« 逃げる国会議員たち~真に問われているのは有権者 | トップページ | ウイルスは国境を越えて »

2020年2月 2日 (日)

NHK「SONGS」~鬼束ちひろさん~気取りを排した全身全霊という魅力

2月1日放送のNHK「SONGS」は鬼束ちひろさん。
2000年8月にリリースされた鬼束ちひろさんの「月光」は衝撃的な歌だった。
歌詞に「腐敗した世界」という言葉があること自体、前代未聞だったと思う。
かろうじてこれに近いインパクトの歌詞を幾つか挙げるなら、1968年にザ・タイガースが歌った「廃墟の鳩」にある「人はだれも悪いことを覚えすぎたこの世界」とか、中島みゆきさんによる1994年の「空と君のあいだに」にある「君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる」とかだが、それでも「腐敗」という単語のインパクトには及ばない。
クラシックだと、不協和音を連続させることで「音楽は美しい」に挑戦した「春の祭典」の登場を連想する。
あるいは、戦後間もない1946年、東京音楽学校(現・東京芸大)に赴任した伊福部昭さんが、学生だった黛敏郎や芥川也寸志らを前にして、「定評のある美しか認めない人を私は軽蔑する」というアンドレ・ジイドの言葉引用して、独自の美学、音楽論を展開されたという逸話を連想させる。「既存概念の否定」という挑発、挑戦。

「月光」は単語だけでなく、歌全体としてもとても難しい。私はとても歌えない。
カラオケが好きな女優の吉田羊さんは「月光」を歌うとき「全身全霊で歌う」という。吉田さんの「月光」も一度ぜひ聴いてみたい。
そして、いみじくも吉田羊さんが言うこの「全身全霊」こそ、鬼束ちひろさんにおける重要なキーワードだろう。実際、今回の番組のインタビューの中でも「全開全力」という言葉とともに「全身全霊」という言葉も出てきた。
鬼束さんの歌は小手先、口先では歌えない歌だ。小賢しい表面的な繕いや、皮相な技巧では表現できない歌。魂から歌いあげることでしか表現できない歌。気取りを排し、飾らずに全てを晒(さら)すことでしか表現できない歌。そういう「全身全霊」が求められる歌。
それが鬼束ちひろさんの歌であり、それが彼女の魅力なのだと思う。

https://www.youtube.com/watch?v=iyw6-KVmgow

参考~「廃墟の鳩」
https://www.youtube.com/watch?v=XAurvAW_zHs

« 逃げる国会議員たち~真に問われているのは有権者 | トップページ | ウイルスは国境を越えて »

ブログ HomePage

Amazon DVD

Amazon 本

最近のコメント

最近のトラックバック