« アンサンブルセバスチャン室内楽コンサート 2018 塩尻レザンホールで聴いた岡田愛さん | トップページ | 日大アメフト部悪質タックルは犯罪行為だ »

2018年5月16日 (水)

奇跡のレッスン~吹奏楽

Eテレでスポーツ等、色々な分野における指導者と生徒らの
状況を伝えるシリーズ「奇跡のレッスン」。
5月3日と10日の2回にわたり放送されたテーマは吹奏楽で、
登場した「最強コーチ」は、世界最高峰の吹奏楽団として
名高いイーストマン・ウインド・アンサンブルの現役指揮者、
マーク・スキャタデイさん。

レッスンを受けたのは埼玉県の公立中学校の吹奏楽部で、
県内屈指の実力を持つが、音のまとまりが今ひとつで、
大きな大会では思うような成績が残せていないという。
その部員らをどう指導したか。とても勉強になった。
面白かった。

よく、「心を合わせて」とか「心が通じ合った合奏、合唱こそ
最高のパフォーマンスが生まれる」と言われるし、
実際のところ事実、真実だとは思うが、
それは「言うは易し、行うは難し」であることは合奏や
合唱経験者なら皆知っているだろう。

「心を通わせる演奏を生むために、部員たちを具体的に
 どう導くか、導けるかが指導者としての役割だし、
 力量の見せどころ」であり、スキャタデイさんは
 それを短期間に見事に実践し、実証してくれた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この部活生徒らの中にも、キャラが濃いゆえ、
ぶつかったり、逆に自信の無さから消極的な生徒らもいて、
ごく普通に存在する問題点が内在していた。
部活に限らず、大人の組織でも、種々の内部では
様々な人間関係が在るのはプロもアマも同じで、
吹奏楽団にも管弦楽団にも合唱団にも同じく存在する。

しかし、音楽の現場では
「ウマが合うとか合わないとか呑気なことを言っている
 ヒマはない」。
一瞬一瞬が勝負であることはアマも変わらない。

加えて、あろうことか、スキャタデイさんが指導を任せられた
1週間の中で、生徒の間でインフルエンザが流行り、
トランペットの1番と3番奏者など、1週間の指導期間中、
次々と生徒らが自宅待機していくという予想外の事態が
生じた。
しかし、結果的には、この事態が、スキャタデイさんと
部員たちを一層奮起させることとなったと言える。

 では、スキャタデイさんはどうしたか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まずフルートパートに関して。
インフルエンザ待機中だった1番フルートの女子生徒Aさんが
復帰したが、スキャタデイさんはその間、彼女の代吹きを
していた下級生Cさんも大事にした。
すなわち、Aさんが吹く旋律をCさんと分担させることで、
Aさんがいない時期にカヴァーしたCさんにも役割をシェア
させたのだ。

次いで、ピッコロを受け持つBさんはAさんと同級ながら
2人とも自信家ゆえ、ぶつかりがちで、下級生Cさんをして
「(やりとりが)怖いと感じたこともあった」という微妙な関係。
最初、ピッコロソロに厚みを持たせるべく、
スキャタデイさんはAさんに1オクターブ下で同旋律を吹くよう
指示したが、休憩時間にBさんから「やり難い」とクレームが
出た。
今度はスキャタデイさんは、まず座る位置関係を変え、
それまで下級生Cさんを挟んでAさんBさんが離れていた
のを、Cさんを外にしてAさんBさんくっつけた。

次いで、Aさんに指示したオクターブ下メロディではなく、
低音域での和音進行オブリガートに変え、
Bさんが吹きやすいようにした。
スキャタデイさんは言う。
「AさんとBさんが良い関係でないからこそ接近させ、
 互いに音をもっと聴きあうようにした」。
3人は納得の表情で練習に打ち込めるようになった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トランペットパートに関して。
インフルエンザで1番奏者だったE君が自宅待機。
2番奏者のD君はE君のうまさに常々感心し、
自分には自信を持てないでいたが、急な事態で、
スキャタデイさんはD君に1番パートを吹くよう指示。
「ハイ」とは答えたものの、「マジかよ」とD君はボヤき、
修練の日々が始まった。
なかなか良い音が出ない。ミスる。
そのたびにスキャタデイさんは
「間違えてもいいから、堂々と吹いて」とか
「機械的に吹くのではなく、人間的な気持ちでおおらかに
 吹いて」と伝える。

そして、最終日の本演奏時、D君は完ぺきに吹いた。
D君は語る。
「E君もきっと出たかったと思う。彼の思いも込めて、
 背負って一心に吹きました」。
突然のソロ=主役指定にビビッて自信の無かったD君が、
そこまで言えるくらい自信を持って本番では吹けたのだった。

後日、病欠していた生徒も含めて全員で録画を見た際、
出られなかったE君は
「D君は凄いと思いました。1人で吹いているのに、
 3人で吹いているような音量も出ていた」
と驚嘆し、絶賛した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ホルンパートに関して。
男子生徒F君は元々打楽器志望で入部したが、欠員の
関係もあってホルンに替わり、まだ日が浅いゆえ
自信が持てず、実際、スキャタデイさんに
何度も注意を受ける。
その優しい生徒F君は言う。
「人つきあいがヘタで、それを克服したい気持ちがあって
 入部した」と。
そして本番では、F君はほぼ完ぺきに吹けた。
終演後、ロビーで母親と会うとおもわず号泣した。
彼の涙は、プレッシャーを感じながらそれに打ち勝つべく
本演奏に臨み、それを達成したからこその、
こらえてきた思いの吐露としての涙だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コントラバスとチューバパートに関して。
唯一のコントラバスの女性奏者が、あろうことか
本番当日の午前に発熱でダウン、急きょ離脱。
スキャタデイさんは「やむなし」としたが、3人のチューバ奏者が
「ここの部分ではコントラバス(のみの部分ゆえ)の音が
 無くなってしまうので、ここは僕らで吹きます」
として、本番1時間前に猛特訓して本番に臨み、
成功させたのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本番でのその「アパラチアン序曲」は実際、素晴らしかった。
ハプニング、アクシデントの連続した1週間にもかかわらず、
見事な成果だ。スキャタデイさんの指導者としての力量と
人柄に感服した。
スキャタデイさんは言う。
「君たちの才能は君たちだけのものではない。
 互いに分かち合うことで、多くの人に喜びを与える力を
 持っている」。
それを不安げな生徒たちから確実に引き出し、
見事に実証した指導と演奏だった。
面白かった。勉強になった。

前編5月3日放送
http://www4.nhk.or.jp/wonderlesson/x/2018-05-03/31/8192/2549191/

後篇5月10日放送
http://www4.nhk.or.jp/wonderlesson/x/2018-05-10/31/8747/2549192/

後篇の映像
http://www.dailymotion.com/video/x6jfit2

全体の宣伝
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3776/2549191/index.html
http://www.tvu.co.jp/program/20180317_wonderlesson/

« アンサンブルセバスチャン室内楽コンサート 2018 塩尻レザンホールで聴いた岡田愛さん | トップページ | 日大アメフト部悪質タックルは犯罪行為だ »

ブログ HomePage

Amazon DVD

Amazon 本

最近のコメント

最近のトラックバック