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2020年4月 5日 (日)

テノール 高田正人さんのFB投稿を紹介します

高田さんが音楽家がおかれている窮状についてフェイスブックに書かれていますので、高田さんの了解を得て、以下、全文を転用紹介いたします。4月4日の投稿です。

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〈長文です〉

一日一日、コロナウイルスの状況は深刻なものになっています。

コンサートが自粛を求められ始めた1か月前とは、また比べ物にならない状況です。

こうなって来ると、自分の権利が云々とかいうのは非常に無粋なのですが、でも改めて今日改めて書きたいのは、補償(お金)の話と、文化の在り方についてです。食傷気味な方はスルー推奨。

昨日1世帯に30万円給付という情報が出て、気持ちが少し救われた同業者の方も多いかと思います。政府グッジョブ。(ちゃんと機能すればですが)

 

今ではもうほとんど全ての職種が打撃を受けていますが、とはいえ、コロナ騒動の当初からキャンセルが始まった文化芸術業界はやはり最も傷が深い分野だと思います。

3.11の時も思いましたが、有事の時に日本で最初に切られるのはやはり娯楽と芸術だなという思いは大きいです。オペラなどはもう真っ先に切られるわけです。

もちろん、今回のこの状況下で『舞台』が無くなっていくのは、致し方ないことだと思います。

しかしながら舞台は我々の職場であり、それが無くなれば一銭も入ってこないというのもまた現実です。

この状況をどうにかせねばと思い、3月には日本伝統文化交流協会さんからの状況調査のアンケートにご協力いただけるよう皆様にお願い致しました。

若い後輩の声楽家たちも署名活動を始めました。

演劇界からは野田秀樹さんや西田敏行さんが声をあげました。

文化芸術を殺してはいけない、そこで生活している人になんらかの補償を、と。

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これは反発を招きました。

「好きなことを仕事にしたのだからリスクを負うのは当然だ」「乞食行為」「パトロンを見つけろ」

という街の声も聞こえてきました。

同業者でも「舞台が無くなったらバイトをすればいい、フリーランスとは自由を選んだのだからその見返りに国の恩恵は受けられなくて上等!」という意見も目にしました。

 

でも、僕はそうは思いません。

例えば、実力が無くて舞台の機会がない、またはある程度力はあっても自己プロデュースの力が弱くて仕事の場が上手く得られない、と言うのであれば、これは自己責任で、それこそバイトなり副業なりをすればいいと思うんですよ。

お国の力も頼れないと思います。でも今回は違います。

世界がこれまで遭遇した中でも体験したことの無いような非常事態で、最初は国からの要請によりなるべく人が集まることはやめてくれと、イベント・舞台・コンサートがどんどん無くなっていったのです。(それが間違っていたわけではありませんが)

その結果、沢山の人の生活が逼迫しているわけです。

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日本音楽家ユニオンの発表では、2~3月でキャンセルになったコンサートは6,694件、演劇やスポーツなどエンタメ全体ではなんと8万1000件で損失額は1750億円とのこと。これはそのままギャランティにはね返ってきます。

 

コンサートなどのキャンセル料が全額支払われた人は全体の3.1%、一部支払われた人は27.8%、全く支払われなかった人が55.5%だったそうです。

自分の力がとても及ばぬところで仕事が消え、多くの人が収入が0になったのです。

ちなみに僕個人は2月~5月までで11本の本番がキャンセルになり、全額払われたコンサートが1本、一部が払われたものが3本、残りは全く払われない(辞退したものもありますが)という感じです。(これからさらに増える可能性も高い)

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キャンセル料が捻出できないというのは、主催者側も我々以上に大変なわけですから、仕方がないことだと思います。それに準備にかかる費用や労力はありますが、本番にのってないのにお金をいただくというのも心苦しい。

ですので、そこを云々するつもりはありませんが、だからこそ、主催者団体への援助も含めて、国の力を、せめてほかの業種と分け隔てなくお願いしたいと思うわけです。

音楽家は職業なのですから。どなたかも仰っていましたが、自粛要請と補償はセットであるべきでしょう。

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学校が休みになる事で会社を休まなくてはいけないサラリーマンにはいち早く補償案が提示されました。1日8200円です。

芸術家には貸付案と、小学校以上の子供がいて学校休校による被害のある世帯には4100円の補償が行われることになりました。

しかしそれでは子供のいない芸術家には何の助けもありません。

特に切実なのは若い世代の音楽家だと思いますが、そこには何の補償もないわけです。

ここで海外の芸術家・フリーランスに対する補償を見て見ましょう。

アメリカ

フリーランスにも週600ドル(約6万5000円)支給。

米国芸術基金が7500万ドル(81億円)支援

 

イギリス(アーツカウンシルイングランド)

個人に2500ポンド(約33万円)までの助成金

総額1億6000万ポンド(214億円)の支援策

 

ドイツ

文化芸術関係者に総額500億ユーロ(6兆円)支援

家を失った芸術家に100億ユーロ(1兆2000億円)の住宅費支援。

(ドイツの補償はとても大きい。)

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これに対して日本は

無利子無担保で20万円までの緊急融資(ようは借金)

小学生以上の子供を持ち、学校が休みになる事で職に影響が出たフリーランスに1日4100円。

です。

もちろん何も無いよりはいいですが、海外に比べると些少な融資です。(税制なども異なるので単純に比較はできないものの)

この融資なども僕がアンケートのご協力をお願いした時には始まっていないものでした。

あのアンケートはすぐにニュースゼロや日経新聞などにも取り上げられ、政治家のもとへも提出され同時多発的な舞台関係者(演劇や伝統芸能も含めて)の運動を助ける資料ともなりました。

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日本人は「自分は世界を変えられない」と思っている人が多いような気がします。

でもそんなことないと思うんです。不満があっても何もしなければ現状は変わりません。

何か行動を起こさなければ世界は1ミリも変わらない。

行動が世界を変えるし、小さな一歩でも、それは誰かに届き何かを動かします。

一人の力は小さいですが、少しずつ集まればいつしかそれは大きな声になります。

世界は勝手に変わるのではなく、誰かがどこかで血を流しながら変えているだと思うのです。

ここまで行われてきた一連の行動も、フリーランスも4100円払われるとか、サラリーマンだけでなくて全ての国民に給付とか、それまでに無かった救済事項にちゃんと繋がっているのだと僕は思っています。そして昨日、所得が著しく損なわれた世帯への30万円の保証が発表されました。これがちゃんと実現されると大きい。

 

文化庁長官の声明も遅かったとは思うけど心強かったし、この前たまたまお会いした知り合いの文化庁の人も、なんとかいい方向に行くように頑張ってます、と言ってくれていました。

自分の為もありますが、今走り出したばかりの若者たちや、これから音楽を仕事にしようとする学生のためにも、しっかりとした道づくりをするのが僕らの年代の使命だとも思っています。

音楽は趣味ではなく仕事であり生活であるということを政治家の皆さんや国民の皆さんに認識、実感していただくこと。そうでなければ災害のたびに音楽家の命は削られていってしまう。

そしてそれはお金だけの話でなく。

例えばドイツ国務相の出した「文化は生活とかけ離れた贅沢品ではありません。私たちはあなた方を見捨てません。アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在なのです」という言葉は感動的でしたし、

大変な状況のイタリアも、人々がバルコニーに出て歌を歌い、大きな合唱となって人々の心を鼓舞しあう風景は嬉しかったし羨ましかった。

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音楽がいつも人の近くにあるということ。

歴史の違いも大きいけれど、その豊かさを日本という国がもう少し大切にしてくれたらいいなと思います。

この文章を書き始めたのが5日前くらいだったので、その時より補償の話は(和牛券の時とかより)かなり好転していると思います。しかしながらコロナ自体はまだ出口が見えません。

いつぞやご協力いただいた皆様に感謝を申し上げつつ、ともかく今は、皆で力を合わせてこの危機を乗り越えることを第一に。そしてあげるべき声は、しっかりと届くように上げていけるよう、腐心していきたいと思います。

(写真資料は主にNHKの持論公論と、お願いしたアンケートが使われたニュースゼロ・日経新聞などです)

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