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2019年11月22日 (金)

小林沙羅さんソプラノリサイタル~ピアノ、箏、尺八と紡ぐ歌の調べ~

~中村裕美作曲「智恵子抄」と澤村祐司作曲「たれかおもはむ」に感銘~

11月22日、冷たい雨が降りしきる夜、東京文化会館小ホールでは、ユニークな楽器構成により、小林沙羅さんのリサイタルが開催された。悪天候にもかかわらず、客入りはなかなか良かった。

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このコンサートは第17回本間一夫記念 日本点字図書館チャリティコンサートというもので、よって来場者の中には、目のご不自由なかたも少なからずいらっしゃったし、出演者の一人が、沙羅さんと同じく~私が9月にも伝えた~「VOICE SPACE」のメンバーの一人で、全盲の箏奏者 澤村祐司さんということでも、今回のコンサートの特色が表れていた。

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プログラムは以下のとおりで、前半が沙羅さんと東京芸大同期の作曲家で「VOICE SPACE」のメンバーの一人でもある中村裕美さんのピアノにより、歌曲とオペラアリアという、いわばオーソドックスな選曲とスタイルによる演奏だったが、後半は、副題のとおり、澤村祐司さんの箏、見澤太基さんの尺八を加えて、曲により奏者の構成を変えての演奏、それも、中村裕美作曲作品と、澤村祐司さん作曲作品を含めての演奏、というユニークで素晴らしい企画の内容だった。

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今回も小林沙羅さんの歌唱を強く印象付けるエスプレッシーヴォという特色が全編に表れたコンサートだったが、4つのオペラアリアは、その内容が異なっても、ほとんどフレーズごとに感じると言ってもよいような感情移入の濃さ、という基本的なアプローチは同じで、どれも良かった。

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歌曲でも、「初恋」に聴く「艶っぽさ」は、彼女が20代のころにはあまり感じなかった点で、そこに感じとれるある種、母性を感じさせる情感は、実際に今、彼女が母親となったことによる変化なのかどうかは私には解らないが、「母性を感じさせる色気」という事を強く感じた。

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後半は、澤村さんの箏と沙羅さんによる「荒城の月」から開始。箏の静謐さにより、ア・カペラ的にも聞こえた音空間は素敵だった。

見澤さんの尺八を加えての3人による「せきれい」も良かったが、とりわけ長大な「秋の調」が素晴らしく、全体を箏がリードしつつ、尺八と歌が、オブリガート的というよりは、散文的に彩る構成がユニークだった。

そして、島崎藤村の詩に澤村さんが作曲した「たれかおもはむ」が、澤村さんの箏を弾きながらの歌が素晴らしく、終演後のサイン会で「澤村さん、歌、上手いですね」と思わず伝えたほどだったし、演奏直後も、もしかしたら、この日一番の大きな拍手かもしれない、と思うほど、長く大きな拍手が続いた。

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続く、中村裕美さん作曲の2作品がこれまた素晴らしかった。

まず、中村さんのピアノと澤村さんの箏を伴奏として歌われた「子守唄よ」が終盤のロングトーンを含めて情緒的で素晴らしかったし、続く、中村さんと沙羅さん2人により「智恵子抄」からの3曲が見事だった。とりわけ最初の「或る夜のこころ」は、ソプラノ一人による音楽劇のそれで、激情とも言うべき劇的な歌唱による内容が沙羅さんによく合っている曲想で圧巻だった。沙羅さん自身が裕美さんに委嘱した作品で、沙羅さんも「とても好きな作品」と述べていたし、その感情移入がストレートに伝わってくる歌唱だった。

この展開をもし、中村裕美さんが続けるなら、優れた創作オペラも完成できるのではないか、そう予感させるもので、「智恵子抄」は裕美さんの傑作の一つと言えると思う。

アンコールは沙羅さん作曲の「えがおの花」を出演者4人全員で演奏され、「故郷」で締めくくられた。

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前半~ピアノ=中村裕美

1.この道   詩=北原白秋、作曲=山田耕筰

2.赤とんぼ  詩=三木露風、作曲=山田耕筰

3.初恋    詩=石川啄木、作曲=越谷達之助

4.小さな空  作詩と作曲=武満徹

5.アヴェ・マリア  作曲=バッハ、グノー

6.アヴェ・マリア  作曲=カッチーニ

7.モーツァルト歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より「ぶってよマゼット」

8.プッチーニ歌劇「ジャンニ・スキッキ」より「私のお父さん」

9.ドヴォルザーク歌劇「ルサルカ」より「月に寄せる歌」

  1. カールマン歌劇「チャールダーシュの女」より

「ハイヤ!山こそ我が故郷」

 (休憩)

ピアノ=中村裕美、箏=澤村祐司、尺八=見澤太基

  1. 荒城の月 詩=土井晩翠、作曲=瀧廉太郎 by 小林、澤村
  2. せきれい 詩=北原白秋、作曲=宮城道雄 by 小林、澤村、見澤
  3. 秋の調  詩=小林愛雄、作曲=宮城道雄 by 小林、澤村、見澤
  4. たれかおもはむ 詩=島崎藤村、作曲=澤村祐司 by 澤村。中村、見澤
  5. 子守唄よ  詩=中原中也、作曲=中村裕美 by 小林、中村、澤村
  6. 「智恵子抄」より「或る夜のこころ」

「あなたはだんだんきれいになる」

「亡き人に」

    詩=高村光太郎、作曲=中村裕美

アンコール

1.えがおの花 作詩作曲=小林沙羅 by 小林、中村、澤村、見澤

2.故郷  詩=高野辰之、作曲=岡野貞一 by 4人

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