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2019年6月16日 (日)

東京アカデミッシュカペレ~ツェムリンスキーとマーラー9番

東京にはプロ級のアマオケが複数ある。新交響楽団、都民交響楽団、ザ・シンフォニカ、オーケストラハモン、東京アマデウス管弦楽団等々、他にも多分3つ前後はあるだろう。

今日すみだトリフォニーで聴いた東京アカデミッシュカペレのオーケストラもその一角に入れてよいほどのレベルだ。

しかも、19902月に第1回演奏会を開いたこの組織がユニークなのは、オーケストラと合唱団が共存する団体であり、ゆえに年2回の定期演奏会では、毎回必ず合唱を伴う曲が含まれる。

それも、ラターの「マニフィカト」や三善晃のオペラ「遠い帆」抜粋演奏会形式、ワーグナーの「さまよえるオランダ人」全曲演奏会形式、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」全曲演奏会形式など、意欲的な取り組みにしてレベルも高いという団体だ。

来年の6月はブリテンの「戦争レクイエム」が予定されている。

 

57回演奏会のこの日は、海老原光さんの指揮で、

ツェムリンスキーの「春の埋葬」と、マーラーの交響曲第9番が演奏された。

 

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1. ツェムリンスキー「春の埋葬」

 

2人の独唱(ソプラノとバリトン)と合唱とオーケストラのための25分くらいのこの作品は初めて聴いたが、とても良い曲。もっと演奏されてよい。激しい部分もあるが、大部分は穏やかで温かく明るい曲想。ツェムリンスキーのことは詳しくないが、オーケストレーションは巧みだと思う。声部に関してもソロも合宿もオペラのように処理が巧い。マーラー同様、歌劇場で指揮者として活躍するようになる前の時代の作品というが、すでに力量がみてとれる。

 

マーラーに認められただけでなく、晩年のブラームスにも認められて指導を受けている。19002月に作曲者の指揮で初演されたこの曲のスコアには、その3年前に他界したブラームスを思い、「ヨハネス・ブラームスの思い出に捧げる」と記載された。ツェムリンスキーは作曲に関して、マーラーと結婚するアルマ・シントラーとシェーンベルクの師であり、ついでに言うと、アルマの「元カレ」でもある。

 

この日の独唱は、ソプラノが坂井田真実子さん、バリトンが与那城敬さん。特に大活躍中の与那城さんの声は、オケがどんなに大音量で響いていても、それに負けずに客席に届く声で、見事。

 

合唱も一部オケに隠れた部分もあったが、全体的にバランスも声量も十分で、立派だった。「sch」などの子音もよく出ていた。

 

なお、坂井田真実子のプロフィールには「2016年、指定難病の視神経脊髄炎を発症。一時は下半身不随になるも、現在は後遺症と戦いながらステージに復活」とあり驚いた。

客席からは特に気が付くようなことはなかったから、順調に回復されているのだろうけれど、今後のご健康とご活躍をお祈りしたい。

 

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2. マーラー交響曲第9

 

言うまでもなく偉大な作品。特に第1楽章の評価は初演時から誉れ高いが、弦奏者としては第4楽章こそ格別な楽章と言える。

これまでたくさん演奏を聴かせていただいてきた。録音は市販の全てとは言わないが、それに近いほど相当数聴いているし、ライブもプロアマ問わず、たくさん聴いてきた。

最初はたぶん山田一雄さん指揮新日本フィルか新交響楽団。

次いで今でも語り草となっている1985年のバーンスタインとイスラエル・フィルの来日公演。

あれは特に終楽章が素晴らしく、言葉にできない感動とはこのことかと思ったほどだった。だからあの日の感動を私は一度も書いていない。

 

あとは私自身としては、オケの一員として演奏者側に入ることが最大の希望。

現在所属しているオケでは相当難しいので、どこかで弾かせていただくべく、アプローチもしてきたが、タイミング等でなかなか実現していない。

いつかはオケの中でこの曲を体験してみたい。

 

それはともかく、この日の演奏では、海老原さんの指揮が積極果敢でとても良かった。指

揮台ところ狭しと大きな身振りで全身で動く。飛び跳ねる瞬間も2回ほどあったほどだ。久しぶりに全身全霊でマーラーにのめり込む演奏を聴かせてくれた。

最近は妙に気取っているだけで大人しいマーラー演奏が多すぎる気がするので。

 

1楽章は冒頭から落ち着いたテンポで開始されたので、抒情的アプローチを主体とする演奏になるのかなと思ったら、必ずしもそうではなかった。激しい部分では徹底的にたたみ込む。スポーツ的とでも言いたくなるほど、シャープにスタイリッシュに進めていく。いわゆるメリハリの良い演奏だが、それを徹底させた演奏。

それでもこの楽章のエンディグはゆったりと落ち着かせ、冒頭の雰囲気に戻した感のある演奏。エンディングでのオーボエのロングトーンは立派。

総じて弦が素晴らしく、木管も良い。金管と打楽器も良いが、ホルンが第1楽章の前半でやや安定感を欠いたのが残念。後半持ち直したが。

 

2楽章はスタイリッシュなアプローチは変わらないので、痩せた質感で進行したゆえ。ふっくらとしたユーモラスな肌感覚は無いものの、個々の力量で室内楽的なまとめを見せ、合奏として見事だったと言える。

 

3楽章でこのオケのただならぬ力量が提示された。中間部でのトランペットソロで残念な部分はあったが、それを別とすれば、全体的な技量と運びは圧巻で見事という他ない。

 

4楽章は、第2、第3楽章とうって変わって冒頭から、しっとりと情感たっぷり美しく歌いながら進行。約25分かけた演奏、と言うと、この曲のテンポ感に詳しい人なら、だいたいのテンポ感と運びのニュアンスが伝わるかもしれない。

すなわち、極めて遅いというほどではないが、標準より少し遅めの、たっぷりと落ち着いた、余韻を大事にしたアプローチによる演奏。とても美しい、立派な終楽章の演奏だった。

 

http://www2s.biglobe.ne.jp/kapelle/

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