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2018年4月23日 (月)

新交響楽団のシューベルト「グレイト」

新交響楽団の「グレイト」~シューベルトと転調
本当になんという素晴らしい曲だろう。
もし、シューマンがこの作品を発見していなかったら、
交響作品の音楽史は随分と寂しいことになっていたかも
しれない、と「グレイト」を聴くたびにそう思う。

22日午後、東京芸術劇場にて新交響楽団の
第241回定期演奏会を聴いた。
指揮は大阪交響楽団常任の寺岡清高氏。

シューベルトが転調に特色があること、転調の名手だった
ことは皆知っている。

第1楽章冒頭で2本のホルンで開始されることも斬新だが、
17小節から26小節の間でのイ短調コードで
ヴィオラとチェロが織りなす交差は魅惑的だし、
それが急にホ短調コードでいったん終始するのも驚く。

主調のハ長調に戻って直ぐに変イ長調の和音を交えながら、
ハ長調で進んでいきアレグロの主部に入る。
このアレグロまでの78小節の序奏だけでも実に魅力的な
和声展開で、シューベルトの作曲技術の面目躍如
というところだ。

寺岡氏のとったテンポはオーソドックスでもあるが、
序奏では急がず余裕を持ち、アレグロでは快活さを
押しだした演奏。

第2楽章こそこの曲の白眉。
ここでの歌に満ちた抒情性は「未完成」の第2楽章、
劇的構成は同じく「未完成」の第1楽章とともに
かけがえのない比類のない内容と言える。

この日の演奏では、最初のオーボエのソロが
とても素晴らしく、終演後も大きな拍手を得ていたが、
ただ、それ以降、第3楽章も含めて音量が
なぜか落ちた感があり、楽器に不具合が生じたような
印象を受けた。
終楽章の目立つ旋律である410小節からの変イ長調
でのオーボエデュオでは持ち直していたが。

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この日の演奏で唯一問題を感じたのは第3楽章のスケルツォだ。
やや速めのテンポとはいえ、新響ではどうということもない
はずなのに、弦の8分音符の「粒立ち」が弱いのだ。
なんとなく、「ザザザザザザ・ザン、ザン、ザン」、と
モヤモヤ感のまま進むので、
「ダダダダダダ・ダン、ダン、ダン」としてシャープに
聴こえてこない。
これでは平凡な演奏の範疇にあると言える。
中間部のトリオも推進力だけを感じさせ、
曲想である「たおやかさ」が出てこない。

シューベルトは部分部分でアクセントなどの仕掛けを幾つか
設定しているのに、そこの強調が弱いから平凡な流れのまま
となる。
デフォルメせよとは言わないが、仕掛けを強調しないと、
音楽は生きない。

これはもちろん指揮者の問題だが、新響もこの曲は3回目
とはいえ、1992年以来の演奏というから、
こうした古典派とロマン派の橋渡しをする位置にある曲の
練度が久々だったと想像もできる。

以前、近現代曲を得意とする早稲田大学交響楽団の演奏する
ラヴェルに感動しながらも、その後のブラームスの第3交響曲の
平凡さに驚いたものだが、
今回の新響のスケルツォ演奏は曲想を完全に描き切れて
いない、練り上げ度が弱いという点であれに似た印象を
受けた。
いや、あのときほどの不満はない。

N響がそうであるように、この新響も30年前から聴いてきた
私が見たらメンバーは随分若返ってはいるけれど、
相変わらず抜群に上手く洗練されたオケ、
アマオケ最高峰の1つであることに何ら変わりはない。

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第4楽章。
長くワンパーン的なフレーズや音型が続く終楽章は鬼門だ。
私自身、東京外語大のOBを主体に設立されたオケで弾かせて
いただいた経験があるが、「グレイト」大好きな私でも、
第4楽章の演奏はシンドイ。
それでも、今回、この終楽章の幾多の場面で細やかに転調が
なされ、それの進行の中でコーダに向かって展開されていく
構成力にあらためて感心した。

ハ長調を主体にしながらも、コントラバスなどの低音部が、
ト長調や変イ長調、ホ長調などのコード、あるいは
イ音や変ロ音を踏みしめて土台を作り、
ヴァイオリンやヴィオラが3連符の連続でせわしなく刻んで
いく。
その流れが知らず知らずにコーダを用意していく様は圧巻で、
やはり偉大な曲だとつくづく実感する。

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この他、プログラムは前半にフランツ・シュミットの
歌劇「ノートルダム」より間奏曲と謝肉祭の音楽、
エーリッヒ・コルンゴルトの劇的序曲という、
それぞれ15分位の曲が演奏された。
いずれも明るいトーンの祝祭的な曲だった。

最後になったが、寺岡氏は早大と桐朋学園大、
ウィーン国立音楽大学やイタリアのフィエーゾレ音楽院で
学んだ人。
ハンス・ロットや、この日の1曲目の演目でもある
フランツ・シュミットなど、近代ウィーンの作曲家を
よく取り上げているとのこと。

最後に、新響の団長の土田恭四郎さんがプログラムで
「グレイト」の解説文の冒頭に書いている文を紹介して
終えたい。

「新交響楽団創立指揮者の故芥川也寸志は、生涯にわたり
  「アマチュアであることへの誇りとこだわり」を発信されて
 いた。
 代償を求めず、ひたすら音楽を愛し没入していく心の大切さが
 新交響楽団の活動の原点となっている」

 http://www.shinkyo.com/

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