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2019年5月31日 (金)

フランス語による日本歌曲~旧奏楽堂

530日夜、「Chants du Japon~日本の名歌~おなじみの名曲に新しい響きを」と題したユニークな試みのコンサートが、東京芸大の旧奏楽堂(旧東京音楽学校奏楽堂)で開催され、とても興味深く拝聴した。

 

これは、20年以上前に、日本人に愛された20曲の歌曲をフランス語訳するという企画があり、現在、立命館大学の特任教授をされているミッシェル・ワッセルマン氏がそれに挑んだところ、「フランス歌曲のようだ」と好評を得、当時も関東と関西でコンサートが行われたという。

 

今回はフランス歌曲に造詣が深い歌手2人~メゾソプラノの長谷川忍さんと、テノールの安冨泰一郎がプログラムの約半分ずつを分け合うかたちで披露された。なお、フランス語訳の20曲に加え、ドビュッシーやフォーレなどのフランス歌曲が前半に3曲、後半に1曲加えられ、合計24曲が演奏された。

 

また、当初予定されていたピアノの鈴木真理子さんは体調不良とのことで、急な交代として粟根祐人(あわね ゆうと)さんが演奏したが、1週間前に急に代演を引き受けたとはとても思えない、とても見事な演奏だった。

単に技術的完璧さだけでなく、既に相当歌曲伴奏の経験があるのではないか、と思えるほど情感的表出も優れ、しかも、あくまでも歌手に寄り添い、歌手を支える役に徹しての演奏、という、正にプロフェッショナルなピアノ演奏だった。

まだ若いと思われるが、とても良い奏者。

 

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プログラムは以下のとおりだが、驚いたことに、最初のデュオの2曲以外の全曲を、2人とも暗譜で歌われた。プロだから当然と言われればそうだろうが、しかし、大変な労力と力量が無いとできないことには違いないだろう。

 

何度も聴かせていただいている長谷川忍さんは、メゾの特質を生かした彩り深い声により、曲想の変化をよく表出されていたと思う。どれも良かったが、「ゆりかご」の2曲や「浜辺の歌」、「中国地方の子守歌」、「霧と話した」は特に印象深かった。

 

初めて拝聴した安冨泰一郎さんは、声量よりも詩の持つニュアンスと曲想に沿った独特のトーンで歌われた。「初恋」や「さくら横ちょう」は特に良かった。

 

総じて、2人は、こんなに巧くフランス語訳された歌なんです、ということを紹介するアプローチというのではなく、まるでフランス歌曲のように、ごく自然に「純粋な歌曲そのもの」を歌うという姿勢に徹しており、加えて個々の詩に込められた思い、情感を入り込んで表現されていたことがよく伝わる歌唱だった。ユニークで意欲的な企画とプログラムは意義深く、3人の出演者はその意図に見事に応えた演奏だったと思う。

 

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第一部 四季

 

1. 早春賦Prémices Printemps2

 ~作曲=中田章、作詩=吉丸一昌(1913年)

 

2. 荒城の月Le lune sur les ruines du château2

 ~作曲=瀧廉太郎、作詩=土井晩翠(1901年)

 

3. 朧月夜Lune voilée~長谷川さん

 ~作曲=岡野貞一、作詩=高野辰之(1914年)

 

4. 恍惚の時L’Heure exquise~安冨さん

 ~作曲=R・アーン、作詩=P・ヴェルレーヌ(1892年)

 

5. この道Cette route~長谷川さん

 ~作曲=山田耕筰、作詩=北原白秋(1926年)

 

6. からたちの花Les fleurs du mandarinier~安冨さん

 ~作曲=山田耕筰、作詩=北原白秋(1925年)

 

7. 麦の花Fleur des blés~安冨さん

 ~作曲=C・ドビュッシー、作詩=A・ジロ(1878年)

 

8. 夏の思い出Souvenir d’été~長谷川さん

 ~作曲=中田喜直、作詩=江間章子(1949年)

 

9. 浜辺の歌Chant du rivage~長谷川さん

 ~作曲=成田為三、作詩=林古渓(1916年)

 

10. 砂山La dune~安冨さん

 ~作曲=山田耕筰、作詩=北原白秋(1923年)

 

11. 椰子の実Noix de coco~安冨さん

 ~作曲=柳田国男、作詩=島崎藤村(1936年)

 

12. 歌を教える仙女La Fée aux chansons~長谷川さん

 ~作曲=G・フォーレ、作詩=A・シルヴェストル(1882年)

 

13. 待ちぼうけAttente vaine2

 ~作曲=山田耕筰、作詩=北原白秋(1924年)

 

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二部 愛

 

14. 宵待草Fleur d’une nuit~安冨さん

 ~作曲=多忠亮、作詩=竹久夢二(1910年)

 

15. 鐘が鳴りますLa cloche sonne~安冨さん

 ~作曲=山田耕筰、作詩=北原白秋(1923年)

 

16. 出船La bateau qui part~長谷川さん

 ~作曲=杉山長谷夫、作詩=勝田香月(1928年)

 

17. ゆりかごLes berceau~長谷川さん

 ~作曲=G・フォーレ、作詩=S・プリュドム(1879年)

 

18. 平城山Narayama~安冨さん

 ~作曲=平井康三郎、作詩=北見志保子(1935年)

 

19. 初恋Premier amour~安冨さん

 ~作曲=越谷達之助、作詩=石川啄木(1938年)

 

20. ゆりかごLes berceau~長谷川さん

~作曲&作詩=平井康三郎(1943年)

 

21. 中国地方の子守歌BerceuseChant populaire de la région du Chûgoku

 ~長谷川さん~岡山県民謡・子守歌:山田耕筰編曲(1928

 

22. さくら横ちょうLa venelle aux cerisiers~安冨さん

 ~作曲=中田喜直、作詩=加藤周一(1950年)

 

23. 霧と話したCe que j’ai dit au brouillard~長谷川さん

 ~作曲=中田喜直、作詩=鎌田忠良(1960年)

 

24. アンコールのかたちで~赤とんぼLibellule rouge

 ~2人および会場全員

 ~作曲=山田耕筰、作詩=三木露風(1927年)

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