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2019年6月26日 (水)

嘉目真木子さん独演コンサート~ホリガーも歌われた

NPO法人の日本声楽家協会が毎年毎月1回、歌手の独演コンサートを開催しているが、その第137回である6月は、初登場のソプラノ 嘉目真木子さん。

26日夜、毎回の会場である日暮里サニーホールのコンサートサロンで聴いた。

 

今や大活躍中の嘉目さんだが、これほどメジャーになる前からご縁があったのは嬉しい限り。

11年前の2008年、学習院OB管弦楽団が、今村能氏指揮で、無謀にもプッチーニの「ラ・ボエーム」を演奏会形式で全曲演奏した際、ミミを歌ってくださったのが嘉目さんだった。

以来、彼女の東京二期会オペラデビュー公演の「魔笛」(パミーナ、2010年)、「フィガロの結婚」(スザンナ、2011年)、「ドン・ジョヴァンニ」(ツェルリーナ、2011年)をはじめ、リサイタルを含めて多く聴かせていただいてきた。

201612月のNHKニューイヤーオペラコンサートに出演されたときは、「どうして私が選ばれたのか、よく解らない」と語るような謙虚さ、おおらかさも持つ。

 

なお、この日のピアノは、二期会研修所と日本声楽家協会のピアニストでもある高田恵子さんが務めた。

 

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「歌詞カードを用意していないので。歌う前に、詩を朗読させていただきます」として、1曲ごと、簡単な解説の後、日本語訳の詩を朗読してから歌われた。

 

「独演コンサート」ということから、実際、運営サイドからは事前に「好きに選曲してよい」とのことで、嘉目さんは結果的に、ほとんど全て穏やかな曲想を基調とした曲を選ばれた。

それは、抒情的な歌を得意とされる嘉目さんらしい、というか、必然的な結果だったと思う。

1部後の休憩後、第2部開始冒頭、「前半は穏やかで、知られていない曲が多かったので、休憩時間にお客様がいなかくなったらどうしよう、思いました」と会場を笑わせたり、アンコールの前に、「私の我がままコンサートにお付き合いくださり、ありがとうございます」と語ったが、理知的というよりは抒情的な歌唱、ソプラノでありながら強い声、ドラマティックな抑揚を自然に作る力のある歌手ゆということを思えば、意識せずとも自然とそういう曲想の選曲をされたと言えると思うし、結果、成功し、ヴァラエティに富んでいた点で、「我がままコンサート」は十分、聴衆を楽しませたと言える。

 

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そうした彼女の声質から、前半では、18歳でドビュッシーが創った「星降る夜」も、次の「ロマンス」にも「しっとり感」があったし、「明日」はとても美しい歌唱だったが、とりわけドイツ語で歌った「君を愛す」での、エンディングにもっていく情感豊かな高揚感の表出は素敵だった。

 

アルゼンチンの作曲家というグアスタヴィーノ 「薔薇と柳」は演歌のような感じで面白かった。とても良い曲。なお、「今年になって初めて知り、気に入った曲」というツェムリンスキーの曲は、素朴で良い曲だが、「初披露」ゆえ、慎重さが感じされたので、今後、継続して歌われていくだろう中で、もっと自在さが増すだろうことを予感させる歌唱だった。

 

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そして、この回は、後半がとりわけ聴き物だった。チェコ語で歌われたドヴォルザークも良かったが、私的にはハインツ・ホリガー作曲作品が面白かった。

 

オーボエ奏者として有名になり、その後、指揮や作曲等、マルチな活動で知られるホリガーだが、正直、嘉目さんが現代曲をこの日、歌われるとは夢にも思わなかった。ミレヴァという少女が5歳から10歳にかけて作った5つの詩に、ホリガーが作曲したこの作品は、ピアノ伴奏はいわゆる現代的で断片的な分散音を中心に展開する中、歌はむしろそれと対照的に、なだらかに淡々と進行するのだが、その対比が面白かった。

 

終わって一端、舞台袖(奥)に下がった後、ステージに再登場された際、嘉目さんは「大丈夫でしたか?」と聴衆に語りかけて笑わせたが、私は、この曲の歌唱を聴けただけでも会場に来た甲斐があった、と思ったほどだ。嘉目さんは「現代曲を歌ってみたいと思った時期があった」と語ったが、今後もぜひ現在作品をレパートリーに加えていただきたい。

 

バーバーの、タイトルとは少し違うイメージながら、とても抒情的な曲の後、クィルターのとても美しい曲で正規プログラムを終えた。

 

アンコールとして、高校生時代のピアノ伴奏の逸話に関した曲という有名な「グリーンスリーブス」により、このコンサートを終えたが、この曲でのピアノパートの編曲がとても美しかった。

 

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第1部

 

1.ドビュッシー 「星降る夜」

 

2.ドビュッシー 「ロマンス」

 

3.R・シュトラウス 「明日」

 

4.ツェムリンスキー 「受胎」

 

5.グリーグ 「君を愛す」

 

6.グアスタヴィーノ 「薔薇と柳」

 

第2部

 

7.ドヴォルザーク 「我が母の教え給いし歌」

 

8.ハインツ・ホリガー 「ミレヴァの5つの詩」

 

9.バーバー 「受難」

 

10. クィルター 「音楽、優しい声が死ぬとき」

 

アンコール 「グリーンスリーブス」

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