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2020年1月10日 (金)

佐藤優子さんリサイタルだけどオペラ~圧巻の「ルチア」

先月5日、紀尾井ホールでの砂川涼子さんのリサイタルにおける「アンコール」は、バリトンの上江隼人さんとのデュオにより、ヴェルディの「椿姫」第二幕第一場のヴィオレッタとジェルモンの二重唱が歌われ、およそ「アンコール」と言うより、ステージ第三部と言える様な、まるで本当のオペラの一場面を見るかのような充実した内容と企画で、大いに驚き、感動したのだった。

1月10日夜、同じく紀尾井ホールで開催されたソプラノ歌手 佐藤優子さんのリサイタルでは、前半は歌曲をソロで歌う、普通のスタイルだったが、休憩後の後半第2部では、テノールの古橋郷平さんと、バリトンの上江隼人さんをゲストに招き、ドニゼッティのオペラ「ランメルモールのルチア」が抜粋のかたちで上演された。

そう、これはもう「リサイタル」というより、「ミニオペラ公演」と言ってよい内容で、素敵な企画だったし、極めて充実した圧巻と言える内容だった。

偶然であるにしても、先月の砂川涼子さんといい、今回の佐藤優子さんといい、もしかしたら今後も、こうした、単独ソロだけではない、ミニオペラ公演的な要素も加え持ったリサイタルが増えていくかもしれない、そう感じさせる連続したリサイタルだった。

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佐藤優子さんは2016年1月からイタリア・ヴェローナに留学中で、この日は、その留学のきっかけである「五島記念文化賞オペラ新人賞研修成果発表」としてのリサイタル。たぶん彼女自身、初のソロリサイタルだと思う。

ピアノは服部容子さんで、終始素晴らしい流麗な技術と、エレガントで温かなトーンで本公演を支えた。

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演奏曲は以下のとおりだが、度胸の良さはいつもながらで、とても初リサイタルとは思えない感じで、少なくとも見た目では、まったく緊張もしていない(アガってなどいない)ような 堂々たるステージだった。

佐藤さんの強みは、声のコントロールの見事さにあると思う。曖昧さの皆無な巧みなコロラトゥーラ技巧。前半の8つの歌曲中、6つはそうした要素の歌だったが、もっとも私は、そうした彼女の「強み」は承知しているし、昨年8月の「二期会サマーコンサート」で聴いたときに、留学前にも一段とパワーアップした力量を確認できていたので、今回はむしろ、前半では2つの抒情的な歌、ドニゼッティの「一滴の涙」と、ヴェルディの「私は安らぎを失い」での感情移入、しっとり感にこそ感じ入ったのだった。佐藤さんの新しい面を発見した気分になった。

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後半は冒頭に記載したとおり、佐藤さんのほか、賛助出演として2人の歌手が加わっての「ルチア」の抜粋公演。ルチアが佐藤さん、エドガルドが古橋郷平さん、エンリーコが上江隼人さん。

演出・構成は十川 稔さんで、紀尾井ホールのステージ正面奥を、主に照明による色彩や抽象的な絵柄、あるいは月の画像~偶然、ホールに向かうこの夜は完全なまでの満月だった!~といった、シンプルにして印象的な、好感の持てる演出がなされた。

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テノールの古橋郷平さんは、先月の合唱団 鯨の定演で、ベートーヴェンのハ長調ミサのソロを歌っていただいたばかり。バリトンの上江隼人さんは、先述のとおり、先月の砂川涼子さんとのデュオや、今月3日のNHKニューイヤーオペラコンサートでも、テレビでだが、充実の歌声を拝聴したばかり。

古橋さんの声は、エドガルドという役柄にとても似合うと思った。素晴らしかった。上江さんの充実感も見事。

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そして何と言っても佐藤さんのルチアは実に見事で、特に最後の有名な、長大な難曲の「狂乱のアリア」が圧巻の充実した名唱で、盛大な拍手と歓声を受けた。

全員でのカーテンコール後に、初めてマイクを握り、挨拶したが、それも落ち着いて、とても立派だった。素晴らしい初リサイタルを心から祝いたい。

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終演後のロビーには佐藤さんだけでなく、上江さんも出て来られたので。私は「先日の砂川さんとのアンコールのデュオも感動しました」と伝えて、挨拶した。

古橋さんは楽屋にいらっしゃるようだったので、「Staff Only」というドアにかかる掲示を軽く無視して入り、「先日、合唱団 鯨でお世話になった伊藤です。エドガルドのイメージと古橋さんの声がピタリと合う感じで素晴らしかったです」と伝え、挨拶してから帰途に着いた。

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演奏曲

第1部

1.ロッシーニ「約束」

2.ロッシーニ「フィレンツェの花売り娘」

3.ベッリーニ「マリコーニア、優しい妖精よ」

4.ベッリーニ「私の偶像よ」

5.ドニゼッティ「ジプシーの女」

6.ドニゼッティ「一滴の涙」

7.ヴェルディ「私は安らぎを失い」

8.ヴェルディ「ストルネッロ」

 (休憩)

第2部

ドニゼッティ オペラ『ランメルモールのルチア』抜粋~演出・構成=十川 稔

~ルチア=佐藤優子、エドガルド=古橋郷平、エンリーコ=上江隼人~

1.「静かなる夜…昔この泉で」 by 佐藤さん

2.「ルチア、すまない このような時間に」 by 佐藤さん&古橋さん

3.ピアノソロで、リスト作曲「ルチアの主題によるワルツ」

4.「こちらへ来なさい、ルチア」 by 佐藤さん&上江さん

5.「恐ろしい夜だ、私の運命のように!」 by 古橋さん&上江さん

6.「あの方の優しい声がこの胸に響き」(狂乱のアリア) by 佐藤さ

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