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2019年9月21日 (土)

荒谷俊治さん89歳でヴェルディの「レクイエム」を指揮~東京コールフェライン第34回定期演奏会

9月21日午後、東京コールフェラインの第34回定期演奏会を紀尾井ホールで聴いた。音楽監督兼常任指揮者の荒谷俊治さんは1930年4月生まれの89歳。

この演奏会は「卒寿記念・指揮者生活60周年記念演奏会」と銘打たれた演奏会でもあった。

演奏曲はヴェルディの「レクイエム」1曲で、オケ演奏ではなく、後記の演奏者によるエレクトーンとピアノによる演奏。

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入退場こそ杖をつき、念のための介添え者を伴うものだったが、いったん指揮台上のイスに座って指揮棒を振りだすや、明確にして矍鑠(かくしゃく)たるバトンは健在。

90分を要する偉大な大曲ヴェルディの「レクイエム」を、堂々たる指揮で終えたこと自体、尊敬と羨望に値する素晴らしい姿だった。

私は中学時代に、主にラジオで荒谷さんの名前と演奏を聴いたことがあったので、それを思い返しても、実感として長く指揮活動をされてきたことに強く敬意の念を覚える。

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1981年に結成されたこの合唱団を私が聴くのは3年前の第31回定演以来で2回目。きっかけは親しくさせていただいているメゾの長谷川忍さんがソリストの一人だったこと。

今回もこのところ常連になっている彼女を含めて、出演者は以下のとおり。

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指揮=荒谷俊治

ソプラノ=高橋 維、メゾソプラノ=長谷川 忍

テノール=中嶋克彦、バリトン=加耒 徹

エレクトーン=小倉里恵、ピアノ=佐藤規子

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合唱について

3年前に拝聴したときは、アンサンブルの点で今一つの感があったが、この日のソプラノ24名、アルト=20名、テノール=10名、バス=20名による演奏は実に素晴らしいデキで、正直期待以上の演奏で驚いたくらいだった。なお、各パートの人数には、福岡コールフェラインを含むそれぞれ数名の賛助出演者を含む。

声の出具合、バランス等、この少人数とはとても思えないほど、よく歌っていて素晴らしかった。荒谷先生のお祝い記念ということで、気合の入れ具合がいつも以上だっただろうけれど、かといって変なリキミなど無く、安定感ある中での伸びやかな合唱だった。

惜しむなら、「Sanctus」で「縦の線」が乱れがち、あるいはボヤケ勝ちだったこと。ここはこの曲の合唱部分の中で、一見一番易しそうでいて、実は一番難しい曲なのだが、その難しさがやや露呈した感はあった。もう1点は、それまで全体的に速めのテンポで進めてきた荒谷さんだったが、終曲「Libera me」で合唱のフーガが開始されるAllegro risoluto(179小節~)からは、ゆったりドッシリとしたテンポで終わりまで進めた荒谷先生のとったテンポ感を、合唱の各パートとも掌握できてなく、歌い急いていた感があったこと。この2点を除けば、とても立派な演奏だった。

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4人の歌手について

ソプラノ=高橋 維さん

細い均一感と透明感のある声。長谷川さんとのデュオも含めて美しい声だったが、とても残念だったのは、終曲「Libera me」での132節からの、B-moll(変ロ短調)で合唱団といっしょに「Requiem」と歌いだすア・カペラの部分。この曲の中で最も美しく感動的な部分なのだが、Fの音がFisに近いなど、音程的に不安定だったし、表現としても弱かった。繊細に歌おうとしたのか、あるいはそれを求められたのかもしれないが、結果的には良くなかった。ここは確かに祈りの場面ではあるが、もっと決然として歌うほうが好ましいと思う。

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メゾソプラノ=長谷川 忍さん

この曲ほどメゾの存在感、重要度をアピールし、感じさせる声楽曲は他に無いとさえ言えるほど、4人のソリストの中で、例外的と言ってよいほど中心的に設定され、多くの場面で歌うのがこの曲。否が応でもメゾの力量と魅力が示され試される、凄い曲だ。

長谷川さんは贔屓目抜きに立派で魅力的な歌唱だった。クレッシェンドとディミヌエンドなども積極的に工夫され、場面によっては、やや、やり過ぎかもしれないと思うほどの色付けをされていた。決して声量の多いメゾではないが、トーンと歌いまわしという表現において、この曲を歌うメゾのソリストとして十分に魅力を発揮されたと思う。素晴らしかった。

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テノール=中嶋克彦さん

終始いつもながらの明るくピュアなトーンでとても良かった。派手さは無いが、丁寧で誠実なアプローチは、特に係る宗教曲で魅力が伝わる。

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バリトン=加耒 徹さん

今や大活躍の加耒さんは、この日も格調ある声と入念なフレージングを聴かせてくれた。全体的にとても良かった。

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エレクトーン演奏

現在エレクトーンが、オケの様々な楽器の音色を出して演奏できる凄い楽器であることは、清水のりこさんの演奏でよく知っているが、この日の小倉里恵さんも、トランペットの音色を含めて、ときに壮大に、ときに繊細に、見事な演奏により合唱とソリストをサポートし、牽引し、今回の選曲と演奏会全体の成功を根底で支えて見事だった。素晴らしかった。

なお、ピアノの佐藤規子さんは、出番は意外と少ないながら、安定的にエレクトーンを支える役割に徹していた。

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プログラムの解説文について

なお、プログラムで曲解説を書いているのはバスの団員で、副指揮者兼コールマイスターの宮崎誠二さんという人だが、各ナンバーを、抽象的でなく、主な典礼歌詞紹介に加え、どのパートのソリストがどういう曲想を歌うか、それに合唱が彩るか等を各曲の展開に沿って詳細に書いていて、とても解り易く、とても読み易く、なかなか無いくらいのレベルの素晴らしい解説文であったことを付記しておきたい。

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