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2018年10月 1日 (月)

東京アカデミー合唱団の「エリヤ」を聴いて

東京アカデミー合唱団の第64回定期演奏会を、
台風が近づく9月30日16時から東京オペラシティで聴いた。
曲はメンデルスゾーンの大曲にして最高傑作の
 オラトリア「エリヤ」。

指揮は、団が創立された1964年の3年後、1967年から実に
51年にわたり常任指揮者、音楽監督を務めている秋山和慶さん。

プログラムに記載された団員のパート別人数は、
ソプラノ=41名、アルト=33名、テノール=25名、バス=29名、
と、比較的バランスは良い。昨今の合唱団は、
男性が極端に少ない団がとても多いので。

ちなみに、ドイツ語の大曲ゆえ、武蔵野合唱団のように
楽譜を持たずにステージに出る、などというリスクは、
この合唱団はもちろん採らない。
そんなことをしなくとも、後述のとおり、
なかなか充実した演奏だった。まずは、出演者を記すと、

管弦楽~東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

ソプラノ~半田美和子、本宮廉子

アルト~谷地畝晶子、三津山和代

テノール~松原友、小貫岩夫

バス~キュウ・ウォン・ハン(エリヤ)、狩野賢一

児童ソロ~NHK東京児童合唱団団員 野沢晴海(中学1年)

オルガン~荻野由美子

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合唱全体で良かったところ

 全体について
まずNo.29。肩の力の抜けた柔らかいトーンで素敵だった。
そしてNo.41。このナンバーでは全体のバランスが良く、
         迫力があった。
     この曲ではバスも良く、34小節から45小節にかけての
     「Auf ihm wird ruhen der Geist des Hern」のところも
     よく声が出ていた。

ドイツ語の発音は、ミヒャエル・シュタインという人が指導
されただけに、特に
第2曲目の「Herr」と「höre」(oウムラウト)の違いを明確明瞭に
歌い分けていて、立派だった。

 パートに関して
テナーパートが明るく柔らかいトーンで良かった。
ソプラノも声がよく出ていた。41人と、他のパートに比べて
人数が多いということはあるけれど。

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合唱全体で感心しなかったところ

 パートに関して
バス。29人もいるのに声が客席にほとんど届いていない。
コントラバスやチューバの後ろにいることは同情を禁じ得ないが、
まるで、10人位で歌っている感じだった。

例えばNo.34の後半でホ長調に転じてからの動き。
ここでは音域が低いし、旋律的な動きもそれほどないから
目立ち難い部分ではあるが、
それでも、あるいはそれだからこそ、
和音の土台たる動きがもっと明確になる必要がある場面だ。

他には、No.38の終わり近く、51小節から53小節にかけて
上向する「er fuhr im Weter gen Himmel」も
迫力が全く足りない。

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 ソリストについて

何と言ってもエリヤ役を歌ったキュウ・ウォン・ハンさんが
素晴らしかった。
声が太過ぎず細過ぎず、格調高く凛とした声。
なぜ韓国の歌手を?と思ったのだが、プログラムに団代表の
長谷川潔さんが
「8年前に彼がエリヤを歌うのを聴き、将来、我々が
 この曲を演奏するときは、彼にエリヤをお願いしたいと
 思った」からとのこと。大正解だ。

なお、それを含めた代表者挨拶文の下にお知らせがあり、
「私たちの敬愛するリーダー、長谷川潔は
 本公演を目前に控えた9月6日に帰らぬ人となりました」
とあるので、非常に驚いた。
8月の終わりころまではツイッター等でも秋山先生による
練習の様子を伝えてらっしゃるので、
本当に急な逝去なのだろう。
直接は存知ないながら、心からご冥福をお祈りしたい。

ソロではもう1人、アルトの谷地畝晶子さんが見事。
彼女が歌った場面の歌唱はどれも素晴らしく、
深く端正な声で、物語を誠実に伝えた。

ソプラノの半田美和子さんは現代曲を得意としている
こともあり、独特の激しさと訴求力、劇的で情熱的な
歌い回しがあり、この曲でも
前半No.8にそれがよく出ていた。後半もなかなか良かった。

テナーの松原友さんはトーンが美しいが、後半疲れたのか、
No.39のソロでは音程が悪いところが少なからずあった。

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No.19におけるDer Knabeではソリストでも団員でもなく、
NHK東京児童合唱団団員 野沢晴海君というボーイソプラノ
を使って、2階のオルガンの近くで歌ったのは
とても効果的だった。
思わずウルッとするほど良かった。

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最後に、秋山さんのアプローチは、古典的といより
ロマン派の音楽としてとらえた感のあるスケール感の
あるもので、逆に言うと、オケのシャープさや、
ディティールの丁寧さ、合唱とオケとの音量バランスの
配慮(調整)という点で、それぞれ足りなさも感じた。
それでもその分、雄大で聴き応えのある演奏だった。
https://www.tokyo-academy.com/

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