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2019年7月27日 (土)

コール・ミレニアムによるロ短調ミサ~優秀

混声合唱団コール・ミレニアムの第17回定期演奏会を27日午後、杉並公会堂で聴いた。

曲はバッハの偉大な作品ミサ曲ロ短調(BWV232)。指揮は小泉ひろしさん。管弦楽はミレニアムソロイスツ。

 

ソリストは澤江衣里さん(Sop)、菅又美玲さん(Mezzo)、上杉清仁さん(countertenor)、金山京介さん(Ten)、中村隆太さん(Br)。

 

「マタイ受難曲」とともにバッハの最も重要な曲だが、ミサと言っても、木管のソロや、合唱でも愉悦感に溢れた曲想もあるなど、ある種エンタ性もあると言える実に魅力的で、長大にもかかわらず親しみやすい曲であることをあらためて実感させてくれた素晴らしい演奏だった。

 

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2001年にポーランド国立放送交響楽団とモーツァルトの「レクイエム」で共演したメンバーを中心に2002年に結成されたという、この合唱団は初めて聴いたが、とても優秀なので驚いた。

後述するが、日本のアマチュア合唱団の弱点はテノールパートに原因の多くがあると私は感じているのだが、そのテナーパートが極めて優秀だった。ちょっと他に思い当たらないほど美しいトーンと見事なアンサンブル。

声楽をしっかり学ばれた人が多いのかもしれない。

なお、人数はソプラノが41名、アルトが32名、テノールが14名、バスが21名。

女声陣の後ろに男声陣が横2列というスタイルでの合唱で、こういう形態で歌うと、女性陣に負けてしまい、男声陣の声が前に出て来にくいこと多いのだが、この今回の合唱では、そのようなことはまったく無かった。

 

管弦楽は臨時編成のものだが、東京芸大と桐朋学園大学出身者を中心としたプロによる室内オケなので、とても優秀。

 

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冒頭はとてもゆったりとしたテンポで開始。

合唱の響が美しい。杉並公会堂がまるで教会伽藍の中で演奏しているような響きがした。

テノールパートのトーンとコントロールが素晴らしい。

小泉さんの指揮は、決して鋭角に振らず、終始、両腕で比較的大きな身振りで、体とともに滑らかに揺れ、全体のニュアンスを伝えていく指揮。

真にプロフェッショナルな指揮で素晴らしい。

完全に4つと判るように振ったのは最後の第27曲「Dona nobis pacem」くらいだった。

他の3拍子の曲でも柔らかな円を描くような3拍子。

 

2曲の「Christe eleison」での澤江さんと菅又さんのデュオがステキ。

特に澤江さんの高音域での歌声は、涼しい空調の風にも増して、その空気の中を氷滴のような清涼感をもって真っ直ぐに進み、会場に自然体で広がる声。なんという清らかさだろう。

この曲を既に数回歌っているだけに余裕十分にして初々しさを常に堅持した声。

柔らかく温かいのに、芯のある瑞々しい声が素敵だ。

 

6曲「Laudamus te」でのソロヴァイオンは端正な演奏で立派。

この曲でのソロ歌唱はとても難しいく書かれていると思うが、菅又さんは丁寧に歌い、とても良かった。

 

8曲でのフルートソロが素敵。澤江さんと金山さんによるデュオも終始ピュアなトーンによる掛け合いが続く魅力的なデュオだった。

 

10曲でのオーボエもとても良かった。今回はアルトではなく、カウンターテナーの上杉さんによる歌唱で、第二部の第26曲「Agnus Dei」とともに、とても新鮮で印象的だった。こういう起用、アプローチもとても興味深い。

 

11曲「Quoniam tu solus sanctus」では女性ホルン奏者の演奏が良く、ファゴットの2人も女性であることから、3人の女性による管アンサンブルは聴き物だった。バリトンソロの中村さんの声は、他の曲も含めて、声量において私はやや物足りなく感じた。

 

16曲の「Et incarnatus est」と第26曲の「Agnus Dei」は、ヴァイオリンソロも含めて本当に良い曲だな、と思う。なお、「Agnus Dei」は全27曲中、唯一のフラット記号(ト短調)による曲、歌である点は極めて興味深い。

 

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合唱は前述のとおり、全体としてとても優秀で、素晴らしい合唱を聴かせてくれた。

敢えて残念だった部分を挙げるなら、第18曲「Et resurrexit」の後半74小節目からのバスパートのソロは、リズム的にも音的にも極めて難しい部分なので、さすがに不安定感はあったのと、第22曲「Sanctus」の後半8分の3拍子になってテナーパートが「Plenisunt coeli etterra~」と歌い出す部分では、テナーパートが遅れがちになってはいた。

他は申し分ない出来だった。

 

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前述のとおり、この曲はミサ曲であっても、木管ソロのヴィルトーゾ的な旋律の連続や、合唱においても第二部開始の第13曲「Credo in unum Deum」と第14曲「Patrem omnipotentem」や、第22曲「Sanctus」など、曲想的にエンタ性と言ってよいほどの愉悦性がある点が面白い。

 

その点でも、物語性が重要でシリアスな内容の「マタイ受難曲」とは全く違う魅力に満ち溢れた名曲であることを実感する。

 

「マタイ受難曲」とこのロ短調ミサだけでも音楽史に残る偉大な作品なのに、他にもヴァイオリン曲、チェロの曲、オルガンやチェンバロ(クラヴサン)の曲、多数のカンタータ等々、たくさんの素晴らしい作品を書いたバッハの凄さにあらためて思いを馳せてくれる、素晴らしい演奏会だった。

 

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最後に出演者紹介を中心としたプログラム本体とは別に挟まれた歌詞対訳付きの曲解説が、1曲ごとナンバー全てに記載されていて、とても充実した力作であることを記しておきたい。

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