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2019年9月22日 (日)

VOICE SPACE ~アラベスクの飾り文字~豊洲

「VOICE SPACE」~詩と音楽のコラボレーション集団

例えばポップス調の曲の中で、福原千鶴さんが「ポン」と鼓(つづみ)を叩くと、クスッとするのだが、その笑いは日常にある、さりげない笑いと直結している。それはちょうど、どんなに難解な単語を用いた現代詩であっても、現代に生きる人間が、現状の中にあって想像をめぐらせて創作するがゆえに、現代の一面に必然的に直結していることに似ている。

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新CDのタイトルでもある「アラベスクの飾り文字」と題した「VOICE SPACE」~以下、便宜的に谷川俊太郎さんが「ヴォイスペ」と呼ぶので、私もそう呼ばせていただく~の東京公演2日目=2019年最終公演を9月22日午後、豊洲シビックセンターホールで聴いた。

ユニークな集団ヴォイスペを聴くのは5年ぶりくらい。メンバーと演奏曲は最後に置き、ヴォイスペを聴いて感じる、全体的イメージのようなことを書いてみよう。

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2004年に東京藝術大学現代詩研究会として(前身が)発足し、学生だった彼ら彼女らが卒業後、それぞれのジャンルで活動しながら、2008年からは、詩と音楽のコラボレーション集団「VOICE SPACE」として活動を新たに展開し始めた。

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小林沙羅さんとのご縁で知ったこの集団を最初に見、聴いたときは、確かに岡本太郎さんよろしく「な、なんだこれは?!」「芸術は爆発だ」的に驚いたのだが、今ではとっくに私の中でヴォイスペは前衛的ではあるが古典でもある、そういう普通に受け入れながら、その刺激的内容を毎回楽しませていただいている、そういう集団になっている。

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22日のゲストで、フォーク世代の大御所、小室等さんが、冗談交じりに、「こんな音楽的無国籍というか、西洋楽器あり、和楽器あり等で大丈夫なの?(いっしょにやるのは)嫌じゃないの?」とステージ上のメンバーに語りかけ、聴衆の笑いを誘ったように、構成メンバーは、作曲家、オペラ歌手、ギタリスト、チェリスト、琴、つづみ、アイリッシュフルート奏者など様々で、いったいこれで合奏になるのか、という前提自体が既にユニークである。

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しかし、それを言うなら、他ならぬ小室等さんがヴォイスペといっしょに歌うこと自体が「カオス」であり、自由の象徴、ヴォイスペのユニークな存在自体を証明していると言えるのだ。

偉大な詩人、谷川俊太郎さんがヴォイスペの中で詩を朗読し、フォークの神様の一人だった小室等さんが小林沙羅さんらといっしょに歌うこと自体、私にとっては、それ自体が時空を超えた夢空間、夢時間のようなものだ。

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ヴォイスペの音楽世界は、メンバーの一人で作曲家の中村裕美さんの作風、作品に負うところが大きく、「中村裕美ワールド」が限りなくヴォイスペワールドに等しいとも言えるが、むろんそれは、他のそれぞれの第一人者的なまでの名人である各メンバーの個性と音楽的技量あってのことだ。各メンバーがいて、中村裕美が彼ら彼女らを前提に作曲する。

そしてもちろん、根底にあるのは、佐々木幹郎さんだったり谷川俊太郎さんだったり、中原中也、宮沢賢治等々、過去、現在の多くの詩人たちの作品である。

個々の個性はもちろん魅力的だ。

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例えば、以前私は「小林沙羅さんのファンです、という人は多いだろうが、ヴォイスペの中で楽し気に、伸びやかに歌う沙羅さんを聴いたことが無いのなら、小林沙羅の全部を知っているとは言えない」、とまあ、ちょっと生意気に、偉そうに書いたことがあるが、しかしそれは本音でもある。

ヴォイスペの中で歌う小林沙羅さんは、オペラやリサイタルで西洋音楽や日本歌曲を歌う沙羅さんとはまた別の沙羅さんが存在する。ヴォイスペの中での小林沙羅さんは格別な魅力がある。生意気を承知で、「ヴォイスペの中で歌う小林沙羅を知らない人は、小林沙羅のファンとは言えない」とまでに、どうしても言いたくなる、それくらい、別人的な魅力が発揮されるのがヴォイスペのステージなのだ。

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もう一度、楽器や活躍フィールドのバラバラ性に戻って考えるなら、そもそも、少なくとも現代において、西洋楽器と西洋音楽、邦楽器と日本的曲想による音楽、という区別自体、特別なものと意識して分けることに、どれほどの重要性があるのか、と問い直すことはできるだろう。

音楽は本来もっと自由であって良い。本質的に常に現代性を希求するものであり、もっと自由に表現されてよい、とするなら、各人のフィールドや楽器や声質それ自体は重要でありながら、アンサンブルにおいて、それらに拘らない、自由なアンサンブルの発露があっても良い、いや、本質的に、クラシックでさえ、本来は自由で革新的な発露から生じているはずである。

様々な楽器と声の音色が交差し、交じり合い、刺激し合い、真剣勝負する中でハーモニーが生まれているヴォイスペはユニークだ。これからもどんどん挑戦し続けて欲しい集団である。

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VOICE SPACE 今回の公演参加者

中村裕美(vocal、piano、composition)、小林沙羅(soprano)

新海康仁(tenor)、早坂牧子(vocal)、澤村祐司(琴)、福原千鶴(鼓)

豊田耕三(アイリッシュフルート)、関口将史(チェロ)、

田島華乃(Violin)、古川麦(ギター)、上原なな江(パーカッション)

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ゲスト

21日=谷川俊太郎、佐々木幹郎 22日=小室等、こむろゆい、佐々木幹郎

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演奏曲

「急停車するまで」作詩=佐々木幹郎、作曲=中村裕美

「リビング」=作詩=暁方ミセイ、作曲=中村裕美

「組曲 ちきゅう あいさつ」作詩=まど みちお、作曲=中村裕美から

 「さかな」「エノコログサ」「ウジ」「どこのどなた」

中原中也の作品から 作曲=中村裕美

「北の海」「月夜の浜辺」「蝉」「春と赤ン坊」「六月の雨」

(休憩)

22日は小室等、こむろゆい、佐々木幹郎さんを迎えて

「サーカス」   作詩=中原中也、作曲=小室等

「樽をころがせ」 作詩=佐々木幹郎、作曲=小室等

「石と死者」   作詩=佐々木幹郎、作曲=小室等

「恋」      作詩=佐々木幹郎、作曲=澤村祐司

「木を植える」  作詩=谷川俊太郎、作曲=小室等

「てんでばらばら」作詩=佐々木幹郎、作曲=小室等

「蠕虫舞手 アンネリダタンツェーリン」作詩=宮沢賢治、作曲=VOICE SPACE

最後にアンコールとして、小室等さんとこむろゆいさんもいっしょに「急停車するまで」

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なお、21日の後半は、谷川俊太郎さん、佐々木幹郎さんを迎えて

「りんごへの固執」作詩=谷川俊太郎、作曲=中村裕美

谷川俊太郎による詩の朗読、ヴォイスペとのコラボ

「自己紹介」「庭を見つめる」「そのあと」「あたしとあなた」

「鼓によす」作詩=谷川俊太郎、鼓=福原千鶴

「これが私の優しさです」作詩=谷川俊太郎、作曲=小田朋美

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