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2020年2月 8日 (土)

清水 梢さん&小倉貴久子さん~シューベルティアーデ

清水 梢さん&小倉貴久子さん~シューベルティアーデ in 横浜

~バロック的な声の響による瑞々しいシューベルト&温かなでアットホームなひととき~

バッハ・コレギウム・ジャパンの声楽メンバーで、ソリストとしても活躍中のソプラノ 清水 梢さんと、フォルテピアノの奏者として有名な小倉貴久子さんによる「SCHUBERTIADE in YOKOHAMA」と題したリサイタルを8日夜、横浜みなとみらい小ホールで聴いた。主催はシューベルティアーデ企画委員会。

演目は以下のとおりだが、全シューベルトといっても歌曲だけではなく、間に、小倉さんのソロのよる「即興曲」の4曲を織り交ぜ、また、朝岡聡さんのMC解説を交えてのものなので、休憩を含めて2時間30分近くに及ぶ充実した内容だった。

プログラムによると、きっかけは、小倉さんが2018年に銀座で、今回も使用するヨハン・ゲオルグ・グレーバーによる1820年製作のフォルテピアノを演奏するのを清水さんが聴いて感動し、温めていた企画だったとのこと。

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「シューベルティアーデ」とは言うまでもなく、シューベルトが友人たちを自宅に招いて開催していたサロン・コンサートのこと。最近は知らないが、以前は中学校の音楽の教科書などにも、シュヴァントという人が描いたシューベルティアーデの様子を伝える絵が掲載されていたから、「ああ、ああいう感じをコンセプトとして企画したコンサートなのだな」と想像していただけるかもしれない。

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まず、小倉さんの見事な演奏から書くと、即興曲第2番の流麗で瑞々しく弱音主体で流れる技術、第3番の「ああ、なんて良い曲だろう」と思わせてくれる端正にして入念な演奏、第4番の集中力等、ソロはもちろん、歌曲でも、歌手を引き立てながらの、丁寧で控え目ながらも淀みの無いアプローチによるサポートだったし、「さすらい人の夜の歌」での最後のフォルテピアノによる短い後奏は、弱音極まりない静謐さで見事だった。

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清水さんのバッハを含めたバロック曲、特に高音域での透明感ある伸びやかに広がる格調高いピュアな歌声は比類ないほど美しいが、彼女自身がプログラムの寄稿しているように、ドイツ歌曲自体、これまでほとんど歌ったことがなく、自身「不器用」として、バロック以外の曲に対応して発声を変えることに一定の期間を要するとされているし、歌曲という「詩」の内容を考え、フォルテピアノの響やニュアンスに対応するなど、今回の課題は多かったようだ。

なるほど、いわゆるオペラ歌手によるリートでの感情移入とはまた違った内容ではあったが、彼女のボーイソプラノにも似た清らかなトーンゆえ、大人のシューベルトというより、少年シューベルトが抱いたであろう恋心や信仰心を聴衆に想起させるようでユニークだったし、十分素敵な歌唱だった。

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仮に音程が完璧ではなく、ややハマり損ねた部分があるとして、オペラ歌手なら、ヴィブラートで(誤魔化すというのは不適切な表現にせよ)「調整」できることも多いと想像するが、彼女のトーンは元来ヴィブラートが皆無に近いほど少ないので、その「調整」が難しい。言い換えれば、温かさと清楚な歌声の裏側には、「逃げ」の効かない「一発勝負的なスリリングさ」も常に内在している、と言えるかもしれない。

聴く側のそうした想像力も、彼女を応援する気持ちに変換される、そういう要素と魅力を持つ歌手だと思う。

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清水さんのバロック的色彩のトーンは、ホールにいながら教会の空間を想像させもし、また同時に、彼女や小倉さんを応援する聴衆を交えた客席とステージが、さながら「シューベルティアーデ」のような温かでアットホームな雰囲気を終始保っていたことも、とても印象的だった。

厳寒の中の、とても心温まる素敵なコンサートだった。

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演奏曲

1.「秘めごと」 D.719

2.4つの即興曲より第1番 ハ短調 D.899

3.「月に寄せて」D.193

4.「野ばら」  D.257

5.「漁師の歌」 D.881

6.「臨終を告げる鐘」D.871

7.4つの即興曲より第2番 変ホ長調 D.899

8.「初めての喪失」 D.226

9.「糸を紡ぐグレートヒェン」 D.118

 (休憩)

  1. 4つの即興曲より第3番 変ト長調 D.899

11.「春に」 D.882

12.「あなたは憩い」 D.776

13.「ガニュメート」 D.544

  1. 4つの即興曲より第4番 変イ長調 D.899

15.「春の信仰」 D.686

16.「さすらい人の夜の歌」D.768

17.「音楽に寄せて」 D.547

アンコール「アヴェ・マリア」

https://www.mdf-ks.com/concerts/2020-2-8/

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