変更。10月17~18日神奈川公演および24日大分公演を佐藤正浩さんが、31日の山形公演を阪 哲朗が指揮されることになった。こう言ってはなんだが、ヴェロネージ氏には申し訳ないが、代演であっても、日本人音楽家が活躍できる機会が増えたこと自体は良いことだと思う。この事は、先日の新国立劇場での「夏の夜の夢」の感想において言及済。
また、10月17日神奈川公演および24日大分公演で、リュー役の予定だったフランス在住の大村博美さんも、新型コロナ関連出入国制限により入国できなくなり、木下美穂子さんに変更となった。
大村博美さんは、私が所属する合唱団が昨年12月にベートーヴェンのハ長調ミサを演奏した際、ソリストの一人として出演いただき、面識を得たことから今回楽しみにしていただけに、とても残念だったが、後述のとおり、木下美穂子さんのリューはとても素晴らしかった。
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客席は左右1席空けだが、1~3階までほぼ埋まっている感じ。1階の前3列が完全空席対応なのは、大ホールでの今やトレンドと言える。
演出・振付は大島早紀子さんで彼女についても後述する。装置デザイン:二村周作、衣裳デザイン:朝月真次郎。
歌手を列記後、舞台での登場順~歌い出す順~で、感想を書いてみたい。
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トゥーランドット姫:田崎尚美、王子カラフ:福井敬
リュー:木下美穂子、ティムール:ジョン ハオ
皇帝アルトゥム:牧川修一、役人:小林啓倫
大臣ピン:萩原潤、大臣パン:児玉和弘、大臣ポン:菅野敦
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佐藤さん指揮の冒頭。速めのキビキビとしたテンポで開始。
合唱は全幕、どの場面も全て素晴らしかった。児童コーラスも可愛らしかった。
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役人役の小林啓倫さん
落ち着いた、安定感ある良い声。
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王子カラフ役の福井敬さん
声量と美声はもちろん、一途さがよく出ており、格調高い名歌唱。サスガの感がある。演技、表情、表現とも巧く、ベテランの面目躍如。ここ何年も多くのオペラの主役を歌い、NHKニューイヤーオペラコンサートでは毎回トリを歌うが、「そろそろ後輩にその場を譲ってあげれば」と内心思うものの、しかし、こうした歌唱と演技を観、聴かされると、現実問題としては、福井さんのお株を奪うほどに取って代わることのできるテナーは、日本人の中には未だあまりいないのかもしれない。
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リュー役の木下美穂子さん
前述のとおり、大村博美さんの代役としての出演だが、情感溢れる美声で、声量もあり、とても素晴らしく、大成功のピンチヒッターだった。木下さんも名歌手たる面目躍如というところ。
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ティムール役のジョン ハオさん
悲しみを全面に出した役に相応しい歌声と演技に魅了された。控えめながらも深い声が素晴らしかった。
実は、大村さんに関する前述で触れた、私が所属する合唱団の昨年12月のハ長調ミサの際、ハオさんもソリストの一人として出演していただいたのだが、終演後のレセプションで見せていた笑顔とは、当然ながら別人のようなシリアスな表情と演技がステキだった。
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ピン、パン、ポンの3人組
強烈な印象とまでは行かなかったが、ユーモラスな面も含めて、十分活躍されたし、アンサンブルも良かった。
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皇帝アルトゥム役の牧川修一さん
「老いた皇帝」という役設定ゆえ、テナーなのに堂々と歌えず、弱々しく歌わねばならない、という難しい役だが、そのキャラをよく表していて、巧かった。
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トゥーランドット姫役の田崎尚美さん
本当は底辺に悲しみを抱いているのだ、ということを感じさせる歌唱。堂々たる歌唱と演技だったし、歌声自体に一種の憂いがある色があったので、トゥーランドットも強さだけではなく、悲しさも表現されていたと思う。
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全体におけるダンサーたちによる振付と演出が秀逸
ダンスは「H・アール・カオス」から、メインダンサーとして白河直子さん、ダンサーとして斉木香里さん、木戸紫乃さん、野村真弓さん、坂井美乃里さんが出演。
H・アール・カオスは、日本のコンテンポラリー・ダンスのカンパニーで、大島早紀子さんと白河直子さんにより1989年に設立とのこと。
「宙吊り」を含めた高所でのパフォーマンスも多く、激しい振付も頻出。音楽に添って感情や情念を表す激しいダンスが素晴らしく、音楽を邪魔することなく、劇進行における意図をフォローし、盛り上げる効果絶大だった。
本公演の個性的特徴づけと成功に、大いに貢献するダンサーたちと振付と演出だった。
それを担当して統率した演出・振付の大島早紀子さんは、終演後、カーテンコールに登場したが、現役のダンサーみたいにスタイル抜群でカッコいい。しかも、休憩時間にはロビーに出て来て、関係者と談笑していた。18日も同様。もし、気難しい男性演出家という人がいるとしたら、そういう人より、よほど親しみが湧くし、何より、演出自体がとても素晴らしかった。
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その他
第2幕が壮大な合唱で終わって2回目のインターバルに入るとき、「この日常の中の、非日常感の感動こそ尊い。これが失われていた半年間の世界は異常だ」、とつくづく思った。
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最後になったが、指揮者の佐藤正浩さんと神奈川フィルハーモニー管弦楽団に心からの拍手を送りたい。オケは2日目に、金管に若干疲れのようなものを部分的には感じたが、オケとしての練習時間が制限されてきたここ数か月のことを考えれば、立派なデキだったと思う。
https://www.kanagawa-kenminhall.com/oita-yamagata-turandot/

2020年10月14日 (水)

この半年で観た映画 その29

4月23日に、この半年で観た映画 その28として、
2019年10月~2020年3月に劇場やDVDで観た映画の
感想を書いたのに続き、それ以降の
2020年4月~2020年10月に観た映画の感想を
シリーズの29として感想を記したい。
なお、これまで同様、既に単独でブログに書いたものは
「○月○日のブログに記載のとおり」、とだけにしたい。
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帝一の國  テレビ放送
劇場やDVDで観ていなかったので、TV放送で観れて良かった。
面白かった。若い俳優は皆達者。物語のウラの主役は志尊淳だな。
https://www.youtube.com/watch?v=xI-Y5F_HH0s
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楽園  (DVD)
なんとも陰鬱な内容だし、展開も解かり難い手法だった。
https://www.youtube.com/watch?v=cTM-CusZlG4
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人間失格 太宰治と3人の女たち (DVD)
二階堂ふみさんが可愛いらしかった。朝ドラ「エール」とは全然違う二階堂ふみさんを見たい人は必見。セミヌードシーンもあります。
https://www.youtube.com/watch?v=4YLU0m2vHGk
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火口のふたり R18指定(DVD)
色々な意味で特別な事情と設定の2人の映画。基本的にはエロティシズムが題材だが、内容はよく練られていて、なかなか良かった。
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最高の人生の見つけ方 (DVD)
とても良かった。強く推薦したい映画。特に「自分は金持ちと思っている人」は必見。「おカネは墓場には持っていけませんよ」という当たり前のことを改めて教えてくれる。
2人の旅のきっかけとなる少女に関するドンデン返し的要素も含めてよく練られた物語。大いに満足。
https://www.youtube.com/watch?v=2dP-F6x0Y7s
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決算!忠臣蔵 (DVD)
面白かった。仇討ち(復讐)だろうと、全て「先立つモノ」が無いと始まりませんよ、というカネを中心に置いた視点からの設定がユニーク。
「討ち入りシーンの無い忠臣蔵の映画」という点でも前代未聞。ユーモラスを忘れず、と多くの点で見事。
https://www.youtube.com/watch?v=qk5yTw9imP4
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アイネクライネナハトムジーク (DVD)
青春映画。内容は平凡。
https://www.youtube.com/watch?v=Nn2Ulth2RI4
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記憶にございません!  (DVD)
面白かった。最近の三谷作品は駄作が多いが、これは良かった。
https://www.youtube.com/watch?v=rouyCuTyCko
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閉鎖病棟 ―それぞれの朝― (DVD)
とても良かった。バラエティの鶴瓶さんは好きだが、映画で出てくると、バラエティのイメージが強すぎて、映画での鶴瓶さんは好きになれなかったが、この作品での存在感と演技は素晴らしい。
鶴瓶さんと小松菜奈さんそれぞれにとって、代表作の1つであることは間違いないし、綾野剛さんもとても良かった。
大いに推薦した映画。
https://www.youtube.com/watch?v=DFTMDcD2BOE
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しあわせの隠れ場所(原題: The Blind Side)2009年 テレビ
サンドラ・ブロック主演
映画『しあわせの隠れ場所』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=awZF4Oyoir0
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 糸  (劇場)
公開初日に観た。美瑛の自然が美しい。美瑛で育った2人の人生の交錯とラストに繋がる糸という絆が清々しい。何度でも観たい映画だ。
https://www.youtube.com/watch?v=4fcRTF2RVtw
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2020年10月12日 (月)

新国立劇場に関して思ってきたこと

ブリテンの「夏の夜の夢」上演に際して、当初予定されていた外人歌手と指揮者が来日できなくなった関係で、当該アーティストは全て日本人に取って代わられたことは、とても良かった、と思っている。
係る状況になる前から、新国立劇場でのオペラ公演では、ほどんどの演目における歌手が、外人主体であり、その結果として、チケット料金も高額であることは、ずっと不満に思ってきた。もちろん、チケット料金問題は付随的な事で、「外人歌手招聘主義」がメインの問題だ。
国内で聴く機会の少ない外人歌手を招聘して、それなりのレベルで公演を行う意義はもちろん理解できる。ただ、国内の劇場にもかかわらず、あまりにもそれを主とし、優秀な日本人歌手に活躍の場を、限定的にしか与えない現状を私は好ましく思わない。
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30年前、40年前とかならまだしも、昨今の20代から40代の、男女を問わず日本人歌手の多くは、とても優秀で、わざわざ外国から招聘する必要性を感じないほど「差」は無くなってきている。この認識、意見、感想は、私だけではなく、ほとんどの日本人オペラファン、クラシック音楽ファンの一致するところだと確信する。
日本の音楽ファンも、さすがに昨今(いつまでも)、「外人歌手こそ最高などという神様認識は無い」。公演関係者は、日本のオペラファン、クラシック音楽ファンをバカにしないでもらいたい。
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「チケット料金を安価にするため」などという低次元な理由からではもちろんなく、ひと昔前とは比べものにならないほどに、日本人歌手は優秀なレベルとなり、そういう歌手がどんどん出てきている時代なのだから、そうした歌手の皆さんに活躍の場をたくさん提供し、更なる成長を促す音頭を、新国立劇場がとらなくて、どこがとるのか、と思う。
コロナ禍の有無に関係なく(去った後も)、新国立劇場のオペラ公演は、日本人歌手主体で上演、運営して欲しいと強く希望する。

2020年10月11日 (日)

都響+田部京子さん~ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番他

10月11日午後、東京芸術劇場で「都響スペシャル2020」と題されたコンサートを聴いた。きっかけは、ソリストとして田部京子さんが出演されたことに他ならない。
指揮は梅田俊明さんで、演奏曲は、ベートーヴェンの序曲「コリオラン」、同しくベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番ト長調とドヴォルザークの交響曲第7番ニ短調。
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まず、演奏以外のことを記すと、オケ、指揮者、ソリストともマスクなし。もはや当然のこと。
客席は1階前3列を空席、ステージ左右2階のバルコニー席も空席。他は左右1席空けでの限定席。
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東京都交響楽団の弦の人数をファースト・ヴァイオリンからチェロまでをプルト(1プルトは2人)で言うと、7-6-5-4で、コントラバスが6人だから、やっと普通の、普段の編成での演奏になったと言えるし、金管、木管の奏者の間隔(左右前後)も特別広く空けるということはなく、以前と同じ位の間隔での位置取り。
あとはもう、マーラーとか「春の祭典」などの大規模な作品をいつ演奏するか?という事が残された課題と言えるだろう。「やっとその段階まで来た」ということだ。
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さて、1曲目の「コリオラン」序曲は、冒頭に3回奏される全音符とその後の4分音符での和音の、それぞれにおいて、全音符と4分音符との(移行する)間に、一瞬「間」(溜)を置いたのは良かった。指揮者はそこまで細かく振っていないが、オケがちゃんとそう演奏した。もちろん、リハで約束済のことだろう。
後半でのホルン強奏が表れる部分ではいつも感動する。迫力満点で、さすがベートーヴェンと言うべき、ドラマティックなオーケストレーション。本当に素晴らしい曲で、大好き。「エグモント」よりも好きだ。
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田部京子さんは、今年に入り、ベートーヴェンのピアノ協奏曲を、6月に東京交響楽団および8月に山形交響楽団と3番、7月に新日本フィルハーモニー交響楽団と1番、9月に東京交響楽団と5番「皇帝」を弾いているので、この日の都響との4番で、2番を除く4曲を弾いたことになる。
この時期、係る状況下、予定されていた外人ピアニストの代演も含まれるにしても、他のピアニストが羨むほどの大活躍と言える。堅実な実力はもちろん、おそらく人柄やステージマナーを含めて、如何に多くのオーケストラや指揮者からの信頼が厚いかが、図らずも証明されたと言えるだろう。
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さてその4番の演奏は期待に違わぬ名演だった。第1楽章では艶やかな美しい音に加え、叙情的な曲想の場面と快活なパッセージとの弾き分けが素晴らしい。
そして、このホールは協奏曲に向いていると感じだ。すなわち、大ホールではあるが、ステージは大き過ぎず、音響の良さはミューザ川崎といい勝負と言えるくらいで、ピアノ協奏曲にはうってつけのホール、ソリストを抜群にフォローするホールと言えるかもしれない。そう強く感じだ。
第2楽章での田部さんは、遅すぎないテンポの中で、徹底して、しっとりとした湿りのあるタッチにほぼ終始して、瑞々しい抒情性を表出していた。弦のアンサンブルもとても良かった。
第3楽章の冒頭の主題を、拍に機械的に収めるにではなく、即興的に弾いたのが印象的だし、大賛成だ。リズミックな演奏に徹した、アクティブでアグレッシブな、生き生きとした素晴らしい第3楽章だった。
なお、この楽章では、チェロがソロで低音の持続やオブリガート的に奏する場面が2回あるのだが、録音だと、その「意味」がイマイチ解らないと思えても、ライブだと、ステージにおけるピアノとの音量的バランスが明白に判ることから、なぜ、ベートーヴェンがトゥッティではなく、ソロに指定したのかが理解できる。このことも、この日、あらためて明確に確認できて良かった。
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休憩後のドヴォルザークの7番。牧歌的な第2楽章とリズムの素晴らしい第3楽章が名曲だと思うし、第4楽章もよくできていると思う。
梅田さんは、暗譜で手慣れた感じで指揮をしていたので、「7番が好きなんだなあ」ということがよく解る指揮、演奏だった。オケもとても良かった。
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3449

2020年10月 9日 (金)

新国立劇場~ブリテン 「夏の夜の夢」

10月8日夜、新国立劇場でベンジャミン・ブリテン作曲のオペラ「夏の夜の夢」を観た。初めて聴いたオペラ。原作がシェイクスピア、台本がブリテンおよびピーター・ピアーズによるもので、全3幕、英語上演。第1幕と2幕がそれぞれ約50分、第3幕が約55分という演奏時間。
芸術監督 大野和士さんの「20世紀オペラの中で最も華やかで心の底から楽しめる作品を」という理念に基づく選曲とのこと。
妖精の気まぐれで起こる大騒動を描いたシェイクスピアの傑作喜劇をもとに、原作の約半分を台本化したオペラで、妖精、恋人達、職人達の3つの世界が展開。今回の演出は、ムーヴメントレア・ハウスマン氏だが、2004年モネ劇場で初演されたデイヴィッド・マクヴィカー氏の演出を基にしたアレンジとのこと。
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マクヴィカー演出のプロダクションは2004年モネ劇場で初演されたもので、デザイナーのレイ・スミス氏が美術・衣裳を手がけ、巨大な屋根裏部屋を舞台に、神秘的な闇の中で起きる男女の応酬を現代的なタッチで描いたもの、とのこと。
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内容の前に、新国立劇場のオペラハウスという大劇場ではあったけれど、客席は1席空けの体制にしていなく、ごく普通の状況。前日の王子ホールの何倍もある大劇場なので、少し驚いたが、ようやく「普通」~以前の状況~に近づいてきた、というところだろう。
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出演者は以下のとおりだが、歌手の皆さんはステキだった。特に、毎幕に度々登場する6人の男性による重唱はどれも楽しかった。
肝心のブリテンの音楽だが、無調ではないものの、ブリテンらしい個性的で近代的和声に基づく個性ある音楽だったが、第1幕と第2幕は、正直私はいささか退屈だった。物語の登場人物の関係性と展開が解り難かったし、何より、音楽に有機的発展のようなものを感じず、都度々での独特のトーンは興味深かったものの、総合的な展開としては楽しめなかった。
もっとも、第3幕~特にその後半~からは、ガラッと雰囲気が変わり、第3幕は面白かったです。「今までの展開は何だったのか?」と思うほど変化した。
この変化により、面白さは倍加したが、では、オペラとして成功しているか? こういう展開は、整合性や統一性において説得力を有するか?と問われれば、大いに疑問である。
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このオペラとは別に、普段から新国立劇場に関して思っていることを、キャスト名の記載の後に記しておきたい。ご参考としてお読みいただけたら幸いです。
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指揮:飯森範親
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
児童合唱:TOKYO FM 少年合唱団
演出・ムーヴメントレア・ハウスマン
(デイヴィッド・マクヴィカーの演出に基づく)
オーベロン:藤木大地、タイターニア:平井香織、パック:河野鉄平
シーシアス 大塚博章、ヒポリタ:小林由佳、ライサンダー:村上公太
ディミートリアス;近藤 圭、ハーミア:但馬由香、ヘレナ:大隅智佳子
ボトム:高橋正尚、クインス:妻屋秀和、フルート:岸浪愛学
スナッグ:志村文彦、スナウト:青地英幸、スターヴリング:吉川健一
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新国立劇場に関して思ってきたこと
これに関しては、別途12日付けで記載済みです。
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/a-midsummer-nights-dream/

2020年10月 7日 (水)

森谷真理さんリサイタル~王子ホール

10月7日夜、東京 銀座の王子ホールで、大活躍中のソプラノ歌手 森谷真理さんのリサイタルを聴いた。ピアノ伴奏は天才的名人の山田武彦さん。
本来は、4月25日に予定されていたリサイタルの延期公演。
会場は自由席というだけでなく、客席左右1席を空けないコンサートだったので、少し驚いた。1席を空けないコンサートは、ここ数ヶ月で私は初めて。森谷さんが、というより、王子ホールがいい根性している。客からすると、コロナがどうとかよりも、ここ数か月で、1席空けた快適なコンサートに慣れたので、窮屈感は否めない。
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演目は下記のとおりだが、前半はブリテンの歌曲集「イリュミナシオン」を持ってくるという、現代曲を得意とする森谷さんらしい個性的な選曲。無調ではないが、ブリテンらしい個性的で近代的和声による歌曲で興味深かった。なお、ステージの上部にスクリーンで和訳の文字も映し出すという工夫がなされた。
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後半の2曲目は、プログラムでの記載は、即興曲、「エディット・ピアフを讃えて」とだけの、素っ気ない記載だったが、実際は、山田武彦のピアノソロで、まず、左手だけで、シャンソン「バラ色の人生」を基にした即興曲を弾き、その流れのまま両手に変換して、プーランクの「エディット・ピアフを讃えて」を演奏した。
森谷さんは、ドビュッシー「抒情的散文」の3曲目の「花」や、マスネの「マノン」からの歌において、圧巻の高音声量を聴かせ、オペラの引っ張りだこの力量と貫禄を示した。
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アンコールに入る前に初トークが入ったが、ざっくばらんな人柄のようで面白かったし、常連のご婦人ファンがたくさん来場されていて、トークの間、笑い声が何度も起き、くつろいだ雰囲気のコンサートだった。
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第1部
1.ブリテン『イリュミナシオン』
1. ファンファーレ 2. 大都会 3a.フレーズ 3b.アンティーク
4. 王権 5. マリーン 6. 間奏曲 7. 美しくあること
8. バラード 9. 出発
(休憩)
第2部
2.ドビュッシー:歌曲集「抒情的散文」より
1. 夢 2. 砂浜 3. 花 4. 夕暮れ
3.即興曲、プーランク「エディット・ピアフを讃えて」
4.マスネ「マノン」より
(1)「私が女王のように街を歩くと」(2)ガヴォット
5.グノー「ファウスト」より「宝石の歌」
アンコール
1.マスネ「タイス」より「美しいと言って」
2.サティ「ジュ・トゥ・ヴ」
https://marimoriya.com/event/20201007/

2020年10月 6日 (火)

前橋汀子さんライブコンサート~文京シビック夜クラシック

10月6日夜、文京シビックホール主催の毎回19時30分開始のコンサート、「夜クラシック」そのVol.25を聴いた。出演者はヴァイオリンの前橋汀子さんとピアノの情熱的な名手である松本和将さん。大ホールでの左右1席空け限定席数でのコンサート。
女性の年齢に触れるのはどうかと思うが、公表されているので言及すると、今年の12月で77歳になられる前橋汀子さんは、ソロ、主宰する弦楽四重奏団での活動等々、益々ご活躍されているのが素晴らしい。
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録音は別として、ライブでは何十年ぶりかに拝聴したその腕前は、20代~40代などとの比較することは難しいかもしれないが、彼女をよく知るファンは、正確無比な音程や美的感覚を求めて来場はしていないだろう。それに、元々、彼女は、年齢とかに関わらず、若いころから、1音の美感以上に、アグレッシブなフレージングによる音楽創りを優先してきたと認識しているし、この日もそういう音楽創りは健在であることを見事に示したコンサートだった。
大ホールでのピアノとのデュオ、というハンディは音量的には当然あったものの、音楽的な表現や、それを聴いて楽しむ聴衆にとっては、それほどハンディとは思わない楽しいコンサートだった。
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演奏曲は以下のとおりだが、後半2曲目のサン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」で、「前橋汀子、健在なり」を示した。完璧にして素晴らしいパッションある演奏だった。
面白かったのは、独特のボーイングで、例えば、「タイスの瞑想曲」や「ツィゴイネルワイゼン」の第2楽章の中で、1つのフレーズをまずダウンボーで降りてから、次のフレーズをアップで返して(弓先から)弾くのが普通のボーイングである場会において、前橋さんは、次のフレーズに移る前(最初のフレースの終わり際)にアップを一瞬早く先んじ、アップし始めたところから次のフレーズを奏する、ということを何度もされていた。弓先からの弱い音を避けることが主な目的かと想像するし、それで、特に不要なアクセントが付いてマイナスになる、というほどの支障は生じてはいなかった。
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1曲目が終わった後に、松本さんが挨拶された以外、最後までトークコーナーは無かったが、正規プログラムが終了し、カーテンコールの中、前橋さんが初めてマイクを手にされた。
「何か話すように言われているのですが、せっかく聴きに来ていただいていますので、おしゃべりよりも、アンコールとして、もう少し弾かせていただきます」、として、下記の3曲を演奏された。いずれも情感豊かなアンコール演奏だった。
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演奏曲
1.ドビュッシー「月の光」
~ピアノソロではなく、ヴァイオリンといっしょに編曲して演奏
2.エルガー「愛の挨拶」
3.ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」
(休憩)
4.マスネ「タイスの瞑想曲」
5.サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」
6.サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」
アンコール
1.ドヴォルザーク「我が母が教え給いし歌」
2.ブラームス ハンガリー舞曲第1番
3.ブラームス ハンガリー舞曲第5番
https://www.b-academy.jp/hall/play_list/059801.html

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